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2017年2月16日 (木)

日産自動車の燃費不正問題の補償内容について

今朝の日経朝刊に日産の燃費不正問題の補償についての社告が出ていましたが、改正景表法のもとでの返金措置の観点からみると、何かと興味深い内容になっています。

参考までに同社のウェブサイトから補償内容を以下に引用します。

■対象となるお客さま

「デイズ」または「デイズ ルークス」を2016年4月21日までにご使用いただいていたお客さま

(自動車検査証に記載の使用者さま)

■補償の内容

<お支払い金額(1台あたり)>

① 以下②③④以外のお客さま:10万円

② 残価設定型クレジットをご利用のお客さま:契約年数に1万円を乗じた額。ただし、現契約終了時に買取(現金一括又は再分割)される場合は、現契約終了後に「10万円」から「契約年数に1万円を乗じた額」を差し引いた額をお支払いさせていただきます。

③ リースにてご利用のお客さま(2016年4月21日までにリース契約をご締結されたお客さま):契約年数に1万円を乗じた額。ただし、現契約満了時に車両買取権を行使される場合は、現契約満了後に「10万円」から「契約年数に1万円を乗じた額」を差し引いた額をお支払いさせていただきます。

④ 過去(2016年4月20日以前)にご使用いただいていたお客さま:使用年数に1万円を乗じた額。

■お支払い金額の考え方

•新届出燃費値と旧届出燃費値との差による燃料代の差額

•今後の車検時等に想定される自動車関連諸税の増額分

■補償お支払い手続き期限

2017年3月31日(当日消印有効)

■その他

新届出燃費値と旧届出燃費値との差異により、ご購入時の減税ランクに差が生じ、追加納税義務が発生した場合は、三菱自動車工業株式会社が対応いたします。

まず、補償対象者が

2016年4月21日までにご使用いただいていたお客さま

に限られている点が、返金措置の要件を満たすのかは、検討を要します。

2016年4月21日は、三菱自動車と日産自動車が軽自動車(今回のデイズ、デイズルークスも含まれます)の燃費偽装について公表・記者会見をした日でしたが、そのあとに購入した人は分かって購入しているんだから補償の対象にしない、ということなのでしょう。

さて、これは景表法の返金計画の要件に照らしてどうでしょうか。

景表法上の返金措置は、

「課徴金対象期間において当該商品又は役務の取引を行つた一般消費者であつて政令で定めるところにより特定されているもの」

でなければならず(景表法10条1項)、

「課徴金対象期間」

は、少々長いですが、

「課徴金対象行為をした期間

(課徴金対象行為をやめた後そのやめた日から六月を経過する日

(同日前に、当該事業者が当該課徴金対象行為に係る表示が不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置として内閣府令で定める措置〔注・誤認解消措置〕をとつたときは、その日)

までの間に当該事業者が当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の取引をしたときは、当該課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間を加えた期間とし、当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)」

と定義されています(景表法8条2項)。

なので、

「課徴金対象行為」(具体的には、テレビCMとか、チラシの配布とか、ウェブサイトの表示)

を4月21日にやめており、かつ、同日以降、日産自動車が対象車種をディーラーに販売(直営店の場合は一般消費者に販売)することをやめていれば、括弧書の

「取引をしたとき」

にも該当しないということで、「課徴金対象期間」は4月21日までということになり、

「課徴金対象期間において当該商品又は役務の取引を行つた一般消費者であつて政令で定めるところにより特定されているもの」

の要件は満たされることになります。

日産本体が「取引」をやめていれば足りるので、ディーラーが販売してしまったかどうかは関係ない(そんなことはなかったと思いますが)、というのがポイントです。

ともあれ、記者会見までしながら販売を続けることは考えがたいので、本件ではこの要件は満たされているのでしょう。

では次の「補償の内容」はどうでしょうか。

原則が①の10万円であるというのは景表法10条5項2号の、

「当該実施予定返金措置計画に係る実施予定返金措置の対象となる者

(当該実施予定返金措置計画に第三項に規定する事項が記載されている場合又は前項の規定による報告がされている場合にあつては、当該記載又は報告に係る返金措置が実施された者を含む。)

のうち特定の者について不当に差別的でないものであること。」

における、

「不当に差別的」

には該当しないのでOKでしょう。

②のうち、

「残価設定型クレジットをご利用のお客さま:契約年数に1万円を乗じた額。」

の部分は、使用年数に応じた返金ということで「不当に差別的」とはみられないのでしょうけれど、問題はただし書の、

「ただし、現契約終了時に買取(現金一括又は再分割)される場合は、現契約終了後に「10万円」から「契約年数に1万円を乗じた額」を差し引いた額をお支払いさせていただきます。」

の部分です。

というのは、景表法10条5項3号で、

「当該実施予定返金措置計画に記載されている第二項第一号に規定する実施期間が、当該課徴金対象行為による一般消費者の被害の回復を促進するため相当と認められる期間として内閣府令で定める期間内に終了するものであること」

とされており、これを受けた景表法施行規則13条では、

「法第十条第五項第三号に規定する内閣府令で定める期間は、

法第十五条第一項 の規定による通知〔注・課徴金納付命令の弁明の機会付与通知〕を受けた者が、

第十条第一項の申請書〔注・返金計画認定の申請書〕を消費者庁長官に提出した日から四月を経過する日・・・までの期間とする。」

とされているのです。

つまり、返金措置による返金は、返金計画認定申請書の提出日から4か月以内に終わらないといけないのです。

そして、残価設定型クレジットの契約終了後に返金するということは、少なくとも一部の顧客については、4か月は過ぎた後でしょうから、②はこの要件を満たさないことになります。

③も同様です。

怖いのは、ほんの一部でも法定の要件を満たさない返金対象者がいると、計画全部が認定拒絶になるとうことです(要件を満たさない顧客の部分だけが認定拒絶になるのではない)。

なお返金額は最低でも購入額の3%以上でなければなりませんが(景表法10条1項)、デイズのメーカー希望小売価格は高くても180万円くらいのようなので、最低返金額の要件は満たしそうです。

(3%から逆算すると、10万円の返金で最低返金額の要件を満たす取引額は333万3333円以下でないといけない、ということになります。)

さらに気になるのは、リースと購入の顧客がいる場合に、購入の顧客は認定の要件を満たすけれど、リースの顧客は満たさない、という場合に、返金計画が全部無効になるのか、それとも、リースについてだけ無効になるのか、という問題です。

リースと購入とでは取引態様が違いますし、どちらかというと少数派と思われるリースのせいで全部の返金計画が不認定になるというのもいかにも据わりが悪いですから、リースと購入に分けて返金計画を提出することもでき、そのうちリースが認定拒絶でも購入の顧客については認定され得る、と考えるべきでしょう。

ともあれ、以上のように、自動車のような耐久消費財の場合には、今の景表法の返金計画の要件は、いかにも杓子定規だなあという気がします。

企業としては、べつに法定の返金措置の要件を必ず満たさないといけないわけではなく(課徴金からの減額が認められないだけ)、日産もわかってやっていることでしょうし、それ自体は何の問題もないのですが、将来的には、法改正するなり、もう少し柔軟な制度にしていただけたらと思います。

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