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2018年7月11日 (水)

老人ホーム「イリーゼ」に対する措置命令について

HITOWAケアサービス(株)という、老人ホーム運営会社が、7月3日、老人ホーム告示違反で措置命令を受けました
 
違反の内容は、パンフレットに、
 
「終の棲家として暮らせる重介護度の方へのケア」
 
「寝たきりなど要介護度が思い方もお過ごしいただくことができます。」
 
「ご希望の方には、医療機関と連携しご家族様のお気持ちに寄り添いながら看取り介護にも対応しております。」
 
と記載していたのに、実際には、
 
「入居者の行動が、
 
他の入居者又は自社の従業員の生命若しくは身体に危害を及ぼし
 
又は
 
その切迫したおそれがある場合であって、
 
イリーゼにおける通常の介護方法又は接遇方法ではこれを防止することができないときは、
 
当該入居者との入居契約を解除すること」
 
があった、というのが、老人ホーム告示6項違反とされました。
 
老人ホーム告示6項では、
 
「有料老人ホームにおいて、
 
終身にわたって入居者が居住し、
 
又は
 
介護サービスの提供を受けられるかのような表示であって、
 
入居者の状態によっては、
 
当該入居者が当該有料老人ホームにおいて終身にわたって居住し、又は介護サービスの提供を受けられない場合があるにもかかわらず、
 
そのことが明りょうに記載されていないもの」
 
が、不当表示として指定されています。
 
しかし、これって、事業者に厳しすぎないでしょうか。
 
告示6項の、
 
「入居者の状態によっては」
 
というところからイメージされるのは、要介護度が重くなったとか、本人の健康状態の悪化とか、そういうことなんじゃないでしょうか。
 
これに対して、本件の「実際のところ」は、
 
「入居者の行動が、他の入居者又は自社の従業員の生命若しくは身体に危害を及ぼし」
 
というようなことだった、ということです。
 
でも入居者の行動が人の生命身体に危害を及ぼす場合に退去させられることがあるなんて、あたりまえのことのような気がします。
 
それをいちいち明確に表示しないと不当表示というのは、告示6項の読み方として、ちょっと厳しすぎるように思うのです。
 
そして措置命令の「実際には」の認定は、その書き方からあきらかに、入居契約の文言のようにみえます。
 
でも、本件でいちばん大事なのは、入居契約の文言ではなくて、実際にどうだったか、ということなんじゃないでしょうか。
 
つまり、実際に解除した事例があったのか、あったとして、ほんとうに周りの人に危害を加えるおそれがあったのか、ということが大事なははずです。
 
わたしは常々、
 
「契約書で消費者に不利な条項はきちんと広告で表示しておかないと不当表示になりますよ」
 
と説明していますし、その意味で、本件措置命令は、ありうる判断だとは思います。
 
たとえば、入院保険の約款で、入院給付金の条件に、パンフレットに記載がないような条件があるような場合です。
 
事例としては、日本生命のがん保険のパンフレットが公取委の排除命令の対象になったものがあります(2003年)。
 
でも、人に危害を加えるおそれがある場合には退去させることがあるというのはあたりまえのことであり、それを表示しておかないと不当表示になる、というのはちょっと厳しすぎるように思うのです。
 
本件は指定告示の事件で(なので課徴金もかかりません)、老人ホーム以外には理屈の上では関係ない事件ですが、告示6項自体は景表法の一般論からそれほどはずれた規定ぶりではないので、考え方としては、優良誤認表示や有利誤認表示にも適用があったとしてもおかしくないと思います。
 
たとえばアパートの賃貸借契約で、退去時に敷金から床面積に応じた清掃費を控除する、なんていうのも、不動産屋さんの広告に明示しないといけないんでしょうか?
 
重要事項説明書に記載するのでは不十分なのでしょうか?
 
というわけで、約款や契約書を使って消費者と取引をしている事業者の方は、いま一度、広告で表示すべきような条項がないか、きびしい目で点検することをお勧めします。

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