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2018年3月 1日 (木)

他社の懸賞に追加して懸賞で景品を提供する場合

懸賞告示運用基準5(2)では、
「(2) 同一の取引に附随して二以上の懸賞による景品類提供が行われる場合については、次による。
 
ア 〔省略。同一事業者が行う場合→合算〕
 
イ 〔省略。複数事業者が共同して行う場合→合算〕
 
ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
とさだめられています。
 
さて、このウは、どのような場合を想定しているのでしょうか。
 
大元編著『景品表示法〔第5版〕』(緑本)p195では、
「例えば、メーカーが商品の購入者に懸賞による景品類(最高額の限度内)を提供しているときに、
 
小売業者が独自にその懸賞の当選者に別途の懸賞による景品類を追加して提供する場合は、
 
小売業者にとって景品類の合算額が最高額の制限を超えないようにしなければならない。」
と解説されています。
 
具体的にはどういうことでしょうか。
 
これについては消費者庁ホームページの景品類Q&Aの34番(メーカーと小売店が同時期に実施する懸賞企画の考え方)に、
「メーカーが、商品A(1,000円)の購入者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施し、同時期に、
 
小売店が、メーカーが行う懸賞とは別に、商品Aを必ず含んで、1,500円分以上の商品を購入した者を対象に抽選により景品を提供するキャンペーンを実施する場合、
 
提供できる景品の最高額及び総額はどのように算定すればよいでしょうか。
 
なお、この2つの企画は、それぞれ独自に実施するものであり、共同企画ではありません。」
という設問があります。
 
ここで、
(景品提供者)=(懸賞・総付の別;参加条件1,参加条件2,・・・)
というスタイルで2つの懸賞をあらわすと、
(メーカー)=(懸賞;商品A〔1000円〕)
 
(小売店)=(懸賞;商品A〔1000円〕,1500円)
となります。
 
さて、回答は、この事例は運用基準5(2)ウにあたるとしたうえで、
「この場合において、重複当選を制限していないのであれば
 
提供できる景品類の最高額は、
 
メーカーの懸賞では、商品Aの価額〔1000円〕の20倍(2万円)であり、一方、
 
小売店の懸賞では、応募の条件である1,500円の20倍(3万円)からメーカーが提供する景品類の価額を差し引いた価額です
 
(例…メーカーが、最高15,000円の景品類を提供する場合、小売店が提供できる景品類の最高額は、30,000円-15,000円=15,000円となります。)。」
としています。
 
ここで
重複当選を制限していないのであれば
という部分は、運用基準5(2)ウの
その懸賞の当選者に対して更に
の部分に対応しているわけですね。
 
逆に言うと、もし重複当選を禁止するなら、運用基準5(2)ウの、
その懸賞の当選者に対して更に
の要件はみたさないので、運用基準5(2)ウは適用されないわけです。
 
では重複当選を禁止する場合にはどうなるのかといえば、それは当然、それぞれの懸賞企画の限度額いっぱいまで景品を出せると解されます(両方の企画から景品を受け取るひとがいないので、あたりまえです)。
 
ここで注意を要するのは、運用基準5(2)ウが想定しているのは、Q34のように、
(メーカー)=(懸賞;商品A〔1000円〕)
 
(小売店)=(懸賞;商品A〔1000円〕,1500円)
というような場合であって、けっして、
(メーカー)=(懸賞;商品A〔1000円〕)
 
(小売店)=(懸賞;商品A〔1000円〕,メーカー企画当選,1500円)
という場合ではありません。
 
ふつうの日本語で言うと、運用基準5(2)ウは、追加提供する事業者〔=小売店〕が最初の事業者〔=メーカー〕の懸賞の当選者だけに参加資格を与えるものにかぎられない、ということです。
 
もう一度運用基準5(2)ウをみると、
「ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞〔=メーカーの懸賞〕の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
とされており、うっかりすると、メーカーの懸賞の当選者のみにに参加資格をあたえるようなものを想定しているのかなと思ってしまうのですが、注意してよむと、運用基準5(2)ウが言っているのは、
「ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞〔=メーカーの懸賞〕の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
といっているのであり、小売店企画の参加資格をメーカーから景品をもらった人(メーカー当選者)に限ろうが限るまいが、結果的にメーカー当選者に追加で景品をあげるなら(つまり重複当選可能なら)、文言上、
当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した
にあたることはあきらかであり、よって、小売店の企画の参加資格自体がメーカー当選者である必要はないこともあきらかです。
 
もし、小売店がメーカー当選者だけに懸賞参加資格をあたえる場合を想定しているなら、運用基準5(2)ウは、
「(改ウ) 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類の提供を受ける資格を与え、当選者に景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
となっていたはずです。
 
ただ、運用基準5(2)ウにも難点があります。
というのは、この定め方だと、あらかじめ重複当選を禁止していなくても、結果的に重複当選しなければ、結果オーラーで許されてしまうと解されかねないのです。
 
そういう目で運用基準5(2)ウをじーっとながめると、たしかに、
「ウ 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加した場合は、追加した事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
といっており、これは現に「追加した」場合のことをいっているのであって、結果的に追加しなかった(両方の企画に当選した人はいなかった)場合については触れていない、と読まざるを得ません。
 
もしこういう結果オーライを認めない規定にするなら、
「(改ウ) 他の事業者と共同しないで、その懸賞の当選者に対して更に懸賞によつて景品類を追加提供する可能性がある場合は、追加する事業者がこれらを合算した額の景品類を提供したことになる。」
とすべきなのでしょう。
 
もちろん現行の運用基準もこのような結果オーラーを認める趣旨ではないと思われますし、前記緑本ものそのような解説になっています。
 
もし、このような抜け穴を意識しながら、それを埋める意図でこういう解説をしているとしたら、なかなかやるなぁ、と思います。
 
ちなみに、1等同士を合計すると限度額をこえるときには重複当選を一切禁止しなければならないわけではなく、たとえばメーカー懸賞1等と小売店懸賞2等を合計しても限度額を超えないなら、メーカー1等当選者に小売店が2等を当選させる(重複当選させる)ことはもちろん可能です。
 
伝統的なクジなら、当たりくじがでたのに「失格」というのは非常に忍びないので、こまかい重複当選の要件設定は現実味が低そうですが、コンピューターのくじなら、失格する場合にははじめから「ハズレ」を出すようにできるので、あんがい現実味があるかもしれません。

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