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2021年11月28日 (日)

総付と懸賞を併用した企画について

あるパンメーカーが、

食パン(1斤200円)に「1点」と記載されたシールを貼り、

あんパン(1個100円)には、「シール20点分を獲得できる抽選に参加できる抽選応募券」を貼って、

40点分のシールを獲得した人には豪華賞品をプレゼントする

という企画をしたとします。

この企画で提供できる景品類の価額はいくらまででしょう。

この企画では、食パン40斤を買えば確実に40点獲得できて賞品がもらえるので、その意味では総付です。

そして、あんパン2個を買って抽選に2回当選しても同じ賞品がもらえるので、その意味では懸賞です。

これだけなら、総付の制限(1斤200円×40斤×0.2=1600円)と、懸賞の制限(1個100円×2個×20=4000円)の、いずれも超えない範囲に収めればいいので、提供できる景品類の価額の上限は低いほうの1600円になりそうです。

ところがこの企画では、あんパン1個(100円)買って抽選に当選して20点獲得し、残り20点を食パン20斤(200円×20=4000円)を買って獲得することでも、同じ景品がもらえます。

このように、総付と懸賞を併用して景品がもらえる場合、景品類の上限価額はどのように考えればよいのでしょうか。

困ったときには定義に戻りましょう。

懸賞制限告示1項では、

「1 この告示において「懸賞」とは、次に掲げる方法によつて景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいう。

一 くじその他偶然性を利用して定める方法

二 特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法」

と規定されています。

この定義にしたがえば、40点全部を抽選(あんパン2個購入)により獲得することは、あきらかに「偶然性を利用して定める方法」「によつて景品類の提供の相手方・・・を定めること」に該当するので、懸賞にあたりそうです。

では、40点中20点をあんパン1個購入した抽選で獲得し、残り20点を食パン20斤購入して獲得する場合はどうでしょうか。

この場合も、現に賞品を獲得した人は、あんパン1個のくじに当選したから賞品を獲得できたのであり、くじに当選していなかったら賞品を獲得できなかったわけですから(賞品をもらえるかどうかはくじに当たるかどうか次第)、「偶然性を利用して定める方法」「によつて景品類の提供の相手方・・・を定めること」に該当し、懸賞に該当することになると考えられます。

では、40点全部を食パン40斤購入することで獲得した人についてはどうかというと、この人は、「偶然性を利用して定める方法」「によつて景品類の提供の相手方・・・を定めること」には該当しないので、この人に対してする賞品の提供は、懸賞ではないことになります。

懸賞だとして、次に問題になるのは、取引の価額です。

ここで、懸賞制限告示2項では、

「2 懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の20倍の金額(当該金額が10万円を超える場合にあっては、10万円)を超えてはならない。」

と規定されています。

そして、「懸賞に係る取引の価額」の意味については、懸賞制限告示5(1)では、

「(1) 「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準第一項(1)から(4)までは、懸賞に係る取引の場合に準用する。」

と規定されていて、総付制限告示運用基準1項(1)から(4)では、

「1 告示第一項の「景品類の提供に係る取引の価額」について

(1) 購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合は、当該購入額を「取引の価額」とする。

(2) 購入者を対象とするが購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合の「取引の価額」は、原則として、100円とする。

ただし、当該景品類提供の対象商品又は役務の取引の価額のうちの最低のものが明らかに100円を下回つていると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることとし、

当該景品類提供の対象商品又は役務について通常行われる取引の価額のうちの最低のものが100円を超えると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることができる。

(3) 購入を条件とせずに、店舗への入店者に対して景品類を提供する場合の「取引の価額」は、原則として、100円とする。

ただし、当該店舗において通常行われる取引の価額のうち最低のものが100円を超えると認められるときは、当該最低のものを「取引の価額」とすることができる。

この場合において、特定の種類の商品又は役務についてダイレクトメールを送り、それに応じて来店した顧客に対して景品類を提供する等の方法によるため、景品類提供に係る対象商品をその特定の種類の商品又は役務に限定していると認められるときはその商品又は役務の価額を「取引の価額」として取り扱う。

(4) 景品類の限度額の算定に係る「取引の価額」は、景品類の提供者が小売業者又はサービス業者である場合は対象商品又は役務の実際の取引価格を、製造業者又は卸売業者である場合は景品類提供の実施地域における対象商品又は役務の通常の取引価格を基準とする。」

