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2018年12月11日 (火)

独禁法で命令を受けるリスクと調査を受けるリスク

わたしは基本的に、独禁法弁護士は、法律家として、問題の行為が独禁法上違法かどうかが判断できることが大事だし、それでほとんど足りる(それすらもできない弁護士も多い)、と考えています。
 
ですが、世の中、それだけでは足りないことも事実です。
 
というのは、企業にとっては公取委の調査を受けるだけでも、評判(取引先から取引を断られる、新卒学生が採用できなくなる、など)や弁護士費用など、大変なダメージだからです。
 
かつて調査を受けた依頼者の件も、命令がでないことはもちろん、どうみても違反になりそうにないケースでした。
 
予定どおりそのケースは、「問題なし」となりました。
 
それでもその後、その依頼者への萎縮効果たるや、すごいものがありました。
 
カルテルや談合なら、別にきわどいところを攻めなくてもビジネス上大した問題はなく、石橋を叩いても渡らないくらいでちょうどいいのかもしれません。
 
ですが、不当廉売や拘束条件付取引など垂直系の違反行為類型は、正常な競争との違いが紙一重ですから、過剰反応のマイナス効果は大きいです。
 
ホンネをいえば、調査をするかどうかは公取の勝手なので、調査を受けるリスクがあるかないかなんて、どうでもいいと思っています。
 
研究者の方が調査を受けるリスクについて分析しているのも、見たことがありません。
 
ですが、依頼者の方々からそういうアドバイスを求められる以上、それに応える必要がありますし、そういうアドバイスは実務家だからこそできるんだろうなぁ、とも思います。
 
(そいうえば、以前、私が所属する第二東京弁護士会で、独禁法の警告事例の研究発表をされた公取委出向経験のある弁護士さんの発表を聞きましたが、あれは面白かったです。)
 
それでも基本的には、公取委が関心を持つかどうかは理屈だけで割り切れないところがあるので、学問的な研究対象になりにくいし、知的達成感もありません。
 
べつに独禁法の理屈がわからなくても、ある程度経験を積めば、できてしまうアドバイスだともいえます(むしろ、理屈が邪魔をすることがあるかもしれません)。
 
ともあれ、公取委の方々には、企業の方々がそんなところに関心を持つのだということをよくご理解いただいた上で、牽制的な調査や、調査対象行為をやたらと広げることは、謹んでいただきたいと希望します。
 
ほんとうに、事情聴取でこんなことを聞かれましたというだけで、「そんなことまで公取は関心を持っているんだ」と思って、会社の人はびびってしまうのです。
 
(まあそういうときには、「公取も仕事だからいろいろ調べるけど、違反にするつもりはありませんよ」とアドバイスはするのですが。)
 
また、企業のほうも、独禁法とはどういう法律で、公取委とはどういう役所なのかを、よく理解してリスク評価をする必要があると思います。
 
お上のやることは正しいと素朴に考えている企業は、調査を受ける可能性があるならやらない、という判断をするのでしょうが、独禁法の世界でそれをやると、まともな競争ができなくなります。
 
このあたりは残念ながら、外資系企業のほうが、リスクを取りながら競争するのがうまいように思います。
 
日本企業はむしろ、違法であることが明白でも、業界慣行や政治的背景で、やめられないことが多い(やめたほうがビジネス上もメリットがあるにもかかわらず)ように思わます。
 
そのあたりが、ドライに徹しられない、ウェットで、残念なところです。

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