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2018年4月 2日 (月)

「積極的販売」と「消極的(受動的)販売」の違いについて

欧州を中心に、「積極的販売」(active sales)、「消極的(受動的)販売」(passive sales)という用語が使われています。
 
日本の流通取引慣行ガイドラインでも、改正で、
「地域外顧客への受動的販売の制限」 
という形で、「受動的販売」という言葉が使われるようになりました。
 
でも、私はこの言葉がきらいです。
 
なぜって、言葉だけみても意味がよくわからないし、分析を曇らせるからです。
 
でも定着している用語なので説明しますと、欧州の垂直制限ガイドライン(51)では、
«Active» sales mean actively approaching individual customers by for instance direct mail, including the sending of unsolicited e-mails, or visits; or actively approaching a specific customer group or customers in a specific territory through advertisement in media, on the internet or other promotions specifically targeted at that customer group or targeted at customers in that territory.
 
Advertisement or promotion that is only attractive for the buyer if it (also) reaches a specific group of customers or customers in a specific territory, is considered active selling to that customer group or customers in that territory.
 
«Passive» sales mean responding to unsolicited requests from individual customers including delivery of goods or services to such customers.
 
General advertising or promotion that reaches customers in other distributors' (exclusive) territories or customer groups but which is a reasonable way to reach customers outside those territories or customer groups, for instance to reach customers in one's own territory, are passive sales.
 
General advertising or promotion is considered a reasonable way to reach such customers if it would be attractive for the buyer to undertake these investments also if they would not reach customers in other distributors' (exclusive) territories or customer groups. 」
と説明されています。
 
要するに、
特定の顧客層にアプローチしたり、特定の顧客層をターゲットにした広告は積極的販売
 
顧客のほうからやってくるのを待つのが消極的販売
ということです。
 
ですがここは、販売店は具体的に何をしていいのか、という観点から整理するほうが明確になってよいと思います。
 
そういう観点からは、一番極端な形で突き詰めれば、
①消極的販売=売買契約の締結のみ
 
②積極的販売=売買契約の締結+販売促進活動
とうように整理できるのではないかと思います。
 
まとめると、
③積極的販売=消極的販売+あらゆる販売促進活動
とも表せます。
 
もう少し厳密にいえば、
①消極的販売=売買契約の締結+α
 
②積極的販売=消極的販売+あらゆる販売促進活動
というかんじでしょうか。
 
そこで、消極的販売としてゆるされるべき「+α」の活動は何かが問題となりますが、たとえば、お店の前に看板を出すのは明らかにOKでしょう。
 
テレビCMも、通常は特定の顧客をターゲットにしていないので、OKでしょう(特定の顧客をターゲットにしたCMなんて、ふつうは採算に合いません)。
 
限界はやはりインターネットの場合です。
 
グーグルを使えば、お客さんのほうから欲しいものを売っているお店を簡単に見つけられるからです。 
 
このような観点から欧州垂直ガイドラインでは、以下の制限は、ハードコア制限である受動的販売の制限にあたる(つまり、やってはいけない制限)としています。
別のテリトリーにいる顧客が、その販売店のウェブサイトを見られないようにすること
 
別のテリトリーにいる顧客がその販売店のウェブサイトにアクセスしようとしたときに、当該別のテリトリー担当とは別の(同じメーカーの)販売店のウェブサイトに自動転送すること
 
クレジットカード情報からテリトリー外の顧客とわかったときには取引をしないようにすること
 
インターネット販売の額を全販売額の一定割合以下に抑えること(なお、インターネット以外での最低販売数量をさだめるのは可)
 
販売店がオンラインで販売することを意図している商品について、オフラインでの販売を意図している商品よりも、販売店の仕入れ額を高くすること
そして、インターネット広告についてガイドライン(53)では、
「 The Commission considers online advertisement specifically addressed to certain customers a form of active selling to these customers.
 
For instance, territory based banners on third party websites are a form of active sales into the territory where these banners are shown.
 
In general, efforts to be found specifically in a certain territory or by a certain customer group is active selling into that territory or to that customer group.
 
For instance, paying a search engine or online advertisement provider to have advertisement displayed specifically to users in a particular territory is active selling into that territory.」
とされています。
 
というわけで、欧州のガイドラインでは、消極的販売の一部として許されるべき「+α」(つまり、この「+α」を禁止することは基本的に許されない)が、具体的に定められていることがわかります。
 
「積極」とか「消極」とかいっても、境目はよくわかりませんし、結局、何ができて何ができないのかを具体的に考えないと実務の指針にはなりません。
 
ちなみに日本の流通取引慣行ガイドラインでは、「地域外顧客への受動的販売の制限」は、
「事業者が流通業者に対して,一定の地域を割り当て,地域外の顧客からの求めに応じた販売を制限すること」
と定義されており、「求めに応じた」という、いかにも受動的っぽい表現になっていますが、これだけではかなりあいまいです。
 
「求めに応じた販売」の範囲内だといえるためには、では販売店はどのようなことまでできるのかが、はっきりしないからです。
 
たとえば、大阪府をテリトリーとする販売店が、
①(大阪府だけのローカル番組というのはないので)関西ローカルのテレビ番組でCMを打つ
 
②関西全般に新聞折込チラシを撒く
という2つの場合を考えると、テレビCMは受動的販売といっていいように思いますが(そうしないとテレビCMが事実上打てなくなる)、チラシは積極的販売といわれそうな気がします。
 
ですがいずれも、「顧客からの求めに応じた」という基準では区別がしにくいように思います(どちらも「求めに応じた」といえそうで、そうすると、どちらも禁止しにくそう)。
 
少なくとも、「求めに応じた」という文言から、欧州のような「特定の需要者層をターゲットにした」という基準を読み取るのは、かなり難しいと思います。
 
それに対して欧州のガイドラインなら、CMを打ったのは大阪限定のローカル番組がないからそうせざるをえなかっただけなので、京都や奈良の需要者をターゲットにしたかったわけではない(なので京都や奈良に積極的販売をしているわけではない)、といえそうな気がします。
 
やっぱり、消極的とか積極的とか、わかりにくい言葉で整理するのでなく(そういう意味では欧州のガイドラインもあまりよくないですが)、何ができて何ができないのか(禁止できない「+α」は何か)を、欧州のガイドラインのように具体的に定めるべきでしょう。
 
日本では欧州よりはるかに垂直的非価格制限の執行が不活発なので、あまり使わないルールの精緻化に力を入れるのは労多くて益少なし、という判断なのかもしれません。
 
あるいは、どうせ執行されないのにガイドラインばかり細かくなると不自由なだけ(あるいはガイドラインと現実の運用がかけ離れてしまう)かもしれないので、今のままでよいのかもしれません。
 
でも、インターネット独自の問題はいろいろあるわけですから、日本でも何らかの基準は示すのが望ましいと思います。

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