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2019年11月

2019年11月29日 (金)

総付規制の及ぶ特定商品金額証の「特定」性について

自社との取引にのみ用いることができる金額証(自社使用金額証)は原則として総付の金額規制の適用外ですが、例外として、「特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないも」には総付規制が適用されます(総付告示運用基準4(2))。

では、ここでの「特定の商品又は役務」というのは、どの程度特定されていれば(どの程度狭ければ)、「特定の商品又は役務」にあたるのでしょうか。

この点については、片桐一幸「景品規制に関する告示等の改正について」公正取引546号(1996年)40頁、46頁では、

「金額証については、金額が示されているもので特定の商品と引き換えられるものでないものとされているので、

例えば、金額が明記された百貨店の商品券はこれに該当すると考えられるが、ビール券やテレホン・カードは金額証には該当しないと考えられる。」

と解説されています。

百貨店の商品券は百貨店で売っているものを何でも買えるので「特定」されていないけれど、ビール券はビールという特定の商品(群)にしか使えないので「特定」にあたる、ということなのでしょう。

(なおここでは自社使用金額証であることが前提ですので、百貨店の商品券は百貨店が提供する場合ですし、ビール券は酒屋さんが提供する場合です。また景品類として他の本体商品の取引に付随して提供する場面が問題ですので、百貨店の商品券やビール券自体を商品として販売する場合には、どう転んでも景品類にはなりません。)

でもこの区別って、合理的なのでしょうか?

正直、どうしてこういう区別になるのか、わたしには理解できません。

上記解説でもこの論点について解説しているのは上記引用部分だけで、あまり深く考えているようには思えません。

(ということは、運用基準の立案担当者もあまり深く考えていなかった、ということです。)

テレホン・カードは、NTTの公衆電話にしか使えないので、「特定」というのは、少なくとも運用基準の文言解釈としては、理解できます。

だたそれでも、今でこそNTTは固定電話だけでなくブロードバンドや携帯サービスも提供していますが、かつての固定電話しかない時代のNTTのように、1商品で成り立っているような会社はたとえ自社商品すべて(=当該1商品)に利用できる自社使用金額証であっても、「金額証」に該当せず、総付規制がかかってきてしまうので、この「特定」かどうかで区別するガイドラインの規定は、あまり合理的なものではないと思います。

きっと、特定の商品とのみ引き換えられる金額証は当該特定の商品を景品類として提供するのと変わらないじゃないか、という発想なのだと思うのですが、こういう一本足打法の会社を考えると、基準を立てるならもっと別の基準にすべきだったのでしょう。

ともあれ運用基準があるのでこれを前提に考えざるを得ないのですが、それでも、「特定」か「不特定」かで区別するというのは、とてもあいまいです。

ビール券は実際に世の中にあるので、「ビールしか買えない券」(ワインは買えない)というイメージが頭に浮かぶので、上記解説はそのイメージだけで「特定」といっているような気がします。

ですがもし将来「お酒券」(ソフトドリンクは買えない)というのが出てきたら、「特定」の商品と考えるのでしょうか?

「飲み物券」(食べ物は買えない)ならどうでしょう?

「食べ物&飲み物券」ならどうでしょう?

さらに商品をがらっと変えて、「洋服券」というのを仮に発行したら、どうでしょう?

レストランの「お食事券」はどうでしょう?

そのレストランの料理には何でも使えるので不特定なのでしょうか? (←これが正しいような気がします。)

それとも、「料理」という特定の商品にしか使えないので、特定なのでしょうか?

ラーメン屋の「お食事券」なら、ラーメンにしか使えないので「特定」なのでしょうか?

そのラーメン屋でチャーハンも出してたら、「お食事券」は不特定なのでしょうか?

それとも、ラーメンとチャーハンにしか使えないので「特定」なのでしょうか?

対象商品を事業者の側がある程度自由に出し入れできるような金額証ならどうでしょうか? (とくにオンラインなら対象商品の変更は、やろうと思えばいくらでもできるように思います。)

反対に、「ビール券」は、銘柄を問わずどのビールにも使えると考えると、「ビール券」は不特定の商品に使用できる、といっても良さそうな気がします。

もし世の中に「一番搾り券」とか、「キリンビール券」とかが普通にあって、ビール券なるものが存在しなかったら、上記解説では「ビール券」は不特定の商品と交換できる、といったのではないか、という気がします。

つまり上記解説、ひいては、運用基準の当該部分は、現に世の中にあるもののイメージに引きずられすぎていて(一種の現状維持バイアス)、一般的な規範としてはうまく機能しないような気がします。

上記解説でビール券とテレホンカードは「特定」だと明記されているのでしかたないですが、景品規制は実際に措置命令が出ることはまず考えられませんから、そのほかの金額証は、「いちおう説明がつけばいい」くらいに、実務上はある程度柔軟に考えていいように思います。

