景表法の講演の反省点
先日、以前に私の景表法の講演を聴いたという方から、
「先生が以前講演でお話しされてた、『予想以上の売れ行きで生産が間に合いません』という広告が景表法違反になったという事件がありましたが、『生産が間に合いません』という表示はNGということなのでしょうか?」
というご質問のお電話をいただきました。
この事件は最近の(といっても大元課長時代の)消費者庁の活発な規制を象徴する事件としてたびたびセミナーで紹介しているCDグローバルの葛の花イソフラボンの事件です。
この事件では、実際には注文の予想を立てていないのに「予想を上回る注文をいただき生産が間に合いません」みたいな表示をしていたのが景表法違反になりました。
私はいつも講演では、景表法では表示と実際の不一致が不当表示になるので、表示と実際が一致していれば不当表示にはなりませんということを強調していたので、このようなお電話での質問を受けて、やっぱりそれでも強調が足りなかったのかなあと反省しました。
なので、「ほんとうに予想を上回る注文があったなら問題ないのですよ。」とご説明しました。
法律のアドバイスではよく、「NGワードは何ですか?」というような質問を受けることがあり、表示関係の法律でもたとえば薬機法などでは、これはとにかくアウト、というNGワードがあるので、事実(実際)しだい、という景表法のほうが、企業の方にしてみればむしろ珍しいのかもしれません。
なので、そのような景表法の特徴(常にだめなNGワードのようなものは存在しない)を、これからもわかりやすく伝えていかないといけないな、と思いました。
確かに実務上は、危ない橋を渡らないために、この表現はNGみたいな定め方をする企業もありますが、リスクの予防として一律使わないこととしているだけなのと、法律の解釈としてだめなのとでは、ぜんぜん意味が違います(少なくとも弁護士にとっては)。
ただあとになって考えてみると、あの回答でよかったのかなぁと、さらに反省しました。
というのは、こういうアドバイスを受けた相談者がやりそうなこととして、売上をあえて少なめに予想しておいて、いわば品薄を煽って、「予想を上回る注文をいただき生産が間に合いません」という表示をする、ということがあるんじゃないか(ひょっとしたら電話してきた人も、それを考えていたんじゃないか)、と思いついたからです。
これはなかなか微妙ですね。
ともかく「予想」を立てているのだから、その「予想」を上回ってさえいれば、「予想を上回る注文」といっても、うそではないともいえそうです。
ただ、最初から品薄になることを見越して立てた予想なんてそれ自体がうそなのであって、はたして意味があるのか、という気もします。
そうするとやっぱり、「予想はきちんと合理的に立てないといけないですよ。」とアドバイスすべきだったかなぁ、と思います。
こんな具合に、景表法というのは法律自体は何も難しくないのですが、アドバイスのしかたに気をつかうというか、相談者が何をしようとしているのか推測しながら答えないとあぶないなぁ、と思います。
まあ、普段からお付き合いのある依頼者の方々の場合は、事務所でじっくりお話を聞けますし、こちらも先方のビジネスや社風をある程度わかっているので、そんな腹の探り合いのようなことをする必要はないのですが、セミナーの終わりにちょこっと質問しに来られる場合とか、気をつけないと危ないかも、とあらためて思いました。
ともあれこのような形で講演についてご質問をいただくと、こちらも、こういう点が誤解されるのだとよく理解できます。ご質問いただいた方には感謝したいと思います。
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