おとり広告の手段要件について
おとり広告告示では、おとり商品の供給量が著しく限定されている場合(運用基準では、予想販売量の半分にも満たない場合)など、おとり広告にあたる場合が4種類限定列挙されています。
若干注意を要するのは、これら4つの場合にあたれば必ずおとり広告にあたるのではなく、さらに、
「自己の供給する商品又は役務の取引・・・に顧客を誘引する手段として行う」
ということが、おとり広告の要件とされていることです。
これを、「手段性の要件」ということができると思います。
なので、自己が販売する別の商品に誘引する意図がなければ、おとり広告は成立しません。
たとえば、もともと1種類の商品しか販売していない事業者が、予想販売数の半分に満たない在庫しかないことを認識しながらその商品の広告をしたとしても、ほかに買わせる商品はないので、おとり広告にはあたらないことになります。
しかも、現行法はおとり広告は有利誤認にはあたらないという整理なので(だからこそ、5条3号の指定告示として指定されているわけです)、このようなおとり広告にあたらない広告を、有利誤認にあたるというのも、難しいんじゃないかと思います。
もちろん、お客さんに不満を持たれないためには、数が限定されていることを広告で明記するのが望ましいのでしょう(そうすると、もっとお客さんが殺到するかもしれず、なやましいところですが)。
ひとつ言えることは、もし商品が売り切れてしまって、お客さんが、
「これはおとり広告じゃないのか?」
と騒ぎ出したら(あるいは、消費者庁や国民生活センターにかけこまれたら)、「そうじゃありません」ということは、自信をもって(?)回答できます。
ただ、実際には、クレームをいうお客さんに理屈で反論すると火に油を注ぐし、売り切れになって不満を持たれるのは理解できるので、謝りたおすしかないのでしょうけれど。
少なくとも弁護士(あるいは法務部)として、このような事例がおとり広告にあたるというアドバイスをすることは、避けなければなりません。
単一商品の事業者の場合は、このように他の商品に誘引する意図がないことがあきらかなのでわかりやすいですが、複数商品を販売する事業者でも、理屈は同じです。
ということは、あまり「ついで買い」が想定されないような業種の場合には、広告を打った人気商品の在庫が十分でなかったために、結果的に品切れになったとしても、まさにその「おとり」商品を販売するために広告をしたのであって、お店に来た消費者に別の商品を買わせるつもりで広告したのではない、というのであれば、おとり広告にはあたらない、ということが十分にありそうです。
たとえば、アップルウォッチの広告をみてお店にきたお客さんが、品切れだからといって、かわりにiPhoneを買うのか?(あるいは、店員がiPhoneをすすめるのか)ということです。
このように考えてみると、この手段要件というのは案外盲点かもしれません。
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