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2017年10月 5日 (木)

包装に不当表示のある商品をならべた小売店の責任

メーカーが作成した商品パッケージに不当表示があった場合、その商品を、そのまま店頭で並べた小売店も、不当表示の責任を負うのでしょうか。

この問題については消費者庁ホームページのQ&Aの6番で、

「製造業者がその内容を決定した表示が容器に付けられた商品を小売業者が仕入れ、それをそのまま店頭に並べ、消費者がその表示を見て商品を購入した場合、容器に付けられた表示に不当表示があったとき、小売業者も表示規制の対象になるのでしょうか。」

という質問に対して、

「表示の内容を決定したのが製造業者であり、小売業者は、当該表示の内容の決定に一切関与しておらず、単に陳列して販売しているだけであれば、当該小売業者は表示規制の対象にはなりません。」

と、明確に回答されています。

パッケージに不当表示があっても、商品を並べているだけの小売店は不当表示の主体にはならない、ということですね。

でも、これが当然の、唯一絶対の解釈か、というとそういうわけでもありません。

小売店も、表示の存在を認識しながら自己の責任でその商品を販売しているのだから、責任を負うべきだ、という考え方もありえます。

ちょっと古い文献ですが、

利部修二編『商品の原産国表示の実務』(1974年商事法務研究会)

という文献では、「不当な表示の責任主体」という表題のところで、

「不当な表示のされている商品を販売している小売業者もその商品を陳列することによって自らもその不当表示をしていることになる。」

と、断言しているのです!(p82)

さらに続けて、

「しかし、行政的には、実際にその表示を施したメーカーに対して是正措置を命ずるのがもっとも効率的であるし、それによって不当な表示の排除という目的が達せられるので、通常メーカーに対してのみ法的措置を命じている。」

と、小売業者が命令の対象にならないのはあくまで行政効率上の理由にすぎない、とダメ押しされています。

昔の公取委はこういう解釈をしていたのですね。

条文の解釈としては、景表法5条柱書の、

「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。」

でいうところの、表示を「し」というのはどのような行為をさすのか、という問題です。

現在の消費者庁の見解は、表示の内容の決定に関与することが表示を「し」にあたる行為だし、昔の公取委の見解は、自分の責任でその表示を店に並べることでも表示を「し」にあたる、ということなのでしょう。

たしかに、「し」という文言だけをながめてもこたえはでなさそうですし、自分の店に並べているのに何も責任を負わないというのでいいのかといわれると、たしかに昔の公取委の見解のほうが合理性があるような気もしないではありません。

不当な表示を消費者の目に触れさせないようにするという措置命令の目的からしても、消費者に一番近い小売店のところで首根っこをおさえたほうが効率的だ、という場合もありえないではありません。(たとえばメーカーが悪徳業者で、夜逃げしてしまったような場合。)

この論点は、実務的にはベイクルーズ事件で決着がついたところですが、上記公取のような解釈も昔はあった、ということは知っておいてよいと思います。

少なくとも、条文の文言をながめても一義的に答えの出ない、実は奥の深い問題なのだ、ということは納得できます。

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