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2021年2月28日 (日)

将来価格ガイドラインのパブコメを読んで

「将来の販売価格を比較対照価格とするこ重価格表示に対する執行方針(案)」に関する御意見の概要及び御意見に対する考え方

を読んで気がついたことをメモしておきます。

最初に全体的な印象としては、今回のパブコメ回答を読んで、消費者庁はパブコメに対して正面から答える姿勢があって、これはたいへんすばらしいな、と思いました。

公取委と比べると、ずいぶん消費者庁は誠実だと思います。

景表法の課徴金ガイドラインがでたときのパブコメでも、公取委の木で鼻をくくったような回答に慣れていた身からすると、「消費者庁は役所なのにずいぶんちゃんと答えるんだなぁ」と感心したものですが、今回のパブコメで、課徴金のときのも別に担当者の個性が原因だったのではなく、役所としての体質の違いなのかな、と思い始めました。

とくに、公取委の個人情報優越ガイドラインのパブコメ回答なんて、(私もパブコメ出しましたが)ほんとうにひどかったです。

どうしてこういうことになるのか考えてみると、公取委は、独禁法という重い看板を背負ってしまってる上に、過去の膨大な(中には不合理な)蓄積がある中で、必ずしも一刀両断の回答ができない事情なんかもあって、さらに回答が一般化されやすいという独禁法の性質もあり、「変な回答したら企業に揚げ足をとられる」という気持ちが強いんじゃないか、と想像します。

それに対して消費者庁は、不当表示はやめましょうという、あまり関係者に異論のでにくい(あっても、胸を張って言いにくい雰囲気のある)景表法という法律をあつかっているので、正々堂々清々しい答えができるんじゃないか、と想像します。

さて前置きが長くなりましたが本題に入りますと、p1の

「「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示」とは、各事例にあるように「O月O日からは△円になります」と将来の販売価格を明示した場合に限るのか。「当店通常販売価格○○円、10月31日まで△△円」と表示したとき、消費者は、11月1日以降は通常販売価格である○○円に戻ると認識することから、このような場合も将来の販売価格を比較対照価格とするこ重価格表示になるのではないか」

という、いかにもありそうな質問に対して、

「御指摘のような表示は、一般的には過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示と考えられますが、当該表示が行われている具体的な状況によっては、将来の販売価格を比較対照価格と暗示した二重価格表示でもあるとみられる可能性もあります。」

と回答されています。

要は、「通常」といえば、ふつうは過去の実績ある価格を指すだろう、ということです。

将来の価格なら、将来の価格とはっきり分かるように書きましょう。

そうしないと、過去の価格とみなされて、さかのぼる8週間の過半等(8週間ルール)をみたさないのでアウト、ということになってしまいます。

そもそもまだ売ってもいない将来価格を「通常価格」と呼んでいいのか、というp3で質問されていて、消費者庁は、

「本執行方針の第1に記載のとおり、商品やサービスの販売実績がない場合は、販売実績がある場合と比較して「通常価格」、「値下げ」、「プライスダウン」と表現するための確定した事実に乏しいと考えられますので、このような表現は消費者への適切な情報提供の観点から適当ではないと考えられます。」

と回答されています。

「適当ではない」というのが、悩みがよくでていますが、将来価格が「通常」だ、ということは論理的にはありうるわけで、「違反である」と言いきれないのは仕方ないのでしょうね。

p5で、将来価格を比較対照とする場合には、A過去価格が存在する場合と、B.存在しない場合があるがいずれにも本指針が適用されるのか、という質問に対して、いずれにも適用されると回答されています。これも、ひょっとしたら疑問が生じるかも知れない、大事なポイントです。

p9に、

「価格表示ガイドラインが「表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないとき」の例として挙げる「実際に販売することのない価格であるとき」に、「市場価格からみて相当高額であって売れそうにない」場合は含まれるか。」

という、たいへん鋭い質問がなされ、これを受けてガイドライン原案p2に、

「・・・比較対照価格とされた将来の販売価格が当該将来の販売価格での購入者がほとんど存在しないと考えられるほど高額であるなど一般的な価格ではない場合のように、比較対照価格の根拠を形式的に整える手段として当該価格で販売するものであるとみられるような場合には、「比較対照価格とされた将来の販売価格で販売する」とはみられないものである。」