消費者庁にはぜひ、このへんを明確にしていただきたいと思います。

2019年11月28日 (木)

独禁法の期間の定め

独禁法に出てくる期間の定めの日数の数え方について、いくつかメモしておきます。

■「を経過する(日)」のパターン

株式譲受の禁止期間に関する10条8項では、

第二項の規定による届出を行つた会社は、

届出受理の日から三十日を経過するまでは、

当該届出に係る株式の取得をしてはならない。」

と規定されています。

受理の日(初日)は算入されないので(民法140条本文)、たとえば、今日(2019年11月28日)に届出が受理されると(ふつうは公取委企業結合課に持って行けばその日のうちに受理されます。受理の通知は翌日以降かもしれませんが)、11月29日が初日で、そこから30日を経過する日は12月28日です。

なので、12月28日までは株式譲受ができず、12月29日に譲受実行可能となります。

課徴金の還付に関する70条2項では、

「公正取引委員会は、前項の金額を還付する場合には、

当該金額の納付があつた日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日から

その還付のための支払決定をした日までの期間

の日数に応じ、

その金額に年七・二五パーセントを超えない範囲内において政令で定める割合を乗じて計算した金額をその還付すべき金額に加算しなければならない。」

と規定されています。

たとえば今日(11月28日)に納付した課徴金の還付決定が来年1月28日にあるとします。

すると、

「納付があつた日〔=11月28日〕の翌日〔=11月29日〕から起算して一月を経過する日」

は、期間を月(ここでは「一月」)をもって計算する場合には、その期間は暦にしたがって計算され(民法143条1項)、さらに民法143条2項では、

「週、又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。

ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。」

とされているので、11月29日から起算して1か月を経過する日というのは、

「最後の・・・月・・・においてその起算日に応当する日の前日」

であり、11月29日の応当日は12月29日なので、期間はその前日の12月28日で満了します。

よって、

「・・・納付があつた日の翌日から起算して一月を経過する日の翌日」

は、(一月を経過する日が12月28日なのでその翌日の)12月29日となります。

ここでは還付決定が来年1月28日の想定なので、

「・・・納付があつた日〔11月28日〕の翌日〔11月29日〕から起算して一月を経過する日〔12月28日〕の翌日〔12月29日〕からその還付のための支払決定をした日〔来年1月28日〕までの期間の日数」

は、

12月29日→通算1日

30日→通算2日

・・・

来年1月28日→通算31日

と、日数は31日となります。

■「を経過した日」のパターン

こちらの国税庁の文書などによると、「経過した日」というのは、期間の末日の翌日です。

株式取得の通知期間に関する10条9項では、

「公正取引委員会は、第十七条の二第一項の規定により当該届出に係る株式の取得に関し必要な措置を命じようとする場合には、

前項本文に規定する三十日の期間又は同項ただし書の規定により短縮された期間

(公正取引委員会が株式取得会社に対してそれぞれの期間内に公正取引委員会規則で定めるところにより必要な報告、情報又は資料の提出(以下この項において「報告等」という。)を求めた場合においては、

前項の届出受理の日から百二十日を経過した日と全ての報告等を受理した日から九十日を経過した日とのいずれか遅い日までの期間)(以下この条において「通知期間」という。)

内に、株式取得会社に対し、第五十条第一項の規定による通知をしなければならない。」

と規定されています。

前述のように、今日(11月28日)株式譲受の届出が受理されるとすると、ここでの

「前項本文に規定する三十日の期間」

の末日は、12月28日です。

1次審査で終わる場合はこれでOKですが、2次審査にいくときは、公取委は、

「届出受理の日から百二十日を経過した日と全ての報告等を受理した日から九十日を経過した日とのいずれか遅い日までの期間」

に排除措置命令の事前通知をしないといけません。

なので、たとえばすべての報告等を公取委が受理したのが来年の4月30日だとすると、

「全ての報告等を受理した日〔2020年4月30日〕から九十日を経過した日」

は、「受理した日」の初日は算入せず、翌5月1日を1日目としてカウントするので、

5月1日→通算1日目

5月31→通算31日目

6月30日→通算61日目

7月29日→通算90日目

となり、来年7月29日が90日目となりますが、「経過した日」はその翌日なので、期間の満了日(最終日)は7月30日となります。

よって、事前通知をできるのは来年の7月30日まで、ということになります。

課徴金の納期限に関する62条3項では、

第一項の課徴金の納期限は、課徴金納付命令書の謄本を発する日から七月を経過した日とする。」

謄本を発したのが今日(11月28日)だとすると、初日不算入なのでサンユウ初日は11月29日です。

期間を月で数えるときは応当日(29日)の前日が期間の最終日(満了日)なので、最終日は2020年6月28日です。

「経過した日」は期間の末日の翌日をさすので、6月29日となります。

よって、来年6月29日まで(同日含む)に、課徴金を支払わないといけません。

既往の行為に対する排除措置命令に関する7条2項では、

公正取引委員会は、第三条又は前条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、・・・当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。

