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2017年8月31日 (木)

平成28年度相談事例集について

平成28年相談事例集について、気が付いたことをメモしておきます。

総じて、今年の事例集は、なかなか踏み込んだ、実務上参考になるものが多かったように思います。

あたりさわりのない事例ばかりを公表することもできるわけですから、公取委がこういう踏み込んだ事例を積極的に公表すること自体、高く評価されるべきことだと思います。

■事例1

この事例は、メーカーによる再販売価格拘束が、メーカーが売れ残りのリスクを負担していることを理由に問題ないとされたものです。

この問題については流通取引慣行ガイドラインで、

「① 委託販売の場合であって,受託者は,受託商品の保管,代金回収等についての善良な管理者としての注意義務の範囲を超えて商品が滅失・毀損した場合や商品が売れ残った場合の危険負担を負うことはないなど,当該取引が委託者の危険負担と計算において行われている場合

② メーカーと小売業者(又はユーザー)との間で直接価格について交渉し,納入価格が決定される取引において,卸売業者に対し,その価格で当該小売業者(又はユーザー)に納入するよう指示する場合であって,当該卸売業者が物流及び代金回収の責任を負い,その履行に対する手数料分を受け取ることとなっている場合など,実質的にみて当該メーカーが販売していると認められる場合」

という2つの場合については問題ないとされていましたが、①(委託販売の例外)が「委託販売」と明記しているために、委託販売ではない通常の売買の場合にはどうなるのかが、必ずしも明らかではありませんでした。

(これに対して②(直接交渉の例外)は、消費者向け商品の場合にはそもそも使えませんでした。)

この相談事例は、法律上は通常の売買であっても売れ残りリスクをメーカーが負担するのであれば①の委託販売の例外にあたるとして、①を少し広げたものです。

これまでの実務でも、リスクを負えば売買でも問題ないとされていたと思いますし、私もそのようにアドバイスしていましたが、この点をはっきり示したことはたいへん有意義なことだと思います。

というのは、実務では、100%はっきりしないと、相対的にリスクの低い方法をとる、というクライアントもいます。

つまり、売買でも問題ないといっても、では委託販売と比べてどちらがリスクが低いかと問われて委託販売のほうがリスクが低いというと、企業としては委託販売のほうを選択する、ということもあったのです。

これからはそのような微妙な相対的リスクの差異を気にすることなく、堂々と売買でいけることになった意義は大きいと思います。

■事例2

この事例は、競合メーカー8社による基礎研究の共同研究が問題ないとされたものです。

結論、説明とも、特に問題はないと思います。

■事例3

この事例は、シェア30%(2位)のメーカーが、共同開発のパートナーに対して、低価格機種を販売する特定の4社にだけ5年の販売禁止(その他は3年)を課したことが不平等だから問題だ、としたものです。

これは、理屈も結論も問題があると思います。

まず、3年と5年という差を設けたのがいけないといわれると、では一律に5年ならいいのか、という疑問がわきます。

回答では、

「制限期間に差を設けることに特段の合理的な理由がみあたらない」

とされていますが、差を設けることに特段の合理的理由が常に必要だというのもおかしな話です。競争が制限されていなければいいはずだからです。

そこで競争制限の点については、回答では、

「〔共同開発された〕技術αを用いた装置a1が低価格機種にも広く使用される状況になれば,

当該装置のコスト削減効果は競争上重要なものとなることが考えられ,

低価格機種の販売を主力とする4社がそれ以外の家電製品Aのメーカーよりも更に2年間使用を制限されることは,

4社の取引の機会を減少させ,

技術αを用いた家電製品Aの販売市場における競争が阻害されるおそれがある」

と述べられていますが、いまひとつ意味がわかりません。

前提として、装置a1には、競合する装置a2というのがあって、

「家電製品Aには,製品の主要な機能を実現するための装置として,装置a1又は装
置a2が内蔵されている。

装置a1は,装置a2より高性能かつ比較的高価であるために高価格機種に用いられることが多い。

他方,装置a2は,装置a1より性能が劣り,比較的安価であるために低価格機種に用いられることが多い。」

ということらしいので、これまでは低価格機種には使用されていなかったのに、今後は使用されるようになる、という意味だと思うのですが、べつに従前の装置a2が使用できなくなるわけではないのです。

