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2017年7月10日 (月)

プライベートブランドの「製造元」は不当表示の主体になるか?

最近よくコンビニのプライベートブランドというのを見かけます。

各コンビニの名前を冠した、

「〇〇コレクション」

「〇〇セレクト」

「〇〇プレミアム」

といったお菓子やパンのシリーズの、あれです。

そういうプライベートブランド商品のラベルをみると、だいたい「製造元」として、世の中でいわゆるメーカーとして名前の通っている有名企業が表示されていたりします。

こういう、「製造元」が不当表示について景表法上の責任を負うことがあるのか、というのは、なかなか難しい問題です。

条文上は、

「自己の供給する商品又は役務の取引」(景表法5条柱書)

とは何か、という解釈論であり、少し形を変えてやわらかくいうと、

自己の商品役務として供給していたのは誰か、

という問題であり(たとえば、白石忠志「景品表示法の構造と要点」NBL1059号(2015年10月1日)58頁)、思いっきりやわらかくいうと、

誰のフンドシで相撲を取っていたのか、

という問題だ、と整理できます。(以下、便宜的に、「フンドシ問題」といいます。)

この問題について、参考になりそうな文献として、大元編著『景品表示法(第5版)』(緑本)p63では、

「イ メーカー、製造元、卸売業者の表示主体性」

というタイトルのもとに、

「小売業者が一般消費者に示した表示の内容に関与している場合は、メーカー、製造元、卸売業者等小売業者に商品を供給した者も表示主体となる。」

と説明されています。

一瞬、主語がはしょられているようでわかりにくいかもしれませんが、重複をいとわず主語を補うと、

「〔メーカー、製造元、卸売業者等小売業者に商品を供給した者が、〕小売業者が一般消費者に示した表示の内容に関与している場合は、メーカー、製造元、卸売業者等小売業者に商品を供給した者も表示主体となる。」

ということです。

そして同書ではさらに続けて、

「例えば、〔ベイクルーズ事件〕では、

小売業者〔ベイクルーズ〕に対して、製造元からの情報に基づいて当該ズボンの原産国がイタリアであると説明し、小売業者の指示に従って、イタリア製であることを示すタッグを作成して商品に付して納品していた輸入卸売業者〔八木通商〕も

表示主体として、小売業者と連名で排除命令の名あて人となっている」

とされています。

これも、主語の重複をいとわず主語を頭にもってくると、

「例えば、〔ベイクルーズ事件〕では、

八木通商は、小売業者〔ベイクルーズ〕に対して、製造元からの情報に基づいて当該ズボンの原産国がイタリアであると説明し、小売業者の指示に従って、イタリア製であることを示すタッグを作成して商品に付して納品していたが、

八木通商も、表示主体として、小売業者と連名で排除命令の名あて人となっている」

ということになります。

この具体例からわかるように、上記で引用した、

「〔メーカー、製造元、卸売業者等小売業者に商品を供給した者が、〕小売業者が一般消費者に示した表示の内容に関与している場合は、メーカー、製造元、卸売業者等小売業者に商品を供給した者も表示主体となる。」

という記述が念頭においているのは、通常の、

メーカー→卸→小売

というルートでの不当表示の話なんだなあ、ということが理解できます。

つまり、今回のテーマである、「誰のフンドシで相撲を取っているのか」という問題意識は、どうも、緑本のこの部分では希薄なようです。

とすると、同書でそのあとに続く、

「このほか、製造元と販売元がともに表示主体とされて措置命令・・・の名あて人となっている事例は多数存在する。」

という記述も、「製造元」も、「販売元」も、それぞれ自分のフンドシで相撲を取っていることは当然の前提になっていて、ラベルの欄に「製造元」とか「販売元」と記載されている(場合によっては、記載されているだけの)事業者については、あまり想定していないように思われます。

少なくとも、他人のフンドシで相撲は取っていたけど表示の作成には関与していた、というような事業者が名あて人となった事例が「多数存在する」ということはありませんし、わたしの知るかぎり1つもありません。

