下請法の質問に対する中小企業庁のある課長補佐の対応について
最近、事情があって(通常は公取に聞くのですが)、とある依頼者のために、中小企業庁に下請法の質問をすることがありました。
依頼者は匿名ではあるものの、わたしの名前と連絡先は明らかにし、具体的な事情(大して複雑なはなしでもありません)も包み隠さず説明したうえでの質問だったのですが、某H.S.下請代金法担当課長補佐(中小企業庁事業環境部取引課)から、回答を拒否されてしまいました。
とくに、2回電話したうちの最初の電話での回答は、
「立入検査で具体的な問題が発生したなどというのでない限り、個別の案件についてはいちいち回答しない」
という、信じられないような回答でした。
そんなことはないだろう、公取でも中企庁でも、いくらでも回答してもらっている、といっても、
「(具体的な案件にいちいち答えないのは)当たり前でしょう」
「そっちのほうがおかしい」
と、まったく取り付く島もない感じでした。
最後には、
「これ以上は業務妨害ですよ!」
といって、一方的に電話を切られてしまいました![]()
(実は、この課長補佐との「最初」の電話の前に、わたしから中企庁に電話をして質問したところ、もっと若い方が出られて、「検討して折り返します」といって、折り返されてきたのがこの「最初」の電話です。つまり、いちおう検討する時間もあって、わざわざ課長補佐からかけなおしてこられたものです。)
そこで2度目の電話で、下請法テキストの最後の頁に、
「~ご相談やご質問は、全国の相談窓口までお気軽にどうぞ。~」
と書いたうえで中企庁の窓口の連絡先も載ってるじゃないかといって、再度食い下がったのですが、やっぱり同じような回答でした。
当該課長補佐の論理では、「明確なルールがないというのが回答」だということらしいのですが、同じことだと思います。
あと、
「紙に書いたようなルールがないので、明確な回答はできない」
←(心の声)紙に書いたものがあったらこっちもきかないよ
「ルールが明確でない以上、下請法の適用があるという前提で対応するのが望ましい」
←(同)法律論を聞いているんだよ
という、お役人様らしい迷言も多々ありました。
さらには、
「どうしても下請法の条件を守れない事情でもあるんですか?」
「支払いが60日超えて90日とかなんて、長すぎますよね?」
「守れない事情がないなら、守ったらいいんじゃないんですか?」
といった具合で、まったく理屈の話になりませんでした。
下請法が適用されると取引記録(5条書類)を2年間保存しないといけないとか、下請事業者の名簿を準備しなくちゃいけないとか、いろいろ面倒なことがあることをご存じないのでしょうか。
当該担当課長補佐が、
「具体的な事実関係がわからないと回答できない」
とおっしゃるので、(それまでかなり詳細に事実関係を説明していましたので)では今まで説明した以上にどんな事情が必要なんですかと尋ねたら、
「実際に下請事業者にどのような被害が及んでいるのか、といったような事情です」
とおっしゃいました。
そんなのは下請法適用の有無とは何の関係もないのは明らかなのですが、万事こんな具合ですから、「この人、何にもわかってないんだなぁ」と思って、回答をもらうことはあきらめました。
こんなわけのわからないことをいう人が所轄官庁の実質的な責任者をやっているというのが、日本の下請法実務の現状です。
ただ中企庁の名誉のために一言いうと、いろいろ聞くところによれば、どれくらいていねいに回答してくれるのかは担当者によるそうです。
わたしも別の中企庁の担当者に聞いたときは、普通に答えてくれました。
そういう意味で、今の担当課長補佐は、たんに「はずれ」なのかもしれません。
もしどうしても、正式な回答でなくてもいいから、(公取ではなく)中企庁の見解が知りたいんだということがあったら、下請法テキストの最後の頁に載っている最寄りの経済産業局に問い合わせたほうがいいと思います。
そちらのほうが、はるかに下請法のことが分かっている担当者が出てくれるので、少なくとも議論がかみ合います。
ちなみに、私は基本的に、当局に問い合わせるのには消極的で、お客さんにもあまり勧めません。
いろいろ理由はありますが、担当者によって、けっこう言うことが変わるからです。
なので、「聞いてもいいけど、あてにしない」というのが正解かもしれません。
役所によっては配属直後の新米が電話質問の回答をやらされるそうなので、信頼性にも疑問がつくことが少なくありません。
だいぶ昔に、特許庁に質問した時に、質問にいたる前段階のところで、
「ライセンス契約は登録しないと効力がないでしょう?」
といわれ、ひっくり返りそうになったことがあります。
たぶん、通常実施権の登録制度と混同されていたのでしょう(平成23年改正による通常実施権の当然対抗制度の導入前の話でした)。
その点、消費者庁では任期付弁護士の方が回答してくれたりすることがあったのですが(消費税転嫁法関係)、あれはよかったですね。
ほんとうに、法律論として、話がかみ合いました。
もっともっと、弁護士資格者が役所にも増えたらいいのになと思います。
あと、当局に質問する場合は、質問する側も、相当勉強していないと、まちがった回答を引き出してしまいがちなので、自信がない場合は弁護士に頼むべきです。
とくに当局の担当者もよくわかっていない場合、わけのわからないことになります。
今まで公取に下請法の質問をしたときは、きちんと答えてくれていたし、議論してもかみあっていました。
融通が利かない結論には納得いかないことはありましたが、それは下請法がそういう法律なので、ある程度仕方がないです。
今回、中企庁と公取でこうも対応が違うのかと思い知らされ、公取がとても立派で誠実な役所に思えました。
私はこれまで、中小企業保護法である下請法は、競争法当局である公取委から切り離して、中企庁の専管にすべきだと考えていましたが、考えを改めました。
中企庁だけに下請法をまかせきったのでは、えらいことになりそうです。
(ちなみに当該課長補佐にも、「公取には問い合わせたのですか?」と聞かれましたので、あまり中企庁が主体的に下請法を解釈運用していこうという姿勢は今でもあまりないのだなと感じました。)
役所とのクローズなやり取りをオープンにするのは多分これがはじめてですし、あまり好きではないのですが、それでも、これは公益にかかわることだ(納税者たる国民が知っておくべきことだ)と考え、率直に書かせていただきました。
今回のことは、あくまで担当者個人の個性の問題であって(それも困るのですが・・・)、中企庁の組織の問題ではないことを祈りたいと思います。
もし、今回のような対応が中企庁のスタンダードなら、下請法テキストに、
「~ご相談やご質問は、全国の相談窓口までお気軽にどうぞ。~」
なんて書かなればいいし、もし書くなら、中企庁の直通番号は載せなければいいのにと思います。
これでは、明らかに看板倒れです。改善を望みます。
【5月25日追記】
本日、中小企業庁のかたから、上記の不適切な対応へのお詫びと、質問への明確な回答をいただきました。ありがとうございました。
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いつも楽しく拝見させて頂いております。
実情としては,下請法についても,解釈権限自体は公取委にありますので,中企庁において,争いのない解釈以外を回答することはできないと思います。
ちなみに,下請法GLがあまり踏み込んだ記載ができないのは,公取委との調整ができないからです。
投稿: METI元出向者 | 2017年5月25日 (木) 11時48分