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2018年7月

2018年7月29日 (日)

マクドナルドへの措置命令について

マクドナルドに対して7月24日、優良誤認で措置命令が出ました
 
「東京ローストビーフバーガー」などの商品に成形肉を使っていた、ということです。
 
しかしこの事件、なんとも評価がむずかしい事件です。
 
措置命令を読むと、
 
「ローストされた牛赤身の肉塊をスライスする映像を放送」
 
するなどした表示が、
 
「あたかも、本件料理に使用されている「ローストビーフ」と称する料理には、牛のブロック肉を使用しているかのように示す表示」
 
であるとして、不当表示だと認定されています。
 
たしかに命令書の別表をみると、肉の塊を包丁で切っている写真が載っています。
 
ところが措置命令をよくみると、肉の塊を包丁で切る映像だけでなく、商品(「東京ローストビーフバーガー」)の写真そのものも、不当表示としてあげられています。
 
ではこの事件、いったい何がいけなかったのでしょう。
 
わたしはこの事件を最初に報道でみたとき、フォルクスが成形肉を「ステーキ」として提供していた事件を思い出しました(2005年11月15日排除命令)。
 
このフォルクス事件では、「ビーフステーキ」などのメニュー名が、
 
「あたかも,当該料理に使用している肉は,牛の生肉の切り身であるかのよう」
 
な表示であり、
 
「実際には,牛の成型肉(牛の生肉,脂身等を人工的に結着し,形状を整えたもの)であった。」
 
ので不当表示だ、とされました。
 
つまり、「ステーキ」という言葉は牛の生肉の切り身を焼いた料理を意味するのだから、成形肉を焼いた料理は「ステーキ」と呼んではいけない、という理屈です。
 
あくまで、「ステーキ」という言葉の意味の問題であることが、ポイントです。
 
わたしはこのフォルクスの事件が報道されたとき、まあ確かにステーキって、肉の塊を切って焼いたものっていうイメージがあるから、そういう解釈もあるのかな、と思いました。
 
といった過去の経緯も考えると、今回のマクドナルドの事件でも、「ローストビーフ」という言葉の意味が問題とされた可能性は大いにあります。
 
でも、「ローストビーフ」の意味からして、これはやや微妙です。
 
たとえば『広辞苑』では、「ローストビーフ」は、
 
「蒸焼にした牛肉」
 
とだけ説明してあり、固まり肉でなければならないとはされていません。
 
次に『新明解国語辞典』では、「ロースト」の説明として、
 
「牛肉や鶏肉などを焼くか蒸焼きにすること(した料理)。「-ビーフ5⃣・-チキン5⃣4⃣」
 
と説明されており、固まり肉であることを要求していません。
 
これに対して『大辞林』では、「ローストビーフ」を、
 
「牛のかたまり肉を天火で焼いた料理。」
 
と説明されています。
 
まあ確かに、ローストビーフのイメージは固まり肉を焼くか蒸すかしたもの、というイメージはわからなくもありません。
 
なので、もし今回の措置命令が「ローストビーフ」をそのような意味だと解釈して(いわばフォルクス事件で「ステーキ」は一枚肉を焼いたものに限ると解釈したのと同様に)、成形肉を使ってはいけない、と考えたのなら、先例にしたがった判断ということもできそうです。
 
問題は、措置命令が違反だと明示している「ローストされた牛赤身の肉塊をスライスする映像」です。
 
こういった映像一般が不当表示になるとすると、かなり広告実務への影響が大きいのではないでしょうか。
 
こういう、大きな塊肉を豪快にスライスするような映像って、広告宣伝では普通にイメージ映像として使われそうですよね。
 
今回の命令は、そういうイメージ映像もだめだ、とはっきり言っています。
 
「肉汁のしたたる大ぶりの塊肉を豪快にナイフでカットする映像を流すんだから、実際の商品もそうやって作れ!」
 
というのは、表示と実際を厳密に一致させるという意味では間違っていないのかもしれません。
 
でも、それってちょっと、広告の表現の幅を狭めてしまいすぎないでしょうか。
 
たとえばレストランのメニューの写真や食品サンプル(蠟でできた本物そっくりのサンプル)をみて、大きくて立派なエビフライだったので注文したら実物はずいぶん小さかった、というような経験って、誰でも一度や二度はしているのではないでしょうか。
 