ただし、当該行為がなくなつた日から五年を経過したときは、この限りでない。」

と規定されています。

たとえば、カルテル解消の合意ないし通告をしてカルテルが終わったのが2014年11月28日午後2時だとします。

そうすると、「当該行為がなくなつた日」は2014年11月28日ですが、初日不算入なので、5年の期間の初日としてカウントされるのは11月29日です。

よって、「当該行為がなくなつた日から5年」の期間の最終日(満了日)は、期間初日(2014年11月29日)の応当日(2019年11月29日)の前日の、2019年11月28日となります。

そして、「経過した」日は、期間の末日(2019年11月28日)の翌日(同月29日)なので、11月29日には、既往の行為に対して排除措置命令を出すことができなくなります。

(もっと簡単に「経過したとき」が、期間末日(2019年11月28日)午後12時の経過、と考えても同じことです。)

ところで、カルテル等に対する課徴金に関する7条の2第1項では、

「事業者が、不当な取引制限・・・で次の各号のいずれかに該当するものをしたときは、

公正取引委員会は、・・・当該事業者に対し、

当該行為の実行としての事業活動を行つた日から

当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間

(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)

における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額・・・に百分の十・・・を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。」

と規定されています。

そこでたとえば、カルテルによる売上が立った最初の日が今年の10月1日で、今日(11月28日)午前9時に立入検査があってカルテルが終了したとします。

すると、初日不算入なので期間の初日は10月2日、「当該行為の実行としての事業活動がなくなる日」は11月28日です。

よって、「当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間」は、10月2日から11月28日までの期間なので、合計58日間です。

よって課徴金は58日間の売上にかかります。

たとえば、コーアイセイに対する納付命令では、

「コーアイセイが・・・違反行為の実行としての事業活動を行った日は,・・・コーアイセイが後発炭酸ランタンOD錠を最初に販売した平成30〔2018〕年8月29日であると認められる。

また,コーアイセイは,同年10月24日以降,当該違反行為を行っておらず,同月23日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。

したがって,コーアイセイについては,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,実行期間は,平成30年8月29日から同年10月23日までとなる。」

「前記実行期間における後発炭酸ランタンOD錠に係るコーアイセイの売上額は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律施行令第5条第1項の規定に基づき算定すべきところ,当該規定に基づき算定すると,4310万2555円である。」

と認定されています。

なお、違反期間が3年をこえる場合には、実行期間は、

「(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)」

とされています。

「実行としての事業活動がなくなる日」が今日(2019年11月28日)だとすると、「なくなる日」(2019年11月28日)の当日は不算入なので、1日前の2019年11月27日から期間のカウントが始まります。

そして、年で期間を定めるときは応当日の前日が期間の最終日ですが、ここでは過去にさかのぼっているので、応当日の翌日が期間の最初の日となります。

つまり、期間の最初の日は、応当日(2016年11月27日)の翌日である2016年11月28日となります。

たとえば、ユニバーサル製罐に対する令和元(2019)年9月26日付納付命令では、

「ユニバーサル製缶が前記1の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成25〔2013〕年3月31日以前であると認められる。

また、ユニバーサル製缶は,平成28〔2016〕年4月1日以降〔※立入検査は2018年2月6日〕,当該違反行為を行っておらず,

同年3月31日にその実行としての事業活動はなくなっているものと認められる。

したがって,ユニバーサル製缶については,当該違反行為の実行としての事業活動を行った日から当該違反行為の実行としての事業活動がなくなる日〔2016年3月31日〕までの期間が3年を超えるため,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,

実行期間は,平成25〔2013〕年4月1日から平成28〔2016〕年3月31日までの3年間となる。」

と認定されています。

2019年11月27日 (水)

立入検査後の減免申請の期限(具体例)

調査開始後の減免申請については、独禁法7条の2第12項1号で、

「当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後

公正取引委員会規則で定める期日までに、

公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出・・・を行つた者」

であることが条件になっています。

そして、減免規則5条では、

「法第七条の二第十二項第一号に規定する公正取引委員会規則で定める期日は、

当該違反行為に係る事件について法第四十七条第一項第四号に掲げる処分又は法第百二条第一項に規定する処分が最初に行われた日から起算して二十日

(行政機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第九十一号)第一条第一項各号に掲げる日の日数は、算入しない。)

を経過した日とする。」

とされています。

ここで、

「・・・処分が最初に行われた日から起算」

というふうに、起算日(=期間の1日目とカウントされる日)が「処分が行われた日」と明記されているので、「処分が行われた日」もカウントされます。

次に、

「経過した日」

というのは、期間の末日(ここでは20日目)の翌日をさします(国税庁のこちらの文書など参照)。

(ちなみに、「経過する日」だと、期間の末日をさします。)

