「予想を上回る注文をいただいています」という表示
機能性表示食品について措置命令が出たことで注目された葛の花由来イソフラボンですが、この事件では地味ですがもう一つ重要な判断が示されています(2017年11月7日措置命令)。
違反者の一つのCDグローバルに対する命令で、
「CDグローバルは、本件商品を一般消費者に販売するに当たり・・・
自社ウェブサイトにおいて、
「先日販売を開始しました『葛の花イソフラボン青汁』につきまして、弊社の予想を大きく上回るご注文を頂いており、生産が間に合わない状態が続いております。」
と記載するなど・・・表示することにより、
あたかも、本件商品の販売数量に関する具体的な予想を立て、当該予想販売数量を上回るほどの相当程度多数の注文を受けているかのように示す表示をしていた」
けれど、
「実際には、具体的な数値予想を立てておらず、前記(ア)記載の表示期間中における注文数は僅少であった」
というのが、優良誤認表示とされているのです。
つまり、
「予想を大きく上回るご注文を頂いています」
というような表示をする場合には、具体的な数値予想を立てないとそれだけで不当表示になる、ということです。
これはかなり実務的にインパクトがあるのではないでしょうか。
というのは、こういう広告は、なんとなく「ノリ」で書いていて、まじめに数値目標まで立てていないことのほうが多いように思われるからです。
予想もしてないのに予想を超えたというのは不当表示だと言われればそのとおりなので、反論のしようもないですが、今までは、これくらいの誇張は広告として許される範囲内だと考えていた事業者も多いのではないでしょうか。
こういうのがダメだとなると、
「大変ご好評をいただいています」
というのも、きちんと好評を得ていることの根拠を示せないといけないでしょうし、
「絶賛発売中」
というのも、絶賛されていることの根拠を示せないといけないでしょう。
「ご好評」も「絶賛」も、顧客からの評価だととられる表現だからです。
ほかには、
「若い女性に人気」
というのもよく見かけるコピーですが、ひょっとすると、購入者に占める女性の数のデータを年齢別に取っておくようにいわれかねないような気がします。
(まあ「絶賛発売中」くらいは、世の中であまりにありふれているので、措置命令まではいかないんじゃないかという気がしますが。)
これに対して、似ていますが、食品で、
「絶品〇〇」
なんていうのは、事業者が絶品だと自信を持っているという主観的評価ととられる表現なので、「絶品」であることの根拠をしめせとかは、さすがに言われないでしょう。
もちろん、
「予想を超えた」
と、「予想」という言葉を広告で使ったからダメで、そう書かなかったらOKだったというわけではなく、たんに品薄であることを強調するのも、実際に品薄でなかったのなら、不当表示になるのでしょう。
この事件でたんに「予想」という言葉を使ってたのでそれに引っ掛けて命令を出すのが手堅いと思われたから、こういう命令の出し方になったのでしょう。
これを、「言葉尻をとらえて」などと非難しても始まりません。
くれぐれも、言葉尻をとらえられない広告をこころがけましょう。
あとこの命令もそうですが、最近、売上のような調べればすぐわかることについても不実証広告規制を使うことが続いていますね。
不実証広告規制ガイドラインでは商品の性能や効果に関する優良誤認表示だけに同規制が適用されるかのような書きぶりだったので、消費者庁の運用が大きくかわったといえます。
« 複数の懸賞企画が競合する場合の景品総額 | トップページ | 【お知らせ】『ビジネス法務』2月号にAIとカルテルについての記事を寄稿しました »
「景表法」カテゴリの記事
- 【お知らせ】『景品表示法対応ガイドブック』の改訂版が出ます。(2024.10.22)
- チョコザップに対する措置命令について(2024.08.30)
- 差止請求の公表に関する消費者契約法施行規則28条の「相手方との間の協議が調ったと認められるもの」の解釈について(2024.08.24)
« 複数の懸賞企画が競合する場合の景品総額 | トップページ | 【お知らせ】『ビジネス法務』2月号にAIとカルテルについての記事を寄稿しました »
コメント