作用機序の虚偽表示と不当表示
健康食品や健康器具などで、表示したとおりの効果がない場合には、優良誤認になるのは当然です。
では、表示どおりの効果はあるけれど、その効果の発生のメカニズム(機序)について、事実と異なった表示をしていた場合、不当表示になるでしょうか。
私は、そういうのも不当表示になりうると考えています。
ただ結論だけ、「○○に効く」という結論を述べただけでは説得力が弱いときに、「○○が放出する××が身体の△△に作用して効く」という作用機序まで表示されると、効きそうな気がする、というのが消費者の心理だと思います。
少なくとも、結論だけ表示している事業者と、作用機序まで具体的に表示している事業者がいる場合、後者のほうがお客さんにアピールしてよく売れそうです。
もし作用機序がよくわかっていない商品についてこういう表示がなされているのを放置したら、やっぱり消費者の合理的な選択を阻害していることになると思います。
景表法においては、客観的な品質や性能というのは意味がない、とは言いませんが、それよりも、その商品が良さそうに見えるかどうか、ということが大事だったりします。
たとえば、「有名人の○○が愛用している」と表示していたのに実際には愛用していなかった、という場合には、それだけで不当表示になりえます。
むかし、「炭火焙煎コーヒー」と表示しながら、実はガス焙煎していた、という事件がありましたが、そこでは、炭火焙煎とガス焙煎のどちらがおいしいかということは問題にされず、消費者の目からみてどちらのほうがよりよいものに見えるか、ということが重視されます。
わたしが以前かかわった消費者庁の調査案件でも、事業者が「江戸時代から伝わる伝統の製法」みたいな表示をしていたところ、消費者庁から、実際にそのような製法で作っているのか、その製法は江戸自体から続いているのか、といったようなたぐいの質問を受けました。
世の中には、論者によっては「えせ科学」呼ばわりするけれど、世の中では比較的幅広く受け入れられている商品というのが、あんがいあります。
そういう場合には特に作用機序を具体的に書きたくなるわけですが、いまだ仮説にすぎないものをさも真実であるかのように表示することは、やはり問題だと思います。
こういうのをはじめとして、不当表示の事件が争いになると当事者からは、「このような表示は消費者の選択に影響を及ぼさない」という反論がよく事業者側からなされるのですが、常識的に考えて、「では、どうしてそういう表示をしたの? 売れると思ったからじゃないの?」という疑問がただちに湧きます。
そして、それが裁判官の通常の感覚だと思います。
なので、よほどその表示がたんなるミスだったという事情でもないかぎり、消費者の購買意欲に影響があると考えたからその表示をしていたのだろうという推定をくつがえすのは難しいといえます。
そのようなこともあり、結果的に効果があるならその作用機序の表示は虚偽でもよい、とはなかなかいえないと思います。
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