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2022年1月

2022年1月29日 (土)

公取委新規株式公開(IPO)報告書について

公取委が1月28日、

新規株式公開(IPO)における公開価格設定プロセス等に関する実態把握について

を公表しました。

まあ、たかが実態調査報告書であり(しかも本文は実質たったの33頁・・・)、いわゆるアドボカシーのたぐいですから、本気で正式審査事件になると心配する人もいないのでしょうけれど、一応気がついたことをメモしておきます。

法律解釈として一番の問題は、主幹事証券会社が一方的に低い公開価格を設定すると優越的地位の濫用に該当するおそれがあるとしている点です(p34)。

まず、主幹事が優越的地位にあるとする理由について、報告書では、

「公開価格設定プロセスは推薦審査の終了後に行われるところ,

上場予定日の延期を希望しない新規上場会社にとっては,

この段階で主幹事を変更することは困難であるため,

主幹事が,新規上場会社にとって著しく不利益な要請等を行っても,新規上場会社はこれを受け入れざるを得ないと考えられ,

公開価格設定プロセスにおいては,主幹事は,新規上場会社に対し,優越的地位にある場合があると考えられる。」(p34)

とされています。

ですが、これはいかにも荒っぽい議論だと思います。

というのは、新規上場会社は、こういうスケジュールになることは主幹事選定前からわかっていたことであって、そういう事態になるのがいやなら主幹事を選ぶ前に手当てしておけばいいだけの話だからです。

ではどうして新規上場会社はそういう手当てをしないのかというと、IPOディスカウントにあまり関心がないからであることが、報告書から読み取れます。

つまり、報告書p9では、

「(ア) 新規上場会社が主幹事を選定するに当たり考慮した事項

書面調査に回答を寄せた新規上場会社は,主幹事を選定するに当たり考慮した事項について,

「IPO 実施までのサポート体制」(78.1%),

「主幹事の引受実績」(72.6%),

「事業モデルや将来性に対する理解度」(61.6%)

などとしており,

「想定発行価格に係る提案内容の魅力度」,

発行規模別の平均初期収益率

など公開価格の設定に係る事項は,それぞれ19.2%,2.7%にとどまっている。」

とされています。

つまり、平均初期収益率(初期収益率=(初値-公開価格)/公開価格。平均初期収益率とは,一定期間における,証券会社ごとの発行規模別の初期収益率の平均値のことをいう。)を主幹事選定の要素として重視している新規上場会社はほとんどいない、ということです。

そうではなくて、サポート体制とか、引き受け実績とか、自社事業に対する理解度が重視されているのです。

そういった事情を新規上場会社が重視して、納得して主幹事を選んでいるうえに、初期収益率はもともと重視していないのに、制度上のスケジュールのかねあいで主幹事の変更が困難だから優越的地位だ、なんていうのは、ちょっと無茶じゃないかと思います。

そりゃ証券会社はIPOのプロですし、新規上場会社は最初で最後のIPOですから(initial public offeringは定義上1回だけ)、情報の非対称性はありうるわけで、もしかしたらそのあたりを丹念に調べていけば、優越的地位が認定できることがあるのかもしれません(私は後述のとおりそうは思いませんが)。

でも、そのあたりを何も調べないで、スケジュールだけを根拠に優越的地位だなんていう話は、聞いたことがありません。

しかも、少なくとも初期収益率については情報の非対称性もなさそうであることが、報告書から読み取れます。

つまり、報告書p10では、証券会社のコメントとして、

「(平均初期収益率を算出する際に使用する)IPO に関する情報は全て公開されており,データをまとめて公表することは止めようがない」

とされています。

つまり、過去のIPOにおける情報はすべて公表されているので、新規上場会社はその気になればヤフーファイナンスとかを使って各証券会社の手がけたIPOの初期収益率を簡単に調べることができるわけです。

それすらもしないということは、前述のとおり、初期収益率を主幹事選定の際に考慮する新規上場会社がほとんどいないからでしょう。

次に、濫用行為への該当性については、報告書p34では、

「新規上場会社が,主幹事に対し,十分な根拠をもって公開価格を一定額以上とするよう主張したにもかかわらず,

主幹事が,それを下回る金額で一方的に公開価格を設定し,

新規上場会社が主張した公開価格を大幅に上回る初値が付いた際には

新規上場会社は,自らが主張した公開価格によってより多くの資金を調達した可能性があることから,

主幹事は,新規上場会社に不利益になるよう新規上場会社との間における主幹事業務の取引を実施したものと考えられる場合がある。」

とされています。

でも、これって、結果論なのではないでしょうか?

少なくとも、理屈の上では、濫用行為かどうかは濫用行為の時点で判断できなければならないはずで、初値が付いた時点でさかのぼって公開価格を決めた行為が濫用行為になるというのは、おかしいと思います。

たとえば、住友銀行が融資先に金利スワップを買わせたのが優越的地位の濫用だとされた事件では、望まないスワップを買わせた時点で濫用行為だったのであり、結果的に金利スワップを購入しておいて融資先が得をしたから濫用にならないとか、損をしたから濫用になるとかいう話ではなかったはずです。

一つの救いは、(というか、なんでこんな文言を入れたんだろうと不思議に思いますが)報告書では、濫用になる条件として、

「新規上場会社が,主幹事に対し,十分な根拠をもって公開価格を一定額以上とするよう主張した」

ことが要求されていることです。

こんな「十分な根拠」なんて、IPO素人の新規上場会社が出せるのでしょうか??

本気で公開価格を上げたいと公取が思っているなら、こんな厳しい条件付けなければいいのに、と思います。

ありうる方法としては、報告書でも論点として取り上げられている、セカンドオピニオンを取る方法がありえますが、セカンドオピニオンはあくまで2番目のオピニオンであって、一般的には主幹事のほうが会社のことをよく分かっていることからすると、すべてのセカンドオピニオンが当然に「十分な根拠」にあたるということは、とうていいえないのではないでしょうか。

ちなみに、p15では、

「(イ) IPO ディスカウントの実施方法について

書面調査・ヒアリング結果によれば,ほぼ全ての案件でIPO ディスカウントが行われているところ,その根拠については,必ずしも新規上場会社に対して十分に説明されていないまま,20%~30%と,ある程度大きな割引が行われている場合がある現状が確認された。

IPO ディスカウントのディスカウント率の大きさは,想定発行価格の設定に直結し,その後の公開価格の設定にも影響を与え得るため,これを証券会社が一方的に設定することは,新規上場会社にとって不利益となる可能性がある。

したがって,想定発行価格の設定において,IPO ディスカウント等の名目で,考え方を説明することなく,合理的な根拠に基づかずに価格を低く設定することは独占禁止法上問題となるおそれがあ(る)」

とされています。

でも、

「新規上場会社にとって不利益となる可能性がある」

「したがって」

「独占禁止法上問題となるおそれがあ(る)」

という3段論法(?)は、あまりにも乱暴で、ここは公取も筆が滑ったのだと考えておきましょう。

そもそも優越的地位の濫用の基本的な構造は、不利益な取引条件を押し付けられても今後の取引への影響を懸念して受け入れることを余儀なくされる、というものです。

でもIPOにおいて、新規上場会社が主幹事との今後の取引に与える影響を懸念して不利な条件を受け入れざるを得ない、なんていうことはありません。

そこを無理矢理、スケジュールを遅らせられないから、というので優越的地位を認定しており、これも、従前のオーソドックスな解釈からは外れています。

以上のとおり、低い公開価格を付けたからといって優越的地位の濫用だというのは、報告書の理屈ではとても根拠が薄いと思います。

ほんとうは、日本のIPOディスカウントが大きすぎる(かどうか私にはまったくわかりませんが)、というところに切り込まないと意味がないと思うのですが、全然筋違いな理屈で優越に持ち込むなんて、がっかりです。

それに、報告書のコメントをみると、全般的に、証券会社のほうが新規上場会社よりもまともなことを言っているのに、公取委がかなり強引に自分の主張に結びつけているところが多いように思います。

たとえば、p21では、証券会社の営業部門の公開価格設定への関与について、新規上場会社の意見として、

「個人投資家に売りやすいように公開価格を下げさせる傾向があると聞いたことがある」

「直接動きが見えたわけではないが,当社の公開価格は,リテール営業の圧力が働いた結果の数字だと考えている」

という意見が載っていますが、こんな伝聞や根拠のない「意見」を、報告書に載せてしまって良いのでしょうか?

