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2018年2月22日 (木)

「打消し表示に関する実態調査報告書」について

消費者庁が昨年7月に出した掲題報告書についてコメントしておきます。
 
この報告書でびっくりしたのは、体験談についての以下の記述です(84頁)。
「今回の調査結果から、実際に商品を摂取した者の体験談を見た一般消費者は「『大体の人』が効果、性能を得られる」という認識を抱き、「個人の感想です。効果には個人差があります」、「個人の感想です。効果を保証するものではありません」といった打消し表示に気付いたとしても、体験談から受ける「『大体の人』が効果、性能を得られる」という認識が変容することはほとんどないと考えられる。
 
また、広告物は一般に商品の効果、性能等を訴求することを目的として用いられており、広告物で商品の効果、性能等を標ぼうしているにもかかわらず、「効果、効能を表すものではありません」等と、あたかも体験談が効果、性能等を示すものではないかのように記載する表示は、商品の効果、性能等を標ぼうしていることと矛盾しており、意味をなしていないと考えられる。
 
このため、例えば、実際には、商品を使用しても効果、性能等を全く得られない者が相当数存在するにもかかわらず、商品の効果、性能等があったという体験談を表示した場合打消し表示が明瞭に記載されていたとしても一般消費者は大体の人が何らかの効果、性能等を得られるという認識を抱くと考えられるので、商品・サービスの内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。」
つまり、体験談を見た人は、仮に「個人の感想です」という打消し表示をみても効果があると認識するので、打消し表示には意味がない、不当表示だ、というのです。
 
その根拠として報告書では、打消し表示を見る前と見た後で「『大体の人』が効果が得られると思う」とした人が42.8%から36.6%に変化し、数値としては下がっているが依然としてかなりの人が効果があると認識しているという事実が確認できた、ということをあげています。
 
こういう、実験をして具体的なデータを示されるととても説得力があり、この報告書のハイライトといえるでしょう。
 
わたしはあまり体験談が広告で使われるようなダイエット食品とかを買わないので実感がわかないのですが、たしかに、体験談というのはインパクトが強いんだろうなあという気がします。
 
そうすると、報告書が述べるところはたしかにそのとおりなのですが、体験談がこれだけ世の中に氾濫していることからすると、報告書の立場は注目に値します。
 
もちろん体験談自体がねつ造ややらせであったら不当表示なのは当然で、世の中にはこの手のものが少なくないと想像します。
 
一般消費者のようなふりをして実は役者が演技していた、というのも完全なやらせです。
 
わたしが以前経験した中にも、八百屋さんかなにか(と思われる)人物が顔写真入りの新聞広告で、「効果抜群で驚いています」みたいなコメントをしていたのを、とある役所か広告媒体から問題があると指摘されて、その会社は次の日には別のコメントに差し替えてきた、というのがありました。
 
一日で本人に取材したわけではないので明らかに会社が勝手にコメントを差し替えていたのですが(そうすると、最初にそもそも本当に取材したのかも怪しいもんですが)、世の中の広告なんてしょせんこんなものなんだなあと思いました。
 
個人の体験談なんて、たまたまその人だけに効いたのかどうかもわからないし、その人だって別の理由で効いた(食事や、運動や、プラシーボ効果)のかもしれません。
 
現に医薬品では、
「(5)使用体験談等について 愛用者の感謝状、感謝の言葉等の例示及び「私も使っています。」等使用経験又は体験談的広告は、客観的裏付けとはなりえず、かえって消費者 に対し効能効果等又は安全性について誤解を与えるおそれがあるため以 下の場合を除き行ってはならない。
 
なお、いずれの場合も過度な表現や保証的な表現とならないよう注意すること。
 
①目薬、外皮用剤及び化粧品等の広告で使用感を説明する場合
 
ただし、使用感のみを特に強調する広告は、消費者に当該製品の使用目的を誤らせるおそれがあるため行わないこと。
 
②タレントが単に製品の説明や呈示を行う場合 」
と、体験談を広告で使うことが原則禁止されています(薬生監麻発0929第5号別紙)。 
 
報告書を出すだけでは「言いっぱなし」なので、ぜひ消費者庁には、実際の事件で体験談を取り上げていただきたいところです。
 
ところで、この報告書は、どれくらいの人がふだんから打消し表示を読むかもアンケートで調べていて、それはそれでおもしろいのですが、この点はちょっと視点がずれているように思います。

というのは、広告を目にする人の中にも、まったくその商品に関心のない人もたくさんいるわけで、そういう人が打消し表示まで読まないのはあたりまえだし、不当表示ということでもないと思います。

まずは目を惹いて、興味を持ってもらえたひとに打消し表示を読んでもらえたらいいのであって、一般的に打消し表示を見る人が少ないからといって、それ自体を問題視する必要はないでしょう。

要は、購入する意思決定をするまでの間にきちんと商品の内容や取引条件がわかればいいのであって、広告を見た瞬間に細かいところまですべて理解させるのは無理でしょう。

なので、広告を目にした人や、広告に興味をひかれた人を分母にするのはちょっとずれていて、実際に買った人(と、買おうと思ったけど打消し表示をみてやめた人)を分母にするのが正しいのではないかと思います。

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