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2021年12月

2021年12月31日 (金)

センターフィーに関する下請法テキストの記述の変更とサンクゼール勧告

令和元年11月版の下請法テキストでは、センターフィー(親事業者が運営する物流センターの利用料として、親事業者が下請事業者に請求する手数料)については、

「親事業者D社は,食料品の製造を下請事業者に委託しているところ,

取引先に支払っているセンターフィーの一部を負担させるため,

下請事業者に対し,センターフィー協力費として,下請代金の額に一定率を乗じて得た額を提供させた。」(p80)

というのが、不当な経済上の利益の提供要請の違反事例としてあげられているだけでした。

(なおこの設例では、親事業者はセンターの運営者ではないことに注意して下さい。)

ところが、令和2年11月版p57では、

「Q77: 親事業者が,物流センターに商品を納品している下請事業者に対して,当該センターの利用料等の名目でセンターフィーと称して下請代金の額から差し引くことは問題ないか。」

という設問が新たに作られ、その回答として、

「A: 下請事業者からセンターフィーと称して下請代金の額から差し引く行為が下請法上問題となるか否かについては,

下請代金の額を定めた際の取引条件上,下請事業者が本来納品すべき場所がどこまでとされているかが重要となる。

例えば,取引条件上,本来納品すべき場所が各店舗であれば,下請事業者は各店舗への納品に係る物流コストを負担する責任を負うことになる。

この場合において,下請事業者が物流センターを利用するか否かを自由に選択でき,

さらにセンターフィーの額についてその自由意思に基づく交渉の上決定されるなどの事情の下,

物流センターへ一括納品して各店舗への納品は親事業者に任せることで,物流コストの軽減につながるなどの利益を得られるのであれば,

下請事業者が物流センターのサービスを受ける別の取引があり,

その場合のセンターフィーはそのサービスの対価であると評価することが可能である。

こうした評価が可能であれば,センターフィーを下請代金から差し引いたとしても,下請代金の減額には当たらない。

一方,取引条件上,本来納品すべき場所が物流センターであれば,下請事業者は物流センターに納品した後に発生する店舗までの配送コストについて負担すべき理由はなく,

センターフィーは下請事業者にとって一方的な不利益となることから,

これを下請代金から差し引くことは下請代金の減額として本法違反となる。」

と回答されています。

(ちなみに、前述の令和元年版の記述は、令和2年版p81にそのまま残っています。)

この令和2年版テキストのQ&Aが追加されるきっかけになったのが2020(令和2)年3月19日のサンクゼールに対する勧告で、同勧告の担当官解説(公正取引837号76頁)には、令和2年版テキストの上記引用部分とほぼ同じ内容の解説がなされています。

勧告の概要によれば、

「サンクゼールは,下請事業者に対し,納品責任を負うべき場所を物流センターと指定した食料品等について,

従前,物流センターの運営等に係る費用を徴収することなく物流センターに納品させていたが,

下請代金の単価改定の機会

及び

物流センターに納品せず自社の各店舗等に直接納品するか否かの選択の機会

を与えることなく,

前記費用の一部として,「センターフィー」と称して下請代金の額に一定率を乗じて得た額を徴収することとし,

平成29年12月から令和元年7月までの間,下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに,「センターフィー」を下請代金の額から差し引くことにより,下請代金の額を減じていた。

減額した金額は,総額3725万4503円である(下請事業者31名)。」

ということです。

公取委が、従来は不当な経済上の利益の提供要請として処理してきた協賛金の提供要請を、あるときから代金減額にあたると解釈変更したことは、このブログでも何度か批判してきたところですが、そこにさらにセンターフィーも加わってきました。

まあ、サンクゼールの勧告では、下請代金から差し引いていたとのことなので、従前の運用でも代金減額に該当したのだと思いますが、現在の公取委の運用では、もし別途センターフィーを支払わせていても、代金減額になったのでしょう。

というわけで、不当な経済上の利益の提供要請と代金減額の違いは、別途支払わせるか差し引くかではなく、お金か、それ以外の利益か、になってきたように見受けられます。

ところで、上記担当官解説とそれを取り込んだ令和2年テキストの考え方は、それはそれで興味深いものがあります。

まず、

「下請事業者からセンターフィーと称して下請代金の額から差し引く行為が下請法上問題となるか否かについては,

下請代金の額を定めた際の取引条件上,下請事業者が本来納品すべき場所がどこまでとされているかが重要となる。」

と言っていること自体、私には疑問に思われます。

まず、「本来納品すべき場所」ということの意味が、よくわかりません。

下請法にどっぷり浸かっている私などからみると、これは、3条書面に記載する「給付を受領する・・・場所」(3条書面規則1条1項1号)、つまり、納品場所のことだと読めてしまいます。

しかしそうすると、テキストの立場では、3条書面の納品場所が物流センターだと、センターフィーは一切請求できないことになってしまいます。

なので、実務上の対応としては、センターフィーを請求する場合には、3条書面の納品場所を各店舗にしなければならない(複数あれば全部記載する)、ということになります。

でもそうすると、それにもかかわらず親事業者が物流センターへの納入を指示したら契約内容の不当な変更になるのかならないのか、下請事業者のほうから物流センターに納入してきたら債務不履行になるのか、といった疑問が次々に湧いてきます。