インターネットの広告でも、こういうイメージ的な表現はいくらでもありそうです。
 
それも不当表示だというのも一つの見解ですが、法律で取り締まらないといけないものなのかなあという気がします。
 
ともあれ、どこまでのイメージ映像が広告上一般に許される誇張なのか、今後は厳しく問われることになりそうです。

2018年7月27日 (金)

【お知らせ】会社法務A2Zに寄稿しました

第一法規が出版するビジネス法律雑誌「会社法務A2Z」の8月号に、
 
「最近の景表法違反事例の傾向と企業法務上の留意点」
 
という記事を執筆させていただきました。

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最近の消費者庁は、イケイケドンドン、で、とても興味深い事例が多いです。

今回の執筆のためにあらためて措置命令をじっくり読みなおしてみて、改めて気づかされることも多々ありました。

ご興味のある方はご一読いただけると嬉しいです。

2018年7月13日 (金)

出版のお知らせ

このたび、第一法規から、
 
『製造も広告担当も知っておきたい 景品表示法対応ガイドブック』
 
という書籍を出版させていただくことになりました。
 
書誌情報は、こちらです。

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景表法の解説書はたくさんありますが、はじめて手に取るには気が引ける大部なものが多いので、法学部出身ではない人でも、景表法を勉強する必要に迫られたときに最初に手にしていただける入門書をめざして書きました。本文250頁くらいです。
 
ですがそれと同時に、景表法の表示規制は、法律的な発想がないと「なんでもあり」、あるいは、「常識で判断」というだけ、ということにもなりかねず、法的思考(体系的思考、論理的思考、一般化・抽象化)も大事だよということをにじませながら書いたつもりです。
 
景品規制は、細かいことを説明しだすときりがないのですが、実務で繰り返し問題になる重要論点(割引券の問題など)を中心に、それなりに踏み込んで書いたつもりです。
 
入門書ですから、基本的には、消費者庁の実際の運用を紹介することに重点を置いていますが、それでも、(このブログほどではないですが)消費者庁の解釈のおかしなところも指摘しています。
 
そのほか、訴えたいことは「はしがき」に書きましたが、裏面の帯にも引用していただいた「はしがき」の一部を引用しますと、
 
「この本では、「いかに消費者への訴求力を落とさずに、消費者庁に摘発されないぎりぎりセーフの広告を作るか」といった不誠実な態度の読者は、はなから想定していない。
 
この本は、あくまでまじめに景表法をまなぼうとする、あなたのための本である。」
 
と、いうことです。
 
興味のあるかたはぜひ、書店で手に取っていただければと思います。
 
7月24日の発売です。

2018年7月11日 (水)