まあ、これは、みただけで根拠がない、伝聞だ、とわかるのでまだ罪が軽い方かも知れませんが(皮肉です)、こういうことを公の文書に載せられるのは困ったものです。

これに対して証券会社の意見(p21~22)としては、

「引受部門のみで価格を決めてしまうと新規上場会社の意向が強く反映されてしまう可能性があるところ,透明性の担保のため,営業部門も入れて,新規上場会社にとって納得感のある水準を目指し,牽制的な会議を行っている」

「価格の検討に当たっては,機関投資家の意見やアナリストの意見を反映している。個人投資家にはプライシング能力がないため,個人投資家向け営業部門の意見は反映していない。プライシングの最終権限は飽くまで中立的な立場にあるエクイティ・キャピタル・マーケット部門にある。新規上場会社の利益だけハイライトされるのはどうかと思う。投資家の意見も汲んで最適解を作成するのが,証券会社の役目だと考えている」

という意見が述べられていて、私にはとてもまともなことを言っているように見えます。

昔から公取委の立場は、たとえばスーパーが納入業者に買いたたきをして消費者が安い商品を買えても、それは公正な競争ではないから許されないのだ、というものです。

経済学的にはまったく合理性のない説明ですが、優越的地位の濫用とはそういうものなので、経済合理性をもって説明できないのはしかたありません。

素朴な感情としても、納入業者いじめをして安値で消費者に販売するのは、いくら消費者が安く買えてもよくないのではないか、というのも理解できます。

未成年労働者を搾取して作った商品や新疆ウイグル自治区の綿を、人権を理由に取り扱わないようにするというのと似ています。

(まあ、優越の場合は、たんなる中小企業保護なので、基本的人権の尊重というような大げさな話ではありませんが。)

IPOの場面でも、新規上場会社(≒納入業者)と株主(≒消費者)の利害対立という構図があるわけです。

でも、IPOの場合は、納入業者に対する買いたたきの禁止ほど、国民の理解は得られないのではないかという気もします。

それに、納入業者の買いたたきの場合と違って、IPOの場合には、いくらぐらいなら安すぎるのかが報告書からはまったく明らかでなく、唯一、前述のように、

「主幹事が,それ〔新規上場会社が主張する公開価額〕を下回る金額で一方的に公開価格を設定し,新規上場会社が主張した公開価格を大幅に上回る初値が付いた」(p34)

場合には、濫用である(安すぎる)、という結果論を述べるだけです。

ほかには、過大なIPOディスカウントが濫用だという点に関連して、初期収益率の位置付けに関して、証券会社から、

「初値は,そのときの需給によるものである上に,モメンタム(相場の勢い)に左右されるものだから,必ずしも主幹事の力量を適切に示すものではない。初値の付け方に着目することは必ずしも適切ではない」

「初値は,飽くまで一つのファクターに過ぎないから,終値や一週間平均,上場から3か月後や半年後の数字なども並べて比較できると良いだろう」(p10)

という、とてもまともな意見が出ていて、そりゃそうだろうと思いました。

この点に関連して、本日の日経朝刊では、

「証券界は公取委に対し違和感を隠せない。

ある証券会社によれば、新規上場した企業の約3〜4割は公開の1年後の株価が公開価格を下回っていたという。

証券会社幹部は慣⾏に⾒直すべき点があるとしつつ「公開価格のあり⽅は全体の⼀部を切り取った議論ではないか」と話す。」

と報じられていました。

こんな大事なことを、公取は知らなかったんですかね?

新規上場会社にとっては公開価格は高ければ高いほどいいのでしょうけれど、その結果株価が下がって損をするのは株主です。

もしIPOディスカウントを減らしたら、3~4割どころではなく、1年後にはほとんどの株価が公開価格を下回ることになるのではないでしょうか。

餅は餅屋ですから、やっぱり証券市場のことは金融庁にまかせておいたほうがよかったのではないでしょうか。

公取委は、

「公正取引委員会としては,本報告書で示した考え方を金融庁,日本証券業協会及び東京証券取引所に申し入れる」(p36)

のだそうですが、みなさん大人ですから無碍にはしないのでしょうけれど、内心鼻で笑われてしまうのではないか、と心配になります。

(私も競争法で食べている人間なので、公取委が他の役所に馬鹿にされるのは、実は内心とても忍びないのです。)

そのうえに、自分の十八番であるはずの独禁法の解釈ですら、根拠薄弱なわけですから、なおさら心配になります。

なので、金融庁のみなさん、この報告書の競争法上望ましいという提言は聞いていただく価値はあるのかもしれませんが(的外れな提言である可能性もありますが)、優越的地位の濫用の解釈の部分は、鼻で笑ってもらってかまいません。

最後に、公取委にもう一つ苦言ですが、あんまりヒアリング内容を自分の都合の良いように解釈して報告書に使うと、企業が誠実に応じてくれなくなるので、気をつけた方がいいと思います。

私が今回の報告書で一番学んだのは、公取委の実態調査報告書の調査に回答するときには、どのように切り取られても自分に不利に使われないような内容にしないといけないな、ということでした。

2022年1月27日 (木)

買いたたきに関する下請法運用基準の改定について

下請法運用基準が改定されました

具体的には、「買いたたきに該当するおそれがある」行為の中で、改定前の、

「ウ 原材料価格や労務費等のコストが大幅に上昇したため,下請事業者が単価引上げを求めたにもかかわらず,一方的に従来どおりに単価を据え置くこと。」

というのが、

「ウ 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について,価格の交渉の場において明示的に協議することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと。」

に変わり、あらたに、

「エ 労務費,原材料価格,エネルギーコスト等のコストが上昇したため,下請事業者が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず,価格転
嫁をしない理由を書面,電子メール等で下請事業者に回答することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと。」

というのが加えられました。

最近の公取委はやりたい放題ですが、これも、とんでもない改悪だと思います。

買いたたきに関する下請法の定義は、

「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。」(下請法4条1項5号)

です。

この定義の、どこをどうひねったら、「明示的に協議」しないことや、「書面、電子メール等で下請事業者に回答」しないことが、買いたたきに該当することになるのでしょうか?

これはもう、条文の解釈をあきらかに超えて、立法論の域です。

公取委がこういうめちゃくちゃな解釈をする傾向は最近とくに顕著です。

たとえば、「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書」p150では、

「本部と加盟店とで合意すれば時短営業への移行が認められることになっているにもかかわらず,本部がその地位を利用して協議を一方的に拒絶し,加盟者に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には優越的地位の濫用に該当し得る。」

とされ、協議するという手続を踏まないことが濫用になるという考え方が示されています。

ですが、協議に応じないこと自体が濫用などとは条文のどこを読んでも出てきませんし、裁判所の判例でそのようなことをいっているものもありません。

それどころか、公取委自身の排除措置命令や審判ですら、そのような規範をうかがわせるような判断はありません。

というわけで、公取委がとくに優越的地位の濫用やその特別法である下請法の運用において条文に書いていない解釈を突如としてしはじめることは今回に限ったことではないのですが、少なくとも、かつてはそのようなことはありませんでした。

今回の下請法運用基準の改定も、少なくとも10年前であれば、せいぜい、買いたたきを予防するために望ましいプラクティスとされるにとどまったはずで、違反のおそれがある行為とはされなかったでしょう。

このような横暴は、断じて許すことができません。

それにもかかわらず、マスコミが、さも当然のように事実だけ伝えて、批判的な報道がみられないのは大変残念なことです。

弁護士も、「運用基準が変わったので今後は気をつけましょうね」と事実を伝えるだけではないでしょうか。

法治国家として、これは大きな問題だと思います。

法律は、言葉でできています。

言葉(条文)を無視したのでは、法治国家は成り立ちません。

例えば、割引困難な手形の交付禁止(下請法4条2項2号)の、

「二 下請代金の支払につき,当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。」

の解釈として、手形サイトが60日以内であることという解釈をすることは、「一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難である」という文言があるので、その文言の解釈・明確化として、許されることだとは思います。

(ただ、それを短く解釈変更するときには、短くする理由や金融情勢の変化が必要であり、たんに下請事業者保護のためだからというのでは、「割引を受けることが困難」という文言の解釈を変更する理由にならず、「下請事業者の資金繰りを圧迫するような手形」とでも法改正しないといけないのですが、それは措きます。)

ところが、今回の運用基準の改定(改悪)は、そのような文言の手がかりが条文にまったくありません。

これに何の疑問も感じないというのでは、リーガルマインドのかけらもないと言わざるを得ません。

今の公取委の人たちは、ほんとうにこれでいいと思っているのでしょうか。

昔の公取委は、こんな解釈はしませんでした。

(そういう運用をしていても、行政指導というソフトなやり方でやっていたのであり、正面切って解釈を変更することはありませんでした。)

今の公取委の人たちは、先輩に申し訳ないと思わないのでしょうか?

感覚として、最近とくに、公取委が下請法の検査などで、条文に根拠のない無茶なことをいうことが増えてきているように思います。

そのいくつかは、このブログでも何度か取り上げました。

また、そういう無茶なことをいう担当官にはきちんと理屈を説明して、お引き取りいただいたこともあります。

ですが、多くの日本企業は、公取委から違反と指摘されると唯々諾々と従っているのではないかと想像されます。

しかし、このようなことは終わりにしなければなりません。

「困っている下請事業者が守られるのだからいいじゃないか」とか、「交渉の証拠を残さないのはずるいじゃないか」という問題ではないのです。

法律の解釈は、結果がよければいいというものではないのです。

条文に根拠がなければいけないのです。

こういうことを許していると、国民の権利はどんどん侵害されていきます。

ナチスに対する反省として、マルティン・ニーメラーが残した、有名な『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき』という、次のような文があります。

ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった

私は共産主義者ではなかったから

社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった

私は社会民主主義者ではなかったから

彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった

私は労働組合員ではなかったから

そして、彼らが私を攻撃したとき 私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった

これは、国家の横暴に対して誰も声を上げないと、こういうことになるという警告だとも取れると思います。

私も、下請法という狭い分野ではありますが、専門家の責任として、声を上げさせていただきました。

マスコミの1社くらい、事務総長定例会見でこの点について追及するところが出てきて欲しいなと思います。

2022年1月25日 (火)

カラダファクトリーの措置命令とキャンペーンの繰り返し

同じキャンペーンを「好評につき延長」などといって繰り返すとどのような場合に景表法違反になるのかはしばしば質問を受ける論点ですが、この点について参考になる事例として、(株)ファクトリージャパングループに対する2019(令和元)年10月9日措置命令があります。

この事件では同社が運営する整体施術のフランチャイズで、初回だけ割り引く同じ内容のキャンペーンが連続して繰り返し行われたことが有利誤認表示とされました。

問題になったコースは5つあるのですが、一番違反期間が長い「全身整体コース」についてみると、違反表示期間は、

第1期 2015年8月(ただしセール期間は同年9月と合わせて2ヶ月間)

〔空白期間8ヶ月〕

第2期 2016年6月~2017年2月(セール期間も同じ)

〔空白期間1ヶ月〕

第3期 2017年4月(セール期間は同年5月と合わせて2ヶ月間)