なので、ここでの「本来納品すべき場所」というのは、形式的な3条書面の納品場所のことではなく、当事者間で以心伝心(?)で合意している本来の納品場所(あるいは、お役所風の硬い表現をすれば、「取引の実態や当事者間の交渉の経緯等を総合的に考慮して認定される納品場所」)、ということなのではないか、と疑われますが、そんなふわっとしたもので下請法違反かどうかが決まってしまうのは、予測可能性の観点から問題でしょう。

実務的には、3条書面の納品場所は物流センターとしておいて、別途、「本来の納品場所は親事業者の各店舗である。」なんていう覚書を巻くんですかね。

それもいかにも不細工な感じがしますが(そんなアドバイス、恥ずかしくってできません)、そうでもしないと、怖くてセンターフィーなんて取れなくなってしまいます。

また、

下請代金の額を定めた際の取引条件上,下請事業者が本来納品すべき場所がどこまでとされているか」

を基準にするというのも、どうして「下請代金の額を定めた際」の取引条件であることをことさら特別視するのか、理論上の根拠が不明です。

たとえば、商品のスペックが変わった際や、支払条件が変わった際の取引条件では、どうしていけないのでしょう?

おそらくテキストの記載は、サンクゼール事件の判断に引きずられてしまったのでしょう。

というのは、この事件では、従前センターフィーを徴収することなく物流センターに納品させていた場合には、

①下請代金の単価改定の機会

及び

②物流センターに納品せず親事業者の各店舗等に直接納品するか否かの選択の機会

を与えなければならないという基準を立ててしまい、①が跳ね返って、「下請代金の額を定めた際の取引条件上」という基準になってしまったのだと思われます。

でもそれは、従来取っていなかったセンターフィーを取り出した事案なので、センターフィーを取るなら価格も見直してあげるべき(下請代金を上げてあげるべき)、というのがなんとなく据わりがよいようにみえますが、センターフィーに一般化できるのか、さらにいえば、ほかの協賛金等にも一般化できるのか、というと、いろいろと疑問が湧いてきます。

少なくとも、いきなり①②の基準が出てくるテキストの考え方は、どう考えても唐突ですし、あまり深いことを考えているフシはありません。

それに、①及び②なので、①と②の両方必要とされていることにも注意が必要です。

でもこもれ、①か②のどちらかでいいのではないでしょうか?

また、どのようにすれば①と②を満たしたことになるのかも、定かではありません。

おそらく、①と②を要求してきた下請事業者に対して個別に対応したという実績があるというだけでは、親事業者は①と②の「機会を与えた」ことにはならないのでしょう。

たぶん、親事業者のほうから、適用対象の全下請事業者に対して、積極的に、①と②の機会を与えるのでどうしますか、という書面でも送らないとだめでしょう。

そして、機会を与えただけで実際に条件変更に応じていなかったり、一部アリバイ的に条件変更に応じた事例がある、というだけでもだめで、たぶん、下請事業者の言ってきたことには基本応じる、というくらいでないとだめなのでしょう。

テキストは「機会を与える」とか簡単に言いますが、実務で回していくのかけっこう大変そうです。

そもそもテキストの基準は、売主の義務は引渡しで完了するべきというドグマに基づいている点で優越的地位の濫用の返品と同じ匂いがするのも問題だと思いますが、下請法でこういう硬直的な基準を立てられると、民法の契約実務に跳ね返ってくるので大変です。

ちなみに担当官解説(公正取引837号76頁)では、

「サンクゼールは、「センターフィー」の徴収について下請事業者に事前に説明し、同意を得て開始したため、下請法に抵触しないと考えていたようである。」

なのだそうです。

なので、少なくとも事前に説明して同意を得ているだけでは①②の要件は満たさない、ということになります。

さらに続けて担当官解説では、

「サンクゼールは、「センターフィー」の徴収開始時の説明の際に、単価改定及び納品場所の選択の機会を与えていなかったため、

下請事業者にとっては従前の取引条件の変更の余地がないまま単に金銭の徴収のみが開始されたことになり、下請法上の「減額」となる。」

とされていますが、このあたりにこの事件の本質が出てますね。

つまり、この事件は、今まで取ってなかったセンターフィーを取り始めたという不利益変更が問題視されたといえます。

(でもそれだと、本来納品すべき場所がどこかで区別する、という前述の基準と矛盾するというか、当該基準があまり合理性のないものであることがますます明るみに出ることになりそうです。)

なので、少なくともここだけみると、取引開始時点からセンターフィーを取る取引条件であれば、問題なかったことになりますし、たぶん勧告もされなかったのでしょう。

取引開始時点からセンターフィーを取る取引条件であるにもかかわらず下請法違反になるのはどのような場合かについて、担当官解説に参考になる記載があって、解説p77では、

「なお、取引条件上、下請事業者が本来納品すべき場所が各店舗である取引において、下請事業者が物流センターのサービスを利用するという別の取引があるように思われる場合でも、

