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2020年9月 4日 (金)

#「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書」に反対します。 (その2)

前回に引き続いての、掲題報告書についてのコメントです。

報告書を読んでいて気づいたのですが、24時間営業に関する記述は、他の取引条件に関する記述とバランスが取れていないという点でも問題があると思います。

たとえば、「6 採算の取れない新規事業の導入」(p144)では、

「フランチャイズ・ガイドライン3(1)アでは,

「取引上優越した地位にある本部が加盟者に対して,フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施するために必要な限度を超えて,例えば,次のような行為等により,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には,本部の取引方法が独占禁止法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)に該当する。」

としている。

(フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更)

○ 当初のフランチャイズ契約に規定されていない新規事業の導入によって,

加盟者が得られる利益の範囲を超える費用を負担することとなるにもかかわらず,

本部が,新規事業を導入しなければ不利益な取扱いをすること等を示唆し,

加盟者に対して新規事業の導入を余儀なくさせること。」

とされています。

つまり、採算の取れない新規事業の導入については、

「フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施するために必要な限度を超えて」

いるという要件と、

「加盟者が得られる利益の範囲を超える費用を負担することとなるにもかかわらず・・・加盟者に対して新規事業の導入を余儀なくさせる」

という要件をみたす場合に優越的地位の濫用になる、ということです。

しかしよく考えてみると、採算の取れない新規事業の導入は、少なくとも契約書に書かれていないことをさせるという点においては、契約で義務づけられている24時間営業に比べれば、より店舗に対する不利益(あらかじめ計算できない不利益)が大きいはずです。

もちろん、ちょっとだけ採算割れの新規事業と、ものすごく採算割れになる24時間営業(たとえば、深夜にはほとんど客の来ない店舗の24時間営業)とで、どちらが不利益が大きいか、といえば、24時間営業の方が不利益が大きいかもしれません。

(なお、24時間営業の深夜営業だけをみるべきではなくて、24時間空いていることによる安心感や利便性やブランドイメージから24時間営業により店舗の利益が全体として(昼間の営業分も含めて)増えているはずだ、なので、深夜営業だけ切り出して利益・不利益を論じるのは適切ではない、という議論は当然ありうるし、おそらく正しいのだと思いますが、事実認定の問題でもありますし、ここではこれ以上深入りしないこととします。)

でも、いずれの不利益が大きいかは、新規事業の内容と各店舗が置かれた事情しだいなので、一律には決まらず、どちらの不利益が大きいこともありうる、といえます。

ということは、類型的に24時間営業の方が不利益が大きいと判断する理由は何もなく、かえって、24時間営業のほうは契約書に明記されていることからすると、24時間営業のほうが一般的には不利益性が小さい、と考えるのが当然だと思います。

とすれば、不利益の小さい24時間営業のほうが違法になりにくい、というルールでないと、バランスが悪いでしょう。

それに、

「フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施するために必要な限度を超えて」

の要件については、24時間営業はコンビニの代名詞ですから、24時間営業がコンビニの営業を的確に実施するために必要な限度を超えているというのは、新規事業が必要な限度を超えているというのよりも、ずっとハードルが高いように思います。

ところが、報告書では、24時間営業については、前回も説明したとおり、

「本部と加盟店とで合意すれば時短営業への移行が認められることになっているにもかかわらず,本部がその地位を利用して協議を一方的に拒絶し,加盟者に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には優越的地位の濫用に該当し得る。」(p150)

というように、協議を拒絶しただけで濫用だ、ということになっています。

でもそういうなら、24時間営業よりも不利益の大きく、かつ、「必要な限度」を超えやすい、採算の取れない新規事業についても、協議を拒絶しただけで濫用になる(実際に新規事業の追加の申し入れをするのは本部側でしょうから、そのような本部の申し入れに対して店舗が拒絶するのをみとめない、という形になるでしょう)としないとおかしいでしょう。