なのでもし、「処分の日から起算して1日を経過した日」だと、今日(2019年11月27日)に立入があったとすると、提出期限は11月28日ですし、「2日を経過した日」だと、11月29日になります。

次に、

「行政機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第九十一号)第一条第一項各号に掲げる日」

というのは、

「一 日曜日及び土曜日

二 国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日

三 十二月二十九日から翌年の一月三日までの日(前号に掲げる日を除く。)」

です。

なので、今日(2019年11月27日)に立入検査や強制調査(犯則調査の臨検)があると、カウントされないは、

11月30日(土)、

12月1日(日)、7日(土)、8日(日)、14日(土)、15日(日)、21日(土)、22日(日)

です。

なお、12月23日は、私の手元のカレンダーでは「平成の天皇誕生日」となっていますが、これは、国民の祝日には入りません。

というわけで、たとえば今日(2019年11月27日)に立入検査があった場合、今日からカウントをはじめて土日を飛ばして20日目は、12月24日になります。

よって、

「処分が最初に行われた日から起算して二十日(行政機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第九十一号)第一条第一項各号に掲げる日の日数は、算入しない。)を経過した日」

は、前述のとおり期間の末日(20日目)の翌日をさしますので、12月25日となります。

2019年11月26日 (火)

有償支給原材料の対価の手形による支払と早期決済

下請法4条2項1号では、

「自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料(以下「原材料等」という。)を自己から購入させた場合に、

下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、

当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、

支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせること」

によって下請事業者の利益を不当に害してはならないとされています。

いわゆる、有償支給原材料等の早期決済禁止の規定です。

要するに、親事業者は、有償支給材の代金を、その支給材を使った給付についての下請代金を支払うのよりも早く回収してはいけない、ということです。

では、親事業者が下請事業者に有償支給原材料の代金を手形で支払わせる場合、手形の満期日が下請代金支払日以後であればいいのでしょうか。

それとも、(下請事業者による)手形の振出日が(親事業者による)下請代金支払日以後でなければならないのでしょうか。

結論としては、満期日が下請代金支払日以後であればいい(振出日は下請代金支払日よりも前でもいい)と考えられています。

有償支給材の規定は下請事業者の資金繰りを苦しくしないための規定ですから、手形の決済(満期日)よりも前に下請代金が回収できていればいいはずであり、これは常識的な結論であるといえます。

公取委職員による文献(公正取引委員会事務局前取引部下請課長、現審判官〔執筆当時〕小倉正夫「わかりやすい下請法(10)-親事業者の義務・8-」公正取引408号(1984年)40頁、45頁)でも、

「有償支給原材料等代金の決済方法として下請事業者に約束手形を振り出させることは認められますか。」

との設問に対して、

「決済を手形で行うことは、親事業者にとっては代金の回収を確実にする、下請事業者にとっては資金繰りを少しでも楽にする等の理由があると思われますが、

この場合であっても親事業者は下請事業者の利益を不当に害することのないよう

当該手形の満期を有償支給原材料等を使用した製品に係る下請代金の支払期日以降とすることが必要となります」

というように、手形の満期が下請代金支払日以降であればよいと説明されています。

条文の解釈としては、そもそも手形の場合は満期に決済することが「支払わせる」(4条2項1項)なのだ、という解釈もあり得ないではないですが、下請法では一般に、下請代金の支払を手形ですることも認められていて、その場合、支払日は振出日であるとされていることからすると、有償支給材代金の場合も同様に振出日が支払日と解するのが自然と思われるので、この(満期決済が支払だという)解釈は、やや無理があります。

やはり、振出が支払であり、そのため、下請代金支払よりも前に有償支給材代金支払のために手形を振り出させると形式的には4条2項1号に該当するけれども、満期が下請代金支払以後であれば、2項柱書の、「下請事業者の利益を不当に害し」にあたらない、と整理するのが妥当でしょう。

前掲小倉解説も、「下請事業者の利益を不当に害することのないよう」というように、この問題が不当に害するかどうかの問題であることを前提にしているものといえます。

下請法テキストなどでは、下請事業者による有償支給原材料の代金支払が親事業者による下請代金支払よりも先だと常に下請法違反となるかのような説明がされていますが、この手形のケースをはじめ、実際には、下請事業者の利益を不当に害していないのでOKだといえる場合がそれなりにあったりします。

2019年11月25日 (月)

ジェネリック製薬会社間のカルテルについて

2019年6月4日に、コーアイセイと日本ケミファがジェネリック医薬品(炭酸ランタンOD錠)でカルテルをしていたということで排除措置命令を受けました。

(ちなみにコーアイセイは、親会社はコーア商事ホールディングスで、以前の商号は「山形医師製薬株式会社」→「株式会社イセイ」と変わってきているので、「コーア」「イセイ」と分けて読むのが正しいようです。)