老人ホーム「イリーゼ」に対する措置命令について

HITOWAケアサービス(株)という、老人ホーム運営会社が、7月3日、老人ホーム告示違反で措置命令を受けました
 
違反の内容は、パンフレットに、
 
「終の棲家として暮らせる重介護度の方へのケア」
 
「寝たきりなど要介護度が思い方もお過ごしいただくことができます。」
 
「ご希望の方には、医療機関と連携しご家族様のお気持ちに寄り添いながら看取り介護にも対応しております。」
 
と記載していたのに、実際には、
 
「入居者の行動が、
 
他の入居者又は自社の従業員の生命若しくは身体に危害を及ぼし
 
又は
 
その切迫したおそれがある場合であって、
 
イリーゼにおける通常の介護方法又は接遇方法ではこれを防止することができないときは、
 
当該入居者との入居契約を解除すること」
 
があった、というのが、老人ホーム告示6項違反とされました。
 
老人ホーム告示6項では、
 
「有料老人ホームにおいて、
 
終身にわたって入居者が居住し、
 
又は
 
介護サービスの提供を受けられるかのような表示であって、
 
入居者の状態によっては、
 
当該入居者が当該有料老人ホームにおいて終身にわたって居住し、又は介護サービスの提供を受けられない場合があるにもかかわらず、
 
そのことが明りょうに記載されていないもの」
 
が、不当表示として指定されています。
 
しかし、これって、事業者に厳しすぎないでしょうか。
 
告示6項の、
 
「入居者の状態によっては」
 
というところからイメージされるのは、要介護度が重くなったとか、本人の健康状態の悪化とか、そういうことなんじゃないでしょうか。
 
これに対して、本件の「実際のところ」は、
 
「入居者の行動が、他の入居者又は自社の従業員の生命若しくは身体に危害を及ぼし」
 
というようなことだった、ということです。
 
でも入居者の行動が人の生命身体に危害を及ぼす場合に退去させられることがあるなんて、あたりまえのことのような気がします。
 
それをいちいち明確に表示しないと不当表示というのは、告示6項の読み方として、ちょっと厳しすぎるように思うのです。
 
そして措置命令の「実際には」の認定は、その書き方からあきらかに、入居契約の文言のようにみえます。
 
でも、本件でいちばん大事なのは、入居契約の文言ではなくて、実際にどうだったか、ということなんじゃないでしょうか。
 
つまり、実際に解除した事例があったのか、あったとして、ほんとうに周りの人に危害を加えるおそれがあったのか、ということが大事なははずです。
 
わたしは常々、
 
「契約書で消費者に不利な条項はきちんと広告で表示しておかないと不当表示になりますよ」
 
と説明していますし、その意味で、本件措置命令は、ありうる判断だとは思います。
 
たとえば、入院保険の約款で、入院給付金の条件に、パンフレットに記載がないような条件があるような場合です。
 
事例としては、日本生命のがん保険のパンフレットが公取委の排除命令の対象になったものがあります(2003年)。
 
でも、人に危害を加えるおそれがある場合には退去させることがあるというのはあたりまえのことであり、それを表示しておかないと不当表示になる、というのはちょっと厳しすぎるように思うのです。
 
本件は指定告示の事件で(なので課徴金もかかりません)、老人ホーム以外には理屈の上では関係ない事件ですが、告示6項自体は景表法の一般論からそれほどはずれた規定ぶりではないので、考え方としては、優良誤認表示や有利誤認表示にも適用があったとしてもおかしくないと思います。
 
たとえばアパートの賃貸借契約で、退去時に敷金から床面積に応じた清掃費を控除する、なんていうのも、不動産屋さんの広告に明示しないといけないんでしょうか?
 
重要事項説明書に記載するのでは不十分なのでしょうか?
 
というわけで、約款や契約書を使って消費者と取引をしている事業者の方は、いま一度、広告で表示すべきような条項がないか、きびしい目で点検することをお勧めします。

2018年7月 6日 (金)

「携帯電話市場における競争政策上の課題について(平成30 年度調査)」について

6月28日に公取委から掲題の報告書が出ました
 
あまりにひどい内容で、絶句しました。
 
このところの公取委の報告書は、
 
ビッグデータの報告書では非常に意欲的な議論を展開し、
 
LNGの報告書では緻密な情報収集できわめて説得力のある議論を展開し、
 
フリーランスの報告書では今まで光の当たらなかった分野に切り込み、
 
と、個人的には非常に高く評価していたのですが、この携帯電話報告書の内容は、とても残念です。
 
2年縛りや4年縛りが独禁法違反になりうるというのが大々的に報道されていますが、その根拠が今まで聞いたことがないようなものばかりで、きわめて薄弱です。
 
たとえば、端末とのセット販売について、
 
「端末市場において,MNO各社が販売する端末のシェアは約9割であり,また,前記販売方法〔セット販売〕がMNO各社によって並行して採られているという状況を踏まえれば,前記販売方法〔セット販売〕が,他の事業者の事業活動を困難にさせる場合には,独占禁止法上問題となるおそれがある(私的独占等)。
 
この場合,MNO相互の意思の連絡が無く,MNO各社の個別の判断に基づくものであったとしても,それぞれの行為が独占禁止法上問題となるおそれがある。」
 
というように、市場シェアが高い事業者(端末シェア9割)の間で並行的な行為が行われている場合にはまとめて市場支配力をみるという議論など、欧州のcollective dominanceの議論をほうふつとさせますが、日本ではそんな議論はありません。
 
(まあ、議論くらいは誰かがしてるかもしれませんが、事件はありません。)
 