もっと具体的に、低価格機種に装置a1の採用が進まないことが競争にどのような影響があるのか(どのくらい「4社の取引の機会を減少」させるのか)を認定しないと、たんに3年と5年という期間のちがいだけで違法になるといっているのと変わらないと思います。

装置a1が低価格機種の競争に不可欠となるとは述べられていませんし、ひきつづき装置a2を使用することは何の問題もないわけです。

そして、おそらく装置a2を使用し続けていても、低価格機種は今までどおり売れ続けるのではないでしょうか。

理屈の上では、装置a1の導入によって高価格機種の価格が下がり、相対的に低価格機種から高価格機種に需要がシフトする、という可能性はありますが、ほんとうにそう単純にいえるのかは、よくよく事実関係をみないとわからないと思います。

想像するに、高価格機種と低価格機種というように分かれている家電製品をイメージすると、高価格機種向けの部品のコストが下がったからといって、高価格機種が低価格機種に食い込むほど価格を下げることはむしろ自殺行為であり、あんまり考えられないんじゃないかという気がします。

そのようにいろいろと想像をめぐらすと、公取の理屈は、たんに、「価格が下がったら低価格機にも採用が広がるだろうから、供給してあげなさい」といっているようにしかみえず、露骨に敵に塩を送ることを強制しているようにみえます。

競争者の不当な排除を禁止すること(競争分析)と、競争者に塩を送ることとのちがいは時に微妙ですが、それだけに、たんに不平等だからよくないというのではなく、説得力のある理由付けが必要だと思います。

まあ、あえて低価格機種の4社にだけ制限を長くするということは、性能の良い装置a1が安価で4社に供給されると、安くて性能は変わらない競合商品が出回って困る、とこの家電メーカーは考えたのだろうと想像はできますが、そのあたりの事情については、

「〔家電メーカー〕X社は,装置a1の製造コストが1割程度削減できると見込んでいる。そのため,X社は,技術αを家電製品Aの低コスト化を実現する非常に重要な技術であると考えている。」

というだけで、部品である装置a1の製造コストが1割下がることで、肝心の完成品である家電製品Aのコストがどれくらい下がるのかは不明です。

というわけで、この回答は悪しき平等主義で、私は反対です。

形式的平等主義は、判断は容易になりますし、私も一概にそのメリットは否定しませんが、素人でも簡単に判断できるような基準を採用し続けると、よくいわれる公取委の専門性というのにも疑問符が付くと思います。

この手の相談を受けると、

「事前相談にいったらダメと言われるかもしれないけど、理屈の上では正当な反論はいくらでもできるし、摘発されるおそれはほとんどないから、別にいいんじゃないですか」

というものが多いのですが、本件も、そんな感じがします。

この事例で参考になるのは、販売制限の合理的期間を決めるのに、投資回収の期間が3~5年であることが明示的に考慮されていることです。

回答でも引用されている共同研究開発ガイドラインの該当部分では、

「成果であるノウハウ〔技術α〕の秘密性を保持するために必要な場合に、

合理的な期間に限って、

成果に基づく製品の販売先について、

他の参加者又はその指定する事業者に制限すること」

は原則として問題ないとされており、さらに、

「「合理的な期間」は、

リバース・エンジニアリング等によりその分野における技術水準からみてノウハウの取引価値がなくなるまでの期間

同等の原材料又は部品が他から入手できるまでの期間

により判断される。」

とされているものの、「等」が何を指すのかはっきりしませんでした。

今回の回答は、この「等」に、投資回収期間が含まれることを明らかにしたといえます。

そしてこのことは、共同研究開発のインセンティブを確保するという意味で、妥当なものなのでしょう。

しかも、回答では、ノウハウの機密性保持ということは、とくに要求されていないようにみえます。これは企業に朗報です。

というのは、ガイドラインでは、白条項となるためには、

成果であるノウハウの秘密性を保持するために必要な場合に、合理的な期間に限って、成果に基づく製品の販売先について、他の参加者又はその指定する事業者に制限すること」

とされており、ノウハウの機密性保持の必要性があることが要件とされていて、もしこの要件がないと、灰条項になってしまったからです。

今回、灰条項という位置づけ自体は変わらないのでしょうけれど、投資回収の必要性だけで3年間の制限がほぼフリーパスで認められたというのは、投資回収に必要な期間であればほとんど白条項と言っているに等しいわけで、かなり踏み込んだ(そしてこの点については妥当な)判断だと思います。