ジェネリック医薬品で初のカルテルということで話題になった事件です。

でもこの事件には、いろいろと問題があると思います。

まず排除措置命令では、

「コーアイセイは,・・・後発炭酸ランタンOD錠を製造していた。」

「日本ケミファは,・・・後発炭酸ランタンOD錠をコーアイセイに委託し製造させていた。」

と認定されています。

でもこれだけだと、両社が競争関係(ヨコの関係)にあるのか、取引関係(タテの関係)にあるのかが、わかりません。

もし純粋にタテの関係だったら、「日本ケミファは後発炭酸ランタンOD錠をコーアイセイから購入していた」という認定になったでしょうから、そうでなくて製造委託なのだから日本ケミファも実質的にメーカーであって、両社は競合関係なんだ、というのが排除措置命令の言いたいことなのではないかと思います。

ただ、製造委託なのか、たんなる購入なのかというのは、かなり微妙な区別です。

(実際、ある機会に競争法の研究者の方々と雑談したときには、概ね「あれはタテの関係だよねぇ」という意見でした。)

ところが、そういう大事な事情が「委託し製造させていた」という一言ですまされてしまうところが、かなり乱暴に思われます。

私がかつて担当したカルテル事件でも、依頼者は実際にはたんなる販売店の機能(たんなる売買)でしかなかった(商品スペックは調達先メーカーのものとまったく同じで、スペックに対するコントロールなし)のに、他の類似商品でメーカーの看板をかかげているだけでメーカー(ヨコの関係)と認定されたとしか思えない内容で排除措置命令を受けました。(意見聴取ではだいぶ争いましたが。)

本件でもたぶん公取委は、委託の実質があったかたんなる売買だったかなんていう実質論ではなく、たんに日本ケミファが製薬会社だからというだけの理由でヨコの関係だと認定している可能性が大いにあります。

いちおう命令では、2社が共同開発契約を締結したことや、2社がそれぞれ薬機法の承認および薬価収載をえたことが認定されており、これらの事情を日本ケミファも本件でヨコの関係にあるんだという補強証拠としているように読めるのですが、前述の私の経験した事件ではそのような承認とかの事情いっさいなしにメーカーと認定されたので、本件でもたぶん、承認や薬価収載はヨコの関係認定の必須の要件ではないと思われます。

とくに本件では、日本ケミファはコーアイセイに全量委託していたので、メーカーとしての実質がかなり希薄です。

(2005年薬事法改正で、それまでの製造承認から製造販売承認へと変更され、製薬会社は自分で製造しなくても承認が取れるようになったのですが、そのことと競争法上メーカーの実質があるかは別問題だと思います。)

やはりメーカーとしての実質があるといえるためには、委託者(日本ケミファ)に商品規格へのコントロール権があるとか、受託者(コーアイセイ)に最低供給義務があるとか、あくまで委託者が主体なのだという事実が必要だと思います。

そういう主体性がない場合には、実質的な競争関係もないと思います。

次に問題は、両社の間で共同開発契約が締結されていることです。

排除措置命令では契約の内容がよくわからないのですが、ジェネリックの共同開発というのは、

「複数のメーカーが承認申請に必要な資料を共同で取りまとめ、その開発に携わったメーカーが同時期に承認申請する方法であり、効率のよい品揃え手法で、今日広く活用されて」

いるそうです(井上信喜「ジェネリック医薬品の現場実額マーケティング」71頁)。

また、1社(甲社)だけが開発をしていて、他社(乙社)はまったく開発をしていなくても、申請前に共同開発契約を結び、甲社が開発した申請データで乙社が申請手続をして、乙社も自社ブランドで一斉に上市する、ということも行われているようです(同書同頁)。

本件でも、コーアイセイだけが開発をしていて、日本ケミファはコーアイセイの申請データを使って申請したというだけなら、ますますタテの関係が色濃くなりそうです。

ですが、命令からはそのあたりの事情はわかりません。

むしろ、東洋経済の、

ジェネリック薬で初のカルテル、「主犯」は誰か 課徴金137万円、小さな談合事件の大きな意味

という記事によると、

「コーアイセイ自身は医薬品などの製造受託を長くメインにしてきたが、コーア商事HDは、後発薬事業の強化を狙い、その目玉として日本ケミファと手を組んでコーアイセイが開発・製造・販売したのがOD錠だった。」

ということで、コーアイセイが開発・製造・販売するのに日本ケミファが乗っかった、ということがうかがわれます。

(ちなみにこの東洋経済の記事によると、

「このOD錠プロジェクトに関しては、コーアイセイにとって日本ケミファは、製造受託の仕事の発注者であり、販売力も持つ、いわば「生殺与奪の権」を握る存在だ。日本ケミファによる「談合の誘い」を断れば、ここでの大きな仕事を失うリスクがあった。両社の間に力関係の差があることを考えれば、問題ありだとわかっていても、日本ケミファの要請にコーアイセイが従わざるを得なかったと思われる。