その他、そもそもセット販売がどのように反競争効果を持つかについて、同報告書ではわずかに、
 
「通信と端末のセット販売において端末代金を大幅に値引く販売方法は,
 
端末の大幅な割引に誘引される消費者をそのような販売方法を採ることが可能なMNO3社との契約へ誘引するため,
 
MVNOに対し,MNOは競争上優位な地位を獲得する。」
 
というだけです。
 
でも、それほどセット販売が競争優位につながるなら、MVNOもそうするはずであり、そうしないのは、そうする必要がないだけなんじゃないでしょうか。
 
どうしてもセット販売が必要なら、MVNOも端末を仕入れたり、端末を別途購入した消費者に対して端末補助金として現金を渡せば、セット販売と同等の経済効果が出るはずであり、それをしないのは、そんな迂遠なことをしなくても、通話料を安くすることで十分戦えるからなんじゃないでしょうか。
 
MVNOがセット販売ないしセット販売と経済的に同等の販売方法を取れない法律上その他の制限でもあるんでしょうか。
 
2年縛りについては、
 
「独占禁止法の観点からは,
 
2年縛りのないプランの料金が2年縛りを正当化するためだけに名目上設定されたもので,実体のある価格と認められず,
 
全体としてみて利用者を2年間拘束すること以外に合理的な目的はないと判断される場合に,
 
他の事業者の事業活動を困難にさせるときには,
 
独占禁止法上問題となるおそれがある(私的独占,取引妨害等)。」
 
とされていますが、何が言いたいのかさっぱりわかりません。
 
これだと、2年間拘束すること自体が違法(当然違法)、といっているかのようです。
 
それに、ほかの部分にも繰り返し出てくるのですが、
 
「他の事業者の事業活動を困難にさせるときには,」
 
といっても、ただそういっているだけだり、どのようなメカニズムで他の事業者の事業活動を困難にするというのか、何の説明もありません。
 
たとえば、MVNOも2年縛りをすればいいじゃないか、という反論がすぐに思いつきますし、MVNOが2年縛りをしたときにMNOがやるのとなぜ違う評価がなされるのか、本報告書の説明からはわかりません。
 
それに、ここで取引妨害を持ち出すのも大きな問題です。
 
というのは、取引妨害は行為要件による縛りがなく、かつ、市場競争への悪影響も不要ということで、
 
「困ったときの取引妨害」
 
と揶揄されるくらい、なんでも違法にできてしまう、非常に取扱注意の条文です。
 
そこで、こういう「なんでもありじゃないか」という批判に対して、行為がそれ自体不当なものに限定しているので問題はないんだ、と反論されることがあるのですが、2年縛りのどこが、それ自体が不当な競争手段といえるのか、わたしにはさっぱりわかりません。
 
こういう報告書がでると、排他条件付取引はいうにおよばず、たんなる長期間の契約(しかもたった2年!)まで独禁法違反になりかねず、おおいに問題です。
 
下取りした中古端末を国内で販売させないようにすることが独禁法上問題だというのが平成28年の報告書でも指摘されたのですが、このとき、ある携帯電話会社の法務の人に話を聞いたら、
 
もともと中古端末の大部分は事業者からのものであり、消費者からの下取りなんて全体からみたらわずかなもので、しかも消費者が使ったものは荒く使われていることが多いから国内では流通させないようにしているだけで、競争制限のつもりはぜんぜんない。
 
でも公取委が中古端末の国内転売制限をやめろというなら、やめますけどね(べつにビジネス上困ることもないので。)
 
という話でした。
 
つまり、公取委の指摘は、ぜんぜんピントがずれている、ということです。
 
今回の報告書でも中古端末の販売制限が取り上げられており、
 
「特に,4年縛りを含め,MNOの端末下取りプログラムを利用する消費者が多い場合に,
 
MNOが下取りした端末について,
 
上記のようにその販売先の事業者に対して国内市場への販売を制限したり,
 
国内で中古端末を販売する特定の事業者に対して販売しない又は著しく不利な条件で販売したりするときには
 
独占禁止法上問題となりやすい。」
 
と述べられていますが、端末下取りプログラムの利用者が「多い」として、そこから中古市場に流れるものが全体のどれだけなのかという視点が、まったくみえません。
 
この報告書が依拠するデータは、要するに各社の市場シェアと消費者へのアンケートだけであり、よくこれだけ薄弱な根拠でこれだけ思い切ったことがいえるなぁと、ほとんどあきれるほかありません。
 