〔空白期間3ヶ月〕

第4期 2017年9月~2018年5月(ただし2017年12月26日~31日はのぞく。また2017年11月に8,424円から8,964円に値上げ)

〔空白期間1ヶ月〕

第5期 2018年7月~8月

の5回でした。

なお、それぞれの表示は、毎月きっちり、当月末までの期間限定キャンペーンであることを謳い、それを毎月繰り返していた、というものです。

(ただし上述のように、第4期の2017年12月の表示はキャンペーン期間が12月1日から25日までだったので、厳密に言えば、翌月まで6日間空白があったことになります。)

さて、以上のような事実関係でまず注目されるのは、第1期が、たった1ヶ月のキャンペーンを、たった1回、1ヶ月だけ延長しただけで不当表示とされている、ということです。

1回くらいの延長は大目にみてもらえるのではないか、と思いたくなるのはやまやまですが、これだけはっきり命令でだめだといわれると、なかなかそうも言っていられないように思われます。

次に、第2期と第3期の間、および、第4期と第5期の間は、それぞれ1ヶ月しか空いていませんでしたが、それでも、第2期と第3期が通算されることも、第4期と第5期が通算されることも、ありませんでした。

このことから、連続するキャンペーンは、間に1ヶ月空ければ、連続とはみなさないと消費者庁は考えているのではないか、ということが想像できます(あくまで想像です)。

1ヶ月空ければいいというのはまったく根拠がないわけでもなくて、価格表示ガイドラインのいわゆる8週間ルール(過去8週の過半の比較対照価格での販売実績などを要求するルール)の考え方にしたがえば、過去8週間の過半つまり4週間の実績があれば比較対象に用いて良い、というのは合理的であるように思われます。

逆に、第4期中の2017年12月26日から31日までは途切れているのですが、この6日間空いていたからといって、連続性は否定されていません。

将来価格二重表示ガイドラインが、比較対象将来価格での2週間の実績があれば不当表示としないというルールを採用していることからすると、2週間空ければいいのではないかという議論もありえますが、何ヶ月もキャンペーンをやってて2週間あけたらまたやっていいというのはいかにも短すぎる感じがするので、やはり1ヶ月は空けるべきでしょう。

ほかには、第4期の途中の2017年11月に、通常料金が8,424円から8,964円に値上げされており、それにともない、キャンペーンの初回限定割引価格もそれまでの3,980円から4,520円に値上がりしています。

同じ内容のキャンペーンを繰り返すのがだめなら少し内容を変えればいいのではないか、と誰もが思うところですが、少なくとも500円程度の値上げでは同一性は否定されないということでしょう。

さらにいえば、このケースでは、通常料金からの値下げ幅は従来の4,480円(=8,424-3,980)から、4,444円(=8,964-4,520)と、あまりかわっていないともいえます。

ところがさらにおもしろいのは、このケースでは、翌月の2017年12月には、通常料金は8,964円で据え置いたものの、初回限定の値引は従来どおりの3,980円に戻している、ということです。

きっと、お客さんが思ったよりも減ってしまったのでしょう。

なので、2017年12月以降(2018年5月まで)の初回限定割引は4,984円(=8,964-3,980)となっており、従前の4,480円と比べるとそれなりに高くなっているようにもみえます。

ただ、通常料金と比べていくら安いかを考えても意味はなく、キャンペーンの異同を考える際には実際に支払う額を基準に考えるべきでしょう。

つまりこのケースでは、初回支払額は、

2017年10月まで、3,980円

11月 4,520円(プラス540円)

12月~翌5月 3,980円(マイナス540円)

となります。

なので、支払額が3,980円くらいのときに、540円くらい増額しても、キャンペーンの同一性は否定されない(連続とみなされる)と考えるべきでしょう。

さらにいえば、このような命令の発想からすると、やっぱり、キャンペーン期間が終わったら、いったんは、元の価格(8,424円)に戻さないといけないのではないかと思います。

ちなみに、第3期以降は、それまでの3,980円にくわえて、平日午後だと3,500円になるというキャンペーンになっていますが、消費者庁が認定した連続期間の途中で加わったプランではないので、論点にはなっていません。

もし期間の途中でこのようなプランが加わったとしても、連続性は否定されないでしょう。

今だからお得だと思って言ったら、翌月には新プラン(3,500円)が加わってさらにお得になった(つまり「今」はむしろ損だった)ことになるからです。

なお細かいことを言えば、第4期の2018年1月から2月は、2ヶ月分まとめて延長しており、次の3月から4月も2ヶ月分まとめて延長していますが、もちろん、連続性は認められています。

2022年1月14日 (金)

増量値引における同一商品の意義

いわゆる増量値引の意味について、定義告示運用基準(昭和52(1977)年 4月 1日事務局長通達第 7号、改正 昭和63(1988)年10月 1日事務局長通達第11号、平成 8(1996)年 2月16日事務局長通達第 1号、平成18(2006)年 4月27日事務総長通達第 4号、
平成26(2014)年12月 1日消費者庁長官決定)の6(3)ウでは、

「6 「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」について

(3) 次のような場合は、原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる。

〔ア、イ略〕

ウ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、

ある商品又は役務の購入者に対し、

同じ対価で、それと同一の商品又は役務を付加して提供すること

実質的に同一の商品又は役務を付加して提供する場合

及び

複数回の取引を条件として付加して提供する場合

を含む

(例 「CD三枚買ったらもう一枚進呈」、

「背広一着買ったらスペアズボン無料」、

「コーヒー五回飲んだらコーヒー一杯無料券をサービス」、

「クリーニングスタンプ○○個でワイシャツ一枚分をサービス」、

「当社便○○マイル搭乗の方に××行航空券進呈」)。)。

ただし、

「コーヒー○回飲んだらジュース一杯無料券をサービス」、

「ハンバーガーを買ったらフライドポテト無料」

等の場合は実質的な同一商品又は役務の付加には当たらない。」

と規定されています。

そして、上記引用部分のウのうち、「(実質的に・・・」以下の部分は、1996(平成8)年改正で加えられたものです。

さて、この増量値引の「実質的に同一の商品又は役務」が何を意味するのかについては、上記引用中でも具体例が挙げられていますが、それでもはっきりしないことが少なくありません。

この点について、1996年改正前のものではありますが、公取委の担当者解説である、

片桐益栄、菅久修一「同一商品の無料添付と景品表示法ー指定告示の運用基準の変更についてー」公正取引457号(1988年11月)7頁

では、以下のようないくつかの具体例をあげて説明しています。

まず、1つめは、

「問1 150ミリリットルのシャンプーお買い上げの方に200ミリリットルのシャンプーを無料で提供することは可能か。

答 購入する商品よりも最の多いものを付加することは、「取引通念上妥当と認められる基準に従」ったものとは言えないので、景品類に該当するため、このような方法は行えない。」

とされています。

う~ん、そうなんですかねぇ。

なんとなくわからないではないのですが、個人的には、何が「取引通念上妥当」なのかを、いち役所が勝手に決めてしまうことに強い違和感を覚えます。

理屈の上でも、ふつうの値引なら6割引、7割引があたりまえの商品でも、増量値引になったとたんに実質5割までしか値引きできないというのは、おかしなことだと思います。

まあ、役所の言うことが絶対だ、と信じて疑わない方はどうぞ従ったらいいんじゃないでしょうか、というくらいしか言えません。

告示は法律の委任を受けた法的根拠のあるものですが、運用基準はあくまで役所内部の運用基準に過ぎません。

なので、運用基準に従うかどうかは国民が自己責任で判断すればいいことだと、私は思います。

さて、次の、問2では、

「問2 ティッシュ(箱)お買い上げの方にミニティッシュをプレゼシトずることは、同一商品の付加になるか。

答 ミニティッシュは、ティッシュ(箱)とは異なる独立した一個の商品であるから、ティッシュ(箱)とミニティッシュは、同一の商品ではなく、この場合は、同一商品の付加に当たらない。」

とされています。

これもどうなんですかね。

「ミニティッシュは、ティッシュ(箱)とは異なる独立した一個の商品であるから」といいますが、「同一」かどうかを問うているのに「異なる」から同一ではないのだ、というのは、たんなる結論先取りであって、何の説明になっていないと思います。

こういうのをみると、役所は理由を説明しなくていいから楽だなぁと思います。

依頼者からお金をもらったり裁判所で戦う弁護士は、こういうわけにはいきません。

そこで理由を考えてみると、ミニティッシュ(ポケットティッシュ)は携帯して出先や屋外で使用するものであって、主に室内で一定の置き場所に置いて使用する箱ティッシュとは用途が著しくことなるため、箱ティッシュにポケットティッシュを付けると、たんに箱ティッシュを増量したのとは違う顧客誘引性が生じるから、といったところでしょうか。

でも、この理由で増量値引にならないほどの独自性があるといえるのかも疑問がないわけではないですし、担当官解説はそこまで深いこと考えていっているわけでもなさそうなので(たぶん直感だけ)、そういう意味では疑問の余地のある回答だと思います。

それに、同じ紙質でも入れ物がちがうだけで別の商品になるのなら、増量値引とするよりも、むしろ試供品(総付告示運用基準3(2))にしてしまったらいいのかな、という気がします。

次の例は、

「問3 スーツお買上げの方にスーツもう一着プレゼント」という販売方法は、同一商品の付加に当たるか。」

という質問に対して、

「商品の色、デザイン、プランド等については、原則として、これらの要素が全く同じ商品が同一の商品であると考えている。

通常、スーツをもう一着プレゼントという場合は、購入したスーツとは異なる商品であるので、前記の考え方から、こうした販売方法は、同一商品の付加とはいえず、もう一着プレゼントするスーツは景品類となる。