例えば、その対価として合理性を欠く著しく高額なセンターフィーを徴収していたり、

徴収したセンターフィーを物流センターとは全く別の使途に充当していたおりする場合には、

「センターフィー」は単なる名目であって、物流センターのサービスの対価とは認められず、問題となりうると考えられるため、注意が必要である。」

と解説されています。

まとめると、取引開始時点からセンターフィーを徴収することは、著しく高額でなく、使途を物流センターの運営に充当する限りは、下請法上問題ない、ということになります。

あと、「本来納品すべき場所」が各店舗でないといけないのが建前ですが、これは物流センター(=各店舗への配送費用を削減するために物流を集中する拠点)というものの性質からして、物流センターを使う取引では、原則として本来納品すべきは店舗だといっていいのではないかと思います。

公取委もきっとそのあたりはあまりこだわらないのではないかと思います(と期待したいです)。

なお、2020年3月19日付日経新聞電子版の記事によると、

「サンクゼールは15年、下請けが商品を納品する物流センターから店舗まで配送する費用を「センターフィー」として下請けへの支払額から3~7%差し引くことを決めた。」

ということなので、担当官解説がサンクゼールのセンターフィーが高すぎたことを問題視している素振りがないことからすると、(論理的にはやや飛躍がありますが)実務的には7%くらいまでなら著しく高額とは言われないのではないか、と思われます。

2021年12月29日 (水)

「株式会社ユニクエストに対する独占禁止法違反被疑事件の処理について」(令和3年12 月2日)について

掲題の事件について、コメントしておきます。

この事件は、「小さなお葬式」というインターネット葬儀サービスを提供するユニクエストが、葬儀を委託する葬儀屋に、競合する定額型ネット葬儀社3社と取引しないことを条件に、委託手数料を5~10%上乗せしていたことが、排他条件付取引の疑いがあるとされたものです。

ユニクエストのインターネット葬儀サービス市場における市場シェアは約4割とされています。

この事件で驚くことの1つめは、排他契約に応じた葬儀屋が、ユニクエストが契約する全葬儀屋の2割強に過ぎないのに違反の疑いありとされたことです。

2割強の排他契約率ということは、ユニクエスト委託先のうち8割弱とは、他のインターネット葬儀サービス会社は契約できたわけです。

そして、葬儀屋の中にはユニクエストと契約していない葬儀屋もたくさんいたでしょうから、競合インターネット葬儀サービス会社がそのような葬儀屋と契約することも、なんら妨げられていません。

というわけで、こんなに低い排他契約締結率で違反の疑いありとされた事件は、過去にはないのではないかと思います。

もちろん、こんなに低い排他契約率で排除措置命令が出た事案もありません。

それと、排他契約率が低いことと表裏一体の関係にあるといえますが、排他取引をしても、メリットは委託手数料の5~10%の上乗せという、比較的わずかなものであったのに、排他条件付取引の疑いありとされたことです。

これも、過去に例がないくらいゆるい拘束だといえます。

さらに、排他条件といっても、他の全てのインターネット葬儀サービス会社との契約を制限したわけではなく、ユニクエストが主に競合とみなしている、定額インターネット葬儀サービス3社だけが、制限の対象です。

というような諸々の事情を考慮すると、本件で、流通取引慣行ガイドラインが排他条件付取引の要件とするところの、市場閉鎖効果(非価格制限行為により,新規参入者や既存の競争者にとって,代替的な取引先を容易に確保することができなくなり,事業活動に要する費用が引き上げられる,新規参入や新商品開発等の意欲が損なわれるといった,新規参入者や既存の競争者が排除される又はこれらの取引機会が減少するような状態をもたらすおそれを生じさせる効果)があったといえるかというと、きっとなかったのだと思われます。

(ただ、あくまで「おそれ」なので、公取委がどうにでも解釈・運用できる、という余地はあります。)

もう少し葬儀屋の実態に即した検討をすると、まず、葬儀屋を探す消費者は必ずしもインターネットを使って探すわけではない、という特徴があると思います。

故人が突然亡くなった場合はもちろんですが、余命何ヶ月とか、ある程度先が見通せる場合であっても、故人が生きている間に葬儀屋を探す人って、あまりいないとは言いませんが、少数派ではないかと思います。

故人が生きている間にグーグル検索して葬式屋をさがすなんて縁起が悪いですし、余命わずかな親族との大事な時間が台無しになってしまいます。

というわけで、葬儀屋を探すのは故人が亡くなってからになるわけですが、公取委報道発表にも、

「一般消費者は,通常,亡くなった方の自宅の近隣で葬儀を施行できる葬儀社に葬儀の施行を依頼する」

とあるように、もともと葬儀屋の選択肢なんてそんなになくって、何々市で亡くなったらどこどこ、というようにだいたい決まっています。

場合によっては、市役所で葬儀屋を紹介してくれることもあります。

というわけで、葬儀サービス市場全体の中でインターネット葬儀サービスを通じたサービスがどれくらいの割合を占めるのかが重要なわけですが、公取委報道発表では、葬儀社が全国で約4,000社、葬儀場が全国で約8,000箇所あると認定されているだけで、どれくらいの消費者がインターネット葬儀サービスを通じて依頼しているのかわかりません。