公取委の公表資料からもわかるように、今回の談合事件は日本ケミファの主導で行われたことはほぼ明白だ。この後発薬を販売する会社が2社だけで、しかも圧倒的な力の差があったことが大きい。」

ということのようで、これを読むと、カルテルというよりも日本ケミファによる支配型私的独占ではないか、という気がしないではないですが、この程度では「支配」とは認められず共同行為になるのはしかたないと思います。)

このように、開発も製造もコーアイセイが行い、販売力のある日本ケミファがそれに乗っただけだとすると、ほんとうに両社間に競争関係があったといえるのか(こんな関係の2社に競争しろと独禁法は命じられるのか)、とても疑わしくなってきます。

タテの関係というのとは別の切り口からいうと、両社は共同研究開発のパートナーなのではないか、ということです。

この点については、以前も書きましたが、共同研究開発ガイドラインでは、特許を共同開発した場合の「成果の第三者への実施許諾に係る実施料の分配等を取り決めること」は、原則として不公正な取引方法にあたらないとされており(第2-2(2)③)、その実施料分配の前提として、

「成果の貢献に応じた実施料の分配の前提として、必要な範囲で成果の第三者への実施に係る実施料を取り決めることは問題ないと考えられよう。」

と、実施料を共同で決めることも問題ないというのが立案担当者の見解です。

本件はジェネリックですから特許の共同開発であるはずはなく、共同開発の目的は医薬品そのものであるはずであり、そうすると、医薬品そのものの販売価格も共同で決めてよいということになっても、論理的にはおかしくないはずです。

(ただこの点については、共同研究開発ガイドラインはあくまでなんらかの知的財産が生まれる研究開発にだけ適用されるので、たんなる製造委託には適用されないのだ(ジェネリックでよく使われる「共同開発」には適用されないのだ)という解釈もあるかもしれません。)

たとえば本件で両社が正々堂々(?)と、共同製造販売のためのジョイントベンチャーを立ち上げて、そこに販売させたら、カルテルにはならないような気がします。

つまり、この2社ではたして市場支配力があったのかが問われる、ということです。

この点は、欧米ではカルテルは当然違法で競争への効果の立証が不要であるのと異なり、日本では競争の実質的制限の立証が必要であることが重要です。

共同研究開発ガイドラインでも、市場シェア20%まではセーフハーバーで問題なしということになっています。

本件を最初に報道で知ったときは、ジェネリックがこの2社しかいないので、「ジェネリックの市場」みたいなものを考えれば市場支配力が発生することもあるのかな、くらいに思いましたが、これも考えてみるとおかしいです。

というのは、この時点でたまたま2社しかいなくても(※実際には、コーアイセイが安定供給できなかったため日本ケミファは脱落で、1社)、あとからほかのジェネリックが参入する可能性があるなら、それも考慮すべきだからです。

さらに、「OD錠」だけで市場画定されるのかも、よくわかりません。

すくなくとも、こちらのページを見ると、「OD錠」(口腔内崩壊錠)にかぎらなければ、同じ成分のジェネリックはたくさんあるみたいです。

それらすべてを含めて1つの市場なのか、「OD錠」だけで1つの市場なのかは、よくよく分析する必要があると思います(公取はその分析の上で命令を出したのかもしれませんが)。

(ちなみに、ジェネリックの薬価は先発薬の半額が基本であることからすると、ジェネリックだけで市場が画定されるというのは、やむをえない気がします。)

さらに、仮に「OD錠」だけで市場が画定されて、「OD錠」に参入したのがこの2社(実際には1社)だけだったとしたら、むしろ反対に、この共同開発がなければどこも参入しなかったのではないか、ということが疑われます。

つまり、承認申請の費用を折半するからこそ2社が参入したのであり、共同開発がなければどこも参入しなかったのではないか、あるいは、共同開発がなければ少なくとも日本ケミファは参入しなかったのではないか(よってコーアイセイ1社の場合より競争制限的とはいえないのではないか)というシナリオです。

もしそうだとすれば、この共同開発契約は、仮に2社で価格協定をしても、競争促進的であった可能性があります。

そのあたりをクリアしなければ本件では競争の実質的制限は立証できないはずで、そのあたりがわからないので、「共同開発の2社でも価格協定をしたら常にカルテルだ」という一般論を本件から導くのは、私は誤りだと思います。

このように、本件については争える論点がいくつもあったと思いますが、日本ケミファがリニエンシーを申請したし、コーアイセイの課徴金も大した金額ではなかったので、争われることもなかったのかもしれません。(あるいはたんに、独禁法のことをよく知らなかったから争わなかっただけかもしれません。)