という追記がなされました。

正面からこう聞かれたら消費者庁としてはこう答えざるを得ないだろうという、実に鋭い質問であり、消費者庁が上記追記をしたのも理解できなくはないのですが、理論的にはこれはけっこう難問です。

まず、極めて高額な将来価格(たとえば、「クリアホルダ1枚10万円」)であっても、現に比較対照として表示している以上、消費者には誤認はないのではないか、という疑問です。

これを不当表示というためには、

「その比較対照価格で購入する人がそれなりに存在するのだ(=「ほとんど存在しない」わけではない)」

と消費者が誤認したことが問題だ、といわざるをえなくなりますが、一見して極めて高額とわかる価格なら、わかっているので「誤認」はない、ということになりそうですし、一見して極めて高額とはわからない価格なら、現にその比較対照価格で販売している以上、結果的にほとんど売れなかったとしても、だからといって不当表示になるわけではない(∵表示に何も嘘はないので)と思われます。

事業者の立場からしても、これをいわれると、結果的に売れなかっただけで違反になりそうで、怖いものがあります。

ところでそもそも論ですが、私は、ガイドラインが違法か適法かの基準として採用している、

「合理的かつ確実に実施される販売計画」

というのが正しいのか、やや疑問に思っています。

というのは、「確実に実施される販売計画」であればいいのではないか、と思うのです。

せいぜい、「合理的に確実に実施される販売計画」でしょう。

販売計画の内容が合理的でないといけない理由が、正直、いまひとつわかりません。

ともあれ、極めて高額な将来価格がだめだというのは、そのような価格での販売計画は、「合理的・・・〔な〕販売計画」にあたらない、と説明することになるのでしょう。

結果的に、追加部分はガイドライン内の論理的整合性を保っているとはいえそうですが、私はそもそもなぜ「合理的」でなければならないのかよく理解できないので、やっぱり、極めて高い価格だとだめだという理由も、よく理解できません。

(この点は面白い問題なので、またゆっくり考えてみます。)

ほかにこの追加部分を正当化する理屈としては、極めて高額の比較対照価格を表示することで、その商品があたかもそれだけの価値があると消費者に誤認させるのだ、という理屈があるかも知れません。

でもこれも考えてみると、過去価格の二重価格表示の場合だって「その商品があたかもそれだけ(=過去価格)の価値がある」と消費者に誤認させるのがいけないわけで、過去価格の場合にはいくらそれが極めて高い価格であってほとんど買う人がいない場合であっても、実際にその価格で販売に供している以上は違反にはならないのに、将来価格の場合には実際に販売に供していても「極めて高額」というだけで違反になる、というのは、理屈に合わないような気がします。

というわけで、この追加部分は、鋭い質問を受けた消費者庁の背筋が伸びて、「なかなか鋭い。そのとおりだ!」と思ってしまい、それ以上の批判的検討をしなかった(しかも、一見それらしく見える指摘である上に、規制を強化する方向の追加なので抵抗感もなかった)、ということなのではないか、と思います。

なのでこの追加部分は私はまちがいだと思いますが、実務上は、あきらかに売れないと分かりながらべらぼうに高い将来価格を付けるのはやめるべきでしょう。

反対に言えば、そんなべらぼうな価格ではなくて結果的に売れなかった、というだけなら、違反にはならないというべきでしょう。

p10で、「一般的な場所とはいえない場所に商品を陳列する」場合の意味について、

「個別の事情にもよりますが、インターネット通販サイトにおいてセール価格で販売された商品が、セール期間経過後においても当該サイトで検索等を行うことにより、他の商品と同様に容易に購入可能であるようなものであれば、販売場所が一般的なものとはいえないという理由で「将来の販売価格で販売していない場合」とみられることは通常ないものと考えられます。」

と明確化されたのはよかったですね。結論も妥当だと思います。

たとえば、セール中はその商品をホームページのトップに掲載していたけれど、セール後はそのようにしなくても検索して普通に探せればOK、ということです。

p12の最後に、原案(注3)の、

「(注3)セール期間については、合理的かつ確実に実施される販売計画を有している事業者であれば、当然これを確定させており、将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示の中で具体的なセールの期間や期限を示していると考えられる。したがって、事業者が、例えば「現在セール中にて300円、セール終了後は500円」といった、具体的なセールの期限を示さないで将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示を行っている場合には、通常、そのこと自体により、合理的かつ確実に実施される販売計画を有していなかったことが推認される。」