この点については、産経新聞電子版2021年12月2日付記事によると、

「令和3年9月時点で、加盟する1099社のうち229社が特約加盟店だった」

ということなので、全国に約4000社ある葬儀屋のうち、ユニクエストに加盟していたのは約27%にすぎず、ユニクエストの特約加盟店(排他取引を受け入れた加盟店)は、全国の葬儀屋の約6%にすぎません。

しかも、ユニクエストに登録している葬儀屋がすべてユニクエストを通じて葬儀を受注しているかというとそんなことはきっとないはずで、むしろ大多数は既存のルートで受注しているのだと想像されます。

というわけで、この事件は、葬儀サービス全体の中の一部にすぎないインターネット葬儀サービスの中の、さらに一部に過ぎない定額サービスの、さらに一部にすぎない定額サービス3社だけに対する市場閉鎖効果を問題にした、ということになります。

もし排除措置命令を出して訴訟で争われていたら、公取が負けていた可能性が大だと思います。

想像ですが、競合他社からの申告を受けて調査をしてみて、排他契約率が2割強にすぎないことがわかり、公取も内心焦ったのではないでしょうか。

もちろん、調査をしてみないとわからないことも多いので、調査すること自体が悪いわけではないのですが、独禁法をよくわかっていない弁護士が、これくらいの低い排他契約率や低いインセンティブで違反になるんだと、間違ったアドバイスをしないかが心配です。

また、当事者が自主的に違反被疑行為をやめることで審査を打ち切るという最近の公取のプラクティスの、ある意味で、良い面と、悪い面が、両方出たといえます。

良い面というのは、積極果敢に調査してみることができた、ということでしょう(企業にとっては悪い面ですが)。

悪い面というのは、違反の有無があいまいなまま事件が終結してしまった、ということでしょう。

現在のような、任意に違反行為をとりやめて審査を終了させるというプラクティスがなかった時代であれば、公取委は「違反事実はなかった」といって打ち切るか、せいぜい警告・注意をするしか、処理の方法がなかったわけです。

「違反なし」は、文字どおり、違反がなかったということが明らかになりますし、警告にしても、注意にしても、その要件が明確になっているので、公取委はこの事実関係ではこういう法的評価をするのだ、ということは明確になります。

ところが、任意にやめたから打ち切るというのでは、では任意にやめなかったらどうだったのか、というのがまったくわかりません。

これは、文字どおり「まったくわからない」というのが正しいです。

世間では、「違反被疑行為をやめたから打ち切ったのだから、やめなかったら違反認定されたのだろう」という評価がされるのかもしれませんが、本件のような事件をみると、「まったくわからない」というのが実態を正しく表しているし、公取の運用もそうなんだ(仮に違反事実なしの心証であっても、違反事実なしとはせず、打ち切る)、ということがわかります。

もう少し公取側に寄り添った見方をすれば、本件は、今流行りのデジタルプラットフォームの事件で、デジタルプラットフォームでは勝者丸取りになりやすいので、早めに手を打った、ということが言えるかもしれませんが、葬儀サービスに限っては、そのような評価は正しくないでしょう。

というのは、葬式なんて一生に何度も出すものではないからです。

つまり、使い慣れからくるスイッチングコストのようなものを観念しにくいのです。

たとえば、父親の葬式を「小さなお葬式」で出した人が、母親のお葬式も「小さなお葬式」で出すとは限りません。

ひょっとしたら、「小さなお葬式」で出したことすら忘れているかも知れません。

あるいは、業界で1位であることが重要な業種とも思えません。

引っ越し屋ではないのですから、「インターネット葬儀サービス業界ナンバーワン!」みたいな広告を出す業者には、私はむしろ頼みたくないです。

というわけで、もし公取委が、最近のデジタルプラットフォーム規制の流行りに乗って本件に目を付けたのだとしたら、「なんだかなぁ」という感じがします。

あとは、どれくらいのベネフィットを与えると排他条件付取引になるのかは実務上よく問題になるところで、本件では、これが5~10%の手数料の上乗せで違反の疑いありとされたことになります。

前述のとおり、本件の評価は「まったくわからない」というのが正しいですから、5~10%の手数料の上乗せでアウトなのかは、なんともいえません。

これくらいの差なら、競合サイトも値下げで対抗できそうな気がしますし、たとえば、排他契約に応じる葬儀屋を検索上位に表示するというのにくらべたら、拘束の程度はむしろゆるいといえるかもしれません。

ただ、何%ならアウトかというのは一般化しにくく、少なくとも本件では委託先の2割強しか排他契約を選択していないということからすれば、たいして効果がなかった可能性が濃厚です。