この報告書の中には、「スイッチングコスト」とか「現状維持バイアス」とか、経済学の用語がちらほら出てきますが、ほんとうに意味を分かって使っているのでしょうか。
 
少なくとも、「スイッチングコスト」と「現状維持バイアス」と高い市場シェア(でも1社で過半ところはどこにもない)、だけで、2年の契約が独禁法違反だという結論をみちびくなんて、たいへん乱暴な議論です。
 
この報告書を見ていると、携帯電話市場には、ほかの市場とはちがった独禁法があるんだ、といわんばかりです。
 
(ひょっとしたら公取の本音はそうなのかもしれません。←ブラックジョークのつもり)
 
でも、何の説得的な説明もなしに、2年の契約が取引妨害だという報告書が出たら、それが独禁法一般に適用されるという議論が出てきてもおかしくないでしょう(法律論とは、ほんらい、そういうものでしょう。)
 
この報告書の概要を報道で知ったときは、
 
「また公取は、事件として立件できない(したら裁判所で負ける)行為を実態調査報告書とかでコントロールしようとして、姑息だなぁ」
 
と思いましたが、その懸念は杞憂でした。
 
なぜなら、こんな報告書を真に受けるMNOはない、と思われるからです。
 
くりかえしますが、LNGの報告書であれだけ緻密な分析をした公取とは思えない、きわめて雑で手抜きの報告書です。
 
LNGの報告書が出たときは、外国のLNGメーカーから、「この報告書は公取委の通常の考え方なのか」という意見を求められ、通常の意見だと思う、という回答をしました。
 
もし今回同じ質問を受けたら自信をもって、「通常の考えではない」と答えられます。
 
それくらい、この報告書の内容はひどいです。
 
報道では、公取委の報告書は携帯各社に重い課題を突き付けた、みたいな論調が目立ちますが、お上の言うことが何でも正しいわけではありません。
 
(私が独禁法を専門にしているのでそう感じるのかもしれませんが)とくに、公取委の場合は、そうです。
 
報道各社さんも、もう少し勉強された方がいいと思います。
 
べつに私は、2年縛りや4年縛りが、良いとも悪いとも思いません。
 
でも、良いとか悪いとかの話ではなくて、それを独禁法違反というのは、大きな問題です。
 
独禁法というのは、条文があいまいなだけに、なんでも違法にしようと思えばできる法律です。 
 
それだけに、理論的な基礎づけをきっちりしないといけません。
 
今回、2年縛りが取引妨害にあたりうるという報告書が出たことで、まさに、そういう「何でもあり」の懸念が出てきました(少なくとも、まともな法律家なら、そう思うはずです)。
 
(ただし、現実的なことをいうと、公取委で報告書を作る部署と審査を担当する部署はちがうので、報告書で取り上げられたからと言ってすぐに事件調査に結び付くわけではありません。
 
公取委で報告書作成を担当した人に「この報告書のテーマでの事件調査は今後増えるのでしょうか」と聞いても、「わたしは審査部ではないので・・・」という答えがでるのがおちです。)
 
国家権力は常に国民の基本的人権を侵害する可能性があります。
 
そのような観点から、独禁法の専門家として、また、国家権力の濫用に目を光らせる使命を負った在野法曹として、今回の報告書は見過ごすことはできないと思いました。

2018年7月 2日 (月)

景品Q&A57番の疑問(ポイント充当額は「取引価額」か)

