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2021年12月11日 (土)

包含関係にある本体商品に対する景品類の提供

以下のような場合、景品類の価額の上限はどのように考えるべきでしょうか。

(なお商品の価格はいずれも1000円未満だと計算がめんどうなので、1000円以上とします。)

商品A(価格Pa)の購入者全員に、景品aを提供し、かつ、

商品Aと、商品B(価格Pb)の両方を購入した人に、景品bを提供する。

数字の具体例を入れると、たとえばこんな感じです。

商品A(2000円)の購入者全員に、景品aを提供し、かつ、

商品A(2000円)と商品B(3000円)の両方を購入した人全員に、景品bを提供する。

この例では、景品aの価額の上限は、2000円×0.2=400円です。

では、景品bは、商品A(2000円)と商品B(3000円)の両方を購入した人に提供するので、景品bの価額の上限を(2000+3000)×0.2=1000円としていいのでしょうか。

もし商品Aと商品Bの両方を購入した人に1000円の景品bをあげると、この人は400円の景品aももらっているので、合計1400円の景品をもらえることになり、取引の価額の合計額5000円の2割の1000円を超えてしまいます。

なので、景品aの上限が400円でなければならないとともに、景品bの上限は1000ー400=600円でなければならないことになります。

・・・というと、これも間違いです。

というのは、景品aとして上限の400円のものを提供すればたしかに商品bは600円までしか提供できなくなりますが、景品aでたとえば300円のものをあげれば、景品bは1000ー300=700円まで提供していいからです。

要は、

①景品aの価額≦400、かつ

②景品aの価額+景品bの価額≦1000

を満たせばよいことになります。

一般化すると、

①景品aの価額≦0.2Pa, かつ

②景品aの価額+景品bの価額≦0.2(Pa+Pb)

となります。

ここで、①で商品Aの購入者に上限の0.2Paの景品aをあげてしまうと、②でさらに商品A(と商品B)の購入者に景品bをあげてしまっていいのか気になる人がいるかもしれませんので、告示と運用基準に照らしてチェックしますと、総付告示1項では、

「1 一般消費者に対して懸賞・・・によらないで提供する景品類の価額は、

景品類の提供に係る取引の価額の十分の二の金額・・・の範囲内であつて、

正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならない。」

とされています。

景品aについては、これは、

「1 一般消費者に対して懸賞・・・によらないで提供する景品aの価額は、

Paの十分の二の金額・・・の範囲内であつて、

正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならない。」

と読んでいいことは問題ないでしょう。

では、景品bについて、

「1 一般消費者に対して懸賞・・・によらないで提供する景品bの価額は、

(Pa+Pb)の十分の二の金額・・・の範囲内であつて、

正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならない。」

と読んでいいのか、ということです。

ここで問題は、同一の取引に対して複数の景品類を提供する場合に関する総付運用基準1(5)アで、

「(5) 同一の取引に附随して二以上の景品類提供が行われる場合については、次による。

ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

とされていることです。

(なお、同じキャンペーンと銘打つか、別のキャンペーンとするかは、名前だけの問題なので、それで提供できる景品類の価額が変わってしまうのはおかしいので、「別々の企画によるときであっても」という要件には実質的には意味がないと考えてよいと思います。)

ここで、「同一の取引」を「商品Aの取引」と読むと、まさに、「商品Aの取引」に対して景品a(商品Aの取引に附随)と景品b(商品Aと商品Bの取引に附随)を提供しているので、景品aで上限額を提供すると、景品bは提供できないことになってしまいます。

1つの読み方は、商品Aの取引と「商品Aと商品B」の取引は、別の取引であり、「同一の取引」ではない、と読む読み方です。

しかし、これだと、たとえば、

商品Aの価格(Pa)=10万円

商品Bの価格(Pb)=1000円

商品Cの価格(Pc)=1000円

のときに、

商品Aの購入者に10万×0.2=2万円

商品Aと商品Bの購入者に(10万+1000)×0.2=20,200円

商品Aと商品Bと商品Cの購入者に(10万+1000+1000)×0.2=20,400円

の景品を提供でき、合計60,600円の景品を提供できてしまい、商品ABCの合計額102,000円の2割の20,400円を大幅に超えてしまいます。

これはいうまでもなく、商品Aの10万円を3回カウントしてしまっているためです。

ですので、「商品Aの取引」と「商品Aと商品Bの取引」は、前述の総付運用基準1(5)の

「(5) 同一の取引に附随して二以上の景品類提供が行われる場合については、次による。」

における「同一の取引」には該当しない、という解釈はとりづらいと思われます。

かといって、景品aが提供されるための商品Aの取引と景品bが提供されるための(条件の1つである)商品Aの取引が「同一の取引」に該当するとすると、景品aで上限額を提供すると、景品bは(商品Bを購入しているにもかかわらず)提供できない、ということになってしまい、これはこれで不都合なように思います。