逆に、5~10%の手数料の差で過半数が排他契約に応じるような業種なら、かなりの拘束の効果があったということになるでしょう。

そして、あまり効果のない施策だからユニクエストは任意にやめた、という可能性もかなりあります。

実は実務上最も知りたいのは本件のような限界事例(私は限界事例というほどもなく、ほぼ白に近いグレーと思っていますが)なのですが、そういう事案ほど、当事者には公取と争ってまで続けるインセンティブがなく、結果的に、公取委は法的根拠も何もない、違反行為終了による審査打ち切りという処理をする可能性が高くなったといえそうです。

2021年12月12日 (日)

高額商品に対する景品の場合の消費者庁Q&A34番(包含関係にある商品群に対する複数企画)の疑問

消費者庁の景品Q&Aの34番では、

「メーカーが、商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施し、

同時期に、小売店が、メーカーが行う懸賞とは別に、商品Aを必ず含んで、1,500円分以上の商品を購入した者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施する場合、

提供できる景品の最高額及び総額はどのように算定すればよいでしょうか。

なお、この2つの企画は、それぞれ独自に実施するものであり、共同企画ではありません。」

という質問に対して、

「A 同一の取引に付随して2つ以上の懸賞による景品類の提供が行われる場合の景品類の価額の考え方は、次のとおりです。

1 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになります。

2 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになります。

3 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によって景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになります。

本件については、メーカーが商品Aの購入者を対象に懸賞を行い、

一方、小売店が商品Aを含む商品を1,500円以上購入した者を対象に懸賞を行うものであり、

メーカーの懸賞で提供される景品類と小売店の懸賞で提供される景品類は、同一の取引に対して提供される景品類と考えられるところ、

共同企画でないならば3に該当します。

この場合において、重複当選を制限していないのであれば、提供できる景品類の最高額は、メーカーの懸賞では、商品Aの価額の20倍(2万円)であり、

一方、小売店の懸賞では、応募の条件である1,500円の20倍(3万円)からメーカーが提供する景品類の価額を差し引いた価額です

(例...メーカーが、最高15,000円の景品類を提供する場合、小売店が提供できる景品類の最高額は、30,000円-15,000円=15,000円となります。)。

また、提供できる景品類の総額については、メーカーと小売店のそれぞれの懸賞に係る売上予定総額のうち、重複する商品Aの売上予定総額を、どちらかの売上予定総額から除外して算定する必要があります。

なお、小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められないので、メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」

と回答されています。

この事例だけをみると何となく穏当な結論のようにも見えるのですが、少し事例を変えると、不都合であることが明らかになります。

つまり、この事例では、懸賞参加の条件がメーカー1000円、小売店1500円と、比較的小さいので問題点が見えにくいですが、たとえば、メーカーの懸賞への参加条件が5万円、小売店の懸賞への参加条件が(メーカーの商品5万円を含む)8万円、という場合を考えてみます。

この場合、メーカーが提供できる景品類の上限は、5万円の20倍(100万円)が10万円を超えるので、告示上限の10万円になります。

そこで、メーカーが10万円の景品を提供したとしましょう。

すると、Q&Aの考え方では、小売店が提供できる景品類の上限は、小売店単独の景品類の価額の上限(取引価格の8万円の20倍の16万円が10万円を超えるので、10万円)が10万円なので、ここから、メーカーが提供する景品類の10万円を引くと0円になり、小売店は景品を提供できなくなってしまいます。

つまり、Q&Aの

「この場合において、重複当選を制限していないのであれば、提供できる景品類の最高額は、メーカーの懸賞では、商品Aの価額の20倍(2万円)であり、

一方、小売店の懸賞では、応募の条件である1,500円の20倍(3万円)からメーカーが提供する景品類の価額を差し引いた価額です

(例...メーカーが、最高15,000円の景品類を提供する場合、小売店が提供できる景品類の最高額は、30,000円-15,000円=15,000円となります。)。」

の部分を、上記設例(メーカーの懸賞参加条件5万円、景品10万円、小売店の懸賞参加条件(メーカー商品を含む)8万円)の回答として書き換えてみると、

「この場合において、重複当選を制限していないのであれば、提供できる景品類の最高額は、メーカーの懸賞では、商品Aの価額の20倍が10万円を超えるので10万円であり、

一方、小売店の懸賞では、告示上限の10万円からメーカーが提供する景品類の価額を差し引いた価額です

(例...メーカーが、最高10万円の景品類を提供する場合、小売店が提供できる景品類の最高額は、10万円-10万円=0円となります。)。」

ということになりそうです。

あるいは、多少無理をして、

「この場合において、重複当選を制限していないのであれば、提供できる景品類の最高額は、メーカーの懸賞では、商品Aの価額の20倍の100万円が10万円を超えるので10万円であり、

一方、小売店の懸賞では、応募の条件である8万円の20倍(160万円)からメーカーが提供する景品類の価額を差し引いた価額です

(例...メーカーが、最高10万円の景品類を提供する場合、小売店が提供できる景品類の最高額は、160万円-10万円=150万円が告示上限の10万円を超えるので10万円となります。)。」

