公取委への事情聴取への苦情申し立て
独占禁止法審査手続に関する指針には、「任意の供述聴取に関する苦情申立て」という制度があります。
これは、任意の事情聴取(つまり、ふつうの事情聴取)について、
「聴取対象者等が,聴取において本指針「第2 2 供述聴取」に反する審査官等の言動等があったとする場合には,当該聴取を受けた日から1週間以内に,書面により,公正取引委員会に苦情を申し立てることができる。」
というものです。(第2-4)
ここで「第2 2 供述聴取」の「(3) 供述聴取における留意事項」のアでは、
「ア 供述聴取を行うに当たって,審査官等は,威迫,強要その他供述の任意性を疑われるような方法を用いてはならない。また,審査官等は,自己が期待し,又は希望する供述を聴取対象者に示唆する等の方法により,みだりに供述を誘導し,供述の代償として利益を供与すべきことを約束し,その他供述の真実性を失わせるおそれのある方法を用いてはならない。」
とされています。
よって、これら威迫や誘導があった場合は、申立の理由あり、ということになります。
公取委ホームページの説明ページでは、これをわかりやすく、
「(1) 供述聴取時の手続・説明事項に関するもの(例)供述聴取開始までに任意である旨の説明がされなかった。(2) 威迫・強要など審査官等の言動に関するもの(例)違反事実を認めるまで部屋から出さないと言われ,強引に供述を迫られた。
(例)審査官等が期待する供述を行う代償として利益を供与することを示唆された。
(3) 聴取時間・休憩時間に関するもの(例)同意なく一日につき8時間(休憩時間を除く。)を超える聴取が続けられ,帰りたいと申し出ても帰してもらえなかった。
(4) 供述調書の作成・署名押印時の手続に関するもの
(例)署名押印をする前に,審査官等による調書の読み聞かせが行われず,閲読もさせてもらえなかった。
(例)調書の訂正を申し立てたが,訂正が行われず,審査官等から訂正しない理由について何ら説明なく訂正しないまま,署名しろと言われた。」
とまとめています。
これらの説明の「(例)」の中に、実務では最もありがちで指針には明記されている、供述の誘導が含まれていないのはまことに不適切だと思いますが、それは措きます。
(こういうのはとても意図を感じますし、法律の世界は何でも条文にあたらないと役所にいいようにされる、という思いを強くします。)
苦情申立は聴取日から1週間とされていますが、上記説明ページでは、
「ただし,聴取日から一週間以内に,当該審査官等を指揮・監督する審査長等に対して苦情を申し入れており,その後に本制度に基づく苦情申立てを行うときは,当該期間経過後であっても行うことができます。」
ということになっています。
ごていねいに申立書の様式が準備されていますが(同じページにリンクがあります)、必ずこの書式で出さないと受理されないということもないのでしょう。
聴取の場所の記載例は、
「公正取引委員会8階 審査局A会議室」
などとなっており、そんなことまでふつうは聴取時にチェックしていないはずです。
もちろん、ここまで細かく書かなくても何の問題もないでしょう。
そもそも同じ役所なのですから、担当の審査局に聞けばすむ話です。
なお提出先は14階の官房総務課です。
« 共同研究の成果の特許等の実施料の取り決め | トップページ | 独禁法の行為無価値と結果無価値 »
コメント