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2018年4月 6日 (金)

白石説は少数説か?

独禁法を勉強している学生さんと話をしていると、
「白石先生の説は少数説ですから。」
という発言をよく聞きます。
 
文脈としては、「だから司法試験で白石説は取りにくい」というニュアンスなのだと思います。
 
でも実務にいると、白石説が少数説だなんていう感じはぜんぜんしません。
 
実務の実態を、もっともよく表しているのが、白石説だと思いますし、多くの実務家が賛同してくれるのではないかと思っています。
 
この点について、最近出た『独占禁止法講義〔第8版〕』で、白石先生ご自身の言葉で次のように述べられています。 
「当局が『□□』と言っているのだからそれが『実務』だ、それをコピー&ペーストした文献が多いから『通説』だ、と言ってそれを丸暗記したいのか。それとも、実際に通用している規範を知り、その構造を理解したいのか。どちらが必要であるかは、読者それぞれの判断である。」(p10)

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この一節を読んだときは、ほんとうに胸がすく思いがしました。
 
まさかご自身にここまでズバリと言っていただけるとは(笑)。
 
まさに、そういうことなのです。
 
今まで、公取の公式文書や、いわゆる「通説」をみて、どうも実務の実態や感覚とちがう、ともやもやしていたときに、白石先生の解説をみて、まさにそのとおりだとすっきりした経験は数え切れません。
 
自分の頭で考えない人は公取の文書のコピペで満足する(というか、自分の言葉で言い換えるのすらこわくてできない)のでしょう。
 
でも、公取の建前と本音がちがうことなんて、日常茶飯事です。 
 
だから、ガイドラインや相談事例のコピペでは、けっして実務の実態には迫れません。
 
そのことを、白石先生ご自身の言葉で言っていただいたので、とてもすっきりしました。
 
同書の旧版での「狭いサークル」論に匹敵する、ヒットでした。
 
たしかに、白石先生の解説で、しっくりこないなぁというところはいくつかあります。
 
優越的地位の濫用は小さな市場の中での独占だといわれると、「でもそんなふうに本気で考えてる人って、たぶんいないよなぁ」と思います。
 
(とはいえ、そういう視点で優越的地位の濫用を眺めて、優越的地位の濫用が違法であることの根拠や違法要件を突き詰めること、別の言い方をすれば、優越的地位の濫用において「無意識に行われていることを言語化する」(同書p10)ことは、とても大事なことだと思います。)
 
再販売価格拘束なんかは、もう少し厳しくアドバイスしないと、実務ではちょっと怖いかなと、個人的には感じています(個人の感想です)。 
 
企業結合の協調行為の説明は、私自身、ややしっくりしていないものがあります。
 
など、一部例外はあるのですが、それらは些細なことであり、実務の姿をありのままに伝えているという意味では、白石説ほど信頼に足りるものはありません。
 
わたしは経済学から独禁法に切り込んでいくほうで、経済学的に説得力のない議論はすぐに見分けられるつもりですが、経済学的な観点からみても一番違和感がないのが白石説です。(たとえば、単独の取引拒絶と共同の取引拒絶の異同。)
 
問題は、公取の「公式見解」のコピペではないので、白石先生の説を読み解くのには、ある程度独禁法をわかっている必要があることです。
 
それさえわかってしまうと、いったい白石説のどこが少数説なのかが、むしろ理解不能です。
(でも、それじゃ「通説」は独禁法を理解していなくても理解できるのかというと、そんなことはぜんぜんなくて、たんに頭を使わずにコピペで用が足りてしまうだけの話だと思います。)
 
というわけで、白石説を少数説だという人をみるにつけ、「こいつ、全然わかってないなぁ」と思ってしまうのです。
 
・・・というようなことが、昨日たまたまある法務部の方との会話で話題に上ったので、今日はこのようなことを書いてみたくなったのです。
 
今年度はじめて、公正取引協会での白石先生のゼミに参加させていただきます。
 
きっといろいろな発見があるだろうと、今からとても楽しみです。

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