というふうになるのだ、という考え方もあるかもしれません。

Q&A34番を杓子定規に解釈して「0円でいいのだ」という判断もありうるのかもしれませんが、小売店は少なくともメーカーの商品5万円以外に3万円の商品の購入を条件としているのですから、この3万円については本来10万円まで景品を提供できたはずであり、まったく景品が提供できないというのは、いかにも据わりが悪いような気がします。

消費者庁はどこで間違ってしまったのでしょうか。

間違いの原因は、

「小売店が商品Aを含む商品を1,500円以上購入した者を対象に懸賞を行うものであり、

メーカーの懸賞で提供される景品類と小売店の懸賞で提供される景品類は、同一の取引に対して提供される景品類と考えられる」

としてしまったことです。

つまり、「商品Aの取引」と「商品Aを含む1500円の商品の取引」を、「同一の取引」と解釈してしまったことです。

すくなくとも、「商品Aを含む1500円の商品」のうち、「商品A」を除く部分、文字で書けば、

「商品Aを含む1500円の商品から商品Aを除いた商品」(500円の商品)

の取引については、「商品Aの取引」と「同一の取引」というのは、相当無理があります。

整理すると、メーカーの懸賞参加条件が5万円、小売店の懸賞参加条件が(メーカー商品5万円を含む)8万円の場合に小売店が提供できる景品の上限は、

①消費者庁Q&Aでは、0円

②「小売店は独自販売部分(3万円)について景品を提供できる」との考え方では、10万円

となります。

実は、この設例では、小売店の独自販売部分(3万円)の20倍(60万円)が10万円を超えてしまうので問題が見えにくいので、設例を、

メーカーの懸賞への参加条件が5万円、小売店の懸賞への参加条件が(メーカーの商品5万円を含む)5万2000円

というように変えてみます。

この設例であれば、

小売店が提供できる景品の上限は、依然として、

①消費者庁Q&Aでは、0円

ですが、私見の、

②「小売店は独自販売部分(2000円)について景品を提供できる」との考え方では、4万円

となります。

この設例で考えてみても、②の考え方が、一番穏当ではないでしょうか。

消費者庁の考え方は、大小の包含関係にある商品群について複数事業者が懸賞を実行する場合、10万円の枠は全部で1回しか使えない、という考え方に基づいています。

これに対して私の考え方は、10万円の枠は各事業者に1回ずつ割り当てられている、という考え方です。

そして、メーカーが10万円の枠を使い切っていなくても、枠の残りが小売店に繰り越されることはないと考えます。

たとえば、メーカーの懸賞への参加条件が1000円以上の取引の場合、メーカーの提供できる景品類の上限は2万円なので、10万円の枠のうち8万円は使われずに残っているわけですが、この8万円を小売店が使っていい(枠が18万円になる)ということはなく、小売店の枠は依然として10万円、ということです(実際に提供できる景品額上限は、独自販売部分の2000円の20倍の4万円)。

2021年12月11日 (土)

包含関係にある本体商品に対する景品類の提供

以下のような場合、景品類の価額の上限はどのように考えるべきでしょうか。

(なお商品の価格はいずれも1000円未満だと計算がめんどうなので、1000円以上とします。)

商品A(価格Pa)の購入者全員に、景品aを提供し、かつ、

商品Aと、商品B(価格Pb)の両方を購入した人に、景品bを提供する。

数字の具体例を入れると、たとえばこんな感じです。

商品A(2000円)の購入者全員に、景品aを提供し、かつ、

商品A(2000円)と商品B(3000円)の両方を購入した人全員に、景品bを提供する。

この例では、景品aの価額の上限は、2000円×0.2=400円です。

では、景品bは、商品A(2000円)と商品B(3000円)の両方を購入した人に提供するので、景品bの価額の上限を(2000+3000)×0.2=1000円としていいのでしょうか。

もし商品Aと商品Bの両方を購入した人に1000円の景品bをあげると、この人は400円の景品aももらっているので、合計1400円の景品をもらえることになり、取引の価額の合計額5000円の2割の1000円を超えてしまいます。

なので、景品aの上限が400円でなければならないとともに、景品bの上限は1000ー400=600円でなければならないことになります。

・・・というと、これも間違いです。

というのは、景品aとして上限の400円のものを提供すればたしかに商品bは600円までしか提供できなくなりますが、景品aでたとえば300円のものをあげれば、景品bは1000ー300=700円まで提供していいからです。

要は、

①景品aの価額≦400、かつ

②景品aの価額+景品bの価額≦1000

を満たせばよいことになります。

一般化すると、

①景品aの価額≦0.2Pa, かつ

②景品aの価額+景品bの価額≦0.2(Pa+Pb)

となります。

ここで、①で商品Aの購入者に上限の0.2Paの景品aをあげてしまうと、②でさらに商品A(と商品B)の購入者に景品bをあげてしまっていいのか気になる人がいるかもしれませんので、告示と運用基準に照らしてチェックしますと、総付告示1項では、

