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2017年5月31日 (水)

景品と下請法

景品の製造を委託した場合、下請法の適用はあるでしょうか。

この問題について公取委のホームページでは、

「Q9 景品の製造を委託した場合も本法の対象となるか。

A. いわゆる景品は,商品に添付されて提供される場合,有償で提供している商品の一部として提供がなされているため製造委託(類型1)に該当する。

また,純粋に無償で提供している景品であっても,自家使用物品として当該景品を自社で業として製造している場合には,製造委託(類型4)に該当する。」

と回答されています。

ただ、この回答はやや明確性に欠けるように思われます。

というのは、前段では商品に「添付」されているかが基準であるように読めるのに対して、後段では有償かどうかが基準であるようによめるからです。

前段でも「有償で提供している商品・・・」と、有償性が強調されていることからすれば、このQ&Aをぼーっと読んだ多くの人は、実質的に有償か無償かが適用の基準であると解釈するのではないでしょうか。

(もし添付されているかどうかを明確に意識してこのQ&Aができているなら、後段には、無償の例ではなく添付されていない例がくるはずです。)

よって、おそらく公取は、(商品に添付されているかどうかではなく)実質的に有償といえるかどうかを基準に判断しているのではないかと想像されます。

しかしこのQ&Aをひとまず措いて、下請法の正しい解釈としては、私は添付されているかどうかを基準にすべきと考えます。

つまり、商品に添付される景品は下請法の対象になり、添付されていない景品は対象にならない、と考えます。

条文をみてみましょう。

製造委託は下請法2条1項で、

「事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる

物品若しくは

その〔=「物品」の〕半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型

・・・の製造を他の事業者に委託すること

及び

事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託すること」

と定義されています。

この条文の構造からいえることは、下請法の対象になるのは(販売目的の)「物品」の製造の委託と、「物品」と物理的に一体化してユーザーに提供されるもの(半製品、部品、附属品、原材料)に限られる、ということです。

金型はその唯一の例外です。

金型はあくまで「物品」を製造するものであって、金型自体が「物品」と物理的に一体化するわけではありません。

このように、「物品」と物理的に一体化しないのに下請法の対象になるのは、金型だけなのです(「物品」を製造するための特殊な工具は、「金型」ではないし、まして、「半製品、部品、附属品若しくは原材料」でもないので、下請法の対象にはなりません。)

そして、①親事業者がユーザーに販売する物品、②かかる物品と一体化するもの、③かかる物品を製造するための金型、以外で製造委託になるのが、類型4の自己使用物品になるわけです。

このように、物理的に一体になるかどうかで下請法は明確にその適用範囲が画定されています。

もし物品と物理的に一体化しない景品が、実質的に有償だというだけの理由で下請法の対象になるとすれば、条文上は、景品が「物品」にあたると読むのだと思われます。

しかし、そういうことをやりだすと、こんどは「物品」たる景品の附属品というものまで考えなくてはならなくなって、下請法の適用対象が際限なく広がることになり、せっかく物理的に一体化するかどうかで適用範囲を明確にした下請法を台なしにしてしまいます。

それよりも、「物品」と一体化した(商品に添付された)景品は、「附属品」にあたる、とかんがえるのが、よほどすっきりした解釈で、条文の構造にもぴったりくると思います。

(ちなみに「附属品」の典型例として考えられるのは、医薬品の取扱説明書や容器のようなものです。)

添付されているかどうかを基準にすることが納得いかない人は、たとえば、商品に景品をくくり付けたら「附属品」として下請法の対象になるのに、景品を別に提供すると(たとえば、シールを5枚集めて応募すると景品が送られてくる場合)下請法の対象にならない、というのが腑に落ちない(バランスがわるい)と考えられているのだと思われます。

しかし、そういう人は下請法の条文の構造を理解していません。

条文上はあきらかに、「物品」と物理的に一体になっているかどうかが基準になっています。

そのようにあえて割り切ったのは、下請法の適用対象を明確にするためです。

にもかかわらず、実質的に有償か無償かで判断するとなると、限界がきわめて不明確です。

極端にいえば、町で配っているティッシュだって、企業は宣伝広告費を負担しており、宣伝広告費は商品代金に乗っている、ともいえるのであって、純粋に「無償」とはいえないかもしれません。

あるいは、懸賞による景品は、実質的には無償なのでしょうか、有償なのでしょうか。

仮に実質的には有償(商品の価格に上乗せされている)であるとしても、

「食パン10斤買った人から抽選で1名様に豪華リラックマの抱きまくらプレゼント」

というような企画の場合、リラックマの抱きまくらを「物品若しくはその〔=「物品」の〕半製品、部品、附属品若しくは原材料」のどれかに読み込む(実際には、一番近そうな「附属品」に読み込む)のは、言葉の問題として無理なのではないでしょうか。

やはり、懸賞による景品は、下請法の対象外と読むのが条文解釈として正しいと思いますし、その理由はといえば、唯一当たりそうな「附属品」にあたらないから(物理的に商品と一体化していないので)、ということなのだと思います。

この点について明確に述べた文献は探した限り見当たりませんが、

薮内俊輔「下請法の適用範囲①」公正取引787号

に、試作品の製造委託の説明のところで、

「・・・明確に有償とされていないが量産の完成品の供給に伴って提供する場合(商品添付の景品と類似する。講習会テキスト18頁参照。)は、製造委託の類型1として下請法の適用がある。」(54頁)

というように、「添付」が景品への下請法の適用の条件であることを示唆する記述があります。

また、きっかわ法律事務所のホームページの「下請法Q&A」では、

「懸賞で使用されている景品の製造を委託した場合も下請法の対象になりますか。」

という設問で、

「いわゆる景品は、商品に添付されて提供される場合を除き製造委託には当たりません。」

と明言されています。

とういわけで、添付されているかどうかで区別するのが正しいと思います。

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