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2021年7月25日 (日)

アフィリエイターとテレビショッピングとの違い?

アフィリエイト広告について、西川編『景品表示法〔第6版〕』(緑本)p54では、

「アフィリエイト広告であっても、広告主〔=「広告される商品等を供給する事業者」〕の商品を販売するための広告であることに変わりはない。」

「広告主〔の〕・・・表示主体性についても・・・他の事業者に〔表示の内容〕の決定を委ねた場合等においては、表示内容の決定に関与しているものとして表示主体性が肯定される。」

と解説されています。

確かにアフィリエイト広告は、その仕組みや関係者の認識を含む実態からして広告主の商品等の広告というべきだと思うのですが、その判断基準として、(表示主体が他者に)表示内容の決定を委ねたことという漠然とした基準を用いると、表示主体が責任を負う表示の範囲が広くなりすぎるのではないかという気がします。

たとえば、ある掃除機メーカーが、テレビショッピングの会社に掃除機を売らせる場合、テレビショッピング番組での台詞や実演等の説明がメーカーの表示だということになってしまわないでしょうか。

実際にそういうことがあるのかどうかわかりませんが、分析の便宜上、アフィリエイトに近づけた想定にすると、テレビショッピング会社は、売れた掃除機の台数に応じてコミッションを受け取り、しかも、売買契約はメーカーと購入者との間に直接成立する、というのがわかりやすいかもしれません。

こういうケースだと、掃除機メーカーがテレビショッピング番組会社に「表示内容(例、テレビショッピング番組での台詞や実演)の決定を委ねた」ということで、表示内容(テレビショッピング番組での台詞や実演)には何ら具体的な指示や協議をしていない場合でも、表示内容の決定に関与しているものとして、掃除機メーカーがテレビショッピング番組での台詞や実演の表示主体になるのでしょうか?

上で引用した緑本の解説だと、

テレビショッピング番組であっても、広告主〔=「広告される商品等を供給する事業者」〕の商品を販売するための広告であることに変わりはない。」

といわれると確かにそのとおりなので、結論としては、

「〔テレビショッピングの〕広告主〔の〕・・・表示主体性についても・・・他の事業者に〔表示の内容〕の決定を委ねた場合等においては、表示内容の決定に関与しているものとして表示主体性が肯定される。」

なる、ということにならざるをえないような気がします。

でも、それってちょっと行き過ぎではないでしょうか。

アフィリエイトから少し遠ざけて、やや実態に近づけた想定としては、テレビショッピング番組会社は掃除機メーカーから掃除機を仕入れて、それを自己の番組で販売する、というパターンも考えられます。

しかし、上記のコミッションベースの委託販売の場合と、テレビショッピング番組会社による通常の買取の場合とで、掃除機メーカーの表示主体性に違いが出る、という理屈も立ちにくいように思われます。

そして、もしテレビショッピング番組での台詞や実演が掃除機メーカーの表示だ(∵掃除機メーカーがテレビショッピング会社に表示内容の決定を委ねているので)ということになると、スーパーのPOP表示や実演も、仕入れ先メーカーや卸の表示だ(∵仕入れ先はスーパーに表示内容の決定を委ねているので)、というところまで行ってしまうのではないでしょうか。

そうなると、商品を棚に並べただけではパッケージに不当表示があっても小売店は表示主体にならないのに、商品について小売店が行った表示(POP表示や実演)についてはメーカーは責任を負う、みたいなことになって、いかにもアンバランスなような気がします。

直感的には、

アフィリエイト広告は、広告内容に広告主が口を挟んでいようといまいと広告主の表示だ

けれど(この、「広告主の表示」における「の」がどういう意味なのかが実はとても重要なように思うのですが、ひとまず措きます。「広告主の表示」であって、「商品の表示」ではない、という点にも要注意です)、

テレビショッピング番組の台詞は、商品供給者(掃除機メーカー)が台詞の内容に口を挟んでいない限りテレビショッピング会社の表示だ

というのが何となく常識的な気がします。

この違いはどこからくるのでしょうか?

