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2019年11月28日 (木)

独禁法の期間の定め

独禁法に出てくる期間の定めの日数の数え方について、いくつかメモしておきます。

■「を経過する(日)」のパターン

株式譲受の禁止期間に関する10条8項では、

第二項の規定による届出を行つた会社は、

届出受理の日から三十日を経過するまでは、

当該届出に係る株式の取得をしてはならない。」

と規定されています。

受理の日(初日)は算入されないので(民法140条本文)、たとえば、今日(2019年11月28日)に届出が受理されると(ふつうは公取委企業結合課に持って行けばその日のうちに受理されます。受理の通知は翌日以降かもしれませんが)、11月29日が初日で、そこから30日を経過する日は12月28日です。

なので、12月28日までは株式譲受ができず、12月29日に譲受実行可能となります。

課徴金の還付に関する70条2項では、

「公正取引委員会は、前項の金額を還付する場合には、

当該金額の納付があつた日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日から

その還付のための支払決定をした日までの期間

の日数に応じ、

その金額に年七・二五パーセントを超えない範囲内において政令で定める割合を乗じて計算した金額をその還付すべき金額に加算しなければならない。」

と規定されています。

たとえば今日(11月28日)に納付した課徴金の還付決定が来年1月28日にあるとします。

すると、

「納付があつた日〔=11月28日〕の翌日〔=11月29日〕から起算して一月を経過する日」

は、期間を月(ここでは「一月」)をもって計算する場合には、その期間は暦にしたがって計算され(民法143条1項)、さらに民法143条2項では、

「週、又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。

ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。」

とされているので、11月29日から起算して1か月を経過する日というのは、

「最後の・・・月・・・においてその起算日に応当する日の前日」

であり、11月29日の応当日は12月29日なので、期間はその前日の12月28日で満了します。

よって、

「・・・納付があつた日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日」

は、(一月を経過する日が12月28日なのでその翌日の)12月29日となります。

ここでは還付決定が来年1月28日の想定なので、

「・・・納付があつた日〔11月28日〕の翌日〔11月29日〕から起算して一月を経過する日〔12月28日〕の翌日〔12月29日〕からその還付のための支払決定をした日〔来年1月28日〕までの期間の日数」

は、

12月29日→通算1日

30日→通算2日

・・・

来年1月28日→通算31日

と、日数は31日となります。

■「を経過した日」のパターン

こちらの国税庁の文書などによると、「経過した日」というのは、期間の末日の翌日です。

株式取得の通知期間に関する10条9項では、

「公正取引委員会は、第十七条の二第一項の規定により当該届出に係る株式の取得に関し必要な措置を命じようとする場合には、

前項本文に規定する三十日の期間又は同項ただし書の規定により短縮された期間

(公正取引委員会が株式取得会社に対してそれぞれの期間内に公正取引委員会規則で定めるところにより必要な報告、情報又は資料の提出(以下この項において「報告等」という。)を求めた場合においては、

前項の届出受理の日から百二十日を経過した日と全ての報告等を受理した日から九十日を経過した日とのいずれか遅い日までの期間)(以下この条において「通知期間」という。)