でも上に引用したとおり、採算の取れない新規事業については、協議を拒絶しただけで濫用になるわけではなく、「加盟者が得られる利益の範囲を超える費用を負担することとなる」場合に初めて濫用になるとされています。

完全に予測できるという意味では不利益性が小さく、かつ、コンビニの代名詞として「必要な限度」を超えるとは想定しにくい24時間営業も、最低限(=最も厳しくても)これと同じ基準になるはずです。

つまり、24時間営業の強制が濫用になるためには、「必要な限度」を超えることと、「加盟者が得られる利益の範囲を超える費用を負担することとなる」ことが、最低限必要だということです。

具体的には、深夜営業は採算割れで、かつ、コンビニの営業のために「必要な限度」を超えている、といった事情が最低限必要なわけです。

しかしもちろん実際には、深夜営業が採算割れだというだけで24時間営業の強制が濫用になるわけではないでしょう。

なぜなら、まず第一に、(くりかえしになりますが)24時間営業は契約時からわかっているからです。

それから第二に、深夜営業が採算割れになるというようなことは、一般的にはいえないからです。

新規事業の場合だって、採算割れになる店舗と利益の出る店舗は当然ありうるわけです(「事業」なんだから当然です)。

何千、何万とある店舗のすべてに必ず利益が出ないと濫用だ、なんていうのはむちゃくちゃです。

たとえばコンビニの収納代行の強制が優越的地位の濫用かが争われた東京地裁平成23年12月22日(判例タイムズ1377号221頁)では、ちょっと長いですが引用すると、

「次に、平成22年2月末の時点で、本件対象業務1件当たりの手数料収入額(チャージ控除前のもの)は、約66円(来店客の支払手数料を加算した場合には約77円)であり、おにぎりを2個販売した場合の粗利益を若干上回る程度のものである。

物品販売の場合には、仕入商品の種類及び数量の決定、商品の陳列、売れ残り商品の廃棄等に要する手間や、廃棄に伴う仕入原価相当額の損失等のコストが生じるのに対し、本件対象サービスの場合には、これらのコストは発生しないこと等も考慮すると、本件対象業務によって加盟店が取得する手数料収入が不当に低廉であるということはできない。

他方、上記時点で、1店舗当たりの本件対象業務の取扱件数は、1日当たり約70件であり、1件当たりの取扱金額は、約9485円であった。

その処理に要する所要時間は、払込票1枚当たり約40秒(一度に複数枚を処理する場合の払込票1枚当たりの所要時間はさらに短縮される。)程度にとどまる上、

被告は、本件対象業務の負担軽減や過誤防止のために、払込票のサイズの統一、レジシステムの改良、現金カウント機の割安価格での購入やリースの斡旋、取扱金額の上限設定、料金収納業務保険の導入等を行い、

さらに強盗被害の発生を防止するために、加盟店に侵入防止扉や防御盾を設置し、警備会社との間で警備契約を締結した上で、警備会社への通報機能を備えた携帯用非常ボタンを貸与し、自ら保険料を負担して現金盗難被害保険に加入するなどの対策も講じている。

これらの点からすると、本件対象業務によって原告らの被る負担がこれによって得られる利益に比して過重なものであるとまでいうことはできない。」

という判断がされています。

ここで取り上げたいポイントは、「1店舗当たりの本件対象業務の取扱件数」という認定が示すように、裁判所は、一般的に(≒多くの店舗にとって)収納代行が過重な負担になるかどうかを基準にしているのであって、当該原告が採算割れになるかどうかを問題にしているのではない、ということです。

24時間営業の場合なら、裁判所は、それが一般的に(≒多くの店舗にとって)過重な負担であるかどうかを判断するでしょう。

同じことを裏から言うと、当該原告が深夜営業について採算割れであったとしても、かなりの割合(7~8割くらい?)の店舗において、深夜営業で利益が出ているなら、原告は勝てない、ということです。