したがって、ニ着又は三着のスーツをまとめて販売する場合は、これまで通り、「ニ着OO円」「三着OO円」と表示して販売することとなろう。」

と回答されています。

これも、現行ガイドラインの、

「CD三枚買ったらもう一枚進呈」

というのが増量値引でOKなのと比べると、別のデザインのスーツでもいいんじゃないか、という気もしますし、今の消費者庁ならそう解釈するかも知れません。

役所のメンツ的にも、1996年改正で、「実質的に同一」というふうに広げられたので広げて良いのだ、という説明がつきそうです。

ちなみに、現行ガイドラインの、

「背広一着買ったらスペアズボン無料」

というのは、背広一着にズボンも当然含まれていて、スペアズボンはそのズボンと当然同じデザインなので、同じデザインに限るという上記担当官解説とは矛盾しないことになります。

ただ、細かいことを言えば、商品として購入するズボンは裾上げがダブルで、増量値引として提供するズボンはシングルの場合は「実質的に同一」なのか、とか、それに類する疑問はいくらでも出てくるところですが、まあそのくらいは「実質的に同一」でいいのではないでしょうか。

次の質問は、

「問4 ガソリン・スタンドが20リットル以上給油の方に1リットル無料サービス券(次回来店時に使用可能)を提供する場合は、同一商品の付加に当たるか。」

という質問に対して、

「答 この場合、提供する商品は、購入した商品と同一であるけれども、次回来店しないとその商品を手に入れられない。

こうした方法は、通常値引きとみなされるような方法ではなく、「取引通念上妥当な基準」によるものとはいえないので、

1リットル無料サービス券は、景品類となる。」

と回答されています。

しかし、この点については、1996年の改正で、

「複数回の取引を条件として付加して提供する場合を含む」

と明記されたので、立法的、もとい、立運用基準的に、解決され、今では増量値引になります。

次の質問は、

「問5 ジュースのメーカーが同社のオレンジジュース10本お買い上げの方にもう1本プレゼントというキャンペーンを行うことは可能か。」

というのに対して、

「答 オレンジジュースの購入者にそれと全く同じオレンジジュースを提供することは、同一商品の付加に当たり、景品類とはならない。」

と回答されています。

これは、問題ないでしょう。

しいていえば、現在なら、「全く同じオレンジジュース」だけでなく、「実質的に同じオレンジジュース」(?)でもOKなのでしょう。

増量値引の「同一」の意義については、ガイドラインで例示されているもの以外にあまり参考になる文献がなく、その例示自体も100%納得感のあるものではないので、何かの参考になればと思い、古い文献ですがご紹介した次第です。

2022年1月11日 (火)

同一商品の付加(増量値引)に関する定義告示運用基準の変遷

標記の件についてメモしておきます。

■制定(昭和52(1977)年)当時の定義告示運用基準6項の規定

「6 「正常な商習慣に照らして値引と認められる経済上の利益」について

〔⑴⑵省略〕

(3)取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額し、又は受け取った代金を割りもどすことは、原則として、景品類の提供に当たらない。

(4)次のような場合は、「値引と認められる経済上の利益」に当たらない。

ア 金銭の提供であっても、懸賞による場合、減額し又は割りもどした金銭の使途を制限する場合(例えば、旅行費用に充当させる場合)及び景品類の提供と一連の企画に基づいて行う場合(例えば、取引の相手方に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合)

イ ある商品の購入者に対し、それと同一の商品を付加して、同じ対価で提供する場合であっても、それが景品類であると認識されるような広告をして提供するとき(例えば、「みそ500グラム買えばもう100グラムを無料で進呈」と広告して提供するとき。)その他取引通念上景品類であると認識されているとき(例えば、新聞の無代紙)。

ウ ある取引に附随して、他の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票を提供する場合」

■昭和63(1988)年改正後の同項の規定

「6 「正常な商習慣に照らして値引と認められる経済上の利益」について

〔⑴⑵省略〕

(3)次のような場合は、原則として、景品類の提供に当たらない。

ア 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額し、又は受け取った代金を割りもどすこと。 

イ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、ある商品の購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品を付加して提供すること。

(4)次のような場合は、「値引と認められる経済上の利益」に当たらない。

ア 金銭の提供であっても、懸賞による場合、減額し又は割り戻した金銭の使途を制限する場合(例えば、旅行費用に充当させる場合)及び同一の企画において金銭の提供と景品類の提供とを併せて行う場合(例えば、取引の相手方に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合、1位のものには金銭を、2位のものには景品類をそれぞれ提供する場合

イ ある商品の購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品を付加して提供する場合であっても、懸賞によるとき、同一の企画において同一の商品の付加と景品類の提供とを併せて行うとき(例えば、A商品の購入者に対し、A商品又はB商品のいずれかを選択させてこれを付加し、同じ対価で提供するとき。)及び取引通念上景品類であると認識されているとき(例えば、新聞の無代紙)。

ウ ある取引に附随して、他の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票を提供する場合」

■平成8(1996)年改正後の同項の規定(現行と同じ)

「6 「正常な商習慣に照らして値引と認められる経済上の利益」について

〔⑴⑵省略〕

(3)次のような場合は、原則として、景品類の提供に当たらない。

ア 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)(例 「×個以上買う方には、○○円引き」、「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」、「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」、「×回御利用していただいたら、次回○○円割引」)

イ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払った代金について割り戻しをすること(複数回の取引を条件として割り戻す場合を含む。)(例「レシート合計金額の○%割戻し」、「商品シール○枚ためて送付すれば○○円キャッシュバック」)。

ウ 取引通念上妥当と認められる基準に従い、ある商品又は役務の購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品又は役務を付加して提供すること(実質的に同一の商品又は役務を付加して提供する場合及び複数回の取引を条件として付加して提供する場合を含む(例 「CD三枚買ったらもう一枚進呈」、「背広一着買ったらスペアズボン無料」、「コーヒー五回飲んだらコーヒー一杯無料券をサービス」、「クリーニングスタンプ○○個でワイシャツ一枚分をサービス」、「当社便○○マイル搭乗の方に××行航空券進呈」)。)。ただし、「コーヒー○回飲んだらジュース一杯無料券をサービス」、「ハンバーガーを買ったらフライドポテト無料」等の場合は実質的な同一商品又は役務の付加には当たらない。

(4)次のような場合は、「値引と認められる経済上の利益」に当たらない。

ア 対価の減額又は割戻しであっても、懸賞による場合、減額し若しくは割り戻した金銭の使途を制限する場合( 旅行費用に充当させる場合)又は同一の企画において景品類の提供とを併せて行う場合( 取引の相手方に金銭又は招待旅行のいずれかを選択させる場合)

イ ある商品又は役務の購入者に対し、同じ対価で、それと同一の商品又は役務を付加して提供する場合であっても、懸賞による場合又は同一の企画において景品類の提供とを併せて行う場合( A商品の購入者に対し、A商品又はB商品のいずれかを選択させてこれを付加して提供する場合)」

2022年1月 8日 (土)

「同一の取引」に複数企画が競合する場合の「同一の取引」の意味について

懸賞運用基準5項(「5 告示第二項の「懸賞に係る取引の価額」について)の(2)では、

「(2) 同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については、次による。

ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。

イ 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになる。

ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

とされています。

ここで問題は、「同一の取引」とはどういう意味か、です。

「同一の取引」は、文字どおり同一の取引であって、1つの同じ商品を買ったときに2つの懸賞企画の対象になっていて潜在的には2つの懸賞企画の両方から景品がもらえる、という意味だというのが文言の素直な意味でしょうし、私も正しいと思うのですが、消費者庁の見解はそうではありません。

つまり、消費者庁の景品Q&Aの34番では、

「メーカーが、商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施し、

同時期に、小売店が、メーカーが行う懸賞とは別に、商品Aを必ず含んで、1,500円分以上の商品を購入した者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施する場合、

提供できる景品の最高額及び総額はどのように算定すればよいでしょうか。

なお、この2つの企画は、それぞれ独自に実施するものであり、共同企画ではありません。」

という質問に対して、

「A

同一の取引に付随して2つ以上の懸賞による景品類の提供が行われる場合の景品類の価額の考え方は、次のとおりです。

1 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになります。

2 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになります。

3 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によって景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになります。

本件については、メーカーが商品Aの購入者を対象に懸賞を行い、一方、小売店が商品Aを含む商品を1,500円以上購入した者を対象に懸賞を行うものであり、メーカーの懸賞で提供される景品類と小売店の懸賞で提供される景品類は、同一の取引に対して提供される景品類と考えられるところ、共同企画でないならば3に該当します。

この場合において、重複当選を制限していないのであれば、提供できる景品類の最高額は、メーカーの懸賞では、商品Aの価額の20倍(2万円)であり、一方、小売店の懸賞では、応募の条件である1,500円の20倍(3万円)からメーカーが提供する景品類の価額を差し引いた価額です(例...メーカーが、最高15,000円の景品類を提供する場合、小売店が提供できる景品類の最高額は、30,000円-15,000円=15,000円となります。)。

また、提供できる景品類の総額については、メーカーと小売店のそれぞれの懸賞に係る売上予定総額のうち、重複する商品Aの売上予定総額を、どちらかの売上予定総額から除外して算定する必要があります。

なお、小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、

購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められないので、

メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」

と回答されています。

つまり、最後のほうの「なお」以下のところで、

「小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、

購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められない」

と明言されているので、たまたま1つの同じ商品の購入者に複数企画による景品が提供されたとしても、「同一の取引」に附随した景品の提供ではない、ということになります。

この34番は、メーカーと小売店という、異なる事業者がそれぞれ企画を実施する場合についての質問ですが、前述のとおり、懸賞運用基準では、

「(2) 同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については、次による。

ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。

イ 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになる。

ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

というふうに規定されており、「同一の取引」というのは、アイウに共通する要件として定められていますので、34番の考え方は、当然、アの場合(同一の事業者が複数企画を実施する場合)にも適用されることになります(争いはないでしょう)。