そこで、設例のような、1つの景品の本体取引が別の景品の本体取引を包含してそれより大きい場合について総付運用基準は何ら規定しておらず(このような場合に総付運用基準1(5)は適用されない)、別途解釈する必要がある、と考えるのが穏当だと思います。

これを一般化するならば、

商品A(価格Pa)の購入者全員に、景品aを提供し、

商品Aと、商品B(価格Pb)の両方を購入した人に、景品bを提供し、

商品Aと、商品Bと、商品C(価格Pc)の3つを購入した人に、景品cを提供し、

・・・

商品Aと、商品Bと、商品Cと、・・・商品Nの全部(N個)を購入した人に、景品Nを提供する

という企画、つまり、

商品A⊂商品A+B⊂商品A+B+C⊂・・・⊂商品A+B+C+・・・+N

において提供できる景品類の価額が満たすべき条件は、

景品aの価額≦0.2Pa, かつ、

景品aの価額+景品bの価額≦0.2(Pa+Pb)、かつ、

景品aの価額+景品bの価額+景品cの価額≦0.2(Pa+Pb+Pc)、かつ、

・・・

景品aの価額+景品bの価額+景品cの価額+・・・+景品nの価額≦0.2(Pa+Pb+Pc+・・・+Pn)、

となる、と解すべきです。

ここで、消費者庁の景品Q&Aの34では、

「メーカーが、商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施し、

同時期に、小売店が、メーカーが行う懸賞とは別に、

商品Aを必ず含んで、1,500円分以上の商品を購入した者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施する場合、

提供できる景品の最高額及び総額はどのように算定すればよいでしょうか。

なお、この2つの企画は、それぞれ独自に実施するものであり、共同企画ではありません。」

という質問に対して、

「A 同一の取引に付随して2つ以上の懸賞による景品類の提供が行われる場合の景品類の価額の考え方は、次のとおりです。

1 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになります。

2 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになります。

3 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によって景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになります。

本件については、メーカーが商品Aの購入者を対象に懸賞を行い、

一方、小売店が商品Aを含む商品を1,500円以上購入した者を対象に懸賞を行うものであり、

メーカーの懸賞で提供される景品類と小売店の懸賞で提供される景品類は、同一の取引に対して提供される景品類と考えられるところ、

共同企画でないならば3に該当します。

この場合において、重複当選を制限していないのであれば、提供できる景品類の最高額は、

メーカーの懸賞では、商品Aの価額の20倍(2万円)であり、

一方、小売店の懸賞では、応募の条件である1,500円の20倍(3万円)からメーカーが提供する景品類の価額を差し引いた価額です

(例...メーカーが、最高15,000円の景品類を提供する場合、

小売店が提供できる景品類の最高額は、30,000円-15,000円=15,000円となります。)。

〔中略〕

なお、小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、

購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められないので、

メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」

と回答されています。

この回答から読み取れることは、消費者庁は、同一の事業者が提供する景品類の場合にも、おそらく、

商品Aの購入者に景品aを提供し、

商品A+Bの購入者に景品bを提供する

という場合は、

景品bは「商品Aの購入を条件」としているので、

「商品A」の取引と「商品A+B」の取引とは(商品Aの部分について)「同一の取引」と認められるので、

「商品A」に対して景品aを提供している場合には、

「商品A+B」の取引に附随して提供する景品bの最高額は景品aの最高額と合算される、

と考えているだろう、ということです。

というわけで、消費者庁も、(総付と懸賞の違いや、同一事業者か別の事業者かという違いはありますが)上述の、

景品aの価額≦0.2Pa, かつ、

景品aの価額+景品bの価額≦0.2(Pa+Pb)、かつ、

景品aの価額+景品bの価額+景品cの価額≦0.2(Pa+Pb+Pc)、かつ、

・・・

景品aの価額+景品bの価額+景品cの価額+・・・+景品nの価額≦0.2(Pa+Pb+Pc+・・・+Pn)、

という考え方に立っているのだろう、と思われます。

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