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2021年11月26日 (金)

懸賞による景品類の提供の既遂時期

1回の取引で複数回の抽選に参加できる企画の場合、1回当たるだけでは景品規制の上限を超えないけれど、2回以上当選したら超えてしまう、ということが起こりえます。

たとえば、1万円の商品購入者に、10万円の賞品が当たる抽選に2回参加できる権利をあたえる場合、1回だけの当選なら10万円ですから懸賞規制の上限の範囲内ですが、2回当選してしまうと合計20万円の賞品(景品類)を獲得できてしまうので、上限を超えてしまいます。

1種類の取引で1種類の賞品が当たるだけの単純な企画なのであれば、わざわざ2回抽選に参加できる権利を与えたいということはあまりなさそうですが(2回くじを引けるので2回わくわくできる?)、たとえば、

1個1000円の商品に「1点」のシールを貼り、1個2000円の商品に「2点」のシールを貼り、1個1万円の商品に「10点」のシールを貼り、とにかく5点集めたら1回抽選に参加できる(なので1万円の商品を1個購入したら2回抽選に参加できる)というような場合や、

1回の抽選で複数の賞品のうちのどれが当たるのかわからない抽選(1等○○、2等××、残念賞△△)ではなく、特定の賞品が当たる複数種類の抽選から自由に選んで参加できる場合(○○が当たる抽選と、××が当たる抽選を選べる場合)

などのケースには、1つの取引に対して複数回の抽選参加権を与えたい、ということが起こりえます。

このように、2回当選してしまうと20万円で懸賞の上限を超えてしまうような場合には、重複当選を禁止する扱いにすることが考えられます。

しかし、重複当選を禁止しないと絶対に違反になるのかというと、必ずしもそういうわけではありません。

というのは、重複当選すれば上限を超えてしまうような企画であっても、現に重複当選者が現れないのであれば、景品類を未だ提供していることにはならず(比喩的に言えば、未だ未遂であり)、景表法違反には問われないからです。

このことは、懸賞告示2項において、

「懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の20倍の金額(当該金額が10万円を超える場合にあっては、10万円)を超えてはならない。」

と規定されており、現に「提供する景品類」の価額のみを問題にしている(当選する可能性がある抽選を行うこと自体を問題にしていない)ことから明らかです。

比喩的に言えば、懸賞による賞品の提供は現に景品類を提供したときであり、企画を実施したときではありません。

もちろん、重複当選を明確に禁止していない限り、常に重複当選の可能性はあり、そのぶん、違反の可能性もあるわけですが、実際に違反になるのは、実際に重複当選が発生し、景品類を現に提供した時点です。

この点、過去の懸賞に対する公取時代の排除命令をみると、たとえば、平成11年3月30日のジャパンエンバに対する排除命令では、

「ジャパンエンバは、⽑⽪製の⾐服及び⾝の回り品の販売に関して、

1 「ダイアナ妃の故国、イギリスの旅ご招待」と称し、平成10年10⽉2⽇から同年11⽉30⽇までの間、店舗及び展⽰販売会場として借り上げた会場ごとに、それぞれ応募期間を定め、あらかじめ郵送したダイレクトメールに同封した応募券により当該期間中に当該店舗⼜は会場において応募した⼀般消費者を対象に、抽選により、「イギリスの旅」と称するイギリス及びフランスヘの6⽇間のペア旅⾏(24万6000円相当)を2名に、ハワイヘの5⽇間のペア旅⾏(16万円相当)を5名に、国内旅⾏券(4万円相当)を10名に、それぞれ提供すること

2 「クリスマスバザール」と称し、平成10年12⽉1⽇から同⽉25⽇までの間、店舗及び展⽰販売会場として借り上げた会場ごとに、それぞれ応募期間を定め、当該期間中に当該店舗⼜は会場において商品を購⼊した⼀般消費者を対象に、抽選により、ハワイヘの5⽇間のペア旅⾏(16万円相当)を5名に提供すること

をそれぞれ企画し、これらを実施した。」

と認定されており、これらの企画を企画し実施したとは認定されていますが、実際に、景品類が提供されたことは、厳密にいえば、認定されていません。

たぶん、実際には当選者がいて、旅行等も企画どおり提供されたことが当然の前提になっているのだとは思いますが、厳密に言えばこれは不正確で、実際に景品類が提供されたことまで認定する必要があったと思われます。

とはいえ、「当選者は少なくしているし(たとえば5名)、まさか2回当たる人はいないだろう」と高をくくって重複当選を明示的に禁止しない場合には、まさに違反するかどうかを「運にまかせる」ことになるので、あまり好ましくはないでしょう。

もちろん、当選者が1名だけの抽選であれば、重複当選は論理的にありえませんから、重複当選を禁じるまでもないでしょう。

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