と規定されています。

ここで、あんパン2個(200円)買って2回抽選を当てた消費者は、(1)の、

「購入者を対象とし、購入額に応じて〔懸賞=偶然性を利用して定める方法で〕景品類を提供する場合」

に該当するといってよいでしょう。

(なお、購入額に「応じて」とは、購入額に比例して、とか限定した意味ではもちろんなく、(2)の「購入額の多少を問わないで」ではない場合、つまり、購入額(の多少)で提供される景品類が決まる、あるいは、購入額と景品類が対応している、ということです。)

そして、その場合の「取引の価額」は、「当該購入額」、つまり、景品類の提供が「応じ」るところの「購入額」なので、あんパン2個の代金200円となる、というのが1つの考え方ですが、それでよいのでしょうか?

ここは、懸賞に該当する点数のすべての獲得パターンの中で、最も少なくてすむ取引額が、「取引の価額」であると考えるべきだと思います。

つまり、設問の企画では、賞品を獲得するためには、

①あんパン2個(200円)買って抽選を当てて賞品をもらう方法(合計200円)と、

②あんパン1個(100円)買って抽選を当てて(20点)、食パン20斤(4000円)買って(20点)賞品をもらう方法(合計4100円)

の2つのパターンがあるわけですが、最低必要な取引額は①の200円となります。

そして、この種の企画では抽選のほうが、(抽選に全部当たると仮定した場合に必要になる)取引価額が総付で必要になる取引価額より小さいのが通常です(∵抽選に全部当たっても総付のほうが割がいいと、誰も抽選を選ばなくなるため)。

ということは、結局、取引の価額を最低にするには、全部抽選で獲得する方法を選ぶことになります。

よって本件では、①の200円が、取引の価額となり、懸賞で提供できる景品類の価額の上限はその20倍の4000円となります。

次に、懸賞では、景品総額の規制もあります。

つまり、懸賞制限告示3項では、

「3 懸賞により提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の100分の2を超えてはならない。」

と規定されています。

ここで、「当該懸賞に係る取引」が、あんパンの取引だけなのか、食パンの取引も含むのかは、検討を要します。

「当該懸賞に係る取引」という文言だけをみれば、あんパンだけという解釈も、あんパンと食パン両方含むという解釈も、いずれも成り立つように思われます。

というのは、現にあんパン1個購入して抽選を当てて20点獲得し、食パン20斤買って20点獲得することによって賞品も獲得することが可能だからです。

前述の、景品額の上限の場合には、必要最低限の取引価額を特定するとあんパン2個購入(200円)だと考えましたが、これは、このようにすれば最低限の取引価額で賞品がもらえるといっているだけで、本当にもらえるかどうかは運次第です。

また、現にあんパン1個購入して抽選を当てて20点獲得し食パン20斤買って20点獲得することによって賞品を獲得する消費者も存在しうる以上、食パンの取引も誘引していることはあきらかですから、食パンも「当該懸賞に係る取引」に含めるのが、実質的に見ても妥当でしょう。

また食パンも含めたほうが、結果的に、提供できる賞品の総額も大きくすることができます。

ところで、②の、抽選と総付を併用する場合点数をあんパンと食パンのどちらで先に獲得するかは結論に影響しないと考えられます。

先に食パン20斤買って20点獲得ずみの人があんパン1個買って抽選に参加する場合、食パン20斤の購入は、不確実性のない、賞品を獲得するための客観的な条件にすぎない(ので懸賞の取引の価額には算入されない)、という考え方もありえますが、条件が取引そのものである場合には、当該条件も取引の価額に算入されるべきでしょう。

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コメント

直接、この件とは関係ありませんが、景表法絡みで、先生の考えをお教えください。
3月の晋遊舎の不当表示案件で、優良誤認と有利誤認に違反するとされていますが、その区別が、「賞品等提供企画」か「景品類提供企画」かの区別によっています。
結果として、優良誤認だろうが、有利誤認だろうが、不当表示というという点では変わりませんが、「賞品等」か「景品類」かは、過大景品になるかどうかの判断に影響を与えます。

直接、この件とは関係ありませんが、景表法絡みで、先生の考えをお教えください。
3月の晋遊舎の不当表示案件で、優良誤認と有利誤認に違反するとされていますが、その区別が、「賞品等提供企画」か「景品類提供企画」かの区別によっています。
結果として、優良誤認だろうが、有利誤認だろうが、不当表示というという点では変わりませんが、「賞品等」か「景品類」かは、過大景品になるかどうかの判断に影響を与えます。

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