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2018年3月29日 (木)

パズドラの課徴金について

ガンホーに対して3月28日、課徴金納付命令がでました。気が付いたことをメモします。
 
まず対象役務が、
「特別レアガチャ『魔法石10個!フェス限ヒロインガチャ』
とされています(本件役務)。
 
この「ガチャ」は、モンスターを提供する役務なのだそうです。
 
わたしはパズドラはやったことがないので、いつどういうふうにお金を払うのか命令をみてもわかりませんが、「ガチャ」という名前からすると、ガチャ(くじ)を1回引くごとに課金されるものだと思われます。
 
課徴金対象期間は平成28年11月30日から平成29年2月26日までの約3か月と認定されています。
 
そうすると、課徴金が約5000万円(自主申告による減額がなければ1億円)であることからすると、この3か月の売上は、1億円÷0.03≒33億円となります。
 
1か月に10億円も売上があったんですね。。。
 
それはさておき手続面ではまず、上述のとおり、自主申告による減額が認められていることが注目されます。
 
それから、課徴金の算定方法は、
「本件役務〔本件ガチャ〕の売上額に100分の3を乗じて得た額・・・」
とされているので、本件ガチャの売上額全額が基準になっていることがわかります。
 
そもそもこの不当表示はモンスター13体全部について「究極進化」すると表示していたのに2体しか「究極進化」せず、残りの11体はたんなる「進化」だった、というものでした。
 
なので、ガチャで「究極進化」するモンスターを引き当てた取引の売上については課徴金対象売上から除くという考え方もありそうですが、おそらくそれは結果論だということでそのような考え方はとられておらず、すべての売上が課徴金の対象になっています。
 
法律の解釈としてはそれで正しいと思いますが、課徴金のガイドラインでは、「全品半額セール」で一部にセール対象外のものがあった場合には、実際にセール対象であった商品は課徴金の対象にならないとれている(p12、2(3)想定例②)こととの整合性が、やや気になります。
 
つまり、
全品半額と表示した場合に、半額でなかった商品(例、2万円未満のスーツ)の売上のみが課徴金の対象になる
なら、
全アイテム「究極進化」と表示した場合に、「究極進化」でなかった商品(13体中、11体)のみが課徴金の対象になる
という考えもありえます。
 
おそらく両者が異なるのは、
全品半額セールの場合は、消費者が半額の商品を選べる
のに対して、
全アイテム「究極進化」と表示したガチャの場合、ガチャであるがゆえに消費者が「究極進化」のアイテムを選べない
というのが実質的な理由かな、と想像しますが、やや釈然としないものが残るのもたしかです。
 
ひょっとしたら、むしろ両者を区別する隠れた理由は、
全品半額セールの場合は半額でない(表示違反)ものが、ごく一部にすぎない(とガイドラインはかってに想像している)
のに対して
本件ガチャでは究極進化でない(表示違反の)アイテムがほとんどだった(13体中11体)
ということなのかもしれません。
 
たとえば本件ガチャでもし、13体中12体は究極進化で、1体だけたんなる進化だったら、それでも全体に課徴金がかかったんでしょうか?
 
違反が100体中、1体に過ぎない場合でも、全体に課徴金がかかるのでしょうか?
 
それとも、違反が100体中1体のときは、「著しく優良」とまではいえないとするのでしょうか?
 
と考えると、本件では大半が違反だったから違和感がないものの、もし違反がほんの一部だったら、全体に課徴金をかけるのはかなり違和感があっただろうと思います。
 
(似たような同じ問題は、秋田書店みたに景品の数を間引いた、という事件でも起きるのですが、景品の間引きでは景品と商品の売り上げは直結していないので表示に適合しない売上と適合する売上を区別できないのに対して、本件では、購入対象アイテム自体が表示に適合するかどうかを観念できるので、表示に適合しないアイテムの売上だけに課徴金をかけるという考えに、まだなじみます。)
 
念のため確認しておくと、条文上は、景表法8条1項の、
「当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の・・・売上額」
の解釈の問題であり、
本件では本件ガチャが「役務」なのでガチャ全体の売上に課徴金がかかる
のに対して
半額セールでは個々の商品が「商品」なので個々の商品ごとに課徴金がかかるかどうかを判断する
ということなのでしょう。
 
つぎに、課徴金対象期間については、平成28年11月30日から平成29年2月26日となっています。
 
ただ、課徴金対象行為(不当表示)をした期間は平成28年11月30日から平成29年2月20日までと認定されていますので、課徴金対象行為が終わったあとも課徴金対象期間が続いています(平成29年2月21日から26日まで。26日は最後の取引日です)。
 
(なお誤認解消措置が平成29年2月28日にとられています。)
 
つまり、課徴金対象行為をやめた日(2月20日)のあとも、21日から26日までの間、表示違反のガチャを続けていたことになりそうです。
 
理想をいえば、不当表示がわかった時点で13体全部を究極進化に変えればよかったのでしょうけれど、たんなるプログラムとはいえ、わかったからといってただちに究極進化に変えるというのはできなかったのかもしれません。
 
あるいは、不当表示をやめた時点(2月20日)で、同時に販売を中止する(本件ガチャの購入をできなくする)、という手もあったでしょうが、それも間に合わなかったのかもしれません。
 
前述のように誤認解消措置が取られていることからすると、本件ガチャは引き続き(つまり13体中2体のみ究極進化する形で)販売され続けていたのかもしれません。
 
つぎに、前述のとおり本件では消費者庁への自主申告がなされていますが、自主申告の日付はあきらかにされていません。
 
これは、以前このブログでも紹介した三菱と日産に対する課徴金のケースと同じです。
 
自主申告を失格させる場合はともかく、認めるなら日付までは不要ということなのでしょう。
 
つぎに、本件ではガンホーは返金措置を実施していません。
 
返金は義務ではないので別にかまわないのですが、このあたりに企業の姿勢というものが現れると思います。
 
ところでガンホーに対しては、この課徴金の本案について措置命令が平成29年7月19日に出ていますが、この「究極進化」の優良誤認とは別に、同日、セットでお得だと表示していたのにバラで買うのと値段が変わらなかったという有利誤認についても措置命令が出ています。
 
おそらく「究極進化」の件と「セットでお得」の件は、消費者庁は並行して調査していたでしょうから、 「セットでお得」の件に課徴金納付命令が出ていないのは、売上5000万円の裾きりに満たなかったのではないか、と想像されます。
 
表示期間も、商品により最短1日から最長でも15日間と、比較的短いですから、(誤認解消措置をとらなければ最長6ヶ月延長される余地はあるものの)違反対象売り上げが少なかったということはえりえます。
 
というわけで、課徴金納付命令は、上っ面をなめただけでもこれくらいのことはすぐにいえてしまいます。
 
ということは、出す側の消費者庁もそれなりにいろいろ考えないといけなかっただろうし、ガンホーも、表示をやめるのか、商品の販売までやめるのか、自主申告するのか、返金措置はとるのか、など短期間でいろいろ考えないといけなかっただろうと推測されます。
 
双方のご苦労がしのばれます。

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コメント

課徴金対象行為に係る役務は、平成2年2月13日から同月26日までに実施した役務のようなので、
課徴金額の計算上は、14日間の売上げなのではないでしょうか?
平成28年11月30日から平成29年2月12日は不当表示はしたけれど、課徴金の計算上は空振っているように思います。

ご指摘ありがとうございます。
 
確かに別紙に、

「平成29年2月13日から同月26日までの期間に実施した」

と書いてありますね。
 
そうすると2週間で33億円売り上げたんですね。。。

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