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2020年6月 9日 (火)

知財ガイドラインの英訳の誤記

知財ガイドラインの英訳の、権利消滅後の制限の部分は、

「When a licensor imposes on a licensee a restriction on the use of a technology or an obligation to pay royalties even after the rights to the technology have become extinct, it generally impedes the free use of technology. It will constitute an unfair trade practice if it tends to impede fair competition. (Paragraph (13) of the General Designation)
Notwithstanding the above」

と訳されていますが、もちろんこれは、paragraph 12の誤訳ですね。

日本語の原文は、

「ライセンサーがライセンシーに対して、技術に係る権利が消滅した後においても、当該技術を利用することを制限する行為、又はライセンス料の支払義務を課す行為は、一般に技術の自由な利用を阻害するものであり、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。」

となっています。

なにかのついでに直しておいていただけるとよいと思います。

ところでこの英訳もそうですが、かつての公取委の英訳では、「事業者」を「entrepreneur」と訳していました。(今は政府の英訳と同じく、enterpriseで統一されています。)

でもentrepreneurの意味は、

「a person who makes money by starting or running businesses, especially when this involves taking financial risks」(Oxfort Advanced Learner's Disctionary)

とか、

「someone who starts a new business or arranges business deals in order to make money, often in a way that involves financial risks」(Longman Dictionary of Contemporary English)

という意味で、主な訳語は「企業家」(リーダーズ英和辞典)、あるいは「起[企]業家」(ランダムハウス英和大辞典)です。

ランダムハウス英和大辞典では、

「イノベーションの担い手として創造性と決断力を持って事業を創始する個人事業者」

と説明されています。

まさに「起業家精神」の「起業家」です。

なので法律の「事業者」のような無色透明な法令用語とは、だいぶニュアンスが違います。

だいたい、entrepreneurなんていう単語は、最近でこそ多少はやっているものの、それでもビジネスの世界以外ではあまり使わないのではないでしょうか。

(私は高校生の時に読んで感激して今でも大事に持っている、キングスレイ・ウォード著『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』という本にこの単語の説明があって強く印象に残ったのでたまたま知っていましたが、逆に言えば著者のカナダ人ですら当時大学生か大学卒の息子に意味を説明する単語なわけです。ちなみに私が京大工学部から法学部に転部を決意したのもこの本の大きな影響のおかげで、そういう意味では人生を左右した1冊です。超おすすめです。)

外国人に英語で説明するたびに恥ずかしい思いをするので、これもどこかで直しておいていただければと思います。

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