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2017年12月

2017年12月26日 (火)

 【お知らせ】『ビジネス法務』2月号にAIとカルテルについての記事を寄稿しました

『ビジネス法務』2月号の

「特別企画 AIで変わる法規制」

という特集の中で、

「デジタル・カルテルが問う『合意』要件」

という記事を寄稿させていただきました。

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いわゆるデジタル・カルテルについては、世間の耳目を惹くためか、何も目新しい問題がないのにさも目新しいかのように「煽る」感じの論考が一部にみられ、わたしはそういうのが性に合わないので、この記事では、冷静かつ簡潔に、AIとカルテルの問題をまとめてみたつもりです。

ご興味のある方はご一読いただけるとうれしいです。

少しつけ加えさせていただくなら、デジタルカルテルの難しさは、これに対して過剰な規制をすると、むしろ独禁法の目的の正反対の方向に向かってしまいかねないところではないか、と考えています。

(これはなにも「デジタル」なカルテルにかぎりませんが。)

たとえば道路交通法は、単純にいえば、交通事故をなくすのが目的です。

なので、交通違反を取り締まる警察は、ホンネのところでは、自動車なんて運転してほしくないと考えているかもしれません。

警察は、物流の円滑化や国民の移動の便宜をはかることを使命にする役所ではないからです。

なので、交通事故を減らすことと国民の移動の便宜をはかることのバランスをとるという発想がなく、たとえば高速道路の最高速度引き上げにしても、警察が役所としての使命に基づいてやっているというより、政治家なり、国土交通省なり、外からの圧力で行っているのであり、その際の判断基準はあくまで「交通事故が増えないか」ということです。

(以上は説明の便宜のためにかなり単純化していおり、いわば物の譬えのたぐいであることをご了承ください。)

これに対して公正取引委員会の指名は公正かつ自由な競争を確保することです。

それなのに、合意とはいえない協調行動をあまりきびしく取り締まると、かえって企業を委縮させて競争をさまたげてしまい、公取自らの目的に反することになりかねないのです。

というように、本質的に競争当局というのは、目的ははっきりしているけれどそのための最善の策がはっきりしない、というところに、その権限行使の難しさがあるように思われます。

もちろん、他の役所でも、自らの目的のための最適解がはっきりしないことはあるでしょう。

でも、公取のように、たとえその目的が公正かつ自由な競争の確保の一点にかぎられると考えた場合ですら、何をすれば最善なのかわからない(良かれと思ってやったことが、かえって行政目的自体に反することがある)、という問題に頻繁に出くわす役所もめずらしいのではないかと思います。

このように、デジタルカルテルという視点からながめると、公取委というのは、なんといいますか、超然としている(べき?)というか、他の役所のように「省益」というものを観念しにくい役所のように思います。

役所でもロビーストでもそうですが、使命が決まっている(外から与えられている)のって、頭を使わなくていいから楽ですよね。

極論すれば、一つの方向にめいいっぱい振れていけば、あとは、他の利害関係人からの対抗力で、落ち着くところに落ち着く、という態度が許されるからです。

公取はそうはいきません。

あんまり独禁法の規制強化ばかりいっていると、かえって自らの存在意義を否定しかねないからです。

デジタルカルテルの規制も、一つ間違うと、イノベーションを阻害しかねないわけです。

と、いろいろ考えると、競争当局というのもいろいろ大変だなぁ、と思います。

余談が続いたうえにさらに余談ですが、以前読んだ

Jerry Kaplan, Artificial Intelligence

という本に、Artificial Intelligence(人工知能)というのはネーミングが秀逸(あるいは問題の元凶?)だったのであって、もし、

symbolic processing (記号処理)

とか

analytical computing (分析的コンピュータ処理)

とか呼んでたら、今のようなヒートアップした議論にはならなかっただろうし、もし飛行機をArtificial Bird(人工鳥)と呼んでいたら、(人工知能と人間との関係についての議論の混乱と同じように)飛行機と鳥との関係の議論が混乱したかもしれない、ということが書いてあって、なるほどなあと思いました。

言葉が妄想を生むという好例です。

2017年12月10日 (日)

「予想を上回る注文をいただいています」という表示

機能性表示食品について措置命令が出たことで注目された葛の花由来イソフラボンですが、この事件では地味ですがもう一つ重要な判断が示されています(2017年11月7日措置命令)。

違反者の一つのCDグローバルに対する命令で、

「CDグローバルは、本件商品を一般消費者に販売するに当たり・・・

自社ウェブサイトにおいて、

「先日販売を開始しました『葛の花イソフラボン青汁』につきまして、弊社の予想を大きく上回るご注文を頂いており、生産が間に合わない状態が続いております。」

と記載するなど・・・表示することにより、

あたかも、本件商品の販売数量に関する具体的な予想を立て、当該予想販売数量を上回るほどの相当程度多数の注文を受けているかのように示す表示をしていた」

けれど、

「実際には、具体的な数値予想を立てておらず、前記(ア)記載の表示期間中における注文数は僅少であった」

というのが、優良誤認表示とされているのです。

つまり、

「予想を大きく上回るご注文を頂いています」

というような表示をする場合には、具体的な数値予想を立てないとそれだけで不当表示になる、ということです。

これはかなり実務的にインパクトがあるのではないでしょうか。

というのは、こういう広告は、なんとなく「ノリ」で書いていて、まじめに数値目標まで立てていないことのほうが多いように思われるからです。

予想もしてないのに予想を超えたというのは不当表示だと言われればそのとおりなので、反論のしようもないですが、今までは、これくらいの誇張は広告として許される範囲内だと考えていた事業者も多いのではないでしょうか。

こういうのがダメだとなると、

「大変ご好評をいただいています」

というのも、きちんと好評を得ていることの根拠を示せないといけないでしょうし、

「絶賛発売中」

というのも、絶賛されていることの根拠を示せないといけないでしょう。

「ご好評」も「絶賛」も、顧客からの評価だととられる表現だからです。

ほかには、

「若い女性に人気」

というのもよく見かけるコピーですが、ひょっとすると、購入者に占める女性の数のデータを年齢別に取っておくようにいわれかねないような気がします。

(まあ「絶賛発売中」くらいは、世の中であまりにありふれているので、措置命令まではいかないんじゃないかという気がしますが。)

これに対して、似ていますが、食品で、

「絶品〇〇」

なんていうのは、事業者が絶品だと自信を持っているという主観的評価ととられる表現なので、「絶品」であることの根拠をしめせとかは、さすがに言われないでしょう。

もちろん、

「予想を超えた」

と、「予想」という言葉を広告で使ったからダメで、そう書かなかったらOKだったというわけではなく、たんに品薄であることを強調するのも、実際に品薄でなかったのなら、不当表示になるのでしょう。

この事件でたんに「予想」という言葉を使ってたのでそれに引っ掛けて命令を出すのが手堅いと思われたから、こういう命令の出し方になったのでしょう。

これを、「言葉尻をとらえて」などと非難しても始まりません。

くれぐれも、言葉尻をとらえられない広告をこころがけましょう。

あとこの命令もそうですが、最近、売上のような調べればすぐわかることについても不実証広告規制を使うことが続いていますね。

不実証広告規制ガイドラインでは商品の性能や効果に関する優良誤認表示だけに同規制が適用されるかのような書きぶりだったので、消費者庁の運用が大きくかわったといえます。

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