困ったときは条文です。

景表法2条4項は、「表示」を、

「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するもの」

と定義しています。

内閣総理大臣の指定は縛りになっていないので、表示は、

①誘引手段性

②供給主体性

③取引関連性

の3つからなる、といえます。

しかし、この3つの要素では、アフィリエイトとテレビショッピング番組を区別することはできなさそうです。

そこで、景表法5条柱書をみると、

「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。」

と規定されており、誰が「表示をし」たのか(表示主体性)の問題なのだ、ということが理解できます。

そして、緑本p55では、

「表示主体性が認められるか否かは、

過去から違反行為発生時点までの表示のやり方の状況、

当該表示の成立の経緯

表示についての経費の負担

表示の掲示・配布の状況など

の具体的事情を勘案して、「表示内容の決定に関与した事業者」に当たるか否かによって判断すべき」

とされています。

つまり、「表示内容の決定に関与した」かどうかは、文字どおり内容決定に関わったかどうかというだけではなくて、表示にまつわる様々な事情を総合的に考慮して決めるのだ、といっているようです。

でもよく考えてみると、これって、「表示内容の決定に関与した」という日本語の意味を超えていると思います。

たとえば、「表示のやり方」の決定に関与したのなら、まさに「表示内容の決定に関与した」ことになるのでしょうけれど、たぶんここで緑本がいいたいのはそういうことではなく、文字どおり、「やり方の状況」(たとえば、問題の表示がどのウェブサイトのどの部分にどのような形、見え方で表示されるのか、といった状況)を表示主体性の判断において考慮する、といいたいのだと思われます。

「表示の成立の経緯」というのは何を想定しているのかよくわかりませんが、表示の内容がどのように確定したのかの経緯において表示者が関与した事実という意味であれば、「表示内容の決定に関与した」そのものですが、それを超えることを想定しているように見えます(そうでないとあえて挙げるほどの事情ではないでしょう)。

「経費の負担」はかなり重要で、アフィリエイト広告に対して広告主が報酬を払う仕組みであった以上、広告主の表示主体性は当然に認められるべきだと思いますが、報酬の支払いを「表示内容決定への関与」と言っていいのか、言葉の問題として大いに疑問のありうるところです。

それに、今問題にしているアフィリエイターとテレビショッピングの区別として、この「経費の負担」の基準が使えるのかというと、これもなかなか微妙です。

アフィリエイト広告の場合は、前述のように、成功報酬型なので、広告主が表示についての経費を負担しているといいやすいでしょう。

これに対して、テレビショッピングの場合には、もし、掃除機メーカーがテレビショッピング会社に商品を販売するだけで番組作成のための経費を負担しないなら、確かに、表示についての経費を掃除機メーカーが負担しているとは言えず、テレビショッピング番組での台詞等は、掃除機メーカーの表示ではなく、テレビショッピング会社の表示である、ということになりそうです。

このように、経費負担を基準にするとアフィリエイトとテレビショッピングを常識的に区別することができそうですが、これを「表示内容の決定に関与した」に読み込むのは、やはりかなり無理がありそうです。

それに、もしテレビショッピングの場合に掃除機メーカーが番組放送の経費を負担していたら表示者になり、負担していなかったら表示者にならない、というのも、なんだかおかしな気がします。

掃除機メーカーからテレビショッピング会社への経済的利益の移転が、番組制作費用という名目でなされれば掃除機メーカーが表示者となり、通常より掃除機を安く仕入れることができる利益(値引き)という形でなされれば(掃除機メーカーは表示の経費は負担していないので)掃除機メーカーは表示者とはならない、というのも、ありうる解釈かもしれませんが、それなりの割り切りと合理的な説明が必要な気がします。

いずれにせよ、掃除機メーカーが番組制作費用を負担したら番組での台詞等の内容の決定に関与したことになり、掃除機を値引きで販売しただけなら台詞等の内容に決定に関与したことになる、というのは「関与」という日本語の意味からしてかなり無理な解釈だと思います。

「表示の掲示・配布の状況」については、むしろアフィリエイトの広告主のほうがテレビショッピングでの掃除機メーカーよりも「関与」が認められにくくなってしまいそうです。

