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2019年8月21日 (水)

コンビニ2%ポイント還元と消費税転嫁法

今朝の日経朝刊一面に、

「消費増税『値引き』で還元

コンビニ4社 ポイント2%分」

という見出しの記事が出ていました。

2%分ポイントを付与すること自体は何も問題がないのですが、

「消費税増税分ポイントで還元します。」

とか表示(広告)すると、消費税転嫁法の転嫁阻害表示にあたるので注意が必要です。

消費税転嫁法8条(事業者の遵守事項)では、

「第八条 事業者は、平成二十六年四月一日以後における自己の供給する商品又は役務の取引について、次に掲げる表示をしてはならない。

一 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示

二 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの

三 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって前号に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの」

と規定されています。 

これをうけて、「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方」では、禁止される消費税転嫁表示の例として、

(1) 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示(第1号)

ア 「消費税は転嫁しません。」

イ 「消費税は一部の商品にしか転嫁していません。」

ウ 「消費税を転嫁していないので、価格が安くなっています。」

エ 「消費税はいただきません。」

オ 「消費税は当店が負担しています。」

カ 「消費税はおまけします。」

キ 「消費税はサービス。」

ク 「消費税還元」、「消費税還元セール」

ケ 「当店は消費税増税分を据え置いています。」

(2) 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの(第2号)

ア 「消費税率上昇分値引きします。」

イ 「消費税10%分還元セール」

ウ 「増税分は勉強させていただきます。」

エ 「消費税率の引上げ分をレジにて値引きします。」

(3) 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって第2号に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの(第3号)

ア 「消費税相当分、次回の購入に利用できるポイントを付与します。

イ 「消費税相当分の商品券を提供します。」

ウ 「消費税相当分のお好きな商品1つを提供します。」

エ 「消費税増税分を後でキャッシュバックします。」

といったものを挙げています。

逆にOKの例として、

(1) 消費税との関連がはっきりしない「春の生活応援セール」、「新生活応援セール」

(2) たまたま消費税率の引上げ幅と一致するだけの「2%値下げ」、「2%還元」、「2%ポイント還元

(3) たまたま消費税率と一致するだけの「10%値下げ」、「10%還元セール」、「10%ポイント進呈」

というのが挙げられています。

いろいろいっていますが、要するに、「消費税」「増税」「税」という言葉が入っていたらアウトです。

なので、上の例にもあるように、「2%ポイント還元」ならOKですが、「消費税2%増税分ポイント還元」ならアウトです。

というわけで、日経見出のような、

「消費税『値引き』で還元」

とかコンビニの店頭で表示すると、アウトになります。

加盟店のみなさん、注意しましょう。

でもどう考えてもこの規定って、馬鹿げてると思います。

(まあそのあたりの立法理由はいろいろとあるのですが、

長澤哲也・石井崇・植村幸也・河野良介『実務解説消費税転嫁特別措置法』

でくわしく書きましたので、ご興味のある方はご覧下さい。)

増税による消費の冷え込みを緩和するためなら、「消費税分」だと明記したほうがいいに決まっています。

消費者庁も消費税転嫁阻害表示についてはこれまで一件も摘発していません。

ナンセンスな法律を黙殺するというのも、行政庁の見識だと思います。

というわけで、摘発リスクはほぼゼロですが、コンビニ各社のみなさんは、いちおう気をつけておかれるとよいかと思います。

むしろ独禁法弁護士として気になるのはカルテルですね。

もちろん今回のケースはコンビニ各社で合意したわけではなく、たまたま4社の足並みがそろっただけなのでしょうけれど、値下げの合意をするカルテルでも、やはりカルテルです。

なぜかというと、「うちは5%還元する」という競争がなくなるからです。

というわけで、もしほかの業界の業界団体とかで「うちの業界でもやってみるか」といった話をすると、カルテルになりかねないので注意が必要です。

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