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2018年5月 9日 (水)

値引と割引券の関係

値引と割引券はどのような関係にあるのでしょうか。

(なお、議論を簡単にするために、割引券は取引付随性があるもののみ考慮し(なので、新聞広告でクーポン券を提供するようなものは考慮しない)、一定率を割り引く割引券と一定額を割り引く割引券(金額証ともいいます)とは区別しないことにします。)

背景として、平成8(1996)年4月に定義告示運用基準が改正されています。

(くわしくは、深町正徳「割引券の提供に関する景品表示法の考え方について」公正取引587号40頁をごらんください。)

つまり、改正前の定義告示運用基準では、

「取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額し、又は受け取った代金を割り戻すこと」(6(3)ア)

は景品類の提供に当たらないとされる一方で、

「ある取引に付随して、他の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票を提供する場合」(6(4)ウ)

は、、景品類の提供に当たるとされていました。

これはどういうことかというと、

「Aの取引に付随して割引券を『提供する行為』と、

Bの取引において割引券を『使用する行為』

を分離して捉え、

後者については景品表示法上の景品類に当たらないが、

前者についてはAの取引に付随した景品類に当たると捉えていた。」

ということだったんだそうです(深町前掲p42)。

つまり、改正前は、

割引券の提供→取引Aに附随する景品類の提供(値引きではない)

割引券の使用→いずれの取引に附随する景品類の提供でもない(取引Bの値引き)

という整理だったわけです。

ただし、これは今も同じですが、総付による割引券の提供については、総付告示で、

「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの」

については、

「景品類に該当する場合であつても、前項の規定〔総付の金額規制〕を適用しない。」(総付規制の適用除外)

とされていました。

これに対して定義告示運用基準の改正は、前述の、

「ある取引に付随して、他の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票を提供する場合」

は景品類の提供に当たるとの規定(改定前6(4)ウ)が、削除されました。

また併せて、改定後定義告示運用基準で、

「取引通念上妥当と認められる基準に従い、

取引の相手方に対し、

支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)」(6(3)ア

は、

「原則として、

〔景品類にあたらないとされる定義告示1項柱書ただし書の〕「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」

に当たる。」(6(3)柱書)

とされました。(これは現在もほぼ同じです。)

これはつまり、

「この改正により、複数回の取引を条件として対価を減額する場合でも景品規制の対象とならないと整理された」

ということのようです(p42)。

まとめると、運用基準の改正前は、

割引券の提供→取引Aに附随する景品類の提供(ただし総付規制の適用除外

という整理だったのが、改正後は、

割引券の提供→取引Aの値引(景品類の提供ではない)

と変わった、ということです。

なので、改正後は、割引券の提供と使用を分ける必要もなく、値引であると整理されました。

以上を踏まえて、現行の割引券に関する規定を検討します。

割引券の提供については総付告示2項3号(価額の2割の制限が適用されない場合の1つ)で、

「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの」

と言及されており、これを受けて総付運用基準4項では、

「4 告示第二項第三号の「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票」について

(1) 「証票」の提供方法、割引の程度又は方法、関連業種における割引の実態等を勘案し、公正な競争秩序の観点から判断する。

(2) 「証票」には、

金額を示して取引の対価の支払いに充当される金額証(特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないものを除く。)

並びに

自己の供給する商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票

を含む。」

と定められています。

では、世の中で普通にある割引券は、どう考えればいいのでしょうか。そもそも景品類に該当するのでしょうか。

ここでの問題意識は、

割引券というのは要するに、それを持っていると値引きが受けられるということであり、たんなる値引と同じなのではないか、

それが、「券」(証票)が発行されるだけで、純粋な「値引」と違うものと評価されるのはおかしいのではないか、

ということです。

この点について、

大元『景品表示法〔第5版〕』(緑本)

のp209では、総付運用基準4の解説として、

「自己の供給する商品または役務の取引において用いられる割引券その他割引を証する証票については、

それが自己との取引に用いられ、

取引通念上妥当と認められる基準に従っているもの

である場合は、

『正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」となり、

そもそも景品類に該当しない(定義告示運用基準6(3)ア・・・)。」

と、オーソドックスな割引券については、定義上そもそも景品類に該当しない(値引なので)、と整理しています。

わたしも、この整理が正しいと思います。

そして、上記引用の緑本p209でも引用されている定義告示運用基準6(3)アでは、

「原則として、「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」に当たる」

場合の具体例の1つとして、

「ア 取引通念上妥当と認められる基準に従い、取引の相手方に対し、支払うべき対価を減額すること(複数回の取引を条件として対価を減額する場合を含む。)

(例 「×個以上買う方には、○○円引き」、

「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」、

「×××円お買上げごとに、次回の買物で○○円の割引」、

「×回御利用していただいたら、次回○○円割引」)。」

という例があげられていますので、緑本も、ここで挙げられている例、たとえば、

「背広を買う方には、その場でコート○○%引き」

に当たる(複数回取引を条件とする点を除き)と考えてよい、「コート〇〇%引券」を背広購入者に提供するのは、値引に該当し、そもそも景品類には該当しないと考えているものと思われます。

この点も、正しいと思います。

さらに続けて緑本では、自他共通割引券について、

「他方、自己だけでなく他の事業者との取引においても共通して用いることができる割引券等(自他共通割引券等)については、

景品類に該当し得る場合もあるものと考えられるが、

仮に該当する場合場合であっても

自己との取引について値引と同様の効果がもたらされる可能性があることから、それが正常な商慣習に照らして適当と認められるのであれば、総付景品の規制の適用除外とされている」

つまり、自他共通割引券については定義上は景品類に該当しうるけれど、特別に総付景品規制の適用除外にしているんだ、と説明しています。

まとめると、割引券は、

①自社割引券→「値引」に該当する(「景品類」に該当しない)

②自他共通割引券→

A 「値引」に該当するもの(「景品類」に該当しないもの)

 

 

B 「値引」に該当しないもの(「景品類」に該当するもの)

 

があり、

 

A→「景品類」には該当しない(定義告示運用基準6(3))

 

B→総付運用基準4の条件(=自他同額の値引き)をみたせば総付規制が適用されない(総付運用基準4)、

というように整理できます。

とすると、総付告示2項3号の「割引券」には、Aの割引券(「値引」に該当するもの)は、論理的に含まれない(あるいは空振り)ということになります。

具体的には、

①自社割引券→値引(景品規制対象外。総付告示2項3号は空振り)
 
②自他共通割引券
(ア)自他同額のもの→景品類だが総付金額規制適用除外
 
(イ)自他同額でないもの→景品類
③他社割引券→景品類
ということになります。
 
このように、かなりの部分で空振り(①)になるにもかかわらず総付告示の
「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの」
については総付金額規制を適用しないという総付告示2項の規定が残された理由については、前記深町p42で、
「この規定〔総付告示2項3号〕を置いておく意味は、
 
指定告示上『正常な商慣習に照らして値引』に該当するとは認められないが、製造な商慣習に照らして提供を認めても価格と品質による競争を阻害しないと認められるもの
 
(自他共通割引券(デパート共通〇〇券のようなもの)
 
 
商品とも引き換えられる可能性のある金額証等)
 
について、総付告示の当該規定〔2項3号〕により提供を認める必要があったためと考えられる。」
と解説されています。
 
つまり、シンプルな割引券は総付告示2項3号を待つまでもなく「値引」なので景品類には該当せず(もちろん、総付規制も適用されない)、総付告示2項3号が必要になるのは自他共通割引券や商品とも引き換えられる可能性のある(つまり、一部減額ではなく)金額証などの場合だ、ということです。

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