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2019年12月13日 (金)

既往の支払遅延に対する勧告

下請法4条1項2号では、

「下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと」

が、支払遅延として禁じられています。

支払遅延に対する勧告は、7条1項で、

「公正取引委員会は、親事業者が第四条第一項・・・第二号・・・に掲げる行為をしていると認めるときは、

その親事業者に対し、・・・その下請代金若しくはその下請代金及び第四条の二の規定による遅延利息を支払い、・・・その他必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。」

とされています。

そして、過去に支払遅延があった(つまり、遅れたけど、そのあと満額払った)ことが判明した場合(既往の支払遅延)には、勧告は出ません。

というのは、前述のように4条1項2号では、違反行為が、

「下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと」

というように現在進行形で規定されており、これを受けて7条1項でも、

「親事業者が第四条第一項・・・第二号・・・に掲げる行為をしていると認めるときは、」

と、「支払わない」という行為を「している」とき、つまり、支払わないという行為が続いているときにかぎって勧告を出せると明記されているからです。

別の言い方をすると、遅れたけどそのあと支払った、という場合は、「支払期日の経過後なお支払わない」のではなく、「支払期日の経過後支払った」ということになり、違反状態はないことになります。

そして勧告についても、遅れたけれどそのあと支払った場合は、

「第4条第1項第2号に掲げる行為〔支払遅延〕をしている

にはあたらず(「支払わない」(4条1項2号)のではなく、遅れたとはいえ既に支払済みなので)、勧告は出ないことになります。

7条1項をみると、

「その下請代金若しくはその下請代金及び第四条の二の規定による遅延利息を支払」

うべきことを勧告するとされているので、元本だけではなくて遅延利息も支払わないと遅延利息の支払のためだけに勧告がでるのではないか、と一瞬思いますが、そうではありません。

7条1項はあくまで、支払遅延を現に「している」場合には、その、遅延「している」下請代金について、元本と利息を支払うように勧告できるという規定であり、元本のほうを(たとえ遅れてでも)支払ってしまえば、支払遅延を現に「している」ことにはならず、そもそも7条1項の要件を満たさないため、遅延利息の支払も勧告されません。

つまり、遅れても支払ってしまえば一切勧告はでません。

この点については、鈴木満『〔改訂版〕新下請法マニュアル』223頁に、

「第7条第1項では、・・・第2号(下請代金の支払遅延の禁止)・・・に違反している場合の勧告を定めている。

すなわち、・・・支払遅延をしているときは下請代金と遅延利息の支払を・・・勧告することとされている。」

とされているのも、同趣旨と思われます。

しかしだからといって4条の2の遅延損害金請求権自体がなくなってしまうわけではなく、もし訴訟を起こせば遅延損害金の支払も命じられると考えられます。

なお、すでに終わった違反行為に対する勧告は7条2項で、

「公正取引委員会は、

親事業者が第四条第一項第三号から第六号〔3号減額、4号返品、5号買いたたき、6号購入利用強制〕までに掲げる行為をしたと認めるときは、

その親事業者に対し、速やかにその減じた額を支払い、その下請事業者の給付に係る物を再び引き取り、その下請代金の額を引き上げ、又はその購入させた物を引き取るべきことその他必要な措置

をとるべきことを勧告するものとする。」

と、別途さだめられています。

どの違反行為かによって既往の行為が勧告対象になったりならなかったりするのは立法論としてはあまり合理性はないと思いますが、ともかく現在の条文と公取委の運用はこのようになっています。

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