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2018年5月28日 (月)

【お知らせ】ジュリスト事例速報に寄稿しました

ジュリストの6月号(1520号)の独禁法事例速報で、
「国際的事業提携がカルテルに発展した域外適用の一事例」
という題名で解説を書かせていただきました。

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ハードディスクドライブ用サスペンションのカルテルに関する2018年2月9日排除措置命令の解説です。
 
最初に有斐閣さんから依頼を受けたときは、なんかカルテルの事件なんて今さら書くような論点ってあるのかなぁと思ったのですが(失礼!)、命令書をじっくり読んでみるとなかなか味のある事件で、勉強になりました。
 
解説でも触れましたが、域外適用については、ブラウン管事件最高裁判決(平成29年12月12日)が
「価格カルテル(不当な取引制限)が国外で合意されたものであっても、
 
当該カルテルが我が国に所在する者を取引の相手方とする競争を制限するものであるなど、
 
価格カルテルにより競争機能が損なわれることとなる市場に我が国が含まれる場合には、
 
当該カルテルは、我が国の自由競争経済秩序を侵害するものということができ」
日本の独禁法を適用できるとの基準を示しましたが、これをそのとおりにあてはめると(本件での結論は当然だと思いますが)、じつにえらいことになるのではないか、という思いがこの排除措置命令を読んでさらに強くなりました。
 
だいたい、最高裁のいう、「市場に我が国が含まれる」って、どういう意味なのか、よくわかりません。
 
たしかウィトゲンシュタインか誰かが、
時間についての哲学者の混乱は、時間の長さの測定を棒の長さの測定と類比的に考えることから生じる
というようなことを言っていたと思いますが、最高裁の判例も、なんだか「市場」というものを場所的な概念ととらえているような、「時間」の概念の混乱を生じさせるのと同じような(もっといえば、それ以上に無用な)混乱を生じさせそうで、理屈を突き詰めないと納得できないわたしなどは、それだけで拒絶反応を示してしまいます。
 
(最高裁は、あえて意図的に、どうにでも柔軟に解釈できる基準を示した、ということなのでしょうけれど。)
 
域外適用についてはいろんな人がいろんなことを言っていますが、私個人としては、国際法の一般論に競争法が引っ張られるのはあまりよくなくて、競争法独自の考え方があるべきだと考えています。
 
以前、『英米法判例百選』を執筆したときにいろいろ調べたのですが、国際法で域外適用を考える場合って、たとえば、
アメリカとメキシコの国境で、アメリカ側からメキシコ側にいる人を射殺した場合、アメリカ法適用できるか
というような例を用いながら議論するんですね。
 
そして通常は、結果はメキシコで発生しているけれど、行為はアメリカで発生しているので、アメリカ法を適用できる、というわけです。
 
でもそんな理論を競争法にそのまま持ち込むのは、わたしはまちがいだと思います。
 
いくら著名な国際法学者でも、競争法のことまで考えて議論しているわけではないでしょうから、競争法では競争法の専門家がきちんと発信しないといけないと思います。
 
(余談ですが、同じく『英米法判例百選』を書いたときに思ったのですが、アメリカが議論の前提としている域外適用って、カナダとかメキシコなんですね。州の間での「州外適用」と、国家間の「域外適用」を同じだと言い切る裁判例もあったり、感覚の違いに驚かされます。)
 
ブラウン管事件の高裁判決あたりまでは、
「競争法の常識は、法律の非常識、なのかなぁ」
と、なんとなく他人事のように考えていましたが、最高裁判決のよくわからない規範や、それをそのまま採用したかのようなサスペンションカルテルをみると、そんなのんきなことは言ってられない、と認識を改めています。
 
と、域外適用についてもいろいろと論ずべきところはあるのですが、サスペンションカルテルの排除措置命令では、事業提携からカルテルにいたるまでの経緯というのが結構詳しめに認定されていて、おもしろかったです。
 
厳密に言えばそういう背景事情は、命令の結論には関係しない「余事記載」なのでしょうけれど、あまり骨と皮だけの命令ではわけがわからないので、公取委にはぜひ、こういう「余事記載」を積極的にするように期待したいです。
 
というわけで、ご興味がある方は、ジュリスト事例速報をご一読いただけるとうれしいです。

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