24時間営業の強制は、裁判所であれば、最低限これくらいの立証をしないと勝てないはずなのですが(「最低限」というのは、24時間営業は契約当初からわかっていたことを踏まえると、裁判所はそれだけで十分原告店舗敗訴という判決を出す可能性が高いので、これくらいの立証は「最低限」であって、これを立証したら勝てるというわけではない、という意味です)、報告書では、本部が交渉を拒否しただけで店舗は勝訴できることになってしまいます。

(ちなみに、契約当初からわかっていたかどうかという点については、上で引用した東京地裁判決は、これも長いですが引用すると、

「被告は、本件フランチャイズ・チェーンの運営者として、加盟者との間で本件基本契約等を締結し、自らの保有するコンビニエンス・ストアの経営に関するノウハウや商標、サービスマーク、意匠等を用いて、同一のイメージの下に加盟店の営業を行う権利を与え、経営指導や技術援助等を行う一方、加盟者から、その対価としてチャージの支払を受けている。

一般に、このようなフランチャイズ・システムにおいては、フランチャイジーがフランチャイザーから提供されるノウハウや商標、サービスマーク、意匠等を用いて、同一のイメージの下に商品の販売やサービスの提供等を行い、フランチャイズ・チェーン全体が統一的に運営されており、そのために業務マニュアル、商品やサービスの品ぞろえ、接客方法等の統一が図られるとともに、その時々の状況に応じて合理性の認められる限度でこれを変更していくことが予定されているものと解される。

本件フランチャイズ・チェーンに関しても、・・・加盟者は、本件基本契約等において、その加盟店が共通の仕様や品ぞろえ、接客方法、便利さ等の特色を有しており、これが本件イメージとして広く認識されていることによって、加盟店の信用が支えられていることを確認した上で、商品構成や品ぞろえ等を含む経営ノウハウを組織化した本件システムに反する行為や本件イメージの変更を行わないことを約している。

したがって、加盟者は、本件基本契約等に基づき、本件フランチャイズ・チェーンの利便性にかかわるもので、本件イメージの重要な要素を構成する商品やサービスについては、特段の事情のない限り、これを提供する義務を負っており、商品やサービスの内容、構成等が合理性の認められる限度で随時変更されることも了解していたというべきである。

とも述べており、ある程度の変更は店舗も了解していたという認定をしており、事前の合意を比較的ゆるやかに(常識的に)みとめている、といえますし、24時間営業がコンビニの「イメージの重要な要素」でないというのも、まず無理なんじゃないかと思います。)

逆に、採算の取れない新規事業に報告書の24時間営業の基準を適用すると、本部からの新規事業導入の申し入れに対して店舗が見直しを求めたときに、その要求を一方的に無視しただけで、不採算の程度にかかわらず濫用になる、というこれまたわけのわからない結論になってしまいます。

まとめると、新規事業とのバランスを考えると、24時間営業の強制は、通常の(あるいは、多くの)店舗にとって、「店舗が得られる利益の範囲を超える費用を負担することとなる」場合にかぎり、濫用になる、とすべきです。

さらに適切に限定するなら、24時間営業がコンビニの営業を「的確に実施するために必要な限度を超えて」いるかどうかも、慎重に検討されるべきでしょう(そして、たぶん必要な限度は超えていないでしょう)。

このように見ていくと、報告書は24時間営業だけに独自の基準を立てていることがよくわかります。

報告書の24時間営業の基準がおかしなものであることは、優越ガイドラインやフランチャイズガイドラインにこの基準を書き込んだらどれくらい違和感があるかを想像してみたらわかると思います。

それくらい、報告書の24時間営業に関する部分は、ほかとの整合性がとれていないということです。

このように、報告書は24時間営業だけを露骨に狙い撃ちして、無理な理屈で濫用だとしていることが、よくわかると思います。

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