JAROでの西川表示対策課長の講演について
2020年12月号のReport JARO(JAROの会員誌)に、消費者庁表示対策課の西川課長の講演録が載っており、その冒頭で西川課長は、
「しかし、重要なのは措置命令の件数や課徴金の金額を増やすことではなく、表示適正化の意識をいかに広めていくかということです。
行政が動く前に、自発的に正しい表示が行われている状態こそが本来あるべき姿です。
社会全体にそうした意識を広げるために、今後は景品表示法の抜け道ばかり探すような悪質事業者に対しては厳しく、他方、適性表示に真剣に取り組む事業者の方々とは、互いに協力していくというメリハリのある運用を行っていきたいと思います。」
と発言されています。
これは非常に大切なメッセージだと思います。
とくに、
「適性表示に真剣に取り組む事業者の方々とは、互いに協力していく」
という部分は、事業者がミスで不当表示をしてしまった場合にはすみやかに対応すれば措置命令は出さない、というように私には読めます。
というのは、前の課長さんのときは、不当表示を見つけ次第消費者庁に自主申告したら措置命令を受けたという事案が相次いだので、私も依頼者には、
「もし不当表示が見つかっても、消費者庁に申告したりしたら措置命令受けるから、自主申告なんかしないで、こっそり表示なおしたほうがいいですよ。」
とアドバイスせざるを得ませんでした。
独禁法の課徴金制度をコピペしたために、景表法でも、措置命令を出すときには課徴金が義務的に課されることになったのが消費者庁の運用に心理的に影響していたのかも知れませんし、なにより、自主申告して課徴金を半額にするという制度が正式に導入されてしまったために、正式な制度で半額なのに任意の措置(注意)でゼロにまで落とすわけにいかない(?)という発想がはたらいてしまっているのかもしれません。
といったような事情は推測できるものの、いずれにせよ、大して重い違反でもなく、どちらかというとうっかりミスみたいな不当表示で、たいした性能上の問題もなく、違反が見つかったらすぐに対応して、希望する購入者には返金にも応じているのに、消費者庁に報告に行ったら措置命令と課徴金を受ける、というのでは、申告するインセンティブがなくなってしまいます。
もちろん、前の課長さんの時代にも、自主申告してきたのに対して注意ですませたという事件が、実はたくさんあったのかもしれません。(外から見ているだけなのでわかりませんが。)
でもやっぱり、「こんなうっかりミスみたいな事件でも申告したら措置命令なのか?」と驚くような事件が続いたのは事実ですから、この運用を変えるというのは重要なメッセージだと思います。
過去の例は残るので、課長さんが変わってこういうメッセージを出したからといって、どれだけの企業が行動を変えるのかは未知数ですが、少なくとも弁護士としては、消費者庁に申告してけじめを付けるかどうか迷っている依頼者に対して、前向きなアドバイスをできる材料がいただけたな、と思います。
少なくとも、
①こっそり不当表示をなおしてあとで消費者庁にみつかって措置命令を受けるリスクと、
②最初から消費者庁に申告することで措置命令を受けてしまうリスクと
を比較するときには、後者のリスクが下がれば下がるほど(最初から申告すれば注意ですむ可能性が高まるほど)、最初から申告しようという気になるのはまちがいないと思われます。
それから、毎年出ている景表法運用に関する報告書(「○○年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組」)では、注意の事例も対象企業の名前を伏せて公表されていますが、その中に、「事業者から自主申告があったので注意にとどめた」みたいなことを書いていただくと、一層よろしいのではないかと思います。
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