ということは、34番の「なお」以下で触れられているような、同一の事業者が、

①「商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーン」

と同時に、

②「商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合」

は、

「購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められない」

ので、同一事業者がが行うこれら2つの懸賞の

「それぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」

ということになります(これも、消費者庁には異存ないでしょう)。

ということは、小売店が①と②の企画を同時実施しても、景品類の価額は合算しなくてよい(重複当選を排除する必要はない)ということです。

でも、複数企画の対象に必ず(参加するための必要条件として)特定の商品Aが含まれていないと合算されないという考え方を押し進めていくと、小売店が

①1000円以上お買い上げの方に抽選で景品プレゼント

という企画と、

②1万円以上お買い上げの方に抽選で景品プレゼント

という2つの企画を同時実施しても、両者に特定の商品は含まれない(含まれたとしても、たまたま)なので、両者の景品は合算しなくてよいことになります。

「同一事業者がやっているのに、そんなことでいいのか?」という疑問が当然湧きますが、消費者庁の34番の考え方からは、こうとしか考えられません。

これがもし、34番のようにメーカーと小売店の企画が競合する場合で、

①’ メーカーが、同メーカーの1000円以上の商品をお買い上げの方に抽選で景品プレゼント

という企画を行い、

②’ 小売店が、その小売店で1万円以上お買い上げの方に抽選で景品プレゼント

という企画を行うなら、34番が、

「なお、小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、

購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められないので、

メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」

といっていることから論理必然に、①’と②’の競合の場合も、

「なお、小売店が、商品Aなど何らの特定商品の購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、

購入商品の中にたまたま商品Aなど何らかの特定商品が含まれているとうことがあり得ず同一の取引とは認められないので、

メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」

というしかないでしょう。

ということは、小売店が2つの

①1000円以上お買い上げの方に抽選で景品プレゼント

という企画と、

②1万円以上お買い上げの方に抽選で景品プレゼント

という2つの企画を同時実施した場合も同じに考えるほかない(合算しなくていい)と言わざるを得ないと思います。

1つ注意すべき点としては、①②の企画が1つの企画なのか2つの企画なのか、ということです。

でも、同一事業者が行う2つの企画だからといって、当然に1つの企画になるわけではないでしょう。

まず、企画を練る段階で複数企画が別々に企画されるということは、当然あり得ます。

その場合、企画の開始時期がずれるということも、当然あるでしょう。

企画の名前も、当然、違うものであることが多いでしょう。

というわけで、特定商品を必須の条件としないならば、複数企画を同時に多数行っても合算する必要がないし、重複当選を排除する必要もない、ということになります。

以上は懸賞を前提に説明してきましたが、総付の場合も、総付運用基準1(5)で、

「(5) 同一の取引に附随して二以上の景品類提供が行われる場合については、次による。

ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。

イ 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、共同した事業者が、それぞれ、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。

ウ 他の事業者と共同しないで景品類を追加した場合は、追加した事業者が、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

というように、懸賞の場合とまったく同じ定め方をしているので、同一事業者が複数の総付企画をする場合でも、それぞれの企画に必ず購入しなければならない特定商品がない限り、それらの総付での景品は合算する必要がないことになります。

私は、Q&A34番の消費者庁の考え方が間違っていると考えていますが、消費者庁がそれでいいといっているので、とやかく言う必要もありませんから、挑戦してみる価値はあるのではないでしょうか。

たとえば、小売店が

a 1000円以上購入者に総付で景品プレゼント

b 2000円以上購入者に総付で景品プレゼント

c 3000円以上購入者に総付で景品プレゼント

・・・

j 1万円以上購入者に総付で景品プレゼント

という10個の別々の総付企画を同時期に行い、それぞれについて取引価額の2割までの景品をつけて、たまたま購入商品の一部に購入額の2倍(=0.2×10)の景品をつけることになっても問題ない、ということになります。

さらにいえば、金額をこまめに変える必要すらなく、

a 1000円以上購入者に総付で景品プレゼント

b 1000円以上購入者に総付で景品プレゼント

c 1000円以上購入者に総付で景品プレゼント

・・・

j 1000円以上購入者に総付で景品プレゼント

という10個の企画でも問題ない、ということになりそうです。

もちろん、10個の企画を一括企画して10個の名前をつけたりすると実質的には1つの企画とみなされる可能性があるので注意が必要ですが、企画段階で別々に企画しているなら、そういう心配もないのでしょう。

本当に言いたいのは、「こういうことになるからやっぱり34番の回答はおかしい」ということなのですが、実務的には(=消費者庁の見解を前提にすると)、こういうアドバイスにならざるを得ないと思います。

2022年1月 6日 (木)

懸賞の総額について(消費者庁景品Q&A59番)

懸賞で提供できる景品類の総額については以前も書いたことがあるのですが、消費者庁の景品に関するQ&Aの59番では、

「当店はスーパーですが、商品を合計3,000円以上購入してくれた顧客を対象に、抽選で景品を提供したいと考えています。

この場合の懸賞に係る取引の売上予定総額は、

1当店で商品を合計3,000円以上購入する顧客から見込まれる抽選実施期間中の売上予定額、

2当店における抽選実施期間中の売上予定額

のどちらで算定すればよいでしょうか。」

という質問に対して、

「A

懸賞に係る取引の売上予定総額とは、懸賞販売実施期間中における対象商品の売上予定総額を指します。

本件では、抽選対象を商品を合計3,000円以上購入した顧客に限定しているものの、

特定の商品を購入した顧客に限定しているわけではないため

懸賞に係る取引については、スーパーで販売されるすべての商品の取引が対象となり得ると考えられますので、

本件における懸賞に係る取引の売上予定総額は、

2当店における抽選実施期間中の売上予定額とすることができます。

なお、抽選対象を単価3,000円以上の商品を購入した顧客とした場合には、

特定の商品を購入した顧客に限定することとなり、

懸賞販売実施期間中における対象商品は単価3,000円以上の商品と考えられますので、

この場合の懸賞に係る取引の売上予定総額は、単価3,000円以上の商品の売上予定額となります。」

と回答されています。

しかし、わたしはこの回答はおかしいと思います。

懸賞告示3項では、

「3 懸賞により提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の百分の二を超えてはならない。」

とされており、基準になるのは、「懸賞に係る取引」です。

「懸賞に係る取引」というのは、ふつうに読めば、その取引をすれば懸賞に応募できる(取引と懸賞応募の可否が必要十分条件の関係にある)、という意味でしょう。

これを、59番回答のように、

「懸賞販売実施期間中における対象商品の売上予定総額」

と読むと言うことは、「懸賞に係る取引」(=懸賞に応募できる取引)を、それだけでは懸賞に応募できる十分条件になるかどうかにかかわらず潜在的に応募資格の足しになるにすぎない「対象商品」という概念で勝手に置き換えたものといわざるをえません。

実質的に考えても、1回3000円以上の購入で初めて応募できる懸賞に、100円の取引は関係がありません。

(なお、1回100円の取引でも30回行えば応募できるような企画(たとえばレシートを30枚提示して参加できるような)を考え出すと話がややこしくなりますが、設問のようなスーパーでの懸賞がそんなめんどうなことをするはずはないので(コンビニで700円以上買うとその場でスピードくじが引ける企画がよくありますが、そんなイメージでしょう)、1回のお買い物で3000円以上買った場合に応募できる企画と考えておきましょう。)

スーパーにしてみても、3000円以上購入者に対して景品を提供するということは、3000円以上の取引を誘引する目的なわけですから、ここでの懸賞告示3項の「当該懸賞に係る取引」は、(1回あたり)3000円以上の取引である、と考えるべきでしょう。

また、それでスーパーにとっても何の問題もありません。

というのは、こういう企画をやる以上、スーパーは、当然、1回3000円以上の取引がどれくらい増えて、ひいては売上全体がどれくらい増えたかを(細かい数字まではさておき少なくとも大雑把には)把握しているはずだからです。

そういうことも把握しないでキャンペーンをやると考えるなんて、ビジネスの実態をわかっていないと思います。

また、59番の回答の理屈自体もよくわかりません。

59番の回答では、

特定の商品を購入した顧客に限定しているわけではないため、

懸賞に係る取引については、スーパーで販売されるすべての商品の取引が対象となり得ると考えられますので、」

とされていますが、確かに特定商品の購入を条件にしていないのですべての商品の取引が潜在的には懸賞の対象に「なり得る」というのは理解できます。

でも、潜在的に「なり得る」というだけで、どうして1回100円の取引が、応募に1回3000円以上の購入者に対する「懸賞に係る取引」になるのか不明です。

「係る」というのはゆるい関係を表しますが、いくらなんでもこれは広げすぎでしょう。

しかも、59番回答ではさらに続けて、

「なお、抽選対象を単価3,000円以上の商品を購入した顧客とした場合には、

特定の商品を購入した顧客に限定することとなり、

懸賞販売実施期間中における対象商品は単価3,000円以上の商品と考えられますので、

この場合の懸賞に係る取引の売上予定総額は、単価3,000円以上の商品の売上予定額となります。」

としていますが、単価3000円以上の商品なんてスーパーにはいくらでもあるので、それでどうして「特定の」商品といえるのか、そもそも議論の出発点からして疑問が生じます。

それに、そもそも、告示の基準は「当該懸賞に係る取引」なので、そこに「特定」か「不特定」かということは、日本語の意味として読み込む余地がありません。

その懸賞が特定の商品を対象にしていれば、当該特定の商品の取引が「当該懸賞に係る取引」であり、不特定の商品を対象にしていれば、当該不特定の商品が「当該懸賞に係る取引」になる、ただそれだけでしょう。

