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2018年10月 3日 (水)

流取ガイドラインの競争者間の総代理店契約の規定の削除について

あまり大きな話題になっていませんが、2017年の流通取引慣行ガイドラインの大幅改正(構成が大きく変わっただけで中身はあまり変わっていませんが)では、それまであった「第3部 第1 競争者間の総代理店契約」の規定が全面削除されました。
 
改正以前のガイドラインでは、
 
総代理店の市場シェアが10%以上かつ上位3位以内の場合、競争阻害効果が生じることがある
 
総代理店の市場シェアが25%以上かつ1位の場合、競争阻害効果が生じることとなるおそれが強い
 
として、競争阻害効果が生じる場合には不公正な取引方法(拘束条件付取引)にあたる、とされていました。
 
この競争者間の総代理店契約に関する規定の削除については批判もあり、パブコメ質問137番では、
 
「改正(案)では,現行ガイドライン第3部第1「競争者間の総代理店契約」の項目が削除され,これに伴い競争者間の総代理店に関するセーフ・ハーバー(市場におけるシェア10%以上かつ上位3位以内)も廃止されている。
 
しかし,「流通・取引慣行と競争政策の在り方に関する研究会」報告書では,「総代理店を取り巻く環境・実態は変化しており,更に実態把握を行う必要がある」と結論付けるのみであり,上記削除・廃止を行うべき根拠は明確に示されていない。
 
総代理店契約は引き続き利用されることのある取引形態であり,判断基準の明確性が求められることから,現行ガイドラインの記載を維持すべきである。(団体)」
 
という、至極まっとうな質問がなされていて、これに対する公取委の回答は、
 
「御指摘については,本指針が制定された当時に問題視されていた輸入品の内外価格差は,現在においてそれほど大きな問題とはなっていないと考えられること,第3部第1の考え方に基づき法的措置を採った事例はないことなどを踏まえ,本年3月に開催した本研究会でも議論した結果,記載を削除することとしました。
 
なお,競争者間で総代理店契約が締結されることにより,仮に我が国市場における競争を実質的に制限するようなケースが生じる場合には,独占禁止法3条の観点から検討されることとなります。」
 
というものです。
 
そもそも競争者間の代理店契約は不当な取引制限として処理すべきなのであって、拘束条件付取引で処理していた旧ガイドラインは理屈としてはおかしいのですが、それはさておくとしても、わたしも全面削除するまでのことはなかったんじゃないかという気がします。
 
この点についてはさらに、 
 
佐久間正哉編著『流通・取引慣行ガイドライン』
 
で、
 
「こうした〔競争者間の総代理店契約については法的措置がなされたことも相談事例で回答されたこともないという〕状況等を踏まえ、平成29年のガイドライン改正では、第3部のうち競争者間の総代理店契約に関する部分は削除・・・することとなった。
 
もちろん、ガイドラインから記載が無くなったことで、競争者間の総代理店契約は独占禁止法の適用対象外になったというわけではない。
 
競争者間の総代理店契約によって市場における地位が高まったことを背景として、不当な取引制限や私的独占が行われる場合には、当然に独占禁止法上問題となり得るものである。」(p232~233)
 
と解説されています。
 
でもこれを文字どおり読むと、総代理店契約自体は問題なくて、それにより市場支配力が高まって、不当な取引制限や私的独占が行われれば、不当な取引制限や私的独占の部分だけが問題となる、といっているように読めます。
 
というか、そうとしか読めません。
 
でも、理屈としてはこれはおかしいと思います。
 
もちろん、国内最大手の競争者は顧客ベースも販路も営業リソースも持っているでしょうから、外国企業が最大手企業を総代理店に任命することで大きな売上を期待できる、ということは十分にありうることなので、結果的に、外国会社が国内最大手企業を総代理店に指名しても独禁法上は問題ない(競争促進的である)ということは、大いにありえます。
 
でもやはり、競争者を総代理店に任命する(その結果、外国企業は他の代理店を任命したり、自ら直接販売したりできない)ということには、それ自体に反競争性が認められることも、十分にありえます。
 
なので、上記佐久間の解説は、理屈としてはおかしいと思います。
 
ですが、これだけ公取と公取関係者が総代理店は問題視しないとはっきりいっているわけですから、実務上のリスクはずいぶんと下がったと言えるのではないかと思います。
 
公取は、ガイドラインや相談事例で建前では非常に厳しいことをいいながら、実際には問題視しない、ということがこれまで多く、流通取引慣行ガイドラインはその筆頭だったのですが、公取委が正面から規定を削除することで事実上問題視しない姿勢を明らかにするということは、たいへん珍しいことです。
 
というわけで、これはこれで、好ましい流れなのかもしれません。
 
ただそれでも、競争者間の総代理店契約にはそれ自体反競争性が認められることがありうる(その代理店に頼むことで売上増大が見込める効果と、その代理店に頼むことで当該代理店の商品との間の競争が無くなり価格が上昇する効果とのバランス)ので、ガイドラインの規定がなくなったとはいえ、競争法上の分析は必要なんだろうと思います。
 
そしてその時に、旧ガイドラインの「シェア25%かつ1位」といった基準は、それなりに意味があるのではないかという気がします。
 
それでも、外国事業者が単独で参入した場合にどれだけのシェアを取れると見込めるかとか、ほかに代理店候補はいないのか、などを考慮する必要はあるものの、シェア25%くらいで問題視するのは、セーフハーバーとして厳しすぎて、実際には、シェア40~50%くらいまで大丈夫じゃないか、という感じがします。

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