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2021年1月18日 (月)

製造を受託して役務提供を委託する下請取引

下請法上の製造委託は、おおまかにいって、①販売するための製品の製造を委託(類型1)、②受託した製品の製造を委託(類型2)、③受託した修理に必要な部品等の製造の委託(類型3)、④業として製造する自己使用製品の製造の委託(類型4)、です。

そのうち、オーソドックスな製造委託である類型1と2は、親事業者が自分の顧客に引き渡すのは「製品」であり、下請に製造させるのは「製品」やその部品等で、いずれも「モノ」と「モノ」です。

これは他の下請取引でも基本的には同様で、役務提供委託は、親事業者が顧客に提供するのも、下請事業者から提供を受けるのも「役務」ですし、情報成果物作成委託では、親事業者が顧客に提供するのも、下請事業者から提供を受けるのも「情報成果物」です。

(ただ公取委の解釈では、情報成果物作成委託の「提供」には「商品の形態,容器,包装等に使用するデザインや商品の設計等を商品に化体して提供する場合(例:ペットボトルの形のデザイン,半導体の設計図)も含まれる。」(令和2年下請法テキスト10頁)とされていますが、この解釈が間違いであることは以前このブログで書きました

条文を確認してみましょう。

製造委託は下請法2条1項で、

「事業者〔=親事業者〕が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品,部品,附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型

又は

業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料

製造を他の事業者に委託すること

及び

事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品,部品,附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること」

と定義されており、親事業者が受託する(または業として自らする)のも、委託するのも、物品等の「製造」です。

(ただし類型3だけは、受託が「修理」で委託は「製造」で食い違っており、唯一の例外です。)

修理委託は2条2項で、

「事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること

及び

事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託すること」

と定義されており、親事業者が受託する(または業として自らする)のも、委託するのも、「修理」です。

情報成果物作成委託は2条3項で、

「事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること

及び

事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」

と定義されており、親事業者が受託する(または業として自らする)のも、委託するのも、情報成果物の「作成」です。

役務提供委託は、

「事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること・・・」

と定義されており、親事業者が受託するのも委託するのも「役務」です。

なので、親事業者がその顧客から物品の製造を請け負っている場合に、親事業者が下請事業者に役務提供を発注することは、役務提供委託にも、製造委託にもあたりません。

このことが端的に表れているのが下請法講習テキスト(令和2年11月版)のp15の注2(「「情報成果物の作成」と「情報成果物の作成に必要な役務の提供」について」)で、そこでは、親事業者が顧客から情報成果物の作成を受託して、その情報成果物の作成に必要な役務の提供を発注することは、役務提供委託にも情報成果物作成委託にもあたらないことが明示されています。

たとえば、最終的な情報成果物(親事業者が顧客に納入する情報成果物)が「放送番組」の場合、その放送番組の一部を構成する「タイトルCG」の作成委託は情報成果物作成委託にあたるけれど、その放送番組の「監督」の役務を監督さんに委託することは、「最終的な情報成果物の作成に必要な役務」の委託であって、

「委託事業者が他者に提供する情報成果物の作成に必要な役務である場合に,当該役務の提供を他者に委託することは,本法の対象とならない」

とされ、かかる役務提供の委託には下請法は適用されないとされています。

なお細かいことをいえば、情報成果物の作成に「必要な」役務であるかどうかは問題の本質とは関係がなく、要は、条文どおり、親事業者が受託するのが情報成果物作成なら、委託するのも情報成果物作成でなければならない(「必要な」かどうかは、論理的には下請法の適用不適用に関係がない、あるいは、不要な場合に下請法の対象にならないのは当然のこととして、「必要な」場合でも対象にならないのだから、「必要な」という文言は無意味)ということです。

そこでたとえば、親事業者が顧客から特殊な設備の清掃を受託し(役務提供の受託)、その清掃に必要な特殊な工具の製造を下請事業者に委託しても(物品の製造の委託)、製造委託にはあたらず、もちろん役務提供委託にもあらたらず、下請法の適用はないことになります。

ただし、委託しているのは役務っぽくっても、製造の行為の一部であるとみなされて製造委託になることはあります。

たとえば下請法テキストp21のQ11では、

「Q11: 工場内における運送作業を外部に委託する取引は,「製造委託」と「役務提供委託」のどちらに該当するか。

A: 運送は役務の提供に該当する行為であるが,同一工場内における製造工程の一環としての運送(ライン間の仕掛品の移動等)を他の事業者に委託することは,製造委託に該当する。」

とされています。

これは、一見、役務の委託(運送作業)っぽくっても、製造の委託であるとみられることがある、という例です。

これに対して、工場内の運送業務の委託ではなく、倉庫から工場までの運送業務の委託なら、純粋な役務の委託なので、製造委託には該当しないでしょう(親事業者が受託しているのが物品の製造なので、もちろん役務提供委託にもあたりません)。

では、工場の同じ敷地内の、資材置き場から製造ラインまでの運搬はどうでしょうか。

微妙なところですが、「同一工場内における製造工程の一環としての運送(ライン間の仕掛品の移動等)」というテキストの文言からすると、同一工場内なら製造委託になるのでしょうね。

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コメント

「③受託した修理に必要な部品等の製造の委託(類型3)」とありますが、③は本当に「受託した」修理に必要な…でしょうか?。自社で使っている製品の修理を業としてやっている場合であって、その修理に必要な部品の製造を委託するものですから、「受託した」と表現は適切ではないと感じます。

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