別の切り口でいえば、

「なお、抽選対象を単価3,000円以上の商品を購入した顧客とした場合には、

特定の商品を購入した顧客に限定することとなり、

懸賞販売実施期間中における対象商品は単価3,000円以上の商品と考えられますので、

この場合の懸賞に係る取引の売上予定総額は、単価3,000円以上の商品の売上予定額となります。」

といえるのであれば、同じように、

「なお、抽選対象を1回3,000円以上の商品を購入した顧客とした場合には、

1回3,000円以上の商品を購入した顧客に限定することとなり、

懸賞販売実施期間中における対象商品の取引1回3,000円以上の取引と考えられますので、

この場合の懸賞に係る取引の売上予定総額は、1回3,000円以上の取引の売上予定額となります。」

といえない理由はどこにもないと思います。

やっぱり、告示が「当該懸賞に係る取引」と、あくまで、懸賞に「係る」かどうかを「取引」という概念で画定しているのに対して、59番の回答は、「対象商品」という概念をいきなり持ちだして、懸賞に「係る」かどうかを「商品」を基準にすりかえていることが、根本的な誤解の原因なのでしょう。

「取引」(法律行為)を基準にするのと、「商品」(物品)を基準にするのとでは、似ていますが、意味が違います。

こういう、レベルの違う概念を同列に扱うことで生じる誤解というのは法律の解釈でよく出てきますので、このあたりは十分に注意する必要があります。

ちなみに、中央法規から出ている加除式の『景品・表示相談事例集』p659では、

「当店では、毎月l回感謝デーとして、当店のカード会員のみに対して会員番号を当選番号とし、当選者に1000円、3000円、5000円の当店のみで使用可能な商品券を提供することを企画じています。この場合の景品類の総額はいくらにすればよいのでしょうか。」

という相談内容について、

「懸賞制限告示では、提供可能な景品類の総額は「取引予定総額の100分の2」までと定められています。

ご相談の場合の取引予定総額は、懸賞企画中の売上予定総額のことであり、前年の同時期あるいはここ数ヶ月間の販売実績や同種の懸賞企画を行った際の販売実績などを参考にして合理的に算定し、根拠のある金額としてください。

また、対象者があくまでもカード会員に限られていることから、カード会員に対する販売実績のみを売上予定総額として景品類の総額(商品券の総額)を算出してください。」

と回答されています。

カード会員のみに対して景品を提供するのだから、カード会員への売上を基準にしなさいという、至極全うな回答です。

この回答に従えば、1回3000円以上の買い物客に限定されている場合には、当然、

「また、対象者があくまでも1回3,000円以上の購入者に限られていることから、1回3,000円以上の購入者に対する販売実績のみを売上予定総額として景品類の総額(商品券の総額)を算出してください。」

となるのではないかと思われます。

もし、消費者庁がこの相談内容に答えたら、

「本件では、抽選対象をカード会員に限定しているものの、

特定の商品を購入した顧客に限定しているわけではないため

懸賞に係る取引については、貴店で販売されるすべての商品の取引が対象となり得ると考えられますので、

本件における懸賞に係る取引の売上予定総額は、

2当店における抽選実施期間中の売上予定額とすることができます。」

という回答になりそうで、やっぱりそれは変だと思います。

ともあれ、消費者庁がそれでいいと(企業に有利に)いっているなら、とやかく言わず、それに乗っかればいいのも事実です。

なので、59番の回答の結論だけを要約すると、

合計一定額以上の購入を基準にする懸賞では、全商品の予想売上げが基準

単価一定額以上の購入を基準にする懸賞では、当該単価以上の商品の予想売上が基準

ということになりそうです。

ちなみに、この消費者庁の考え方に従えば、たとえば、「A商品(1000円)を必ず含んで1500円以上の購入者に景品プレゼント」というような企画では、特定の商品(A商品)が条件ではあるものの、「すべての商品の取引が対象となり得る」ので、全ての商品の予想売上が基準になるのでしょう。

ただ、そうすると、全ての商品の予想売上を基準にする根拠である、

「特定の商品を購入した顧客に限定しているわけではないため、」

という理由が障害になります。

なぜなら、「A商品(1000円)を必ず含んで1500円以上の購入者に景品プレゼント」という企画では、まさに、特定の「A商品」を購入した顧客に限定しており(さらに言えば、A商品購入に加えてさらに500円購入することを条件にしており)、「特定の商品を購入した顧客に限定しているわけではない」とはいえないからです。

こういうところからも、59番の回答が論理的には破綻していることが見て取れます。

2022年1月 4日 (火)

懸賞運用基準5(2)(同一取引に複数懸賞が競合する場合)の読み方

懸賞運用基準5(2)では、

「5 告示第二項の「懸賞に係る取引の価額」について

〔(1) 省略〕

(2) 同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については、次による。

ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。

イ 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになる。

ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

と規定されています。

ぼーっと読むとそれらしく読めてしまうので(実際そのように読まれているので)、あまり問題になりそうにない規定に見えますが、よく考えてみるといろいろと問題があります。

まず、5(2)は、5の標題のとおり、「告示第二項の「懸賞に係る取引の価額」について」の規定なので、懸賞告示2項も見ておくと、そちらでは、

「2 懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の二十倍の金額(当該金額が十万円を超える場合にあっては、十万円)を超えてはならない。」

と規定されています。

なので、運用基準5(2)の規定は、この、告示2項の「懸賞に係る取引の価額」の解釈です。

これを踏まえて、運用基準5(2)の意味を考えると、まず、アは、あたりまえなのでとくに問題はないでしょう。

と、スルーしたいところですが、ここにも、(イ、ウにも共通する)問題がないわけではありません。

というのは、

「ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

とされていますが、その前提として、5(2)の柱書では、

「(2) 同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については、次による。」

とされているので、同一の取引に附随して(当たり外れを問わず)複数の懸賞企画を行う場合すべてについて述べているのではなく、実際に景品類の提供が行われる場合(つまり、当たった場合)について述べています。

なので、5(2)アも、2つの企画で景品の最高額(1等)の合計が10万円を超えたら当然にアウトなのではなく、現に合計10万円を超えたらいけないだけなので、2つの企画に両方当選すること(重複当選)を防ぐのであれば、「合算した額の景品類を提供したことに」なりません。

(話を単純にするために、取引価額が小さい場合は考慮せず、最高景品額は10万円の前提で説明します。)

ともあれ、運用基準5(2)アは、理解しやすく、懸賞告示2項の解釈として妥当でしょう。

5(2)イも、複数事業者で共同してやっているので、両者一体に見て、それぞれが合計額を提供しているとみる、つまり、両者とも違反者になる、という意味です。

5(2)イの

それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになる。」

というのは、たとえば、A社が7万、B社が4万の景品を懸賞で提供したら(つまり、実際に当たったら)、A社もB社も11万提供したものとみて、両者とも違反になる、ということはもちろんのこと、A社が100万、B社が100円でも、A社もB社も100万100円提供したことになり、両者とも違反になる、ということです。

(日本語としては、

「共同した事業者が、それぞれこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになる。」

としたほうがきれいな気がしますが、それは措きます。)

両者で共同しているのだから当然の結果であり、告示2項の解釈としても妥当に思われます。

ただ、よく考えてみると、「二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合」で「別々の企画によるとき」というのが、何を指すのかは、やや疑義が生じ得ます。

あまり考えずに素直に読めば、

「二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合」

というのは、

「二以上の企画による景品類提供が行われる場合」

と読めそうに思います。

しかし、複数の事業者が共同する場合について述べているイとウについては、企画を共同して行っているからには、ふつうは1つの企画なのであって、「二以上の企画」と読むのは、イウと噛み合っていないように思えます。

そこで、

二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合」

というのは、

「懸賞による二以上の景品類提供が行われる場合」

とも読めるのではないか(少なくともそういう場合も含まれると読むべきではないか)という気がします。

というのは、本当の意味で共同企画としてやっているなら、企画は1つともいえるわけで、共同していながら常に2つの企画があるわではないでしょうし、共同しているけれど、だけど2つの独立した企画がある場合に限ってイが適用される、というのも、おかしな感じがするのです。

とはいえ、ほんとうに2社で共同して1つの企画をしているときであれば、その1つの企画で20万円の景品を1個あげたら2社とも違反になるのは当然でしょう。

でも、その場合は、イには該当しません。

というのは、イは、「別々の企画」でなければならないからです。

なので、共同して1つの企画を行う場合はイは適用されず、いわば告示2項の当然の解釈として、両者とも違反になる、ということになるのだと思います。

どうしてこういうことをつらつらと述べるのかというと、「共同して行う」企画でありながら、「別々の企画」である、というのが、厳密に考えてみると、意味がよくわからないからです。

まあこのあたりは物の本にいろいろと説明があって、緑本6版p226では、

「例えば、メーカーが懸賞販売を実施しているときに、

そのメーカーと卸売業者が談してさらに別個の懸賞販売の企画を実施したような場合は、

メーカーと卸売業者のそれぞれが両方の景品類の合算額の景品類を提供したことになるので、

メーカーと卸売業者のそれぞれにとって、この合算額が最高額の制限内でなければならない。」

という例があげられています。

つまり、「相談して」いれば、「共同して」にあたる、ということです。

でも、

「相談」まではしてなくても、たんにメーカーの第1企画を卸が知っているだけで第2企画をおこなった場合には「共同して」にあたるのか(あたらなさそう)とか、

卸が第2企画を一緒にやろうとメーカーに持ちかけたけど乗ってこなかったので卸だけで行った場合は「相談」はしているとも言えるけれど「共同」にはあたらないのではないか(これも、あたらなさそう)とか、

卸がメーカーに「相談」したけど、メーカーは名前を貸す(協賛する)だけで、企画の内容や景品の負担は一切しない場合は「共同」にあたるのか(これは、あたりそう)とか、

微妙な場合がいくらでもありそうな気がします。

ちなみに、複数事業者による複数企画の競合についての消費者庁景品Q&Aの34番では、

「メーカーが、商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施し、同時期に、小売店が、メーカーが行う懸賞とは別に、商品Aを必ず含んで、1,500円分以上の商品を購入した者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施する場合、提供できる景品の最高額及び総額はどのように算定すればよいでしょうか。なお、この2つの企画は、それぞれ独自に実施するものであり、共同企画ではありません。」