ただ、少し考えてみると、

原則3年、4社には5年

というので投資回収できるなら、低価格機種からの競争も考慮すれば、

一律4年

ではじめて投資回収できる、ということもありうるでしょう。

それなのに今回の回答だと、

一律3年

を義務付けているようで、投資回収期間を合理的期間の考慮要素とすることと矛盾するような気もします。

ただ、今回の回答は一律3年を義務付けているのではなく、一律4年とか、一律3年半とかでもOK、というふうによむのが妥当かもしれません。

それと、投資回収期間というのも、理屈の上ではいろいろと微妙な問題をかかえていて、販売制限をかけられる側からすれば、

「4社に売っちゃいけないなら、その分、たくさん買ってよ」

あるいは、

「おたくの買取価格を上げてよ」

といいたくなるところであり(制限を受ける側はそのぶんの補償を求める、というのが垂直制限のいろいろな経済モデルの当然の前提になっています)、当事者間の合理的な交渉にゆだねると、販売制限の強弱が制限をかける側の投資回収期間にはね返ってくる可能性があります。

というわけで、投資回収期間はどういう前提での期間なのか(独禁法で制限を禁止することによって、回収期間が延びるのか、短くなるのか)、ということにも目を配らないといけません。

もっと一般的にいえば、垂直制限の競争制限効果をみるには、利害関係の相反する当事者の行動がその制限を許した場合と禁止した場合とでどう影響を受けるのか、それによって結局消費者は利益を受けるのかどうか、をみないといけません。

このように、垂直制限の排除効果については考えないといけないことがたくさんあるのです。

ともあれ、ノウハウの機密性保持の必要性がなくても投資回収見込みという漠然とした(公取からみればブラックボックスの)事情が明示的に認められたということは、ノウハウの機密性保持という観点から説明しにくい場合でも実務上3年くらいの制限はたぶん問題ないということになるだろう、といえそうです。

■事例4

この事例では、シェア15%のサービス業者が、共同研究のパートナー(メーカー)に、競合サービス業者への販売を禁止することが、問題ないとされました。

この事例では、さっそく流取ガイドラインのセーフハーバーの20%への引き上げが利いています。

ただ、これを先ほどの事例3と比較すると、事例3は相談者が市場シェア30%だったためにセーフハーバーが適用されなかったわけで、仮にシェア20%だったら低価格機種の4社にだけ5年の販売制限を課しても問題なかったことになるのではないか、ということが浮き彫りになります。

さらにいえば、シェア20%なら、永久に販売を制限しても問題ないわけですから、3年がどうの5年がどうのという議論すら起きないはずです。

そう考えると、セーフハーバーが適用されるかどうかで天と地との違いが生じ、はたして事例3の形式的平等論が合理的なのか(もっと競争への影響をちゃんとみないといけないんじゃないか)、という疑問がわいてきます。

■事例5

この事例は、原料αが不足する場合に競争者間で相互供給することが適法かどうかが現時点では判断できない、と回答した、ちょっと変わった回答です。

でも、判断できない理由として、

「現時点において〔競争者で相互供給する〕部材Aの市場が確立しておらず」

ということがあげられていますが、だから緊急時以外の判断はできないというなら、なぜ緊急時については問題ないと判断できるのか、今一つよくわかりません。

たしかに緊急時以外(平時)の相互供給まで認めると、ピークロードを見越した設備投資が行われなくなるんじゃないかとか、いろいろな問題はありうるでしょう。

そういう意味で、本来は現時点では判断できないと突っぱねてもよかったものを、緊急時のものだけは明示的に回答した、ということで、評価すべき回答なのかもしれません。

■事例6

この事例は、シェア30%(2位)の会社が生産をやめてシェア50%(1位)の会社からOEM供給を受けることが問題ないとされた事例です。

当事者のシェアだけみるとぎょっとしますが、ポイントは、はるかに売上の大きい競合品が存在する、ということです。

なので、一般的にシェア50%と30%の会社間で同様のOEMが許されるということは、この回答からはいえないと思います。

■事例7

競争者間の共同配送の事例です。とくに問題ないと思います。

■事例8

特定の区間でシェア8割の旅客運送業者2社がその区間で共通回数券を発行することが独禁法違反だとされた事例です。

それまで2社複占だったのに新規参入があったためにシェアを2割失ったという背景からすると、むしろ新規参入者を共同で排除しようとしている事例なんじゃないかという気もしますが、回答では、あっさりカルテルということで違法とされています。

