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2019年11月12日 (火)

エネルギアに対する課徴金について

エネルギアに対する課徴金納付命令(平成30年3月23日)は、期間限定キャンペーンを繰り返した場合における課徴金算定について、いろいろと興味深いことを教えてくれます。

私は同命令に賛成ですが、中身を見てみましょう。

まず、この事件では期間限定キャンペーンの表示が2つの期間にわたって認定されていますが、ややこしいので、最初の1つ(表示期間平成28年4月1日~5月20日)の分だけ、見ることにします。

次に、課徴金の対象役務ですが、命令では、これを「本件役務」と呼んでいます。

そして、「本件役務」は、

「平成28年4月1日から同年5月20日までの間 ・・・に新規に申込みが行われたことにより、「今カラ割」と称する割引が適用されるもの又は「今カラ割」と称する割引及び「今カラ割プラス」と称する割引 の両方が適用されるもの」

と定義されています。

つまり、平成28年4月1日~5月20日に新規申込されたインターネット接続サービスが課徴金対象役務、ということです。

この定義によれば、たとえば、平成28年4月30日に新規申込された接続サービスは、「本件役務」となります。

表示期間(平成28年4月1日~5月20日)を過ぎていようが、表示期間中に新規申込をした契約は、ず~っと、「本件役務」です。

このように、期間限定キャンペーンの繰り返しの事件では、対象商品役務が(役務の内容だけでなく)時間的に区切られることになるのが特徴といえます。

これは別に目新しいことでも何でもなくって、たとえば、「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」p10では、「課徴金対象行為に係る商品又は役務」の説明として、

「全国(又は特定地域)において供給する商品又は役務であっても、具体的な表示の内容や実際に優良・有利誤認表示をした地域といった事情から、一部の地域や店舗において供給した当該商品又は役務が「課徴金対象行為に係る商品又は役務」となることがある。」

と説明され、具体例として、店舗を限定した表示の例があげられています。

店舗を限定するのも、契約時期を限定するのも、理屈の上では同じことでしょう。

なお概念的には、

表示(広告)をしていた期間(平成28年4月1日~5月20日)と、

キャンペーン期間(申込期間)

とが異なることもありえますが(たとえばキャンペーン期間を「4月1日~5月30日」と記載した広告を、4月1日から5月20日まで出す)、本件ではいずれも4月1日~5月20日であり、両者は一致しています(広告期間=キャンペーン期間)。

さて、ここで条文の整理をしておくと、景表法8条1項では、課徴金額を、

「当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした

当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の

政令で定める方法により算定した売上額に

百分の三を乗じて得た額に相当する額」

と規定しています。

命令での「本件役務」は、8条1項でいうと、「当該課徴金対象行為に係る・・・役務」にあたります。

つまり、「当該課徴金対象行為に係る・・・役務」は、平成28年4月1日~5月20日に新規申込された接続サービスです。

次に、命令では、エネルギアが課徴金対象行為をした期間(=不当表示をした期間)は、同じく、平成28年4月1日~5月20日と認定されています。

この部分は「課徴金対象期間」につながります。

つまり、景表法8条2項では、「課徴金対象期間」を、

「課徴金対象行為をした期間

(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日

(同日前に、当該事業者が当該課徴金対象行為に係る表示が不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置として内閣府令で定める措置をとつたときは、その日)

までの間に当該事業者が当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)」

と定義しています。

本件ではエネルギアは誤認解消措置(「当該事業者が当該課徴金対象行為に係る表示が不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置として内閣府令で定める措置」)をとっていません。

しかも、キャンペーン期間中(4月1日~5月20日)に申し込まれた新規契約は基本的にず~っと続いているので(キャンペーン期間中の新規契約がぜんぶ途中解約されることなんてほぼありえないので、当然ですね。)、8条2項の、

「課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日・・・までの間に当該事業者が当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間」

は、6か月経過日と同日で、11月20日と認定されています。

というわけで、「課徴金対象期間」は、平成28年4月1日~11月20日となります。

まとめると、

課徴金対象役務(「本件役務」)は、平成28年4月1日~5月20日に新規申込みされた接続サービス

であり、

「課徴金対象期間」は、平成28年4月1日~11月20日、

となります。

つまり、課徴金対象売上は、「平成28年4月1日~5月20日に新規申込みされた接続サービス」の、「平成28年4月1日~11月20日」までの売上(月額料金など)、となります。

なので、命令では、5月21日(キャンペーン期間後)に新規契約された接続サービスからの売上は、課徴金の対象になっていません(「本件役務」にあたらないので)。

つまり、5月21日に新規契約した接続サービスの6月分、7月分、・・・11月分の月額料金には、課徴金はかかりません。

反対に、5月20日(キャンペーン期間中)に新規契約された接続サービスについては、11月20日までの料金について、課徴金がかかります。(命令でははっきりしませんが、きっと日割りなのでしょう。)

本件の表示で誤認して契約したのは5月20日までに契約した人たちでしょうから、この処理でよいと思います。(5月21日に契約した人は誤認していない。)

もしエネルギアが5月21日に誤認解消措置を講じていたら、課徴金対象期間は5月21日までになったのでしょう。

4月1日に契約した人がこの誤認解消措置を見て、「なんだ、お得じゃなかったのか」とわかって、契約を解約することはありうるので、誤認解消措置をとることに意味がないことはないと思います。

別の切り口で言うと、

①課徴金でカバーされるのは、4月1日~5月20日に新規契約申込みした契約者

②ただし、①の契約者が提供を受ける役務は、毎月(あるいは毎日?)別々の役務

とイメージすると、わかりやすいかもしれません。(②の想定は、いつでも解約できる限りは、実態にも合っていると思います。)

また、このように整理すると、継続的役務か1回きりの役務かを区別する必要がない(継続的契約は、毎月、取引の意思決定をしている、1回きりの契約の連続したものと整理すればいい)ので、あまり余計なことを考えずにシンプルに処理できると思います。

また、キャンペーン期間後も、キャンペーン期間中に契約した契約者の誤認は続いていると考えるのが自然だと思います。

理屈の上では、キャンペーン期間後に同じキャンペーンを繰り返すと、実は前のキャンペーンがお得でなかったこともわかるのではないか、という、ほとんど屁理屈も考えられますが、繰り返したキャンペーンの表示を前のキャンペーン中に契約した人が見ている保証はどこにもないので、やはり誤認解消措置が必要でしょう。

以上のように考えると、8条2項かっこ書は本件の場合にも淡々と適用すれば妥当な結論に到達し、そのように考えていると思われる本件命令は妥当だと考える次第です。

(でもそうすると、課徴金を算定するときには課徴金対象の契約だけを取り出して計算しないといけないので、すぐに契約時期で特定して対象売上が出せるシステムならいいですが、そうでないと手作業で売上をより分けて消費者庁に報告しなければならないことになって、とっても大変そうですね。)

なおこの事件については、課徴金制度の立案担当者である古川先生の詳細な論考が公正取引819号(2019年1月号)33頁に掲載されています。

 

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