という設問になっていて、「独自に実施する」なら「共同企画」ではない、という整理になっているようです。

なので、お互いに相手の企画を知っているけれど独自に実施しているという場合には、「共同企画」ではない、ということでいいみたいです。

というより、微妙な問題が出てきたら、両者で、これが運用基準5(2)でいうところの「共同企画」にあたるのかあたらないのかをはっきりさせておくべきでしょう。

そうすれば、消費者庁があとから、「それはそうじゃない」と評価してくることは、よほど実態とかけ離れた合意でない限り、まず考えられないのではないか、という気がします。

またどうしてこういうことをこまごまと考えるのかというと、5(2)ウ(共同しない場合)がどういう場合を指すのか、はっきりしない(とうより、文字どおり「共同しない」場合すべてと考えると何かと不都合がある)ように思われるからです。

というのは、5(2)ウでは、「同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については」

「ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

とされているのですが、これを文字どおり読むと、単独企画の場合であってもあとからやるほうは、第1企画の存在を知っていても知らなくても、常に第1企画の景品類を自己(あとからやるほう)が提供したものとみなされることになりそうだからでです。

でも、第1企画の存在を知らずに第2企画をやった場合にまで第2企画の実施者が全責任を負うというのは、どう考えてもおかしな気がします。

たとえば、何百万品種もあつかうアマゾンのようなECモールが、自己が販売する(マーケットプレイスではなく)商品のすべてについて、メーカーが何か懸賞企画をやっていないかチェックしないといけないことになりますが、それは不可能でしょう。

(※後述のように、消費者庁は、こういう場合はそもそも「同一の取引」ではない、と考えるようですが。)

この問題については、外れの場合がない総付で考えてみると一層明らかです。

総付運用基準1(5)ウは、懸賞運用基準5(2)ウとまったく同じ内容で、

「(5) 同一の取引に附随して二以上の景品類提供が行われる場合については、次による。

〔ア、イ省略〕

ウ 他の事業者と共同しないで景品類を追加した場合は、追加した事業者が、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

と規定されているのですが、そうすると、最初の事業者が総付で2割までの景品を提供していると(そして、何百万点もの商品の中にそのような総付企画が存在する可能性は常にあるわけですが)、あとの事業者はその最初の企画の存在を知らなくても、総付を一切できないことになります。

理屈は懸賞でも同じです。

でも、この解釈はやっぱり不都合だと思います。

確かに、客観的には同一取引で2つの景品がもらえるなら誘引力も2つ分にはなるわけですが、事業者に「自己の取扱い製品について他者が景品を提供していないか全部調べる」というような不可能を強いるわけにはいきません。

そこで、懸賞運用基準5(2)ウの、

「ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

というのの、「追加した」というのを、意図的に追加した、と限定して読むべきなんだろうと思います。

なお、ウでは、

「その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合」

とされており、文字どおり杓子定規に読めば、A社の第1企画と、あとから行った(たとえば第1企画の開始後1ヶ月後に開始した)B社の第2企画がある場合、もし第1企画の抽選の前に第2企画の抽選が行われて第2企画の「当選者」が先に確定してしまった場合には、当該「当選者」に第1企画の抽選で当選させると、第1企画のA社が

「〔第2企画の〕当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した」

ことになり、A社が違反者になってしまいそうですが、たぶんそういう手の込んだ読み方はせず、単純に、あとから企画をはじめたほうを、「追加した」者と読むのでしょう。

ちなみに緑本p226では、懸賞運用基準5(2)ウの例として、

「例えば、メーカーが商品の購入者に懸賞による景品類(最高額の制限内)を提供しているときに、

小売業者が独自にその懸賞の当選者に別途の懸賞による景品類を追加で提供する場合は、

小売業者にとって景品類の合算額が最高額の制限を超えないようにしなければならない。」

という例があげられており、企画は後だけれど抽選は先、みたいなややこしいことは想定していないようです。

まあそれでいいのでしょう。

要するに、どちらがあとから「追加」したのかは、景品類提供の前後や抽選(当選者確定)の前後ではなく、企画を始める時期の前後で決める、ということです。

そして、

イは、共同(相談含む)企画の場合、

ウは、単独(相談含まない)企画で、かつ、あとから追加する事業者が先の企画の存在を単独企画開始時点で知っている場合、

に適用されるべきと考えます。

以上が懸賞運用基準の素直な読み方だと思いますが、消費者庁の考え方は少々違うようです。

というのは、以前も書きましたが、消費者庁の景品Q&Aの34番では、

「なお、小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められないので、メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」

とされているので、前述のような、多数の商品を扱う小売店(アマゾン)が、特定のメーカーの商品の購入を条件とせず懸賞を行う場合は、そもそも「同一の取引」ではないので、(仮に前の企画の存在を知っていても)あとから懸賞をする小売店は前の企画を合算する必要がない、ということになっているからです。

その時も書きましたが、理論的にはこれは間違いだと思うのですが、まさに、知りようがない他社のキャンペーンまで調べないといけないという不可能を強いられるという問題は回避されており(特定商品を必ず含むというキャンペーンをするなら、当該特定商品について既存のキャンペーンの有無は調べられそう)、実務で問題になりそうなかなりの部分については、2回間違えることで正しい方向に戻って、結果的にはつじつまが合っている、ということになりそうです。

2022年1月 3日 (月)

懸賞の「点数券」に関する緑本の解説の疑問

懸賞告示運用基準1項では、

「1 「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和五十二年公正取引委員会告示第三号。以下「告示」という。)第一項第一号の「くじその他偶然性を利用して定める方法」についてこれを例示すると、次のとおりである。

(1) 抽せん券を用いる方法

(2) レシート、商品の容器包装等を抽せん券として用いる方法

(3) 商品のうち、一部のものにのみ景品類を添付し、購入の際には相手方がいずれに添付されているかを判別できないようにしておく方法

(4) 全ての商品に景品類を添付するが、その価額に差等があり、購入の際には相手方がその価額を判別できないようにしておく方法

(5) いわゆる宝探し、じゃんけん等による方法」

と定められています。

これに対する西川編『景品表示法〔第6版〕』p222では、

「また、④〔上記引用の(4)〕においては、景品類に価額差がある場合が問題となっているが、添付されているものに価額差とは必ずしもいえない価値の差が存在する場合(注)も、同様に懸賞に該当する。」

としたうえで、p223で、

「(注)例えば、すべての商品に1点、3点、5点といった点数券を添付し、合計得点が10点に達した場合に特定の景品類を提供する場合、景品類は一種類しかない以上、価額差があるとはいえないが、それぞれの点数券には価値の差がある。」

と説明されています。

でも、これは運用基準の解説としてはおかしいのではないでしょうか。

まず、懸賞告示運用基準1項(4)は、

「(4) 全ての商品に景品類を添付するが、その〔=景品類の〕価額に差等があり、購入の際には相手方がその価額を判別できないようにしておく方法」

と言っているのであり、商品に景品類自体が添付される場合を述べており、「(注)」のような、それ自体を景品類とはいえないような「点数券」(∵点数券という紙片自体に経済的価値はない)を添付した場合ではありません。

また、

その〔=景品類の〕価額に差等があり」

といっているのを、点数券の「価値の差」にすりかえるのも無理があります。

では、どう説明すればいいのでしょうか。

(注)のような点数券の場合は、厳密に言えば、1号から5号のいずれにもあたらない、というのが正しい説明だと思います。

所詮、1号から5号は例示なので、それでいいわけです。

実態としては、このような点数券を添付する(もちろん、買う前には何点かはわからない)場合というのは、

①抽選券を添付して(1号または2号)

②抽選の結果、1点、3点、5点の点数券を与え、

③10点集まったら景品類と交換する

という点順の①と②を1つにまとめて最初から点数券を添付しているだけであり、懸賞(偶然制を利用した提供)であることはあきらかです。

なので、あえて1号から5号のどれに近いのかといえば、1号か2号なんだと思います。

それに対して4号は、

「全ての商品に景品類を添付する」

といっているので、これにそれ自体が景品類ではない点数券を添付する場合を含めるのは、文言上無理があります。

懸賞規制との関係で重要なのは、最低何個(いくら分)買えば景品が当たりうるかだけなので(当選確率は、景品類の総額の上限に間接的にかかわるだけです)、点数券が、「1点、3点、5点」なのか、「5点」だけなのか、「1点、2点、3点、4点、5点」なのかは、景品規制との関係では何の意味もありません。

せいぜい、消費者にゲームをしているようなわくわく感(?)を与えるだけです。

(「2個買ったら抽選1回できます」というより、点数を貯めるほうが、ゲームっぽい。)

なので、「1点、3点、5点」という例は、本質的には、「5点」の点数券だけの場合と、何も異なりません。

たとえば、「1点、3点、5点」の例では、たしかに1点が10回当たれば景品をもらえますが、これは、「5点」だけの場合に、最初の8回ははずれて、最後の2回で5点ずつ当たるのと、何も違いはありません。

そして、「5点」だけの場合だと、(注)のような、

「それぞれの点数券には価値の差がある。」

という説明が、とたんにしにくくなります。

あるいは、「1点、3点、5点」の場合には、0点がない(最低でも1点は獲得できて、10個買えば必ず景品がもらえる)という意味かもしれず、そうであるなら、「5点」は、「0点、5点」と置き換えて考えるべきですが、それでも、「景品類」を添付しているわけではないという問題の本質は、なにも変わりません。

なにより、この(注)だと、あたかも点数券自体が景品類とみなされるかのような誤解を招きかねず、その教育的なデメリットはけっこう大きいと思われます。

2022年1月 2日 (日)

