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2018年3月28日 (水)

体験談のねつ造と不実証広告規制の功罪

ミーロードに対する措置命令(平成29年3月30日)をみていて感じたのですが、不実証広告規制を適用する場合にも、消費者庁はきちんと広告の真偽を調べた方がよいのではないでしょうか。
 
この事件は、いわゆる豊胸効果をうたう「B-UP」というサプリに不実証広告規制が使われたものです。
 
命令に添付された広告の例をみると、たとえばグラビアアイドルの「ももゆいさん(27歳)」の証言として、
「モデルの仕事は不規則で、食事もカロリーの高いお弁当が多いため、デビュー当時と比べて10kg近く太ってしまいました。
 
そこで毎食キャベツときゅうりだけという過酷な食事制限を決行。
 
体重を戻したのですが、ついでに胸も2カップほど縮んでしまい、かえって仕事がなくなっちゃって(泣)
 
そんな時、同じグラビア仕事をしている先輩に薦めてもらったのが『B-UP』。
 
もう無理はしないと心に決め、毎晩の1粒とバストアップ体操を日課にした結果・・・、わずか2ヵ月で元のスタイルに戻すことができました~。」
というコメントが載っています。
 
同様の例として、平成29年9月29日のティーライフ(株)に対する「ダイエットプーアール茶」に関する措置命令でも、
「2年半で-43kg」
とか、
「6ヶ月で-10kg」
とか、
「8ヶ月で-12kg」
とか、お茶を飲んだだけでそんなに痩せるわけないだろうという体験談が並んでいます。
 
(ちなみにティーライフの措置命令では、わざわざ、
「なお、ティーライフは、自社ウェブサイトにおける〔違反の〕表示内容を記載したウェブページにおいて、例えば、『個人の感想であり、実感には個人差がございます。』と記載するなど・・・していたが、当該記載は、一般消費者が〔違反の〕表示から受ける効果に関する認識を打ち消すものではない。」
と、体験談であるとの注記が打消し表示とは認められないと明記しており、消費者庁の強い姿勢が出ていて注目されます。)
 
ですが、これらの体験談はねつ造である可能性が濃厚です。
 
こういう効果は事実としてありえなさそうだ、というのが一つと、私が以前かかわった不当表示の事件で似たような「体験談」を載せた広告があったのですが、消費者庁から「この証言は本当に本人のものか?」といったことは一切聞かれなかったからです。
 
でもそれでいいんでしょうか?
 
たしかに不実証広告規制は消費者庁の労力を省くという点で非常に有益な制度だと思います。
 
でもその陰で、こういうあきらかに虚偽あるいはやらせの「体験談」については、明示的に虚偽あるいはやらせであると認定されることもなくなってしまいます。
 
いちおう措置命令別表1では、これらの体験談も不当表示を構成するものとして(全文ではないもの)掲示はされていますが、それだけでは問題の本質がみえてきません。
 
つまり極論すれば、体験談のねつ造は、仮にその商品に効果があったとしても、それ自体不当表示になりうべきもののはずです。
 
もし体験談がねつ造であることまで措置命令で認定できれば、命じる社告の中にも、「体験談はねつ造でした」という一文を入れさせられるはずです。
 
社告でたんに、
「実際のものよりも著しく優良であることを示すものであり、景品表示法に違反するものでした。」
といわせるだけよりも、
「広告の体験談はねつ造でした」
と認めさせるほうが、消費者にとってインパクトはずっと大きいと思います。
 
調べるのも、事業者にねつ造かを確認すれば多くの場合簡単に片が付くでしょうし、タレントであればタレント本人を呼びつけて「あなたが本当にそういったのか」と聞くこともできるはずであり、そんなに手間はかからないでしょう。
 
そうすることで、タレントも「ありもしない体験談を載せることに同意したら大変なことになる」ということを認識できるのではないでしょうか。
 
もちろん、事業者が体験談をねつ造する抑止力になるでしょう。
 
載っている体験談の全部ではなくても、そのうち一つでもねつ造があれば、それを措置命令で明記する(そして社告でも明示させる)インパクトはとても大きいと思われます。
 
現行の、新聞折込チラシの配布日や配布地域までこまごま認定することに手間をかけるくらいなら、こちらのほうに手間をかける方がずっと費用対効果も高いと思います。
 
消費者庁にはぜひ、ご検討いただければと思います。

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