という記載が問題ではないか、終了時期を明示するかどうかは事業者の自由とすべきではないか、というコメントがあり、「推認される」が、

「・・・強く疑われることから、具体的なセールの期間や期限を示すことが望ましい。

というように変更されました。

これは、「推認される」という、立証責任を意識した法律用語から「強く疑われる」という通常の日本語になったのと、「望ましい」というマイルドな表現になったことから、原案から緩くなったような印象もありますが、パブコメ回答を読むと、必ずしもそうではありません。

この回答は今回の回答中でも一番力の入っている回答なので引用すると、終期の表示を義務づけるべきではないとのコメントに対し、まず消費者庁は、

「セール期限が事業者内で決まっており、それを変更するつもりがないにもかかわらず、明示しないとする合理的な理由はないものと考えます。

また、セール期限が事業者内で一応存在していたとしても、それが明示されていない場合は、事業者がセール期間中に当該期限を恣意的な判断により変更しても、外部の者がそのことに気付くことは通常ないため、セール期限が明示されている場合と比較して、当初の販売計画をそのとおりに実施するよう事業者が自らを規律する仕組みが不十分になると言わざるを得ません。」

と述べています。

ここでいっていることは、まことにごもっともです。

その上で消費者庁は、

「そのため、セール期限が事業者内で存在していても、それが消費者に明示されていない場合は、当該期限のとおりセールが終了し、比較対照価格とされた将来の販売価格で販売が行われることを確実に担保する他の仕組みが存在すれば格別、一般的には、合理的かつ確実に実施される販売計画であると認められるための重要な要素を欠いている疑いが強いと考えられますので、この点がより明確になるよう以下のとおり修正しました。」

と言っているのです。

つまり、だめであることをよりはっきりさせた、ということです。

というわけで、原案から緩くなったというよりも、むしろ厳しくした、というのが消費者庁の意図のように思われます。

少なくとも、

「実際に終了時期は決めていないのだから、終了時期を表示しなくても事実と異なることはなく、不当表示とはならない。」

という主張は、「合理的かつ確実に実施される販売計画」の要件をみたさないので認められなさそうです。

もし終了時期を表示しない場合でも、内部的にはいつセールを終わらせるかは決定しておく必要があり、実際に、その時期に終了させる必要があるでしょう。

そうだとすると、事業者にとっても、終了時期を表示しないことのメリットというのがあまりなく(通常は、終了時期を明示したほうが煽る効果が生じやすい)、表示しないとそれだけで消費者庁から「強く」疑われるリスクがあることをふまえると、今後は、終了時期を明示しない将来価格の二重価格表示というのは、基本的に行われなくなるでしょう。

p19に、

「第2の2(2)イ(ア)にある「将来の販売価格で販売できない特段の事情が存在すると認められる事例」のA、B、D、E、F及び同(イ)の「将来の販売価格で販売できない特段の事情が存在するとは認められない事例」のIは、セール期間終了後に予告していた価格での販売自体をしなかった事例」

についてのコメントがあります。

たとえば、Iの事例というのは、

「I通信販売業者が、「エアコン ただ今限りのセール特価38,000円 8月以降48,000円」との表示を5月から開始していたところ、セール開始後の気温上昇による一般的な需要増の結果、売行きが増加して在庫が売り切れたが、追加仕入れをしなかったため、セール期間経過後の8月以降にエアコンを販売しなかったとき。」

というのが、「通常、将来の販売価格で販売できない特段の事情が存在するとは認められない」例としてあげられている、というものです。

私は、ここはパブコメのコメントのほうが正しくて、ガイドラインはまちがっていると思います。

というのは、

「エアコン ただ今限りのセール特価38,000円 8月以降48,000円」

がなぜ不当表示になりうるのかといえば、8月以降48,000円で販売されるからではなく、特価の38,000円では購入できなくなるからでしょう。

今ならお得だと思うからかったのに、別にお得でなかった、というわけで不当表示になるのです。

なので、「8月以降は48,000円になるんだ」と消費者に思わせておいて、たとえば実際には8月以降は10万円で売ったら、セール中に38,000円で買った消費者は、思っていた(8月以降は48,000円)よりも実はもっとお得だったと感じる(∵8月以降は10万円に値上がりしたので)のではないでしょうか?

