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2017年2月23日 (木)

週刊ダイヤモンドと週刊エコノミストの特集に思う

今週たまたま、週刊ダイヤモンドの

「弁護士・裁判官・検察官~司法エリートの没落」

という特集と、週刊エコノミストの

「弁護士vs会計士 司法書士」

という特集が重なったのをみて、ふと思いました。(ちなみに、もちろん私は両方買いました

「これって、偶然なんだろうか?」

「もし示し合わせて特集を組んだとしたら、カルテルとかにならないんだろうか?」

結論としては、今回のケースでは示し合わせてもカルテルにはならないのですが、独禁法を考えるうえでなかなか面白い素材を提供してくれるので、ちょっと考えてみます。

独禁法では競争者間の競争制限的な合意はカルテルとして禁じられています。

では競争制限的とはどういうことかといえば、単純にいえば、販売数量を減らして値段を上げることです。

今回のケースでは、仮に両社が示し合わせたとしても、それは「2つまとめて出れば注目度が上がるだろう」という理由ではないかと思われます。

たしかに日経朝刊の広告で同じ紙面に左右並んで同じような特集があると、単体よりも注目度が上がる、と私なんかは思ってしまいました。

1つずつ別々に出たら、両方とも買わなかったかもしれませんし、片方だけ買ったかもしれません。こんなことも珍しいのでつい両方買ってしまいました

つまり、今回のケースは仮に示し合わせていたとしても販売量を伸ばすためなのであって、むしろ競争促進的だ、ということだと思います。

もし今回のケースで独禁法上問題があるとしたら、同じような特集をすることが途中のどこかで分かって、内容がまったくかぶってしまうと読者の取り合いになるので、微妙に内容を変えてみることを合意した、という差別化戦略の場合でしょう。

そんな高度な、というか回りくどい戦略は、ちょっと考えにくいです。

ほかに似たような例として、民放とNHKの女子アナが共同してオリンピックをアピールする、なんていうのも競争促進的(全体でより多くの視聴者を獲得する)といえます。

これに対して、かなり以前になりますが、ある民放の社長さんが、

「NHKの紅白歌合戦の裏番組でみんな格闘技をやってたんじゃ共倒れだ。各社考えないといけない」

というようなことをおっしゃっていましたが、これはちょっとカルテルのにおいがします。

番組内容の差別化(正面からバッティングしないようにすること)によって、お互いに視聴者を奪い合わないようにしているからです。

これに対しては、

「そういう調整をしたほうがトータルでの視聴者数(視聴率ではなく)は増えるのではないか。だから競争促進的という議論もできるのではないか。」

という反論がありえます。

では具体的にどういう場合がだめで、どういう場合がオーケーなのかは、具体的な事情に基づいて考える必要がありそうです。

たとえば競合する雑誌2誌が、カバーストーリーを何にするかを、相手の出方を予測しながら決める、というようなゲームの場合、雑誌の価格はふつう所与なので、トータルで販売数が増えるのであれば消費者余剰も増えるので、2誌で調整しても問題ない、という議論もできそうです。

(でもたとえば、週刊文春と週刊新潮がカバーストーリーの調整をするかといえば、きっとしない(しないことがお互いに合理的)でしょうから、調整するインセンティブがある場合というのがそもそも限られているのかもしれません。)

そうすると前述の紅白裏番組の調整も、問題ない(民放の地上波の視聴は無料なので、競争を避けることで価格が上げられるということが考えにくい)、という方向に流れそうです。

今回のダイヤモンドとエコノミストのケースで、もし問題があるとしたらという場合として

「同じような特集をすることが途中のどこかで分かって、内容がまったくかぶってしまうと読者の取り合いになるので、微妙に内容を変えてみることを合意した」

というのを上記のとおり考えてみましたが、では発売週を一週間ずらすのはどうか、といえば、それくらいは大丈夫なような気もします。

単純にみえる競争者間の調整行為でも、限界事例は考えてみると面白いですね。もうちょっと考えてみようと思います。

ちなみに、エコノミストの特集には、当事務所(大江橋法律事務所)の国谷史朗弁護士のインタビューが掲載されています。ご興味のある方はぜひご覧ください。

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