製薬業界については、同じく日本ケミファがリニエンシーを申請して、高血圧薬のカルバン錠でも立入検査がなされていますが(こちらはジェネリックではなく長期収載品)、同じ問題があると思います。

ただ、もし両社に市場支配力がないのだとしたら、どうして価格の合意などしたのだろう、という疑問が沸きます。

「価格の合意をしたのは、合意で価格を上げられると思ったからではないのか?」というのが、よく言われる公取委の言い分です。

でもこれはたぶん、そんなに深い理由はないのであって、共同開発の当事者で共同の意識があるから話しやすかった、というだけではないかと思います。

実際、カルテルをしようとしたけれどアウトサイダーが多くて失敗した、という場合には違反認定されないのが普通です。

あるいは、もう少し合理的な理由を探せば、1社だと参入費用が高いので2社で共同開発して参入費用を折半したが、2社になったとたん限界価格費用設定(ベルトラン競争)になるのでは利益がでないので価格の合意をした、ということかもしれません。

でもそうだとしたら、これは参入を促進するための競争促進的な合意であった可能性すらあります。(もちろん、そうでない可能性もありますが。)

ともあれ、こういう執行例がある以上、共同開発の当事者でも価格の合意や情報交換はすべきではないというのが実務的なアドバイスになるでしょうし、もし市場支配力がないなら合意をしても本来は無駄なはずなので(それでも、無駄と分かっていてもやりたいという欲求は実務ではよくあるところですが)、独禁法リスクも踏まえればやめておくに越したことはない、ということだと思います。

2019年11月18日 (月)

【お知らせ】景表法のセミナーを開きます。

ビジネスロージャーナルに景表法の記事を寄稿させていただいたご縁で、レクシスネクシス主催の景表法セミナーでお話させていただくことになりました。

こちらのURLから申込みできます。

http://www.lexis-seminar.jp/20191209-2-2/

開催日  2019年12月09日(月)

開催時間  09:30~12:00 (受付開始 09:15~)

会場名  トスラブ山王健保会館 (2階会議室)

会場所在地 〒 107-0052 東京都港区赤坂2丁目5−6 トスラブ山王健保会館

参加費  2万2000円(税込み)

ここ数年景表法は興味深い執行例が多く、話題には事欠きません。

景表法のセミナーは今年も何度もご依頼いただいていますが、そのたびに、取り上げるべき新しい事件が発生している印象です。

おそらく本年最後のセミナーになるので、一年の総決算のつもりで気合いを入れて行きたいと思います。

ご興味のある方はぜひお申し込み下さい。

 

 

2019年11月12日 (火)

エネルギアに対する課徴金について

エネルギアに対する課徴金納付命令(平成30年3月23日)は、期間限定キャンペーンを繰り返した場合における課徴金算定について、いろいろと興味深いことを教えてくれます。

私は同命令に賛成ですが、中身を見てみましょう。

まず、この事件では期間限定キャンペーンの表示が2つの期間にわたって認定されていますが、ややこしいので、最初の1つ(表示期間平成28年4月1日~5月20日)の分だけ、見ることにします。

次に、課徴金の対象役務ですが、命令では、これを「本件役務」と呼んでいます。

そして、「本件役務」は、

「平成28年4月1日から同年5月20日までの間 ・・・に新規に申込みが行われたことにより、「今カラ割」と称する割引が適用されるもの又は「今カラ割」と称する割引及び「今カラ割プラス」と称する割引 の両方が適用されるもの」

と定義されています。

つまり、平成28年4月1日~5月20日に新規申込されたインターネット接続サービスが課徴金対象役務、ということです。

この定義によれば、たとえば、平成28年4月30日に新規申込された接続サービスは、「本件役務」となります。

表示期間(平成28年4月1日~5月20日)を過ぎていようが、表示期間中に新規申込をした契約は、ず~っと、「本件役務」です。

このように、期間限定キャンペーンの繰り返しの事件では、対象商品役務が(役務の内容だけでなく)時間的に区切られることになるのが特徴といえます。

これは別に目新しいことでも何でもなくって、たとえば、「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」p10では、「課徴金対象行為に係る商品又は役務」の説明として、

「全国(又は特定地域)において供給する商品又は役務であっても、具体的な表示の内容や実際に優良・有利誤認表示をした地域といった事情から、一部の地域や店舗において供給した当該商品又は役務が「課徴金対象行為に係る商品又は役務」となることがある。」

と説明され、具体例として、店舗を限定した表示の例があげられています。

店舗を限定するのも、契約時期を限定するのも、理屈の上では同じことでしょう。

なお概念的には、

表示(広告)をしていた期間(平成28年4月1日~5月20日)と、

キャンペーン期間(申込期間)

