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2018年9月12日 (水)

私が独禁法のアドバイスで心がけていること

実務では、公取の見解はどうなんだ、ということがいつも問題になります。
 
一弁護士の個人的な意見はあまり重要視されません。
 
でもむずかしいのは、独禁法では公取の建前と本音が大きく異なることが多いことです。
 
しかも公取の建前(ガイドラインなど明確に書いたものに現れている考え方)にしたがうと、とても厳しい内容になり、極論すればほとんど何をやってもだめ、ということになりかねません。
 
そこで私は依頼者の方にアドバイスするときに、
 
①ほんとうに公取に摘発されるリスクがあるレベル
 
②公取が本気で違法と考えているレベル
 
③公取が建前では違法といっているけれど、本音では違法とは考えていないレベル
 
④公取に聞くと違法と言われるけれど、聞かずにやれば違法と言われることはないレベル(聞くとやぶ蛇になるレベル)
 
くらいにわけて説明しています。
 
そして、公取が本気で違法と考えている行為の中にも、理論的には違法とはいえない行為というのがあります。
 
そういうときには、個人的な見解と断ったうえで(前提として私は理論に基づいてアドバイスしています)、公取はこれを違法というかもしれないが理論的には違法とはいえない、とアドバイスします。
 
そして、建前で違法といっているレベル(③)と、本気で違法と考えているレベル(②)とを区別するには、理論の裏付けが不可欠です(とくに経済理論)。
 
独禁法をあまり理解していない弁護士さんの中には、公取が建前で違法といっているだけのものをすべて違法とアドバイスする人もいるでしょうが、それでは、しかるべき専門家からアドバイスを受けてきちんと競争法の分析をした競業他社に競争で負けてしまいます。
 
なので私は、「公取委の先例はこうだ」というだけでは、独禁法のアドバイスとしては不十分だと考えています。
 
まず、似たような先例があるというだけでは、それが目の前の問題にも適用されるのかが明らかではありません。
 
ひどいのになると、外形上似ている先例を持ってきて、競争の実態はぜんぜんちがうのに、「先例はこうです」というアドバイスも見かけます。
 
独禁法のやっかいなのは、外形上似ていても、目の前の事案で同様に考えて良いかどうかは理論(特に経済理論)がわかっていないと、正確に判断できないことです。
 
なので、たんに似た先例があるというだけでは不十分です。
 
しかも、その先例が目の前の案件と似ているといっていいのかどうかを見分けるのが、非専門家には非常に困難です。
 
それでも私は、できるだけ理論に基づいて、先例と相談を受けた実際の事例との類似点と相違点をきちんと説明するようにしています。
 
中には、公取委がどう考えるかだけに関心のある方も少数ながらいらっしゃいますが、そういう方は公取委に直接尋ねられたらよいと思います(無料ですし)。
 
ただしそのときには、やぶ蛇になるレベル(④)というのがかなり多くある、ということは覚悟しておくべきでしょう。
 
それでかまわないというのも一つの方針ですから、とやかくいうこともないのでしょうけれど、独禁法専門弁護士としては、現実的なリスクについてていねいに説明することが大事なんだろうと考えています。

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