そう考えると、8月以降に「販売しなかった」というのは、理屈の上では、8月以降は∞円で販売に供した、というのと同じですから、10万円で売ったのと同様、不当表示にはならないと思うのです。

もしこの事例が、実はもともと8月以降売る気がなかった、という事例なら、あるいは不当表示とするのにも合理性があるかもしれません。

ちょっと似たような事例で、ジュピターショップチャンネル株式会社に対する件(H31.3.29)で、テレビショッピングで「明日以降」の比較対照価格を表示していた場合に、

「実際には、本件2商品の各商品がセール企画終了後に販売される期間は2日間又は3日間のみであって、ごく短期間のみ「明日以降」と称する価額で販売するにすぎず、当該価額での販売実績もジュピターショップチャンネルにおいて実質的に問われないものであって、将来の販売価格として十分な根拠のあるものとは認められない。」

ということで不当表示になったことがありました。

これは2日とか3日という短期間であったというのが本質ではなく、仮に1か月販売していても本気で売る気がなかった場合は「販売実績も・・・実質的に問われない」ということでアウトだった可能性があります。

こういう例ならわかるのですが、ガイドラインのIのエアコンの例は、

「売行きが増加して在庫が売り切れたが、追加仕入れをしなかった」

ということなので、はじめから売る気がなかったわけではなさそうです(むしろセール中売れ行きが増加しなければセール後も売っていたであろうことをうかがわせる)。

もしこういう、表示した比較対照価格より高く売る(∞円で売るのを含む)ことを不当表示だと言い出すと、たとえば期間限定セールを延長した場合だけでなく、予定期限よりも早く終わらせた場合や、閉店セールを予定期限よりも早く終了した場合にまで不当表示になりかねず、影響が大きすぎます。

たしかに、期間限定セールを予告より早く終わらせると、「まだ間に合う」と思っていた消費者が買い損ねて(あるいは予定より高く買わされて)不利益を受ける、ということはあるかもしれませんが、二重価格表示はお得だと思わせて実はお得ではないというのがいけないのであって、こういう場合はなにも誤認していません。

なぜなら、取引時点では二重価格表示をそもそもしていないからです。

このような誤認は、「以前の表示を信じて購入しようとしたら、現在はその条件で購入できなかった」というだけであり、購入時点での「お得と思わせてお得でなかった」という誤認はないのです。

なので、ガイドラインの例は、売ると言った以上は売るべきだ、という意味では理解できますが、やはり、不当な二重価格表示として処理するのは無理があると思います。

p24に、2週間だけ売ったら値下げしてもいいのか、という質問がたくさん寄せられていますが、これに対して消費者庁は、

「一般的には、セール自体の期間にかかわらず、比較対照価格とされた将来の販売価格での販売が2週間以上継続されれば「ごく短期間」であったとは考えられませんが、本執行方針第2の1に記載のとおり、合理的かつ確実に実施される販売計画を有しているかどうかが問われることになります。将来の販売価格は、将来における需給状況等の不確定な事情に応じて変動し得るものですので、長期間のセールを実施した後に、比較対照価格とされた将来の販売価格で販売することができるかどうかの検討が必要となります。

なお、長期のセールを行った後に将来の販売価格での販売期間を2週間実施するということを何度も繰り返したことにより、そのことが消費者にも認識され、将来の販売価格で購入する消費者がほとんどいなくなっているような状況においては、当該将来の販売価格での販売が「比較対照価格の根拠を形式的に整える手段として」行われているとみられる可能性があることに注意する必要があります。

と回答しています。

ここで、

比較対照価格の根拠を形式的に整える手段として

というのは、ガイドラインp7の、

「・・・比較対照価格とされた将来の販売価格で販売する期間がごく短期間であったか否かは、そもそも当該将来の販売価格での販売が、比較対照価格の根拠を形式的に整える手段として行われていたものではないかなどにも留意しつつ、具体的な事例に照らして個別に判断されるが、一般的には、事業者が、セール期間経過後直ちに比較対照価格とされた将来の販売価格で販売を開始し、当該販売価格での販売を2週間以上継続した場合には、ごく短期間であったとは考えられない(注6)。」

にありますね。

つまり、2週間売れば、「一般的には」大丈夫だけれど、長期のセールをやって、2週間だけ値上げして、また長期のセールをやって、2週間だけ値上げして、ということを繰り返していると、さすがにだめだと言うことでしょう。

2週間というのだけみると結構短いなあ(こんなのでいいんだ)、と思われた方も多いと思いますが、やっぱり度が過ぎるとだめだということですね。

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