とが異なることもありえますが(たとえばキャンペーン期間を「4月1日~5月30日」と記載した広告を、4月1日から5月20日まで出す)、本件ではいずれも4月1日~5月20日であり、両者は一致しています(広告期間=キャンペーン期間)。

さて、ここで条文の整理をしておくと、景表法8条1項では、課徴金額を、

「当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした

当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の

政令で定める方法により算定した売上額に

百分の三を乗じて得た額に相当する額」

と規定しています。

命令での「本件役務」は、8条1項でいうと、「当該課徴金対象行為に係る・・・役務」にあたります。

つまり、「当該課徴金対象行為に係る・・・役務」は、平成28年4月1日~5月20日に新規申込された接続サービスです。

次に、命令では、エネルギアが課徴金対象行為をした期間(=不当表示をした期間)は、同じく、平成28年4月1日~5月20日と認定されています。

この部分は「課徴金対象期間」につながります。

つまり、景表法8条2項では、「課徴金対象期間」を、

「課徴金対象行為をした期間

(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日

(同日前に、当該事業者が当該課徴金対象行為に係る表示が不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置として内閣府令で定める措置をとつたときは、その日)

までの間に当該事業者が当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)」

と定義しています。

本件ではエネルギアは誤認解消措置(「当該事業者が当該課徴金対象行為に係る表示が不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置として内閣府令で定める措置」)をとっていません。

しかも、キャンペーン期間中(4月1日~5月20日)に申し込まれた新規契約は基本的にず~っと続いているので(キャンペーン期間中の新規契約がぜんぶ途中解約されることなんてほぼありえないので、当然ですね。)、8条2項の、

「課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日・・・までの間に当該事業者が当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間」

は、6か月経過日と同日で、11月20日と認定されています。

というわけで、「課徴金対象期間」は、平成28年4月1日~11月20日となります。

まとめると、

課徴金対象役務(「本件役務」)は、平成28年4月1日~5月20日に新規申込みされた接続サービス

であり、

「課徴金対象期間」は、平成28年4月1日~11月20日、

となります。

つまり、課徴金対象売上は、「平成28年4月1日~5月20日に新規申込みされた接続サービス」の、「平成28年4月1日~11月20日」までの売上(月額料金など)、となります。

なので、命令では、5月21日(キャンペーン期間後)に新規契約された接続サービスからの売上は、課徴金の対象になっていません(「本件役務」にあたらないので)。

つまり、5月21日に新規契約した接続サービスの6月分、7月分、・・・11月分の月額料金には、課徴金はかかりません。

反対に、5月20日(キャンペーン期間中)に新規契約された接続サービスについては、11月20日までの料金について、課徴金がかかります。(命令でははっきりしませんが、きっと日割りなのでしょう。)

本件の表示で誤認して契約したのは5月20日までに契約した人たちでしょうから、この処理でよいと思います。(5月21日に契約した人は誤認していない。)

もしエネルギアが5月21日に誤認解消措置を講じていたら、課徴金対象期間は5月21日までになったのでしょう。

4月1日に契約した人がこの誤認解消措置を見て、「なんだ、お得じゃなかったのか」とわかって、契約を解約することはありうるので、誤認解消措置をとることに意味がないことはないと思います。

別の切り口で言うと、

①課徴金でカバーされるのは、4月1日~5月20日に新規契約申込みした契約者

②ただし、①の契約者が提供を受ける役務は、毎月(あるいは毎日?)別々の役務

とイメージすると、わかりやすいかもしれません。(②の想定は、いつでも解約できる限りは、実態にも合っていると思います。)

また、このように整理すると、継続的役務か1回きりの役務かを区別する必要がない(継続的契約は、毎月、取引の意思決定をしている、1回きりの契約の連続したものと整理すればいい)ので、あまり余計なことを考えずにシンプルに処理できると思います。

また、キャンペーン期間後も、キャンペーン期間中に契約した契約者の誤認は続いていると考えるのが自然だと思います。

理屈の上では、キャンペーン期間後に同じキャンペーンを繰り返すと、実は前のキャンペーンがお得でなかったこともわかるのではないか、という、ほとんど屁理屈も考えられますが、繰り返したキャンペーンの表示を前のキャンペーン中に契約した人が見ている保証はどこにもないので、やはり誤認解消措置が必要でしょう。

以上のように考えると、8条2項かっこ書は本件の場合にも淡々と適用すれば妥当な結論に到達し、そのように考えていると思われる本件命令は妥当だと考える次第です。

(でもそうすると、課徴金を算定するときには課徴金対象の契約だけを取り出して計算しないといけないので、すぐに契約時期で特定して対象売上が出せるシステムならいいですが、そうでないと手作業で売上をより分けて消費者庁に報告しなければならないことになって、とっても大変そうですね。)

なおこの事件については、課徴金制度の立案担当者である古川先生の詳細な論考が公正取引819号(2019年1月号)33頁に掲載されています。

 

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