「1 一般消費者に対して懸賞・・・によらないで提供する景品類の価額は、

景品類の提供に係る取引の価額の十分の二の金額・・・の範囲内であつて、

正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならない。」

とされています。

景品aについては、これは、

「1 一般消費者に対して懸賞・・・によらないで提供する景品aの価額は、

Paの十分の二の金額・・・の範囲内であつて、

正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならない。」

と読んでいいことは問題ないでしょう。

では、景品bについて、

「1 一般消費者に対して懸賞・・・によらないで提供する景品bの価額は、

(Pa+Pb)の十分の二の金額・・・の範囲内であつて、

正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならない。」

と読んでいいのか、ということです。

ここで問題は、同一の取引に対して複数の景品類を提供する場合に関する総付運用基準1(5)アで、

「(5) 同一の取引に附随して二以上の景品類提供が行われる場合については、次による。

ア 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになる。」

とされていることです。

(なお、同じキャンペーンと銘打つか、別のキャンペーンとするかは、名前だけの問題なので、それで提供できる景品類の価額が変わってしまうのはおかしいので、「別々の企画によるときであっても」という要件には実質的には意味がないと考えてよいと思います。)

ここで、「同一の取引」を「商品Aの取引」と読むと、まさに、「商品Aの取引」に対して景品a(商品Aの取引に附随)と景品b(商品Aと商品Bの取引に附随)を提供しているので、景品aで上限額を提供すると、景品bは提供できないことになってしまいます。

1つの読み方は、商品Aの取引と「商品Aと商品B」の取引は、別の取引であり、「同一の取引」ではない、と読む読み方です。

しかし、これだと、たとえば、

商品Aの価格(Pa)=10万円

商品Bの価格(Pb)=1000円

商品Cの価格(Pc)=1000円

のときに、

商品Aの購入者に10万×0.2=2万円

商品Aと商品Bの購入者に(10万+1000)×0.2=20,200円

商品Aと商品Bと商品Cの購入者に(10万+1000+1000)×0.2=20,400円

の景品を提供でき、合計60,600円の景品を提供できてしまい、商品ABCの合計額102,000円の2割の20,400円を大幅に超えてしまいます。

これはいうまでもなく、商品Aの10万円を3回カウントしてしまっているためです。

ですので、「商品Aの取引」と「商品Aと商品Bの取引」は、前述の総付運用基準1(5)の

「(5) 同一の取引に附随して二以上の景品類提供が行われる場合については、次による。」

における「同一の取引」には該当しない、という解釈はとりづらいと思われます。

かといって、景品aが提供されるための商品Aの取引と景品bが提供されるための(条件の1つである)商品Aの取引が「同一の取引」に該当するとすると、景品aで上限額を提供すると、景品bは(商品Bを購入しているにもかかわらず)提供できない、ということになってしまい、これはこれで不都合なように思います。

そこで、設例のような、1つの景品の本体取引が別の景品の本体取引を包含してそれより大きい場合について総付運用基準は何ら規定しておらず(このような場合に総付運用基準1(5)は適用されない)、別途解釈する必要がある、と考えるのが穏当だと思います。

これを一般化するならば、

商品A(価格Pa)の購入者全員に、景品aを提供し、

商品Aと、商品B(価格Pb)の両方を購入した人に、景品bを提供し、

商品Aと、商品Bと、商品C(価格Pc)の3つを購入した人に、景品cを提供し、

・・・

商品Aと、商品Bと、商品Cと、・・・商品Nの全部(N個)を購入した人に、景品Nを提供する

という企画、つまり、

商品A⊂商品A+B⊂商品A+B+C⊂・・・⊂商品A+B+C+・・・+N

において提供できる景品類の価額が満たすべき条件は、

景品aの価額≦0.2Pa, かつ、

景品aの価額+景品bの価額≦0.2(Pa+Pb)、かつ、

景品aの価額+景品bの価額+景品cの価額≦0.2(Pa+Pb+Pc)、かつ、

・・・

景品aの価額+景品bの価額+景品cの価額+・・・+景品nの価額≦0.2(Pa+Pb+Pc+・・・+Pn)、

となる、と解すべきです。

ここで、消費者庁の景品Q&Aの34では、

「メーカーが、商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施し、

同時期に、小売店が、メーカーが行う懸賞とは別に、

商品Aを必ず含んで、1,500円分以上の商品を購入した者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施する場合、

提供できる景品の最高額及び総額はどのように算定すればよいでしょうか。

なお、この2つの企画は、それぞれ独自に実施するものであり、共同企画ではありません。」

という質問に対して、

「A 同一の取引に付随して2つ以上の懸賞による景品類の提供が行われる場合の景品類の価額の考え方は、次のとおりです。

1 同一の事業者が行う場合は、別々の企画によるときであっても、これらを合算した額の景品類を提供したことになります。

2 他の事業者と共同して行う場合は、別々の企画によるときであっても、それぞれ、共同した事業者がこれらの額を合算した額の景品類を提供したことになります。

3 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によって景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになります。