結論は違法でもしかたないかなと思いますが、路線バス(ではないかもしれませんが)の場合には、今きた来たバスにすぐ乗れる(同じバス会社の次の便を待たなくてもいい)、という利便性というものはあるような気がします。

その場でチケットを購入するなら、来た方の会社のチケットを買えばいいので、そういう問題はないのですが、前売り回数券の場合はそういうわけにもいきません。

そんな場合、お値段は少々高めでもいいから、共通回数券があればいいのになあ、と思うこともありえます。

今回の相談も、そういう内容だったら(つまり、単独の回数券と、共通回数券を併存させるなら)、ひょっとしたらOKの可能性もあるかもしれません。

でも回答では、

「本件区間において合算で8割の運行本数を占める2社が,両者の運行便をいずれも利用できる同一運賃の共通回数券を導入することは,2社が共同して対価を決定することにほかならず,本件区間における旅客輸送事業の取引分野における競争を実質的に制限するものであり,独占禁止法上問題となる。」

と、バッサリと切り捨てられています。

共通回数券と、通常の1回限りのチケット(場合によっては単独回数券)が併存することも、考慮されていません。

そのあたりも考慮した回答(というより相談)がなされていたら、もっとおもしろい事例になったと思います。

ところで、共通回数券という設定から、米国の有名なアスペン事件(アスペン地方の3つのスキー場を所有する1社ともう1つのスキー場を所有する1社との間で従来共通リフト券を発行していたのに、3つのスキー場を保有する側があと1つのスキー場を共通リフト券から排除したのが、シャーマン法2条に違反するとされた事件)を思い出した人も少なくないと思います。

アスペン事件は排除する側が1社(3つのスキー場を保有するとはいえ)だったので、本相談事例の共同行為とは性質がちがう、というのは一見正しいようで、正しくありません。

日本の私的独占でも米国の独占化でも、行為者は1人でもよいというだけで、2人以上であっても私的独占または独占化は成立しうるからです。

ただ排除側が複数の場合、日本でもアメリカでも、共同ボイコットで訴えたほうが被排除者の勝てる確率がぐっと上がるので、行為者複数の単独行為(?)は事実上問題にならないにすぎません。

といういう発想から行くと、本相談事例でもし、アスペン事件の共通リフト券のように、バス会社(かどうかわかりませんが)3社が共通回数券を発行したらカルテルになったのか?というのは、アスペン事件を知るものからすると、とても興味深いところです。

というのは、本相談事例でそれがカルテルだというなら、アスペン事件の共通リフト券も実はカルテルだったんじゃないか、と思えてくるからです。

(ただ、おぼろげな記憶ですが、この点は米国でも論点になりつつも、共通リフト券は消費者の利益になるんだからいいんだ、という議論があったような気がします。)

もし本相談事例が少し形を変えて、

「2社で共通回数券を発行しようとおもうんだけど、新規参入者がそれに入れてくれと言ってきたら断っていいか?」

という相談だったとしたら、案外、

「それは共同ボイコットだからだめです。3社目も入れてあげなさい。」

という回答になったかもしれません。

少なくともアスペン事件が頭に染みついていると、そういう発想になるような気がします。

あるいは、こういう相談だったら、共通回数券を発行することの競争促進効果などにも目が配られ、回数券以外のばら売りのチケットが存在することなどにもう少し光が当たったかもしれません。

まあ実際には、現状では回数券は11枚つづりで10枚分、のような価格設定が多いでしょうから、回数券が共通化されたらばら売り券の価格も共通化されるおそれがあるんじゃないか、とかいろいろな懸念が浮かぶであろうことは理解できます。

