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2018年9月 7日 (金)

最高再販売価格拘束の見極め方

公取委の公式見解(建前)は、最低であろうと最高であろうと、再販売価格拘束は原則違法だ、ということなんだろうと思われます。
 
その根拠として、たとえば、平成27年流通取引慣行ガイドライン改正パブコメ回答の111番で、
 
「メーカーが、流通業者に対し、再販売価格の上限を拘束するが、流通業者間で活発な価格競争が行われる場合」
 
について違法でないと考えていいのかという質問に対して、
 
「再販売価格の拘束は、通常、競争阻害効果が大きいため、独占禁止法においては、メーカーが、流通業者に対し、「正当な理由」がないのに再販売価格の拘束を行うことは不公正な取引方法として違法となると規定されており、本指針の考え方に照らして、御指摘のような具体例が正当な理由があるとはいえないものと考えます。」
 
と回答されています。
 
(別に隠すこともないので白状すると、この設問は、当時所属した大江橋法律事務所の同僚と一緒に私が出した質問です。)
 
事案によるので一概には言えません、くらいのゆるい回答かなぁと思いながら質問したのですが、今読み直しても、これ以上ないくらい、断定的に違法といっています。
 
公取が本音でそう思っているのか、ほんとうに経済学の二重限界化の議論も知らないのか、あるいはパブコメ回答はガイドラインの担当部署かぎりで出しているのか、真相はわかりませんが、一ついえるのは、最高再販売価格拘束が違法とされる可能性は実務的にはきわめて低いということです。
 
今まで実例もありません。
 
でも、最高価格の拘束が、事実上最低価格の拘束として機能する場合には、最高の拘束も最低の拘束として違法になるんだ、ということがよくいわれます。
 
そこで、最低価格の拘束なのか、最高価格の拘束なのかを区別する基準が必要になります。
 
ここで最もやってはいけない間違いは、「小売店の価格が同額になっているので事実上の最低価格の拘束だ」、という認定です。
 
最高価格の拘束でも、結果的に当該拘束価格に収れんすることはありえます。
 
反対に、最低価格の拘束でも、拘束を守らず拘束価格以下で販売する小売店もあるでしょう。
 
したがって、結果的に同一価格になっているからというのは、事実上の最低価格として機能していることの証拠にはなりません。
 
そこで両者の区別は、次のような手順で行うべきでしょう。
 
まず、拘束価格よりも低い価格で販売している小売店が相当数(イメージとしては、全体の2~3割くらい)いるなら、最低価格の拘束ではない、といっていいでしょう。
 
その2~3割に対してメーカーがなにも文句を言っていないなら、なおよし、です。(最高価格の拘束なので、もちろん、文句を言うはずはないでしょう。)
 
では、拘束価格以下で販売している小売店がほとんどいない場合、どうすればいいでしょう。
 
その場合は、拘束を守っている小売店の利益最大化価格を、聞き取りをするなり、経済分析をするなりして、推定し、その利益最大化価格が拘束価格を上回っているなら、最高裁販売価格拘束である、と考えてよいでしょう。
 
つまり、小売店はほんとはもっと上げたいんだけど上げられない、という状況です。
 
これに対して最低再販売価格拘束の場合は、小売店の(他の小売店が再販を守らない前提での)利益最大化価格は、拘束価格を下回るはずです。
 
結局、最高と最低の区別は、これしかないと思います。
 
もちろん、契約書に最高価格だと明記すればずいぶんとリスクは下げられますが、「事実上の最高額として機能している」というだけの理由で違法とされるおそれがあることからすると、契約書の文言だけではちょっと心配です。
 
ただ、利益最大化価格とかいうと小難しく聞こえますが、小売店がもっと高く売りたいのかどうかというのは、事情を聴けばだいたい判断できます。
 
しかしそれでも、利益最大化という経済学の考え方についてのリテラシーのない人が、結果的に価格が一致していたら最低(あるいは特定価格の)再販売価格拘束なんだ、とかむちゃくちゃなことをいいかねないので、利益最大化価格という考え方が大事なんだよ、といいたいのです。
 
最高再販売価格拘束がなぜ問題ないのかは、「もし最高再販売価格拘束がなかったらどうなるか」を考えてみればわかります。
 
小売店の利益最大化価格が当該拘束価格を上回っていれば、当該拘束がなければ価格は上昇するので、消費者に悪影響がおよびます。
 
これに対して、小売店の利益最大化価格が当該拘束価格を下回っているのであれば、拘束があろうがなかろうが小売店は当該利益最大化価格を設定するので、拘束による影響はありません(いわば空振り)。
 
よって、最高裁販売価格拘束は、消費者にメリットがあるか、あるいは何も影響がないか、のいずれかなわけです。
 
したがって、最高再販売価格拘束は独禁法上問題ない、ということになります。

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