本件については、メーカーが商品Aの購入者を対象に懸賞を行い、

一方、小売店が商品Aを含む商品を1,500円以上購入した者を対象に懸賞を行うものであり、

メーカーの懸賞で提供される景品類と小売店の懸賞で提供される景品類は、同一の取引に対して提供される景品類と考えられるところ、

共同企画でないならば3に該当します。

この場合において、重複当選を制限していないのであれば、提供できる景品類の最高額は、

メーカーの懸賞では、商品Aの価額の20倍(2万円)であり、

一方、小売店の懸賞では、応募の条件である1,500円の20倍(3万円)からメーカーが提供する景品類の価額を差し引いた価額です

(例...メーカーが、最高15,000円の景品類を提供する場合、

小売店が提供できる景品類の最高額は、30,000円-15,000円=15,000円となります。)。

〔中略〕

なお、小売店が、商品Aの購入を条件とせず商品を一定額以上購入した者を対象に懸賞を行う場合は、

購入商品の中にたまたま商品Aが含まれていたとしても同一の取引とは認められないので、

メーカーの懸賞と小売店の懸賞のそれぞれにおいて提供できる景品類の最高額及び総額は、合算することなく個別に算定して構いません。」

と回答されています。

この回答から読み取れることは、消費者庁は、同一の事業者が提供する景品類の場合にも、おそらく、

商品Aの購入者に景品aを提供し、

商品A+Bの購入者に景品bを提供する

という場合は、

景品bは「商品Aの購入を条件」としているので、

「商品A」の取引と「商品A+B」の取引とは(商品Aの部分について)「同一の取引」と認められるので、

「商品A」に対して景品aを提供している場合には、

「商品A+B」の取引に附随して提供する景品bの最高額は景品aの最高額と合算される、

と考えているだろう、ということです。

というわけで、消費者庁も、(総付と懸賞の違いや、同一事業者か別の事業者かという違いはありますが)上述の、

景品aの価額≦0.2Pa, かつ、

景品aの価額+景品bの価額≦0.2(Pa+Pb)、かつ、

景品aの価額+景品bの価額+景品cの価額≦0.2(Pa+Pb+Pc)、かつ、

・・・

景品aの価額+景品bの価額+景品cの価額+・・・+景品nの価額≦0.2(Pa+Pb+Pc+・・・+Pn)、

という考え方に立っているのだろう、と思われます。

2021年12月 8日 (水)

自他共通割引券における「自己の供給する商品」の意味

総付運用基準4(2)の、

自己の供給する商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票」

は、実務上、自他共通同額割引券といわれ、総付で提供する場合には総付の上限規制が適用されないことになっています。

ここで、「自己の供給する商品又は役務の取引」とは、文字どおり、「自己」が「供給」する商品の取引において対価が割引かれるものであれば足り、「自己」が直接売主となってする取引における対価の割引がなされる場合にかぎられないと考えられます。

つまり、メーカーである「自己」が「供給」する商品がコンビニで販売されている場合に、そのコンビニで使える割引券(たとえばQUOカード)は、当該メーカーの商品を当該コンビニで購入する場合にも当然使えますから、

自己の供給する商品・・・において・・・用いられる・・・割引を約する証票」

であるといえます。

そして、当該メーカーにとってコンビニは当然「他の事業者」なので、結局、当該割引券は、自他共通同額割引券である、ということになります。

理論上問題になるのは、たとえば、あるメーカーAが、販売店Bを通じて自己(メーカーA)の商品を販売している場合に、自己(メーカーA)の購入にだけ使える割引券を発行した場合、この割引券は(メーカーAと販売店Bの)自他共通割引券なのか、それとも、(メーカーAの)自社割引券なのか、ということです。

総付運用基準の上記定義に照らせば、

「自己の供給する商品又は役務の取引」

「他の事業者の供給する商品又は役務の取引」

は、同じ取引でもいいのか、それとも、同じ取引だと自他共通割引券ではなくたんなる自社割引券になるのか、という問題です。

このような割引券は自社割引券ととらえるのが自然と思われますし、自他共通割引券として通常イメージされるものとは全く異なるように思われるので、自社割引券という整理でよいのではないかと思います。

これがもし自社割引券なら、定義告示運用基準1項の「値引」に該当するので、懸賞制限告示の適用もありませんが(なので、懸賞で提供しても景品になりません)、自他共通割引券だと懸賞制限告示の適用はある、という違いが生じます。

また別の問題として、自他共通割引券であるためには、自社および他社の全ての商品に使える割引券でなければならないのか、という問題がありますが、「餃子100円割引券」でラーメンの値引が受けられなくても「割引券」と呼ぶのに支障はありませんから、全ての商品に使える必要はないというべきでしょう。

総付運用基準の定義でも、

「自己の供給する商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票」

といっているだけで、

「自己の供給する全ての商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する全ての商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票」

とはいっていないので、文言上も、一部の商品だけに使える割引券が含まれると考えて問題ありません。

反対に、自社の商品と他社の商品で、それぞれ1個(1種類)だけで割引が受けられる割引券でも、自他共通割引券といって支障はないでしょう。

自他共通割引券であるためには、他社で幅広く用いられる必要はない、ということです。

なので、複数の航空会社で共通して用いられるマイレージは、そのマイレージで航空券の同額の割引が受けられれば自他共通同額割引券なのであって、もし機内販売に使えなくても、やっぱり自他共通同額割引券です。

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