原産国告示2項3号の適用範囲について

昨日、原産国告示2項3号のために、外国産品の商品には常に原産国を表示しないといけないのか、という問題について書きました(結論としては、表示しなくてもいい)。

この点に関する記述が、

公正取引委員会景品表示指導課長利部脩二編『商品の原産国表示の実務』(1974年・商事法務研究会)

にありましたので、検討しておきます。

同書p42以下では、以下のとおり解説されています。

「告示では、単に「表示」としてとくにその範囲を限定していないから、この表示は、景品表示法2条2項により指定された「表示」を意味する。〔中略〕

ただし、告示1項、2項の各号に掲げられている表示のうち、国旗、紋章、文字等は、視覚に訴えなければ表示できないものであるから、この表示に限っていえばラジオ放送は対象となりえない。

要するに、原産国に関しなんらかの印象を与えることのできる表示であれば、如何なる媒体によるものであるかを問わないということである。

形式的に告示1項、2項の各号に該当しても、原産国についてなんらの印象も与えないものは、当然に告示規制の対象から除かれる。

たとえば、インド洋で捕れたマグロに魚屋の店頭で「マグロ100g、○○円」と表示したり、輸入肉について「シチュー用牛肉○○円」などと日本語で表示すると、形式的には、告示2項3号の表示に該当するが、この表示は、小売店で販売されている商品について国産品であるか外国産品であるかと全く無関係に、かつ、必要的な表示としてごく普通に行われているものであるから、これを見ても、一般消費者は、その商品の原産国についてなんらの想定もしないし、意識もしないことは明らかである。

したがって、このような表示は、当然にこの告示の規制とは無関係である。

百貨店、スーパーなどが店内で表示するプライスカード、あるいは、ネオン・サイン、看板等、英字新聞に掲載される国産品についての英文の広告なども同様に考えられる。」

告示の文言を無視した前近代的な解釈ですが、結論は妥当でしょう。

ですが、こういう文言無視の解釈を平気で行政がするというのは、法治主義の観点からは極めて大きな問題だと思います。

(自分を全知全能の神と勘違いした行政だからできる解釈だともいえますが。)

こういう、文言からはずれたところで線を引く裁量が、行政の力の源だからです。

それに、上記解説は、論理的にもかなりこじつけです。

まず解説は、「表示」の意味の説明からはじまり、文字等はラジオでは対象になり得ない、といいます(ラジオは音だけなので、あたりまえです)。

そのことから突然、解説は、

「要するに、原産国に関しなんらかの印象を与えることのできる表示であれば、如何なる媒体によるものであるかを問わないということである。」

というように、「なんらかの印象」を与えることが「表示」の要件であると言いたげな一文を挟みます。

ただこれも、「要するに」と言っていますが、「要するに」以下が、その前の部分の要約にはぜんぜんなっていません。

その前の部分で言っているのは、ラジオでは文字は表示できないという、あたりまえのことだけです。

さらに続けて解説は、

「原産国に関しなんらかの印象を与えることのできる表示であれば、如何なる媒体によるものであるかを問わない」

という当然のことから、なんらの印象を与えないなら「表示」ではない、という次の論理につなげますが、これは論理のすりかえです。

というのは、前述の、

「要するに、原産国に関しなんらかの印象を与えることのできる表示であれば、如何なる媒体によるものであるかを問わないということである。」

というのは、ラジオで文字は表示できないということの要約(「要するに」)という位置付けなので、その次の、

「形式的に告示1項、2項の各号に該当しても、原産国についてなんらの印象も与えないものは、当然に告示規制の対象から除かれる。」

には、まったくつながりません。

共通しているのは「なんら(か)の印象」という文字だけで、論理的には、まったく関係のないことをいっています。

ラジオで文字は表示できないということから、「マグロ100g、○○円」という表示が告示の対象外だなどという結論が、どうして導かれるのでしょうか?

しかも、この解説は、原産国告示の論理とも食い違っています。

つまり、原産国告示2項は、

「2 外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの

一 その商品の原産国以外の国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示

二 その商品の原産国以外の国の事業者又はデザイナーの氏名、名称又は商標の表示

三 文字による表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示」

を不当表示に指定しています。

つまり、

その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別すること

ができないと不当表示になる、というのが原産国告示の考え方です。

なので、問題の表示(「マグロ100g、○○円」)が、

「原産国についてなんらの印象も与えない」(例、国産という印象を与えない)

のであればよい、というのではなく、

その商品がその原産国(例、インド)で生産されたものであることを一般消費者が判別すること

ができないと不当表示になる、というのが告示の考え方です。

つまり、告示では、真偽不明ではよしとせず、明確にインド産とわからないといけない、ということです。

という具合に、この解説の論理はまったくでたらめですが、結論は常識的です。

どうしてこういうことになってしまうのかというと、告示がでたらめだからです。

でたらめな告示を、でたらめな解説で、常識的な結論に戻しているわけです。

しかし、これは行政の怠慢だと思います。

告示は公正取引委員会(現在は消費者庁)が自分で変えられるのですから、問題があるなら改正すべきです。

法律は国会が決めるので、行政にはどうしようもない面はありますが、告示は行政自身が決めるので、問題があるのに変えないのは怠慢以外の何物でもありません。

こんな古い解説書は一般の人は知らないわけですから、告示2項3号を文字どおりに解釈して、商品説明を日本語でするときには原産国を明記しないといけないのだと信じている国民(やそのようなアドバイスをする弁護士)がいても、何ら不思議ではありません。

それで律儀に原産国表示をしていたら、そのなかに1つ2つミスがあって、不当表示だとかいわれて措置命令が出されたのでは、たまったものではありません。

巷間には行政の解釈をありがたがる解説があふれていますが、少しでも、リーガルマインドをもった解説が増えることを望みます。

2022年1月 1日 (土)

外国産品には常に原産国を表示しないといけないか?

指定告示の中で原産国告示はかなり活発に運用されています。

最近で思いつくだけでも、ビックカメラの措置命令(2021年9月3日)や高島屋に対する措置命令(2019年6月13日)などが思い当たります。

ECサイトなどで見かけますが、すべての商品に原産国を記載している(原産国の項目が商品紹介フォームにデフォルトで入っている)ものがあります。

ビックカメラのも、そんな感じです。

原産国を確認・特定するのはけっこう大変なので、商品にもよるでしょうが、いちいち原産国なんて書かなければいいのに、と思います。

でも原産国告示の場合には、そのあたりにやや微妙な問題があります。

というのは、原産国告示2項(外国産品の原産国表示)で、

「2 外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの

一 その商品の原産国以外の国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示

二 その商品の原産国以外の国の事業者又はデザイナーの氏名、名称又は商標の表示

三 文字による表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示

が、「商品の原産国に関する不当な表示」(同告示柱書)と指定されているからです。

もちろん問題は、3号です。

つまり、外国産品の文字の表示の全部または主要部分を和文で表示していると、その商品は国産品と誤解されるので、原産国を書かないといけない、とされているのです。

これは、国産品に関する告示1項3号の、

「三 文字による表示の全部又は主要部分が外国の文字で示されている表示」

をひっくり返したものですが、国産品の表示を外国の文字(たとえば英語やフランス語)で表記していたら英国産やフランス産と誤認されるおそれがあるというのはわかります。

しかし、ここは日本ですし、消費者の圧倒的多数は日本語ネイティブの日本人ですから、外国産品であっても表示を日本語でするのはあたりまえのことです。

なので、外国産品の表示を日本語でしたからといって、国産と誤解されるわけがありません。

こう考えると、告示2項3号は、もともと合理性の薄い規定だと言わざるを得ません。

ですが、告示にこうはっきり書かれてしまっている以上、露骨に無視するのも気が引けます。

すべての商品に原産国を記載しているECサイトなんかは、ひょっとしたら告示2項3号を意識した結果なのかもしれません。

でも、商品の数が多かったり、原産国をどう決めたら良いか分からないことは少なくないのに対して、消費者に商品をアピールするために原産国を書く必要があまりない商品もきっと数多くあります。

どうしたらいいでしょうか?

私は、原産国をいちいち管理できる自信がない会社は、告示2項3号の規定は無視してしまったほうが、景表法違反のリスクはむしろ低いと思います。

この点で参考になるのが、消費者庁の家庭用品品質表示法上の原産国表示に関するQ&Aで、そこでは、

「Q 家庭用品に原産国を表示する必要はありますか。家庭用品に原産国を表示する場合には、どのようにすればよいのですか?」

という質問に対して、なんと、

「A

家庭用品品質表示法上は、家庭用品について原産国を表示することは義務付けられておらず、原産国を表示する場合の基準も定められていません。

商品の原産国の表示については、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法[昭和37年法律第134号])上、「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和48年公正取引委員会告示第34号)において一定の基準があります。」

と回答されています。

このQ&Aは、直接的には家庭用品品質表示法に関するQ&Aですが、いちおう景表法にも言及しており、その際、外国産品について日本語で表示をしている場合には原産国を書かないといけないとは、一言も言っていません。

もちろん形式論理的には、

「商品の原産国の表示については、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法[昭和37年法律第134号])上、「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和48年公正取引委員会告示第34号)において一定の基準があります。」

というところに告示2項3号を読み込めるのですが、さすがにそんなえげつないことはいわれないと思います。

もし消費者庁がそんなこと言ったら、それこそこのQ&Aは不当表示でしょう(笑)。

つまり、消費者庁も本音のところでは、告示2項3号を執行しようなんて、これっぽっちも思っていない、ということです。

実際に、告示2項3項が適用されて排除命令や措置命令が出た事案も、私の知る限りありません。

なので、無理に全商品に原産国を書いて間違って不当表示になるくらいなら、むしろ書かない方が、ずっと違反のリスクは低いと思います。

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