しかし、それでも、杓子定規に「競合会社が共同して価格設定をするのはカルテルだからダメ」と切り捨てると、事業者のクリエイティブな(そして消費者にメリットのある可能性のある)価格設定を阻害することになるのではないかと思います。

とくに本件のように、露骨にカルテルをしようとして共通券を発行しようとしているのではなく、新規参入者に対抗(競争)しようとしている場合には、外形だけからカルテルだと認定するのは単純すぎで、もう少していねいに考えたほうがいいと思います。

以上、アスペン事件からの連想でいろいろ考えてみましたが、あえてアスペン事件と本相談事例の違いを考えてみると、

アスペン事件の場合は共通リフト券なので複数のスキー場を利用してみようというぶん、需要がふえる効果がある(全体のパイも増える)

のに対して、

バスの回数券では、共通回数券だからと言って1度ですむものをわざわざ2度乗車しようとする人はいないんじゃないか(全体のパイは増えない)

という違いがあるかもしれません。

ともあれ本相談事例ではカルテルだと断定してしまったので、新規参入者の排除の点を問題視することは困難と思われます(排除を問題にするということは、3社でカルテルすることを強制することになるので)。

あと細かいことですが、本相談事例では、既存事業者の合計シェア8割ということになっていますが、これはあくまで便数のシェアであり、売上シェアではありません。

でもこれは、売上シェアをみるべきだったのではないかと思います。

とくに本件では新規参入者が便数で2割のシェアを取っており、新規参入者は既存事業者よりも低い価格で参入した可能性もある(事例集の記載からはわかりませんが、通常はそうでしょう)ことからすると(事例集にも、「2社の運行便の利用者数は減少傾向にある」と述べられています)、既存事業者の市場支配力を測るためにはなおのこと、正面から売上シェアをみるべきだったように思います。

■事例9

事業者団体がオンラインゲームのアイテムが出る確率を明示すると話題になった、あの事例ですね。

たいへん結構な取り組みだと思います。

取引条件がわからないようにしてわくわくさせるというのはまともな競争ではありませんから、このような取り組みは、むしろまともな競争を促進するといえるでしょう。

できれば、これくらい意義のある取組なら会員に強制してもいい(違反者は退会させるなど)、というところまで踏み込んでほしかったです。

■事例10

事業者団体によるエネルギー消費量の表示方法統一の自主基準が問題ないとされた事例です。

表示方法がさだまっていないと需要者による比較が困難になるので、こういった取り組みは競争を促進するといえます。

この事例でも、会員に強制するものでないことが、問題ない理由としてあげられていますが、強制されなくても自主基準があるということ自体で相当の効果が期待できるので、競争政策の観点からもこれで十分なのでしょう。

■事例11

事業者団体が、品質保持の観点から、運搬時間の目安をこえる地域への販売を禁止することが、問題だとされた事例です。

品質保持の観点からの必要性はある程度認められるものの、関係者が作った基準でも、メーカーと需要者の協議で基準を超える販売がみとめられていた、というのが決定的でしょうね。

もしそういう例外的取扱いが認められていなかったら、けっこうおもしろい事案になったんじゃないかと思われます。

■事例12

農協がビニールハウスを農家に貸し出すときに、農協への最低出荷量を義務付けることが、独禁法違反のおそれがあるとされた事例です。

回答に引用されている農協ガイドラインでも、

「単位農協が自ら事業主体として行っているビニールハウスのリース事業について,組合員がリース事業を利用するに当たっては,使用する肥料,農薬その他の生産資材を単位農協から購入することを義務付けること」

というのが問題行為としてあげられており、ほぼこれにあたります。

回答やガイドラインが引用する排他条件付取引や拘束条件付取引では、競合他社(相談事例でいうところの「商系業者」)がどれくらい影響をうけるのかを見る必要がありますが、同じく引用されている抱き合わせには優越的地位の濫用的なものも混じっており、回答もガイドラインも「余儀なくさせる」という優越的地位の濫用の常套句を使っていることからすると、やはり、農家への圧迫だけで違法になり、競合他社への影響は見る必要がない、というのが公取の立場なのかなぁという気がします。

でも、ガイドラインが優越的地位の濫用を引用していないことは、なんでもかんでも濫用だとみられる現在の状況からすると、いさぎよいと思います。

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