自他共通割引券の「他の事業者の供給する商品又は役務」の意味
総付運用基準4(2)では、
「自己の供給する商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票」
が割引券に該当し、総付の金額規制の適用除外とされています。
いわゆる自他共通割引券の総付適用除外です。
さて、ここで、
「自己の供給する商品又は役務の取引」
の意味については、総付運用基準には定義はありませんが、定義告示運用基準3(1)で、
「「自己の供給する商品又は役務の取引」には、自己が製造し、又は販売する商品についての、最終需要者に至るまでのすべての流通段階における取引が含まれる。」
と明記されています。
つまり、メーカー(自己)にとっての「自己の供給する商品又は役務の取引」には、当該メーカーの商品を販売する小売店と消費者との取引も含まれる、ということです。
これは、「自己の販売する」ではなく、「自己の供給する」とされていることからも明らかといえます。
(小売店から買った商品もメーカーの「供給」する商品であることに変わりはない、という意味。)
では、
「他の事業者の供給する商品又は役務の取引」
についてはどうでしょうか。
これについては、定義告示運用基準はもちろん、他の景品関係の告示や運用基準のどこをみても定義はありません。
では、
「自己の供給する商品又は役務の取引」
を
「自己が製造し、又は販売する商品についての、最終需要者に至るまでのすべての流通段階における取引(も含まれる)」
と定義したのと同様に、
「他の事業者の供給する商品又は役務の取引」
を
「他の事業者が製造し、又は販売する商品についての、最終需要者に至るまでのすべての流通段階における取引」
と定義してよいか、というと、ちょっと問題があります。
というのは、もしそのように定義してしまうと、メーカーAが製造する商品Aを小売店Bが販売する場合において、メーカーAが商品Aの割引券を(小売店Bから商品Aを購入する消費者に)提供すると、自他共通割引券の定義に該当してしまいかねず、そうすると、一定率の割引券が「割引券」に該当しなくなってしまうからです。
つまり、そのような割引券は、
「メーカーAの供給する商品・・・の取引
及び
小売店Bの供給する商品・・・の取引
において共通して用いられるもの」
に該当するので、
「同額の割引を約する証票」
でないかぎり、総付の適用除外にならないことになってしまうのです。
ただ、よく考えてみるとこれは
「他の事業者の供給する商品又は役務の取引」
をどう定義しても出てくる不都合であり、この不都合を回避するには、自他共通割引券を、
「自己の供給する商品又は役務の取引
及び
他の事業者の供給する商品又は役務の取引(自己の供給する商品又は役務の取引を除く)
において共通して用いられるものであって、
同額の割引を約する証票」
とでも定義するしかないように思われます。
ただ、そのような定義は論理的には正しいかもしれませんが、一見しただけではその意図すら測りかねるような、複雑怪奇な定義だと言わざるをえないでしょう。
大事なことは、メーカーAが自社製商品Aを小売店Bを通じて購入する消費者に提供する割引券は、自他共通割引券ではなく、たんなる自社割引券である(よって、値引きなので、そもそも景品類に該当しない)、ということです。
なので、一定額だけでなく、一定率の割引券(2割引券など)も、たんなる値引きとして問題なく提供できます。
« 【お知らせ】ジュリスト事例速報に寄稿しました | トップページ | 景品Q&A57番の疑問(ポイント充当額は「取引価額」か) »
「景表法」カテゴリの記事
- 【お知らせ】『景品表示法対応ガイドブック』の改訂版が出ます。(2024.10.22)
- チョコザップに対する措置命令について(2024.08.30)
- 差止請求の公表に関する消費者契約法施行規則28条の「相手方との間の協議が調ったと認められるもの」の解釈について(2024.08.24)
« 【お知らせ】ジュリスト事例速報に寄稿しました | トップページ | 景品Q&A57番の疑問(ポイント充当額は「取引価額」か) »
コメント