内に、株式取得会社に対し、第五十条第一項の規定による通知をしなければならない。」

と規定されています。

前述のように、今日(11月28日)株式譲受の届出が受理されるとすると、ここでの

「前項本文に規定する三十日の期間」

の末日は、12月28日です。

1次審査で終わる場合はこれでOKですが、2次審査にいくときは、公取委は、

「届出受理の日から百二十日を経過した日と全ての報告等を受理した日から九十日を経過した日とのいずれか遅い日までの期間」

に排除措置命令の事前通知をしないといけません。

なので、たとえばすべての報告等を公取委が受理したのが来年の4月30日だとすると、

「全ての報告等を受理した日〔2020年4月30日〕から九十日を経過した日」

は、「受理した日」の初日は算入せず、翌5月1日を1日目としてカウントするので、

5月1日→通算1日目

5月31→通算31日目

6月30日→通算61日目

7月29日→通算90日目

となり、来年7月29日が90日目となりますが、「経過した日」はその翌日なので、期間の満了日(最終日)は7月30日となります。

よって、事前通知をできるのは来年の7月30日まで、ということになります。

課徴金の納期限に関する62条3項では、

第一項の課徴金の納期限は、課徴金納付命令書の謄本を発する日から七月を経過した日とする。」

謄本を発したのが今日(11月28日)だとすると、初日不算入なのでサンユウ初日は11月29日です。

期間を月で数えるときは応当日(29日)の前日が期間の最終日(満了日)なので、最終日は2020年6月28日です。

「経過した日」は期間の末日の翌日をさすので、6月29日となります。

よって、来年6月29日まで(同日含む)に、課徴金を支払わないといけません。

既往の行為に対する排除措置命令に関する7条2項では、

公正取引委員会は、第三条又は前条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、・・・当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。

ただし、当該行為がなくなつた日から五年を経過したときは、この限りでない。」

と規定されています。

たとえば、カルテル解消の合意ないし通告をしてカルテルが終わったのが2014年11月28日午後2時だとします。

そうすると、「当該行為がなくなつた日」は2014年11月28日ですが、初日不算入なので、5年の期間の初日としてカウントされるのは11月29日です。

よって、「当該行為がなくなつた日から5年」の期間の最終日(満了日)は、期間初日(2014年11月29日)の応当日(2019年11月29日)の前日の、2019年11月28日となります。

そして、「経過した」日は、期間の末日(2019年11月28日)の翌日(同月29日)なので、11月29日には、既往の行為に対して排除措置命令を出すことができなくなります。

(もっと簡単に「経過したとき」が、期間末日(2019年11月28日)午後12時の経過、と考えても同じことです。)

ところで、カルテル等に対する課徴金に関する7条の2第1項では、

「事業者が、不当な取引制限・・・で次の各号のいずれかに該当するものをしたときは、

公正取引委員会は、・・・当該事業者に対し、

当該行為の実行としての事業活動を行つた日から

当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間

(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)

における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額・・・に百分の十・・・を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。」

と規定されています。

そこでたとえば、カルテルによる売上が立った最初の日が今年の10月1日で、今日(11月28日)午前9時に立入検査があってカルテルが終了したとします。

すると、初日不算入なので期間の初日は10月2日、「当該行為の実行としての事業活動がなくなる日」は11月28日です。

よって、「当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間」は、10月2日から11月28日までの期間なので、合計58日間です。

よって課徴金は58日間の売上にかかります。

たとえば、コーアイセイに対する納付命令では、

「コーアイセイが・・・違反行為の実行としての事業活動を行った日は,・・・コーアイセイが後発炭酸ランタンOD錠を最初に販売した平成30〔2018〕年8月29日であると認められる。

また,コーアイセイは,同年10月24日以降,当該違反行為を行っておらず,同月23日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。

したがって,コーアイセイについては,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成30年8月29日から同年10月23日までとなる。」

「前記実行期間における後発炭酸ランタンOD錠に係るコーアイセイの売上額は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令第5条第1項の規定に基づき算定すべきところ,当該規定に基づき算定すると,4310万2555円である。」

と認定されています。

なお、違反期間が3年をこえる場合には、実行期間は、

「(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)」

とされています。

「実行としての事業活動がなくなる日」が今日(2019年11月28日)だとすると、「なくなる日」(2019年11月28日)の当日は不算入なので、1日前の2019年11月27日から期間のカウントが始まります。

そして、年で期間を定めるときは応当日の前日が期間の最終日ですが、ここでは過去にさかのぼっているので、応当日の翌日が期間の最初の日となります。

つまり、期間の最初の日は、応当日(2016年11月27日)の翌日である2016年11月28日となります。

たとえば、ユニバーサル製罐に対する令和元(2019)年9月26日付納付命令では、

「ユニバーサル製缶が前記1の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成25〔2013〕年3月31日以前であると認められる。

また、ユニバーサル製缶は,平成28〔2016〕年4月1日以降〔※立入検査は2018年2月6日〕,当該違反行為を行っておらず,

同年3月31日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。

したがって,ユニバーサル製缶については,当該違反行為の実行としての事業活動を行った日から当該違反行為の実行としての事業活動がなくなる日〔2016年3月31日〕までの期間が3年を超えるため,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,

実行期間は,平成25〔2013〕年4月1日から平成28〔2016〕年3月31日までの3年間となる。」

と認定されています。

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