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2019年11月26日 (火)

有償支給原材料の対価の手形による支払と早期決済

下請法4条2項1号では、

「自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料(以下「原材料等」という。)を自己から購入させた場合に、

下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、

当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、

支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせること」

によって下請事業者の利益を不当に害してはならないとされています。

いわゆる、有償支給原材料等の早期決済禁止の規定です。

要するに、親事業者は、有償支給材の代金を、その支給材を使った給付についての下請代金を支払うのよりも早く回収してはいけない、ということです。

では、親事業者が下請事業者に有償支給原材料の代金を手形で支払わせる場合、手形の満期日が下請代金支払日以後であればいいのでしょうか。

それとも、(下請事業者による)手形の振出日が(親事業者による)下請代金支払日以後でなければならないのでしょうか。

結論としては、満期日が下請代金支払日以後であればいい(振出日は下請代金支払日よりも前でもいい)と考えられています。

有償支給材の規定は下請事業者の資金繰りを苦しくしないための規定ですから、手形の決済(満期日)よりも前に下請代金が回収できていればいいはずであり、これは常識的な結論であるといえます。

公取委職員による文献(公正取引委員会事務局前取引部下請課長、現審判官〔執筆当時〕小倉正夫「わかりやすい下請法(10)-親事業者の義務・8-」公正取引408号(1984年)40頁、45頁)でも、

「有償支給原材料等代金の決済方法として下請事業者に約束手形を振り出させることは認められますか。」

との設問に対して、

「決済を手形で行うことは、親事業者にとっては代金の回収を確実にする、下請事業者にとっては資金繰りを少しでも楽にする等の理由があると思われますが、

この場合であっても親事業者は下請事業者の利益を不当に害することのないよう

当該手形の満期を有償支給原材料等を使用した製品に係る下請代金の支払期日以降とすることが必要となります」

というように、手形の満期が下請代金支払日以降であればよいと説明されています。

条文の解釈としては、そもそも手形の場合は満期に決済することが「支払わせる」(4条2項1項)なのだ、という解釈もあり得ないではないですが、下請法では一般に、下請代金の支払を手形ですることも認められていて、その場合、支払日は振出日であるとされていることからすると、有償支給材代金の場合も同様に振出日が支払日と解するのが自然と思われるので、この(満期決済が支払だという)解釈は、やや無理があります。

やはり、振出が支払であり、そのため、下請代金支払よりも前に有償支給材代金支払のために手形を振り出させると形式的には4条2項1号に該当するけれども、満期が下請代金支払以後であれば、2項柱書の、「下請事業者の利益を不当に害し」にあたらない、と整理するのが妥当でしょう。

前掲小倉解説も、「下請事業者の利益を不当に害することのないよう」というように、この問題が不当に害するかどうかの問題であることを前提にしているものといえます。

下請法テキストなどでは、下請事業者による有償支給原材料の代金支払が親事業者による下請代金支払よりも先だと常に下請法違反となるかのような説明がされていますが、この手形のケースをはじめ、実際には、下請事業者の利益を不当に害していないのでOKだといえる場合がそれなりにあったりします。

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