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2017年6月 5日 (月)

独禁法のセカンドオピニオン

仕事柄独禁法の問題についてセカンドオピニオンを求められることが時々あるのですが、ある法律実務雑誌の匿名座談会で企業の法務部の方が、「セカンドオピニオンを取ると、元の弁護士の機嫌を損ねそうで気を遣う」という発言をされているのをみて、びっくりしました。

法務部のみなさん、そんなことに気を遣う必要はまったくありません!

少なくとも私は一向に気にしません。

というより、セカンドオピニオンを出す側としての経験からすると、独禁法に関しては、本当にひどい(独禁法の基本を全く理解していない)意見を述べる弁護士が相当いるように思われます。

以前あった事例では、ある排他条件付取引についての意見書でしたが、たった1社との排他条件付取引で、市場に占める取引高からすれば、その取引先は市場全体の0.1%にも遠く及ばないものであったのにもかかわらず、「1年間ならいいけれど、3年間なら違法の可能性が高い」というような意見を見かけました。

排他条件付取引は流通取引慣行ガイドライン第1部第4の2に規定があって、

「市場における有力な事業者(注7)が、

・・・取引先事業者に対し自己・・・の競争者と取引しないよう拘束する条件を付けて取引する行為(注8)・・・を行い、

これによって競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合には(注9)

当該行為は不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定2項(その他の取引拒絶)、11項(排他条件付取引)又は12項(拘束条件付取引))(注10)。」

とされています。

そして、

「他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合には(注9)」

の意味については、(注9)で、

「(注9) 「競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合」に当たるかどうかは、次の事項を総合的に考慮して判断することとなる。

[1] 対象商品の市場全体の状況(市場集中度、商品特性、製品差別化の程度、流通経路、新規参入の難易性等)

[2] 行為者の市場における地位(シェア、順位、ブランド力等)

[3] 当該行為の相手方の数及び市場における地位

[4] 当該行為が行為の相手方の事業活動に及ぼす影響(行為の程度・態様等)」

と説明されています。

ここで大事なのは、

「[3] 当該行為の相手方の数及び市場における地位

ですね。

つまり、市場における有力な事業者が、多数の取引の相手方と排他条件付取引を行えば競争者の取引の機会が減少するおそれがあるわけですが、購入シェア0.1%にも遠く及ばない取引先1社との間だけで排他条件付取引を結んでも、残り99.1%超の顧客とは自由に取引できるわけですから、競争者が他の取引先を容易に見出すことができなくなるはずがありません。

この部分は流通取引慣行ガイドラインでも比較的はっきり書いてあるところだと思うのですが、基本がわかっていないとこんな重要なところすらも読み飛ばしてしまうのですね。

そのほかには、企業結合の案件で、以前の弁護士に無理と言われたので一度はあきらめた、というケースが2件ありましたが、2件とも私が担当して1次審査でとくに条件もつかず通りました。

いずれの案件も、公取の審査を通った後にはその業界で、「いったいどうやって通したんだ?」とかなり話題になったそうですから、業界でも難しいと思われていたんでしょうね。

でも、べつに私の力で通したわけではなくって、単純に、前の弁護士のアドバイスがよくなかったんだと思います。

こんなことがわりと普通に起きてしまうのが独禁法の世界です。

しかも独禁法の世界では、ビジネスをやっている人の感覚が法律上もけっこう正しいことが多いのです。

それは、独禁法が競争をあつかうものであって、競争の実態は現場の人がいちばんよくわかっていることが多いからです。

なので、ビジネスの感覚からしてどうも違和感があるアドバイスをもらってしまった場合には、「顧問弁護士のいうことだから」といってあきらめず、セカンドオピニオンをとることをおすすめします。

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