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2019年1月

2019年1月24日 (木)

手形払いを現金払いに変更した場合の中間利息の控除に関する中企庁Q&Aについて

2016年12月14日に中小企業庁と公取委が下請代金の支払いの現金化を要請する通達を出しましたが、それにともない、中小企業庁のホームページには、以下のようなQ&Aが掲載されました
 
「Q9: 今までの取引では手形払いであり、この額には手形等の割引料等を加味していません。今回の通達によって手形払いから現金払いに変更した場合、以下のケースは下請代金の「買いたたき」に当たるのでしょうか。
 
(1) 割引料相当分を差し引いて下請代金の額を定めること。
 
(2) 親事業者として資金調達が必要となるので、その資金調達に必要な短期調達金利相当額を下請代金の額から差し引いて下請代金の額を定めること。」
 
以下がその回答です。
 
「手形等の割引料等のコストは、ほとんどの場合に下請事業者が負担しており、結果として額面どおりの現金を受領できない状況にあります。
 
そのため、今般、下請代金はできる限り現金払いとすること等を要請したものであり、
 
(1)や(2)のような変更は、今般の通達発出を含む政府の下請取引の条件改善に向けた取組の趣旨にそぐわないものであって、政府としては、割引料等のコストについて、実質的に「下請事業者の負担とすることのないよう」、下請代金の額を決定することを要請するものです。
 
そのため,手形払いから現金払いに変更した場合、今までの手形と同じ額で支払えば問題はありません。
 
一方、手形払い時の下請代金の額から、(1)や(2)のように割引料相当分や資金調達に必要な短期調達金利相当額等を差し引いて、一方的に通常の対価より低い下請代金の額を定めた場合は、下請代金法の「買いたたき」に該当するおそれがあります。」
 
これは、あまりにもひどい内容です。
 
はっきりいって、下請法の解釈を誤っていることがあきらかです。
 
というのは、下請法の買いたたきは、
 
「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」
 
が要件です(下請法4条1項5号)。
 
つまり、通常の対価より「著しく」低いことが、要件なのです。
 
ところが、上記Q&Aでは、たんに「低い」だけで違反になりうるとされていて、「著しく低い」ことが要件になっていません。
 
しかもその理由として、前記通達が、
 
「割引料等のコストについて、実質的に「下請事業者の負担とすることのないよう」、下請代金の額を決定することを要請する」
 
を理由にしていることからすると、「著しく」を省いたのが、うっかりミスや誤記ではなく、意図的なものであったことがわかります。
 
さらに、
 
「今までの手形と同じ額で支払えば問題はありません」
 
と対比する形で
 
「一方、手形払い時の下請代金の額から、(1)や(2)のように割引料相当分や資金調達に必要な短期調達金利相当額等を差し引いて、一方的に通常の対価より低い下請代金の額を定めた場合は、下請代金法の「買いたたき」に該当するおそれがあります。」
 
という部分が述べられていることからすると、今までの手形の金額から1円でも安くすれば買いたたきである、というのがQ&Aの趣旨である、と解釈するのが自然です。
 
この「1円でも安くしたら違反」というのは、厳しい読み方でもなんでもなくって、消費税転嫁法の買いたたきで前例があります。
 
つまり、消費税転嫁法の買いたたきの条文を下請法の買いたたきを参考に作ったときに、消費税転嫁法の買いたたきは、
 
「商品若しくは役務の対価の額を
 
当該商品若しくは役務と同種若しくは類似の商品若しくは役務に対し通常支払われる対価に比し低く定めることにより、
 
特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むこと。」
 
と定義されることになりました(消費税転嫁法3条1号)。
 
ここで、下請法は「著しく低く」なのに、転嫁法は「低く」なのは、転嫁法の場合には消費税増税分満額上乗せして支払わないといけないのだ(1円でも安くしたら違反)、と説明されました。
 
そのことは消費税転嫁法ガイドラインに、
 
「「同種若しくは類似の商品若しくは役務に対し通常支払われる対価」とは,
 
通常は,特定事業者と特定供給事業者との間で取引している商品又は役務の消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額をいう。」
という形で明記されています。
 
消費税転嫁法のような「通常支払われる対価に比し低く定める」という条文でなぜ、増税分満額上乗せしないと違反になるのか、はなはだ理解に苦しむところところです。
 
このような条文なら、まず、増税前の対価が「通常支払われる対価」であったことの立証が必要になる、と考えるのが当然だと思います。
 
公取委の説明会でも、ある弁護士さんが、どうしてこの条文でこんな風に解釈されるのか、文言に照らしておかしいじゃないか、というたいへんごもっともな質問をされていました。
 
転嫁法の買いたたきの条文は、とてもへんな条文で、なぜこうなったのかというと、立案担当者が自分の頭で考えることができない人だったために、下請法の条文を下敷きに作ることしかできなかったからです。
 
それ以外の理由はありえません。
 
ちょっと脱線しましたが、要するに、「著しく」という文言があるかないかで、これくらい解釈が変わってしまうという先例が、転嫁法のときにすでにあるわけです。
 
そういう目で見ると、上記Q&Aも、明らかに意図的に「著しく」を省略し、1円でも安くしたら違反に問うという明確な意図をもって公表されたものであることが明らかに思われるのです。
 
しかし、いうまでもなく日本は法治国家ですから、通達で条文を書き換えるなんて、とんでもないことです。
 
この通達と同じころ、下請法の買いたたきの執行を強化する目的で下請法の運用基準と下請法テキストの改定がなされ、買いたたきの事例が大幅に増えました。
 
しかしそれでも、どの事例をみても必ず「著しく低く」と入っていました。
 
ところがこんなQ&Aのような目立たないところで「著しく」を、勝手に削除してしまっているわけです。
 
安倍内閣主導であれば何でもあり、という現政権の態度が非常によく表れていると思います。
 
こういう欺瞞をみると、下町ロケットを使った日経全面広告も、とても嘘くさくみえてしまいます。
 
また理屈で考えても、一般的に、大企業である親事業者の社内調達金利は中小企業である下請事業者の社内調達金利よりも低いので、親事業者の社内調達金利相当額を引かれても、その分早く現金が受け取れる中小企業にはお釣りがくる、とすらいえるのであり、1円でも差しい引いたら「通常」の対価より「低い」というのも、無理があります。
 
というわけで、このQ&Aは下請法の解釈を誤ったものですから、無視するほかないと考えます。
 
いまの行政はこういうことを平気でやるので、常に厳しい目で監視していかなければなりません。

2019年1月 1日 (火)

パートナー就任のお知らせ

明けましておめでとうございます。
 
1月1日付をもちまして、日比谷総合法律事務所のパートナーに就任いたしました。
 
歴史のある事務所の名前を汚さぬよう、かつ、自分らしさを失わないよう、これからも良い仕事を通じて、依頼者のみなさまのお役に立ち、社会正義の実現に貢献できるよう、精進してまいります。
 
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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