実はこの「フンドシ問題」については、緑本p65に、

「エ その他の留意点」

というタイトルで、もう少し関係する記述があって、その中では、

「表示上、製造元、輸入元、発売元として名称が記載されているかどうか・・・は、

各事業者の関係を判断する材料を提供するものではあり得ても、

記載の有無・・・に従って表示者が誰であるかが判断されるわけではない。」

と説明されています。

(ところでこの部分、主語と述語がかみ合ってませんね・・・。)

ここから、

「製造元」と記載されているからといって、(表示に関与していても)違反者となるわけではないし、

「製造元」と記載されていなくても、(表示に関与していれば)違反者となることがある、

ということまでは読み取れます。

ですがこの部分もやはり、

「自己の供給する商品又は役務の取引」(景表法5条柱書)にあたるのか、

=自己の商品役務として供給していたのは誰か、

=自分のフンドシで相撲を取っていたのは誰か、

という問題に対する答えは出てきません。

なので、どのような場合に、「自己の商品役務として供給していた」(=自分のフンドシで相撲を取っていた)ことになるのかは、「自己の供給する」という文言の解釈をつうじてあきらかにするほかなさそうです。

ここで、先に引用した白石先生の論文では、

A→B→C

という商流を念頭に、

「一般化すれば、BがC〔消費者〕に供給する商品役務(5条各号で一般消費者による誤認が問題となる商品役務)と、AがBに供給する商品役務とが、同じものであることが必要となる。」

と論じられています。

(そのあとに、経済的にはまったく同じということはありえないけれど景表法ではあまり厳格には考えられていない、という説明が続きますが、ここでの議論には直接関係ないので割愛します。)

でもこれを杓子定規にコンビニのプライベートブランドにあてはめて、

メーカー(「製造元」)→コンビニ→消費者

(厳密には、間に卸が入るとか、消費者に売るのはフランチャイジーであって本部ではないとか、いろいろありますが、割愛します。)

と考えると、プライベートブランドは物理的にはメーカーが作った商品そのものなので、同じものということになってしまい、プライベートブランドのメーカー(製造元)も表示に関与していたら責任を負うことになるのではないか?という疑問が沸きそうです。

しかし私は、たんに商流に乗っている、あるいは、消費者に供給するのと物理的に同じ商品を供給している、というだけで「自己の商品役務として供給していた」(=自分のフンドシで相撲を取った)というのは広すぎて、もっと絞るべきなんじゃかいかと思います。

たとえばプライベートブランドの場合、誰のフンドシかといえばコンビニのフンドシなので、メーカー(製造元)は、「自己の商品役務として供給していた」にはあたらない、と考えます。

ほかには、電化製品のOEMやODMの製造受託者も、「自己の商品役務として供給していた」にはあたらないと思います。

少なくとも、白石先生の前記論文で整理されている公取や消費者庁の過去の事例をみるかぎり、プライベートブランドの製造元が責任を負いそうな気配を感じるものはないように、私の目にはみえます。

OEMなら、委託者(ブランド保有者)が仕様を指示して受託者に作らせるので、優良誤認表示があっても、(受託者が表示に関与していても)委託者だけに責任を負わせるのが筋がよいように思います。

プライベートブランドも、基本的には、コンビニ側が表示と商品に責任を持って売るべきなんであって、そうでなければナショナルブランドとかわらなくなってしまいます。

それなのに、プライベートブランドで製造元も企画会議で表示について意見を述べたとか、表示について最終了承したというだけで、製造元にも責任がおよぶとしたら、ちょっと広すぎると思います。

やや微妙なのは、製造受託者側が設計もするODMの場合ですね。

それでもやはり、ODMの場合も消費者に責任を負っているのは、不当表示の文脈では、販売者(製造委託者)ではないでしょうか。

最終的には個別の判断になるのでしょうけれど、「自己の商品」という文言は、重くとらえるべきだと思います。

・・・と、書いたところであるコンビニに入ったら、プライベートブランドでもメーカー名がかなり大きく堂々と書いてあって、ナショナルブランドなのかプライベートブランドなのかよくわからない、その中間くらいのがありました。

こういうのだと、プライベートブランドの「製造元」だから責任を負わないとも言い切れないような気がします。

結局、この手の問題はケースバイケースで考えるほかないように思います。

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