というのは、アフィリエイトの場合、広告主とは無関係にみえるウェブサイトに表示が掲示されるのが通常であり、表示の掲示の状況からすると、広告主の広告っぽくないのに対して、テレビショッピング番組は(だれの広告かはさておき)誰がどう見てもその商品の広告だからです。

なので、ここでももし「表示の掲示・配布の状況」というのが、「表示の掲示・配布」の内容(どう掲示し、どう配布するか)の決定に関与したかどうかを考慮するという趣旨なら、場合によっては、表示内容の決定への関与そのものだということもありうるでしょう。

これに対して、ほんとうに、当該表示をどう掲示し、どう配布するかの決定だけに関与しただけなのだから表示内容の決定には関与していない、という場合もあるかもしれません。

ともあれ、緑本が挙げている「表示の掲示・配布の状況」というのは、文字どおり、表示がどのように掲示され、どのように配布されているのか、という客観的事実のことを意味しているのだと考えるのが、自然な読み方でしょう。

ここでも、掲示の状況だけをみれば、テレビショッピング番組のほうがいかにも宣伝っぽいので、掃除機メーカーの表示主体性は肯定される可能性がアフィリエイトの場合よりも高いように思われます。

ちなみに、興味があったので「もしもアフィリエイト」というアフィリエイトサービスプロバイダーのメディア(=アフィリエイトサイトのこと)登録ガイドラインを見てみたら、

「⾃然にアフィリエイトリンクに誘導するのではなく、アフィリエイトリンクをクリックするよう促す⾏為や表記」

は禁止事項とされていました。

たしかに、多くのアフィリエイト記事は、商品レビュー風の感想文であったり、類似商品のランキング形式であったりして、自然にアフィリエイトリンクに誘導する形のものが大半で、いかにも宣伝的なものとか、「ぜひこちをクリックして購入して下さい」といったような標記は、あまり見かけません。

もしそういう表記をしたら、このガイドラインに反するのでしょう。

つまり、善し悪しはひとまず措いて(ちなみに米国FTCのガイドラインでは、アフィリエイトは広告主との利害関係を明示せよとされています。)、日本では、アフィリエイトというのはむしろ広告主とは独立したように見せることが当然のこととされているみたいです。

このように考えると、「表示の掲示・配布の状況」という観点からは、アフィリエイトにおける広告主は、少なくともテレビショッピングにおける掃除機メーカーよりは、「関与」が認められにくい、ということになりそうです。

・・・というように、いろいろと考えてみると、表示の費用を負担している場合(アフィリエイト広告における広告主や、テレビショッピング番組制作費を負担している掃除機メーカー)には、表示内容の決定に関与していなくても、表示主体性が認められる、とするのが妥当な解釈のように思われます。

ただ、アフィリエイトのことを考えるといつも思うのですが、どうも、アフィリエイターは商品を販売していない(商品供給主体ではない)のでアフィリエイターに対しては措置命令が出せない、ということが、表示主体性の解釈をゆがめる原因になっているような気がします。

その例がここで議論したテレビショッピングの例で、たぶん、テレビショッピングの台詞等に不当表示があっても、よっぽどのことがない限り、掃除機メーカーの責任を問おうという発想にはならないのではないかと思われます。

なぜなら、テレビショッピング番組会社が商品を販売しているので、テレビショッピング会社に対して措置命令を出せるし、それで十分だからです。

これに対してアフィリエイトの場合には、アフィリエイターは商品を販売していないのでアフィリエイターには措置命令を出せない可能性が高いです。

(ただ、アフィリエイターも広告主と共同して商品を販売しているという構成も不可能ではないと思います。緑本p50では、金融商品販売代理店Aが金融商品販売業者Bの販売代理店となって金融商品選びについて消費者に無料でアドバイスをする場合、一般消費者と事業者A(販売代理店)との間に、金融商品の選び方のアドバイスという役務の「取引」が存在するとしているので、ここまでいえるなら、アフィリエイターも広告主と共同して商品を販売しているというところまであと一歩のような気がします。)

このように、アフィリエイターの責任を問えないので、広告主の責任を広く認める必要がある、という実務上の要請があるために、アフィリエイトにおいては表示主体性の認定がおおらかになりやすいように思います。

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