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2018年4月 3日 (火)

従業員派遣の要請と偽装請負

優越的地位の濫用の典型例として、スーパーや家電量販店などの小売店が納入業者に対して従業員を派遣させて商品の陳列などをさせる、というものがあります。
 
でもこれって、優越的地位の濫用だけでなく、偽装請負、あるいはより一般的には、労働者派遣法違反にもなりうるので注意が必要です。
 
偽装請負というのは、形式的には請負契約であることを装いつつ(「請負」を偽装しつつ)、実質的には、労働者を派遣する、というものです。
 
スーパーが納入業者に従業員の派遣を要請する例でいえば、形式的には、
スーパー(業務の「発注者」)と納入業者(「請負業者」)との間で「商品陳列請負契約」のようなものを偽装しつつ、
実質的には、
納入業者の従業員をスーパーの指揮監督のもとで陳列業務に従事させる
というようなパターンです。
 
優越的地位の濫用で「商品陳列請負契約書」をわざわざ作ることもないでしょうから、世の中で言う偽装請負のパターンにはあたらないでしょうが、それでも、納入業者がその従業員をスーパーの指揮監督のもとでスーパーの業務に従事させることは、労働者派遣法になります。
 
条文をみてみましょう。
 
労働者派遣法2条1号は、「労働者派遣」を、
「自己〔=納入業者〕の雇用する労働者を、
 
当該雇用関係の下に、
 
かつ、
 
他人〔=スーパー〕の指揮命令を受けて、
 
当該他人〔=スーパー〕のために労働に従事させることをいい、
 
当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」
と定義しています。
 
そして、労働者派遣を業として行うことが「労働者派遣事業」(2条3号)です。
 
「業として」は、反復継続して、という意味なので、有償か無償かは問いません。
 
スーパーが納入業者に従業員の派遣要請をする場合は、無償で要請するから優越的地位の濫用になるわけですが、無償だからと言って派遣業法違反にならないとはいえないわけです。
 
同様に、スーパーが納入業者に従業員の派遣を要請している場合は、通常は1回だけでなく、反復継続していて、それが常態化しているでしょうから、「業として」にあたることが多いと思われます。
 
そして労働者派遣事業を行うには厚生労働大臣の許可を受けなければならず(5条)、この許可を受けずに労働者派遣事業を行ったものは1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(59条2号)
 
そこで問題は、
「他人〔=スーパー〕の指揮命令を受けて」(派遣法2条1号)
にあたるかどうかです。
 
これは究極的には具体的事情に即して判断するしかないですが、一般的に言って、優越的地位の濫用に当たるような派遣要請の場合は、当該納入業者の商品だけでなく、他の納入業者の商品の陳列や、全く別の作業(新装開店の飾りつけとか)もさせているでえしょうから、「他人の指揮命令を受けて」にあたることが多いのではないでしょうか。
 
というのは、そのような、当該納入業者のあずかり知るはずのない作業を、いったい誰の指揮命令に基づいてやっているのかといえば、通常は、スーパーの指揮命令のもとで行っているといわざるをえないと思われるからです。
 
また優越的地位の濫用(独禁法)と労働者派遣法はまったく別の法律ですから、優越的地位が認められない場合でも、労働者派遣の定義にあたりさえすれば、労働者派遣業法違反は成立します。
 
ですから、納入業者のほうが力が強くって、スーパーが困っているので助けてあげる、というような場合だと、「優越的地位」が認められないので優越的地位の濫用は成立しませんが、それでも、派遣業法違反は成立しえます。
 
しかも、優越的地位の濫用の場合は違反の責任を問われるのはスーパーですが、労働者派遣法の場合に責任を問われるのは納入業者の側です。
 
なので納入業者さんも、自分が法律違反をしてしまわないように、気を付けましょう。
 
あるいは、
「派遣をしたいのはやまやまですけど、派遣業法に違反してしまうのでできません」
というように、派遣要請を断る口実にも使えるかもしれません。
 
相談を受ける法務部員の方や弁護士さんも、両方問題になりうるということは意識されておいた方がよいでしょう。

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