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2020年5月13日 (水)

独禁法弁護士の面白さ

以前、同僚のM&A専門の弁護士から言われた言葉に、

「独禁法って、ビジネスそのものを扱うので面白いですよね。」

というのがありました。

これは確かにM&Aの弁護士からみたらそのとおりで、私もM&Aをかつてはそれなりにやりましたのでよくわかるのですが、弁護士にとってのM&Aって結局、ビジネスそのものとは関係ないんですよね。

買収のスキームを考えたり、スケジュールや必要な手続をチェックしたり、基本的には会社法(と、上場会社の場合には金商法)で片が付いてしまうんですね。

もちろんデューディリジェンスをするときには労働法が問題になったり、廃棄物処理法が問題になったり、といろいろな法律問題は出てくるのですが、それも所詮法律の枠内で済んでしまう話です。

しかも、そのあたりのデューディリジェンスは若い弁護士が担当するので、ある程度年次が上がると自分で法律のことを一からリサーチすることもありません。

なので、ある程度年次が上がってからのM&Aって、上に述べたように、会社法と金商法+αで済むことがおおく(税法については会計士さんが別途入ることが多い)、極端に言えば、買収先の会社がどんなビジネスをしているのか分からなくても、だいたい用は済んでしまいます。

なので、どんなに大きな案件でも、ビジネスにかかわっている、という感覚は希薄です。

でもM&Aに独禁法がかかわる場合、典型的には企業結合の届出とそのあとの実体審査ですが、その場合には、ビジネスの内容を知ることが不可欠です。M&A以外でも同じです。

アドバイスする内容も、ビジネスの戦略の立て方を裏側から(独禁法の側から)光を当てたようなものになります。

デューディリをやるときもビジネスを知らないとイメージがわかないのである程度の説明はお客さんから受けるのですが、それはあくまでイメージを掴むためと、法的リスクがどの辺にありそうかの当たりをつけるためです。

これに対して独禁法の場合は、ビジネスの内容(競争者のものも含め)が、アドバイスの基礎の中心になります。

そういうところをM&Aの弁護士からみると、ビジネスに踏み込むので面白いと思うのでしょうね。

わたしも、これは面白いと思います。

とくにディールチームの中にビジネススクール帰りっぽい人がいたら、また別の意味で話が噛み合って面白いでしょうね。

独禁法の基礎になっている産業組織論って、それをビジネス流に焼き直してビジネススクールで教えてたりするので(コトラーとか、そうですよね)、根っこのところでは共有するものがあります。

この業界でこういうことやったらこうなる(競争への影響が出る)だろうな、と思ったことを、「こういうことって、ありませんかね?」とお客さんに伝えると、「そのとおりです」と納得されたり、どうしてそんなことまで分かるんだろうという反応をされたりして、けっこう爽快ですが(笑)、それは経験というのもありますが、独禁法という法律の性質(ビジネスに根ざしている)、それから独禁法の基礎に産業組織論があり、産業組織論がわかると企業戦略がみえてくる、というのが大きいと思います。

つまり、ビジネスのことがわからないと独禁法では的確なアドバイスができないのです。

そのあたりが、純粋に法律だけを扱うM&A弁護士に比べると、面白いんでしょうね。

私自身は、細かい契約書の文言をぐりぐり弄り回すのも嫌いではありませんが、それはいかにも自分の土俵で相撲を取ってる感じで、マニアックな喜びですよね。

独禁法やろうかどうしようか迷っている人は、参考にしてもらえたらと思います。

反対に、ビジネスには興味ない、論理を操作するのが生き甲斐だ、という人は、独禁法には向かない(たぶんファイナンスとかが向く)と思います。

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