消費者庁ホームページの景品に関するよくある質問の57番に、
 
「当店ではポイントカードを発行しており、100円お買上げごとに1ポイント提供しています。
 
貯まったポイントは次回以降の買い物の際に1ポイントを10円として支払に充当することができます。
 
この度、2,000円のA商品の購入者を対象とする懸賞企画を実施しようと考えているところ、
 
A商品を購入する際に、貯まったポイントを使用した場合であっても懸賞企画に参加することは可能とします。
 
このように貯まったポイントを対価の支払に充当することにより商品を購入することが可能な場合の取引価額はどのように考えるのでしょうか。」
 
という設問があり、その回答として、
 
「本件の場合、貯まったポイントをA商品の購入の際に使用するか否かは購入者の判断によるものであり、
 
貯まったポイント分を対価の一部に充当することによりA商品を購入することは、
 
現金とポイントによって2,000円という対価の支払が行われたものと考えられるので、
 
本件における取引価額は2,000円となります。」
 
と回答されています。
 
まあ消費者庁がこれでいいというんだし、景品規制で措置命令が出ることはまず考えられないのでとやかくいう必要はないのかもしれません。
 
しかも、このような解釈でないとこの手の企画は回っていかないのだろうとも想像されます(ポイント充当者には懸賞参加資格を与えないとお客さんが怒りそうだし、ポイント充当額(の裏返しの、現金支払い額)で参加資格を判断するのはめんどう)。
 
しかしそれでも、このQ&Aは、理屈としてはおかしいと思います。
 
というのは、景表法上、ポイント制というのは、複数の取引を条件とする値引きと整理されており、値引きされた部分をふくめ「取引価額」というのは矛盾があるからです。
 
つまり、定義告示運用基準6(3)アで、
 
「取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減 額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)」
 
とされていますが、この中の、
 
「複数回の取引を条件として対価を減額する場合」
 
という部分が、割引券やポイント制を想定しているものです。
 
つまり、最初の1000円の取引でポイントが10%(=100円)ついて、次の取引(たとえば2000円)にポイントを充当すると1900円で買える(100円値引きされる)、ということです。
 
この場合、2つめの取引の取引価額が1900円であることは、あきらかだと思います。
 
もしQ&A57番のように、ポイント充当分も取引価額を構成するという立場をとるなら、ポイントは値引きではない(ポイントという独自の財貨による支払充当である)と整理しないといけないでしょう。
 
でも、現行の告示や運用基準のどこをみても、そのような整理(ポイントが独自の財貨であるとの整理)が出てくるのか、わたしにはわかりません。
 
もしポイントが独自の財貨だという整理をしてしまうと、「値引」の3類型、つまり、
 
①減額(定義告示運用基準6(3)ア)
 
②割り戻し(同イ)
 
③増量値引(同ウ)
 
のどれにも当たらないことになり、そもそも値引と整理できなくなり、ひいては、ポイントは景品類なので取引価額の2割までしか提供できない、という困ったことになりかねないように思います。
 
それに、Q&A57番の、
 
「貯まったポイントをA商品の購入の際に使用するか否かは購入者の判断によるものであり」
 
という部分も、なぜそれが「値引」でない理由になるのか、さっぱりわかりません。
 
それはたんに、購入者が、今回の商品Aの取引で値引きを受けるか、それとも値引きを受けないか(将来の取引のためにポイントをとっておくか)を選択できるというだけで、今回の商品Aの取引で値引きを受けることを決めた以上、値引き以外の何物でもないのではないでしょうか。
 
Q&A57番のような解釈でないとこの手の企画は回っていかないんじゃないかということを上に述べましたが、これも考えようで、現金で2000円払った人にだけキャンペーン参加資格を与える、というのは何もおかしくないような気がします。
 
しかも、「取引価額」の考え方については、総付告示運用基準1(1)(懸賞告示運用基準でも準用)で、
 
「 購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合は、当該購入額を「取引の価額」とする。 」
 
と、はっきり書いてあるので、ポイント充当額も「購入額」を構成するのだと解釈しないかぎり、この規定と矛盾してしまいます。
 
(でも、ポイント充当額はあくまで「値引」であり、「購入額」にはふくまれようがないことは、先に述べたとおりです。)
 
というわけで、このQ&Aは、理屈の上ではおかしいのですが、消費者庁が実務の必要性に配慮して理屈を曲げてくれたと好意的に取るべきなのでしょう。
 
それでも、景表法のアドバイスをする弁護士としては、理屈だけで答えると消費者庁の解釈とはちがう解釈になることがあることを印象づけられるものであり、つくづく、景品規制のアドバイスはむずかしいと思わされます。

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