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2021年2月27日 (土)

「○○比2倍」という表現について

景表法上問題ないかとの質問をよく受ける表示のパターンの1つに、たとえば、

「新製品は有効成分が当社従来品の2倍入っています」

みたいな表現が問題ないと言えるためにはどのような条件をみたす必要があるのか、という質問があります。

製品誤差がないと仮定するなら話は簡単で、たとえば旧製品に有効成分が100ミリリットルあたり1グラム入っていたなら、新製品には2グラム以上入っていればよい、ということになります。

ところが実際には製品ごとに誤差がありうるわけで、これだけの事実では単純に2倍といえないことのほうが普通です。

一番単純に考えれば、平均だけを比べて、たとえば旧製品の有効成分が100ミリリットルあたり平均1グラム入っている場合には、新製品に2グラム以上入っていればいい、ということになりますが、製造誤差を考えると、平均だけを比べるというのは乱暴すぎます。

やはり、誤差(分散ないし標準偏差)を考慮して2倍といえるかどうかを判断すべきでしょう。

極端な場合、仮に旧製品から新製品で平均が2倍になっても、標準偏差も2倍になっていたら、平均が2倍になったというだけでは新製品のなかに旧製品の平均にも満たない成分しか含まれない製品がけっこうな数ある、ということが起こりかねません。

(このあたりは、正規分布のグラフを思い浮かべながら読んでいただければと思います。)

次に、標準偏差を考慮すべきとして、では信頼区間を1σでみるのか、2σでみるのか(σは標準偏差)、という問題があります。

(σの簡単な説明はこちらをどうぞ。)

このあたりは、消費者が「2倍」という表現をみてどの程度の期待をするのか、ということで決まるので、一概には言いづらいところです。

少なくとも、「雑貨なんだから1σでいいんじゃないか」とか、「人命にかかわりうる製品なので3σでなきゃいけない」というような、品質の誤差としてどれくらの幅まで許されるか、ということとは直接関係がありません。

(ただ、いかにも精度が高そうな商品の場合には、結果的に、消費者の期待値も上がる結果、誤差を厳しめに見ないといけない、ということはあるかもしれません。)

なので、決まったルールはないと言わざるを得ないのですが、

1σ 区間におさまる確率→ 約 68.27%

2σ 区間におさまる確率→ 約 95.45%

ということからいえるのは、1σでみると、信頼区間の下端(有効成分の下限)よりも少ない製品が全体の約15.9%(=(1ー0.6827)÷2)もあるので、それはちょっと多すぎるんじゃないかな、という印象を受けます。

これに対して2σなら、信頼区間の下端を下回る製品は全体の約2.3%(=(1ー0.9545)÷2)なので、まあこれくらいだったらいいか、という感じがします。

別に1σか2σでなきゃいけないという理由もなく、1.5σでも1.7621σでもなんでもいいのですが、とりあえず統計学でなじみがあるので、2σなら消費者庁にも文句をいわれないだろう、ということで、2σにしておきます。

以上を踏まえて、では、「2倍」という表現をするためには、どのような条件をみたせばいいのかというと、究極的には、

①新製品の信頼区間下端(μー2σ)の数値(有効成分量)が、旧製品の信頼区間下端の数値の2倍以上であること、

②新製品の平均値が、旧製品の平均値の2倍以上であること、

の2つの条件をみたせば良いと思います。

①だけでもいいかな、と少し思ったのですが、新製品の標準偏差が旧製品の標準偏差よりずっと小さくなった場合(正規分布の釣り鐘型がとんがった形になった場合)を考えてみると、①だけだと、新製品の中で旧製品を下回る有効成分を下回るものが大量に出てきそうなので、やっぱり平均値2倍(②)は外せないと思います。

これに対して、もし旧製品と新製品で標準偏差が同じであるなら(ないしはそのように合理的に仮定できるなら)、単純に平均値が2倍以上になっていればよいと思います。

中にはすごく厳しい見方をする人もいるみたいで、そういう人は、

③「新製品の95%信頼区間の下限が、旧製品の95%信頼区間の上限を上回っている必要がある」(釣り鐘の信頼区間の部分は重なってはいけない)

とおっしゃるのですが、個人的には、少なくとも理屈の上ではそこまで厳しいことを言わなくてもいいんではないか、と思っています。

ですがこれも具体的な場面で考えてみると、もし上の①②をみたしていながら③をみたさない場合があるとすると、それは標準偏差がかなり大きい商品です。

そういう商品で、そもそも「2倍」というような数字を示すこと自体が妥当なのか、という問題は、大いにあると思います。

なので、「2倍」というような、数値で比較した情報を広告に使う場合には、そもそもの前提として、品質のばらつきが小さい製品に限って使う、ということが必要でしょう。

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